珍味充実の銘酒居酒屋 … 酒処「吉本(よしもと)」(新宿)
新宿で「近くの名店を探る」。今日の2軒目は、歌舞伎町から西新宿方面へと移動して、久しぶりとなる「吉本」です。前回来たのが平成13(2001)年のことなので、実に6年ぶり。
私自身、酒や肴に対して、「どうしてもこれじゃなきゃダメ」といったような、こだわりを持っていないので、いわゆる銘酒居酒屋とか、最近だと焼酎居酒屋のようなところにも、あまり入りびたらないんですよねぇ。
もちろん、日本酒であっても、焼酎であっても、そして洋酒であっても、美味しいに越したことはありません。すばらしい味のお酒に出会うと、それはもう、とてもうれしい。でも、そういうお酒がなくても、楽しめる酒場も多いのです。たとえば横浜・野毛の「武蔵屋」は、お酒はナショナルブランドの「桜正宗」しかないし、木場の「河本」なんて金宮焼酎しかない。
先ほどの「番番」が地下にあったのに対して、こちら「吉本」はビルの3階。これもまた、一見(いちげん)さんには入りにくいシチュエーションです。
土曜日、午後9時の店内は、入口から見えるカウンター席、テーブル席は7割ほどの入り。さらに左手に座敷席があるようなのですが、そちらの様子はうかがえません。
「いらっしゃいませ。おひとりさま? カウンター席でも、こちらのテーブル席でも、お好きなほうにどうぞ」と、にこやかに迎えてくれる男性が、この店の息子さんです。
ひとりでやって来て、カウンターに座れるケースは多いと思うのですが、テーブル席(4人掛け)に座れるのは、比較的すいているときしかありません。ここはひとつ、テーブル席に座らせてもらいますか。
この店の場合、カウンター内の厨房では、料理担当の男性ふたりが働いているのですが、あまり接客的なことはしないようです。だから、ひとり客としてカウンターに座っても、カウンターの中の人と会話を交わしたりすることは、ほとんどない。したがって、カウンターに座ろうが、テーブル席に座ろうが同じようなものなんですね。
そんなこともあってか、この店にはひとり客がそれほどいないように思います。もちろん、前回と今回の2回しか見ていませんので、他の日は違うのかもしれませんが……。
すぐに出されるお通し(770円)は、ゴボウの穴子巻き、ツブ貝、山菜おひたしの三点盛。値段的にもそうですが、このお通しだけですでに立派な料理なので、これでしばらくは楽しめそうですね。
お酒は、入口右手にある冷蔵ケースに並んでいて、それぞれ単品で注文することもできますが、三銘柄で880円(大吟醸は1,100円)という、おすすめメニューがずらりと並んでいるので、その中から選択すると、いろいろと試してみることができそうです。
大吟醸は「皐月(さつき)三銘柄セット」という名称で、新潟「越乃雪月花」純米大吟醸、島根「月山」大吟醸、宮城「撰勝山」純米吟醸で1,100円。
それ以外はすべて三銘柄880円で、雄町米・三銘柄セット(岡山「酒一筋」、山形「上喜元」、山形「くどき上手」純米大吟醸)、こだわりの逸品・花見セット(青森「駒泉」吟醸純米、福岡「繁枡」大吟醸、広島「富久長」)、生酒セットⅡ(秋田「まんさくの花」、岩手「月の輪」、宮城「日高見」)、薫風セット(山形「秀鳳」、宮城「岩崎」、山形「和田来」)、厳撰・酒門セット(長野「明鏡止水」、山形「麓井」、静岡「正雪」)、無垢之酒・名門三点セット(島根「豊の秋」、長野「信濃錦」、富山「北洋」)、越後酒三点セット第7弾(新潟市「村祐」、十日町「松の井」、長岡市「想天坊」)と並びます。
薫風(くんぷう)セット(880円)を注文すると、すぐにお盆にのせられた3杯のお酒がやってきます。それぞれのお酒の説明書きが付いてくるのがうれしいですねぇ。その説明を読みつつ、それぞれのグラスをちびちびといただきます。
グラス1杯あたり60~70ml程度あるので、3杯では1合(180ml)強といったところでしょうか。1銘柄1合で出されると、あれこれ試してみることができないのですが、こういう出し方をしてもらえると、いろんなお酒を飲むことができていいですね。
さて、外の看板にも「季節料理・地酒の吉本」と書かれているとおり、ここは料理の品揃えもいいのです。特に珍味類は秀逸で、カキ塩辛、ホタルイカ沖漬、カツオ酒盗などの600円ものからはじまって、コノワタ、鮎ウルカ、カニ味噌、カニ内子、ママカリ酢漬などが660円、手造りというイカ塩辛などが770円と続きます。
そんな中から、タイ酒盗(660円)を選び、お酒のほうは、メニューに「おすすめ燗酒」と載っている、長野の手作り「喜久水」吟醸(600円)を注文します。
燗酒は徳利で出されます。一緒に出された猪口に注いで、ひと口含むと…。いやいや。実にいい温度ですねぇ。さすがに日本酒に力を入れている店だけあります。
タイの酒盗をチビッとつまんで、内臓のややほろ苦いような旨さが口に広がったところで、燗酒をグビリ。あぁー、うまいなぁ。
テーブル席で、ゆっくりと過ごした1時間半。お勘定は2,910円でした。
「またいらしてください」と最後まで笑顔で見送ってくれる息子さんや、物腰のとてもやわらかい女将さんに「ごちそうさま」と挨拶をして店を出ます。
西武新宿駅に向かいつつ、ちょっと行き過ぎて、再び歌舞伎町へ。今日のトドメン(飲んだ後を〆る麺類)は、「博多天神」のラーメン(500円)です。
私が博多に居たころ(今から30年ほど前)には、那珂川をはさんで東側は、商人の町・博多、西側は城下町・福岡とされていたのですが、今もそうなのかな? 福岡で1番の繁華街・天神は、実は福岡地区(那珂川より西側)にあるので、「博多天神」というのは、博多も福岡も融合した、ちょっとおもしろいネーミングとも言えますよね。
ま、しかし、全国的には「博多ラーメン」と呼ばれることも多い長浜ラーメンだって、地区で言うと福岡地区(天神の北西部)ですもんね。昔と違って、博多だ、福岡だと言わなくなったのかもしれませんね。
それにしても「博多天神」のラーメン。以前はかなり好きだったのに、最近「御天」の濃厚とんこつラーメンを食べなれたからか、なんだかあっさりしすぎるように感じてしまうなぁ。
しかしながら、ラーメンの値段が以前と変わらず1杯500円で、かつ事実上、替玉1個がサービス(店頭に無料券が置いてあり、その場で使える)というのは、うれしいかぎりですね。
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