明治6年創業の超老舗 … おでん「石川屋(いしかわや)」(横浜・石川町)
せっかくの石川町なので、もう1軒。とやってきたのは、石川町駅から元町側に入ってすぐのところにある、おでん屋、「石川屋」です。
店内は、やわらかく「く」の字に曲がったカウンター6席ほどと、右手の壁に沿うように4人掛けのテーブル席が2つ。入口左側の階段から2階(座敷20席)にも上がれるようです。
「いらっしゃいませ。カウンターでも、テーブルでも、お好きなところへどうぞ」
と迎えられて、歩く酒場データベース・K口さんとふたり、奥側のテーブル席に座ることにします。1軒目の「車橋もつ肉店」で、よく冷えたホッピーを続けてきたので、ここはひとつ燗酒をいただきましょう。すぐに出されたお通しは、小皿に軽く盛られたイリコ(カタクチイワシの煮干し)です。
店は女酒場(女性だけで切り盛りしている酒場)らしく、カウンターに座って入口側に置かれたテレビを見ているのが、おそらく大女将さん。そしてカウンターの中と厨房に、それぞれ女性がひとりずつ、合計3人の女性で切り盛りしているようです。
燗酒を注文してから気がついたのですが、この店は飲み物類が、ちと高いようです。目の前に出された普通の徳利(7~8勺ほど?)で780円。中身が純米吟醸(銘柄不明)らしいのですが、それにしても高めですよねぇ。ちなみにビール大瓶が730円、酎ハイは“小づる”(乙類)で作ると630円、“ホワイトジャン”というので作ると420円。ホワイトジャンをボトルキープ(2,100円)して飲むというのが、もっともリーズナブルな方法かもしれません。
ま、しかし、この店は、おでん屋と言いつつも、その実態は「超」が付くくらい老舗の小料理屋という感じですので、単純に大衆酒場的な料金体系と比較しても、あまり意味がないかもしれませんね。
食べ物のメニューはと見ると、刺身類(800円より)や、焼き魚(700円)などのほか、ぬた各種(まぐろ・いか・ねぎ)(520円より)、小芋の煮付け(570円)、おしんこ(360円)といった、小料理類が並び、さらに、とろろご飯(840円)、白粥(三年漬梅干・おかか大根おろし付)(1,050円)、おじや鍋(1,150円)といった、ご飯ものもそろっているようです。看板メニューの、おでんは1個150円より。
肉類をたくさん食べてきたあとなので、ここは軽く、うのはな(450円)のみを注文します。うのはなは、野菜たっぷりの、しっとり系。お酒が進みます。
壁には「昭和初期の石川屋」という写真が飾られていて、なんとその頃から、この建物はビルなのです。「へぇーっ」と感心しながら見ていると、カウンターの大女将が、お店の経緯を説明してくれます。
それによると、この店が酒屋として創業したのが明治6(1873)年のこと。この地の代官だった石川家に出入りしていたことから「石川屋」と名乗ることを許されたのだそうです。その後、昭和30(1955)年に現在の業態に変更し、以来現在に至る、ということで、実に創業来134年(小料理屋になってからでも52年)を誇る大老舗です。
「よく、石川町の駅近くにあるから「石川屋」なの、って聞かれるんだけど、そうじゃないのよ。駅の名前が石川町に決まったのは昭和39(1964)年だから、駅のほうが、ずっと後なの」
と、穏やかに語ってくれる大女将さん。ここの大女将さんにしても、「武蔵屋」のおばちゃんたちにしても、前の「バラ荘」のママさんにしても、このあたりの女酒場の女性たちは、実に上品に、ゆったりと、お話をなさいますねぇ。みなさん、言葉づかいも丁寧(ていねい)です。
そんな大女将さんの昔話を肴(さかな)にしながら、燗酒(780円)をもう1本いただいて、1時間弱。お勘定は、ふたりで2,100円(ひとりあたり1,050円)でした。どうもごちそうさま。
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