ホールもがんばって! … フランス料理「北島亭(きたじまてい)」(四ツ谷)
田舎の友人が上京してきて、4人で「北島亭」です。
おぉーっ。「北島亭」が改装している! なんだか、小じゃれた雰囲気になりましたねぇ。でも、各席がゆったりした分、前よりちょっとだけ狭い(入れる人数が少ない)感じになったのかな。
店内の改装はさておき、もっと大きく変わったのはホールを担当していた緑子(みどりこ)さんがいなくなったこと。「北島亭」の接客は緑子さん、というイメージが定着していたので、これは大きい変化ですねぇ。代わりに、ふたりの若者(男性)がホールを担当しているんだけど、残念ながら、まだまだ緑子さんの足元にも及ばない状態のようです。
それぞれのお客さんが、何を欲しているかが見えていないというか、痒(かゆ)いところに、まったく手が届いていないというか……。
というか、店に入った瞬間から、それとわかるほど接客が悪いというのも、(それほど安いお店ではないだけに)ちょっと問題かも!
3人以上のグループで予約するとコース料理になるんだそうで、今日は「5品(前菜3品、魚料理1品、肉料理1品)おまかせフルコース(デザート、コーヒー付き)」(15,750円)を、お願いしているんだそうです。
飲み物は「ベルエポック」というシャンパーニュからスタート。
「シャンパンは、いつも「クリュッグ」をもらってたのに、どうしたの?」と友人に聞いてみると、
「なんかねぇ。最近の「クリュッグ」は薄くなったような気がして。今、他のシャンパンで美味しいのがないか、いろいろ試してみてるところ」とのこと。ふーん。そうなんだ。
アミューズ(オードブルの前に出る小料理)は、温かいパイと冷たいメロンのスープ。
ほらほら、おにいさん、みんなのシャンパングラスが空いちゃってますよー。言われる前に、スッと注いでくれると、ありがたいですよね。
1品目の前菜は、ふたり分が有明産・生カキのマリネ(フランボワーズの香り、サラダ添え)で、ふたり分が生うにのコンソメゼリー寄せ(カリフラワーのクリーム添え)。
カキのマリネは一皿に大きな2個。ソースがかけられた上にドカッとキャビアがのっています。生ウニのほうは、今日はウニの殻の中に、そのままコンソメゼリーを入れて、カリフラワーのクリームをちょいと浮かしたタイプ。こちらもプツプツとキャビアがトッピングされています。ウニも一皿に2個なので、ふたりずつでそれぞれシェアし合えば、1品目から、実は2品が楽しめるということになります。これはうれしい気配りですね。
グラスが空いている時間が長くて、なかなか進みが悪かったシャンパーニュも飲み終わり、本日の2本目は、白ワイン「ムルソー・シャルム(Meursault Charmes)2002」です。
そして2品目の前菜は……。えっ! 茶碗蒸し?
完全な茶碗蒸し用の器(和食器)で出されたのは、フォアグラの洋風茶碗蒸しです。蓋を開けると、とろりと餡(あん)のかかった、とてもシンプルな茶碗蒸しという外観。スプーンでグッとすくって食べると、熱々でとっても上質の肝豆腐(きもとうふ)です。
「竹よし」のメニューによく登場するアンキモ豆腐も、同じように温めて食べると、また違った味わいが楽しめるのかもなぁ。贅沢なフォアグラ豆腐をいただきながら、ふと、そんなことも考えたような次第です。
白ワインも空いて、3本目となるのはボルドーの赤ワイン、「クロ・デュ・マルキ サン・ジュリアン(Clos du Marquis Saint Julien)1996」。先ほどの白ワインを注文するのと同時に注文し、デキャンタージュしておいてもらったものです。
3品目の前菜は、これまた2人前ずつ別々の料理です。
ふたりは仏産ホワイトアスパラと伊勢湾のとり貝(ヴィネグレットソース)。太いホワイトアスパラが2本、ごろりと横になったところに、とり貝が飾られます。全体が白っぽいので、とり貝の黒っぽい部分がいいアクセントになっています。まるでツクシンボウのような穂先の野菜が添えられてるんだけど、なんでしょうねぇ。この野菜の緑も鮮やかです。
そしてふたりはアンティチョークのスープ。平皿に入れられたスープの中に、ツンツンと立てられたアンティチョークが5本。この時期(5月後半から6月前半ぐらい)だけの野菜らしいので、あとから出てこられた北島シェフも「今日のアンティチョーク、良かったでしょう!?」と、とてもうれしそうでした。
料理のほうは4品目の魚料理。マナガツオのポアレです。分厚い身のマナガツオは、豊後水道産。身の部分はポアレに、ヒレの周りや、カマの部分などは揚げて、添えてくれます。いつもは前菜が終わる頃には、もうギブアップが近い状態の「北島亭」の料理。今日はなんだか余裕でお腹に入っていくなぁ。よーし、今日は大丈夫そうだぞ!
「残す人もいたりするんで、少しポーション(盛りの量)を減らしたらしいよ」と友人。
そうだったんだ。ゴールデンウィークにワシワシと飲み歩いた上に、麺類もたーくさん食べたので、自分の胃袋が広がっちゃったんじゃないかと、ちょっと心配してたのですが、実際に盛りが少なくなったということを聞いて、ひと安心です。
4本目のワインは、赤ワインの「ヴォーヌ・ロマネ(Vosne Romanee)2003」。今日テーブルを囲んでいるのは、男4人ですが、そのうち一人は未成年なので、ワインは3人で飲んでいます。そのワインが4本目に入ったということは、この時点で、平均的にはひとり1本以上のワインを飲んでるってことですね。
ホール係の男性ふたりが、まだ余り慣れてないのか、グラスが空いている時間が長い分、満を持して注がれると、かえってグビッと勢いよく飲んじゃったりして、いつもよりよく飲んでるのかもなぁ。うーむ。接客サービスが悪そうに見せておいて、ワインをたくさん飲ませる戦略だったのかも!(もちろん冗談ですよ。)
舌休めに、かなり酸っぱいレモン・シャーベットが出されて、口の中がさっぱりとしたところで、コースの最後、5品目となる肉料理は特上和牛イチボ肉のローストビーフ風(じゃが芋のピューレ添え)です。どうよ、どうよ! この濃いピンクの断面。これが「北島亭」の焼き肉ですよねぇ。ックゥ~~ッ。やわらかぁーいっ。うーーーん。この肉は、とんでもなく旨いなぁ。
少な目のポーション。絶対正解だと、私は思います。いつも、肉料理にたどり着く頃には、「超」が付くくらい満腹で、イチボ肉や、ホホ肉のような、けっこう脂っぽい肉は、とてもいい肉にもかかわらず、見ただけでアウト、みたいな感じが多かったのですが、今日はこうやって、イチボ肉を「とんでもなく旨い」と思いながら、付け合せのポテトも含めて、最後までいただくことができましたから! せっかく出してもらった料理を、少しでも残してしまうのは、なんだか心苦しいのです。
いつもは食べられないデザート(ケーキ)も、今日はスイスイと食べられます。
エスプレッソをダブルでもらうと、小皿で出されるのはチョコレートと、砂糖フルーツと蜜柑。厨房から、すべての料理を作り終えた北島シェフも出てきて、ブランデーを1杯ずつご馳走してくれます。食後のブランデーというのもも、おしゃれですねぇ。
北島シェフとお話をしながら、シェフが「今日はこのワインを注文されるかと思ってたのに」と言う「ブラン・フュメ・ド・プイィ・パラドックス 2003」を、「それじゃ、これからいただきます」と注文。料理は終わっても、ワインは終わらないのが呑ん兵衛ですねぇ。本日、5本目となるワインです。
あぁ~っ、よく飲んだ、よく食べた。
でも接客は、早く、少なくとも緑子さんが居たときの状態には戻さないと、まずいよなぁ。若いみなさんたちは、料理の修業をするために「北島亭」に入ったということで、接客に力が入らないのかもしれませんが、美味しい料理が作れるだけでは店として成立しませんもんね。
太田和彦さんが説くところの「いい酒、いい人、いい肴」という居酒屋三原則は、フレンチ・レストランであっても同じだろうと思います。美味しい料理が作れた上に、いい接客ができ、いいお酒(ワイン)の品揃えもできなくっちゃ、いい店にはならないのではないでしょうか。
将来、いいオーナー・シェフになるための大事な通過点だと思いますから、ホールでの仕事も力いっぱいがんばってくださいね! 次回に期待してまーす。
「北島亭」 / テーブルの様子 / アミューズのパイと冷たいメロンのスープ
シャンパン(ベルエポック) / 生カキのマリネ / 生うにのコンソメゼリー寄せ
フォアグラの洋風茶碗蒸し / ムルソー・シャルム 2002 / クロデュマルキ 1996
ホワイトアスパラととり貝 / アンティチョークのスープ / マナガツオのポアレ
レモン・シャーベット / 特上和牛イチボ肉のローストビーフ風 / デザート
ヴォーヌ・ロマネ 2003 / エスプレッソ・ダブル / お菓子
ブランデー / パラドックス 2003 / 今日いただいた5本のワイン
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