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横浜にも大衆酒場あり … 大衆酒場「栄屋(さかえや)」(横浜・日ノ出町)

 意外かもしれませんが、横浜の中心地に少ない(ない?)のが大衆酒場。以前、石川町駅のすぐそばにあった「東国屋」が、いかにも大衆酒場だったのですが、残念ながら平成15(2003)年10月に休店してしまい、今もそのままの状態です。「武蔵屋」も、古い酒場ではあるんだけど、大衆酒場って感じではないしなぁ。

 私の思い描く大衆酒場のイメージというのは、毎日夕方になると、まず近所のお年寄りたちを中心とした常連さんが集まりはじめ、徐々に仕事帰りのお父さんたちが増えていく。ほとんどのお客さんは二日とあけずにやってきて、まるで地域の寄り合い所のような場所になっている。もちろん、それだけ通えるためには値段も安くなくてはいけません。毎回のお勘定が千円ほどで、高くても1,500円は超えない。たとえば「斎藤酒場」(十条)や「山田屋」(王子)、「大はし」(北千住)、「河本」(木場)などが、その具体的な例でしょうか。

 そんな大衆酒場が、日ノ出町あたりにあるという噂を聞いてやってきてみました。店の名は大衆酒場「栄屋」。入口にかかる暖簾(のれん)には「栄屋酒場」と染め抜かれ、古びた建物(失礼!)ともあいまって実にいい雰囲気です。

「こんばんは」

 と入った店内は3~4人掛けのテーブル席(本当は4人掛けだけど、店の形状によって、すべての席が使えないテーブルもある)が6つ。先客はなく、店主夫妻が一番奥のテーブルに座ってお話をしているところ。その店主が、

「いらっしゃいませ。今日は静かなんですよ。昨日はお断りしなきゃいけないくらい大勢来てくれたのにねぇ」

 と声をかけてくれます。初めての店でも、こうやってお店の人がちょっと声をかけてくれると、すっとそのお店の雰囲気に入ることができます。

 店は奥の壁の向こう側が厨房になっていて、その壁のところにテレビやメニュー(黒板や張り紙)があります。メニューは100円の冷奴からはじまって、トコロテンが250円、南京豆が300円と続き、高いほうは鯨刺身650円、シメサバ700円、カツオ750円ときて、最高値が岩カキ(3個)の820円まで、30種類ほどが並んでいます。

「燗酒(340円)と竹の子煮(400円)をお願いします」

 と注文すると、すぐに出される燗酒と、お通し(サービス)のタコの煮付け。

 ガラリ、と入口引き戸が開いて入ってきたのは、サラリーマンらしき男性3人組。私の横のテーブルに座って飲みはじめます。

 竹の子煮の小鉢を出してくれた店主に、

「横浜には、こういうタイプのお店はないのかと思ってました」

 と話しかけると、

「うちは古いだけだから」

 と謙遜する店主。

「昭和23(1948)年に開店して、この人が二代目なんですよ」

 ニコニコと笑いながら、おかみさんも言い添えてくれます。

 となりの3人組のうち、おひとりは、中学生の頃から、この店に通っているのだそうです。

「中学校のときの先生が、この店の常連でね。くっついてやってきては美味しいものを食べさせてもらってたんだよ。フグの白子も、この店ではじめて食べたなぁ」

「当時はフグの免許なんて制度がない時代でねぇ。親父が適当にさばいてたんだよ。よく死ななかったねぇ」と笑う店主。

 そのお客さんの話によると、フグは生まれたときから毒を持っているわけではなくて、成長の過程で餌の毒が体内(内臓など)に蓄積していって、毒性を持つようになるんだそうです。だから、養殖で、毒のない餌で育てていくと、毒性のないフグになるんですって! 知らなかったなぁ。

 それにしても、こうやって何十年も通う常連さんがいるというのも、すばらしいことですね。

 もう少しゆっくりとして行きたいところではありますが、実は今日は仕事関係の飲み会の後でやってきたので、もう、飲みも、食いも十分に足りている状態。また次回、1軒目としてやってきて、じっくりと楽しみたいと思います。

 約40分の滞在は、燗酒1本とつまみが1品(+お通し)で740円でした。どうもごちそうさま。みなさん、お先に!

 うーむ。これは渋い。横浜にも大衆酒場あり!

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「栄屋酒場」 / 店内の様子 / 燗酒とお通し、竹の子煮

店情報

《平成19(2007)年6月20日(水)の記録》

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コメント

東国屋本当に良い店だった。残念です。時々見に行ってましたが更地になりました。栄屋行ってみます。

投稿: Mory | 2008.12.24 11:25

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受信: 2008.12.07 09:49

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