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できれば一人か二人で … 酒亭「武蔵屋(むさしや)」(横浜・桜木町)

 仕事の世界は、日々これ競争の真っただ中。いつもいつも変化することが求められる現代社会にあって、年中変わらぬ肴が5品に、酒が3杯。しかも、そのスタイルが何十年も変わっていない酒場がある。それが良くて、みんなが何度も何度も、やってくる。そんな酒場が、横浜は野毛にある酒亭「武蔵屋」です。

 週まん中の水曜日。ちょいと1杯飲んでから帰ろうと、「武蔵屋」に到着したのは午後8時過ぎ。この店は9時までの営業。8時半になると内側から鍵がかかって、新しいお客さんは入れなくなるので、ほぼギリギリのタイミングですね。

 店内は左手に二つあるテーブルを、それぞれ4人組、5人組のグループが囲み、奥の座敷席にもカップルがひと組いる様子。右手のカウンターには、珍しくお客がいない。そのカウンターに座ると、店のおばちゃんたちやアミちゃん(←店を手伝っている美人おねえさん)が、ニッコリと目顔であいさつしてくれます。どういういきさつかは知りませんが、この店は、昔から「いらっしゃいませ」という声掛けは、しないのです。

 小瓶のビール(キリン一番搾り、500円)から飲み始めると、ビール用の豆類の他、年中変わらぬ定番の肴(玉ねぎ酢、おから、タラ豆腐)が出されます。

「あぁ、よかった。ここは変わっていない」

 そう感じると、それだけで、なんだか安心してくつろげるのです。

 ところが、最近、お客さんのほうが変わってきた。ひとり客を押しのけるように、会社員同士のグループ客が増えてきて、変わらぬ店の雰囲気もなんのその。自分たちのグループだけで盛り上がるような飲み方が増えてきているように思います。

「エアコンが効いてなくて暑い」とか、
「お絞りはないんですか?」とか、
「お酒以外の飲み物がいいなぁ。えっ。酎ハイないの!?」とか。
 こういう声が出ているのは、ほとんどはそういうグループ客のようです。

 この店には看板もなければ、暖簾(のれん)もなく、知った人以外は場所すらわかりにくい。おそらくグループのひとりか、ふたりが知っていて、「おもしろい酒場があるよ」と、まるで観光地に行くような感じで他の人たちを連れてきたのではないでしょうか。

 この店に限らず、個人経営の小さな酒場、しかも、それが歴史のある酒場であればあるほど、地域の常連さんを中心とした小さなコミュニティができあがっているものなのです。そこへ入っていく場合には、土足で踏みにじるようなことはせず、できればひとりか、ふたりで、「その場にお邪魔させていただく」という気持ちで臨むことが大切ではないかと思います。

 それよりも大人数になるときは、こういう小さな酒場ではなくて、それに適した大箱の酒場に行くべきではないでしょうか。そういう自分自身も、ときどき大人数で、小さな人気酒場に入ったりすることもあるので、反省している次第です。

 テーブル席のグループ客が、「さぁ、次へ行こう」と席を立ちます。そのうちのひとりが、「次はお酒以外の飲み物があるところをお願いします」と言うと、その上司らしき人が「おぉ、次は焼酎もある店にしよう」と返事します。そんなやり取りを聞きながらも、ニッコリと見送るおばちゃんは、いつもとちっとも変わらない言葉を投げかけます。

「あらあら。なるべくまっすぐ帰ってくださいね」

 ビール小瓶に、お酒が3杯に定番の肴で、今日も2,500円と、お勘定も不変でした。

店情報前回

《平成19(2007)年7月11日(水)の記録》

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コメント

まったくもって仰るとおりだと思います。
酒場に行く楽しみにしてもいろいろあると思いますが、僕の場合、お店の雰囲気を味わいに行くのが好きなもので。

いい呑み助であれば、お店の側から、あるいはお客さんから自然にその輪の中に迎えいれてくれるものなんでしょうね。
いい呑み助志願者の僕としては、お邪魔させていただく気構え、忘れないようにしたいです。
改めて考えさせられました。ありがとうございます。

投稿: 祝 | 2007.08.07 00:20

いつもお世話になっております。ハルです。
ここ数年一部のお客さんのマナーが、仰られるとおり
悪くなってきましたよね。
例)
・座敷で足を伸ばして飲んでいる女性客
あたしゃ、あんたの足の裏を見に武蔵屋に来てる訳じゃない。(怒)

・お酒3杯飲んだ後、ビール2本頼んだ若いカップル。
(飲み過ぎ&ルール知らな過ぎ)

・座敷で片ひざ立てて飲んでる女性。(スカートの中が見えるぞ)
(嬉しい)じゃない、(怒)

・持参のノートPCを座敷のコンセントに繋げて、PC立ち上げ様とした
 男性(これは本当に頭来ましたので、口頭で注意)

・携帯電話を長々喋っている奴
(電源切るかマナーモード、会話は普通外ででしょう!)(怒)
これ以外にも、びっくりするほど騒々しい団体客等など、

気分良く飲みに来ているのに、気になって気になって疲れる時が
あります。しかめっ面で黙って飲めとは言いません、武蔵屋は聖域
でもありませんが、等しく皆さんが気分良く飲んでる雰囲気を客側が
作るのが武蔵屋のマナーだと思います。

追伸 8月いっぱいはお休みです。お休みが9月に伸びても
あまり騒がずゆっくり再開を待ちましょう。

投稿: ハル | 2007.08.08 17:27

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 「万古不易(ばんこふえき)」。ずっと変わらないことを示す四文字熟語です。その対義語で、その時々に合わせて変化を重ねていくのが「一時流行(いちじりゅうこう)」と言えば、両者の違いが際立つでしょうか。  そんな「万古不易」を具現化した酒場が、横浜・野毛にある酒亭「武蔵屋」です。  酒飲みというのは勝手なもので、自分自身は会社の中で、日々これ改善・改革という変化に追いまくられているにも関わらず、同じ... [続きを読む]

受信: 2007.11.18 12:09

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