ボトルはいつも輝いて … バー「ピュアー(pure)」(野方)
高円寺駅南口駅前にある中国飯店「福來門」を出て、JR中央線ガード下をくぐって北口へ。ずらりと並ぶ行列は、あいかわらずの人気店「桃太郎すし」です。「本店」「分店」「パート2」の3店舗が軒を連ねるように並んでいるのに、人が溢れてますもんねぇ。
高円寺駅前まで戻ってくると、目の前のアーケード街が高円寺純情商店街です。元々、高円寺銀座と呼ばれていた、この商店街は、この商店街のことを題材として著された、ねじめ正一氏の「高円寺純情商店街」のヒットを受けて、それと同名の商店街へと変身(改名)したのでした。
残念ながら、この商店街には私好みの、いい意味で“古汚い”大衆酒場は発見できていないのですが、酒友たちの話によると、いいバーが何軒かあるらしいので、またご紹介いただかないといけないですね。
今日は高円寺純情商店街の1本西側(阿佐ヶ谷側)に、ほぼ並行するように走る高円寺庚申(こうしん)通り商店街を北上すると、すぐ右手に出てくるのが大衆酒場「神谷」。ここも改装したので、残念ながら“古汚い”感じはなくなっちゃいましたが、古くからある酒場です。
その先、右手の新しいお店が、さかな料理専門店「うおこう」です。入ったことはないのですが荻窪にある有名店「魚耕」の系列なのかな。
近くを走る環七周辺に数多(あまた)あるラーメン屋さんの余波なのか、高円寺界隈にはラーメンや餃子のお店も数多く、ここ庚申通り沿いにも、そういうお店はたくさん並んでいますが、残念ながら大衆酒場は少ない。
通りに出されている看板に引かれて、右手の狭い路地に入ると、その奥にある新しいお店が焼貝の「あぶさん」です。つい最近できたばかりらしいのですが、焼貝をメインに押し出している姿勢が、またおもしろいではありませんか。
さらに進んで、もうそろそろ早稲田通りに出るかという右手にあるのが餃子専門店の「赤天」。
この連休のテーマ「近くの名店を探る」。今日の2軒目として目論んでいたお店が、実はここ「赤天」なのです。
狭い店内はカウンター5席のみ。メニューは焼餃子(1人前7個、210円)とビール(中瓶、480円)のみ。予約は不可で、餃子はひとり2人前からの注文となります。持ち帰りも可で、店に向かって右側の焼き台の前にはお持ち帰り餃子を待つ人が、左側の入口の前には、店内が空くのを待つ人が並んでいます。
土曜日(子供の日)、午後9時のこの時間、残念ながら店内はいっぱいで、店の前で2人ほど空くのを待っている状態。
はす向かいにある大衆酒場「バクダン」も午後9時閉店なので、「バクダン」で、ひと飲みしながら空きを待つという手段もとれない。
うーむ。行列に並んでまで、というほどでもないしなぁ。また次の機会にしましょう。
庚申通りを抜けて、早稲田通りを渡り、今度は大和町商店街を北上します。しばらく進むと左手が民生食堂「天平」、その先右手が焼き鳥「大和鳥」と、界隈でも個性的なお店が続きます。
さらに進んで妙正寺川を渡ると、そこはもう高円寺エリアというよりは、西武新宿線沿線エリア。まっすぐ進むと都立家政(とりつかせい)。右に行くと野方(のがた)、左に行くと鷺ノ宮(さぎのみや)です。
まっすぐ進んで、みつわ通り商店街を右へ折れると、行きつけのバー「ピュアー」です。
「ピュアー」も4月29日(日)と30日(月)は連休だったものの、その後、5月1日(火)から、今日・5日(土)までは通常どおり営業中。店頭にも、普段はない「連休中のひと時を美味なるカクテルとおしゃべりで過ごしませんか…。当店のカクテルはすべてフレッシュフルーツを使用しております。女性の方、お一人様でも安心して召し上がれるお店です。どうぞお気軽にお入りください」という看板が置かれています。
「こんばんは」
「やぁ、いらっしゃい。これは、これは」
ニコニコとやさしそうなマスターの笑顔が迎えてくれます。連休最後の土曜日、午後9時20分の店内は先客は4人。カウンターのみの店内の奥側に男女ふたり連れ、中央部に大常連ご夫妻という構成です。
私もカウンターの一番手前側に座り、渡されたおしぼりで手をぬぐいながら、本日1杯目の飲み物、「春の妖星(ようせい)」(680円)を注文します。
この店では、バックバーのところに「今月のおすすめ」と書かれた10~15種類くらいの飲み物が掲げられていて、その中に、飲んだことのないような珍しいカクテルが並ぶことも多いのです。季節の飲み物が並ぶことも多いので、特に強いこだわりがあるとき以外は、ここにリストアップされているものを選ぶのが無難ですし、安くて美味しいものにありつけます。
「春の妖星」は、そんな「今月のおすすめ」メニューの1番目の飲み物としてリストアップされているカクテル。上に向かって大きな百合の花のように開いたグラスにグリーンのミントが入れられ、ジンとグレープフルーツなどをシェイクしたカクテルが注がれると、グラスの中はグリーンから白っぽく透きとおるお酒への見事なグラデーション。グラスのふちに一片のピンクの花弁が添えられます。
「なんだかねぇ……」と言いはじめて、ニヤリと黙るマスター。
「ん!? カクテルがきれいすぎて、似合わないって言いたいんでしょう!」
「あははは。そこまでは言わないけど」
でも、このカクテルは本当に女性向けだと思います。私のような、おっさんには似合わないこと、この上ない。
比較的軽めなのでツツゥ~ッと飲めるのですが、そのグラデーションの色合いのとおり、飲み終わる頃にミントがよく効いて、思わず次の一杯にいきたくなるという妖(あや)しいカクテル。だから「妖星(ようせい)」という名前が付いてるんだとか。
今日のお通し(310円)は、エビとアボカドのサラダ(梅肉ソース)。
レストランの料理長も経験したというマスターの料理は、それを目的に通う人も多いほど本格的なもの。この店の奥にある小さな厨房で、いったいどうやって作ってるんだろう、と思うような品々がメニューに挙がるのです。
2杯目にいただいたのは、今度は14種並んだ「今月のおすすめ」の13番目、ホワイトウイスキーの「ジョージアムーン」(520円)です。
中野にバーボンの品揃えで有名な同名のバーがありますが、このジョージアムーンというお酒は、蒸留後30日以内のものを、昔のマヨネーズの広口ガラス容器に似たボトルに詰め込んだ、まさにできたてのコーンウイスキー。これを樽に入れて寝かせておくと、バーボンになるんですね。
蒸留直後のウイスキーなので、もちろん樽の色や香りはついていなくて、無色透明。言ってみれば、度数の高いトウモロコシ焼酎のようなものですね。
ロックでグビッといただくと、決して美味しくはないんだけど、野趣あふれる味わい。
ラベルの上部に書かれている「Shine On」というのが「密造酒」ということなのだそうで、味を楽しむというよりは、禁酒法時代の密造酒を体験してみるというおもしろさで飲むお酒なんでしょうね。
そのジョージアムーンを飲みながら、話題はマスターの若かりしころの話に。マスターが田舎から出てきて最初に入ったバーで、毎日必ず新聞5紙や、複数の週刊誌を読ませられたほか、お茶、お花などひと通りの作法も修業させられて、それは大変だったんだそうです。
「昔のバーは、どこもそうだったですねぇ」とマスター。
「なるほど。そういう修業をされたから、バックバーに並んでいるボトルが全部ピカピカなんですね」
カウンターの奥に座っている男女ふたり連れの、男性が口を開きます。このお二人は、今日、はじめてこの店にいらっしゃったんだそうです。
たしかに。バックバーにずらりと並ぶ、ボトルやグラスの輝き具合で、その店の取り組み姿勢が、ある程度わかってしまいますよねぇ。マスターひとりで切り盛りしているのに、さりげなく花が飾られたりしているのも、当時のきびしい修業の賜物(たまもの)に違いありません。
さてさて。野趣あふれる「ジョージアムーン」をいただいたら、もう1杯、別の野趣あふれるお酒も飲みたくなってきました。「今月のおすすめ」のメニュー番号12番、「ズブロッカ」(520円)です。
ズブロッカは、ウォッカに、ズブロッカ草という草を漬け込んだ(あるいは人工的にズブロッカ草の香りを付けた)ポーランド製ウオツカで、冷凍庫でキンキンに冷されているものをストレートでいただきます。冷凍庫に入れてても凍らないんですね。鼻の奥からフッと抜ける草の香りが、とっても個性的。
ガツンと強いウォッカも、この温度まで冷してしまうと、ほとんどお酒の強さを感じない。あらにその上に、フッと抜けるズブロッカ草の香りがあるから、より飲みやすい。これはまた危険なお酒だなぁ。
グッとそのズブロッカを飲み干したところで、今日はここまでといたしますか。
約1時間半の滞在。飲み物を3杯いただいて、お勘定は2,030円でした。どうもごちそうさま。
「ピュアー」から、わが家までは徒歩10分ほど。途中に1軒だけラーメンが食べられるお店(中華料理「登竜」)がありますが、幸い(?)今日は閉まっている様子。このままトドメン(※)なしに帰宅できそうです。
考えてみると、この9連休中、ずいぶんトドメンをやっちゃいました。飲んだ後の麺類は、できるだけ控えるようにしていたのになぁ。。。
(※ トドメン: G.Aさんの造語で、飲んだあとを、とどめの麺類でシメること)
春の妖星 / エビとアボカドのサラダ(梅肉ソース) / ジョージアムーン
ピカピカのボトルが並ぶバックバー / ミックスナッツ / ズブロッカ
| 固定リンク | 0
コメント