ものすごい食への情熱 … 居酒屋「やまだや」(築地)(2/3)
のど黒塩焼(1,575円)は、カマあたりの一部分を焼いたもの。それを見て、
「やっぱり、このくらいの量だよねぇ。この値段で1尾だったら、すごく安いなぁ、と思ったんだ」
と築地王・小関さん。なにしろ、日本海を代表する高級魚ですからねぇ。1キロを超えるくらいの大物になると、1尾1万円を下ることはないほどなのだそうです。焼き魚にすると、脂ののった白身が、とろりととろける感じになって、ものすごくうまい。「太平洋のキンキ、日本海のノドクロ」と高級魚比較されたりしますが、「煮魚のキンキ、焼き魚のノドクロ」とも言えるかも!
野菜いろいろ温サラダ(630円)も、この店の名物のひとつなんだそうです。何種類かの野菜を蒸篭(せいろ)で蒸しただけの、いってみれば簡単な料理なんだけど、これがまたうまいのなんの。今日の野菜は、山芋、とうもろこし、さつま芋と、おくらです。
手作り帆立貝クリームコロッケ(4個、840円)。中は本当にトロットロで、帆立の貝柱がコロコロっと入ったクリームシチュー。これもまた多くの人が注文する、名物品なんだそうです。
やまだいこんサラダ(735円)は、山盛りの千切り大根の上に、その大根が見えなくなるほどカツオ節をかけたもの。「やまだや」の「大根サラダ」だから、両方を合わせて「やまだいこんサラダ」って言うんだろうなぁ。他のメニューが、まったく遊びがないだけに、このメニューだけが、かえって浮き立ちます。ここの店主、ものすごくまじめそうに見えて、実はちょっと茶目っ気もあるんですね。
たっぷりカニミソのピザ(1,155円)は、薄く焼いた楕円形のピザ台の中央部に、たっぷりとカニミソを塗ったもの。
レバームース(840円)は、クラッカーの上にレバームースをたっぷりと盛って、その上にミニトマト。ひと口でパクッといただくと、口の中に、いかにも鮮度の高いレバーの味と香りが広がります。
ひとしきり、お腹もできてきたところで、「そろそろ飲み物を変えてみますか」と小関さん。「焼酎の4種味見セット」を注文しています。飲み物も、食べ物と同じく墨字の、表裏両面メニューに、ずらりと書き並べられています。
「日本酒の味見セットもありますよ」
ということで、くにさんと私は、日本酒の4種味見セットをいただくことにしました。今日の4種は、岩手の「西与右衛門(よえもん)吟ぎん・特別純米 無濾過生原酒」に、奈良の「風の森・アキツホしぼり華・純米大吟醸」、島根の「ヤマサン正宗・佐香錦(さかにしき)・純米吟醸」、徳島の「高柿木(たかがき)玉栄(たまさかえ)生もと純米」と、日本各地からやってきた銘酒揃えです。
冷え冷えで出された4種類は、それぞれエステル香というんでしょうか、いわゆるフルーティな香りが、それぞれ高くて、それゆえに、最初はどれも同じような味に感じてしまいます。しばらく置いておいて、揮発性の高い香りがなくなり、温度もある程度上がってくると、それぞれの酒のクセがわかるようになるのがおもしろい。
と、そこへ、小関さんから、
「いつもは、どういうお酒が好きなんですか?」という質問が投げかけられます。
「うーん。なんでも飲むんですよ。特にこれが好きとか、これじゃないといけない、なんてこだわりは、あまりないんです。酒好きと、酒場好きに分けるとすると、私は酒場好きのほうかな。酒場の空気にどっぷりと浸ってるのが好きなんです」
そんな話から始まって、小関さんや、グルメ系ブログのみなさんたちが、精力的に食の名店めぐりをされているという話題になります。
「このあと30年ほど食を楽しむとしても、昼食と夕食の回数は、合わせて2万食くらいしかない。そう考えると、1食もおろそかにできないんですよ」
そう語る小関さん。グルメ系ブログの、くにさんも、
「変なものを食べるくらいなら、むしろ食べないほうがいい。だから、私は1日1食とか、1日2食というときも多いんです」
シェ~ッ。グルメ系のみなさんの「食に対する情熱」は、ものすごいものなんですねぇ。
味見セットのあとは、割り水して寝かしている千亀女(せんかめじょ)芋を、黒ヂョカ(1合682円)で2合ずついただくことにします。
この店の欠点を強いて挙げるとすれば、いつもいっぱいで予約を取ることすらむずかしいという点と、飲み物の出が遅いという点でしょうか。どういうわけだか、飲み物を注文してから出てくるまでに、ものすごく時間がかかるので、目の前のグラスが空いたまま、しばらく過ごさなければならないことが多いのです。
4人で飲むと、黒ヂョカ2合は、あっという間になくなるので、すぐに追加の2合を注文します。
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