「夏休み中に、ふだん行くのが難しい店々に行ってみよう!」という企画。水曜日の今日は、おとなりの千葉県まで出かけてみます。
JR総武線・下総中山(しもうさなかやま)駅で、酒飲みの大先輩であるN條さんと待ち合わせ、N條さんが「関東で一番うまい焼き鳥」とお勧めの、焼き鳥Tに向かいます。
下総中山駅南口のすぐ近くにある店に入ったのは、開店と同時の午後5時。それなのに、すでに店内には何人かの先客がいて、さらにこのあと、30分と経たないうちに店内は満席になったのでした。
「とにかく人気があって、普段でも入りにくいんだから、店の詳細は書くなよ。オレが入れなくなってしまう。イニシャルくらいでな!」
とN條さん。そんなわけで、このお店のことは「焼き鳥T」と表記させてもらいますが、この地域では圧倒的な人気を誇る、このお店。ご存知の方がいらっしゃっても、「焼き鳥Tって、○○のことですね!」なんてコメントはやめてくださいね(笑)。
生ビール(中ジョッキ、650円)をもらって乾杯すると、N條さんが何品かの肴(さかな)を一気に注文します。
「まずはオレのオススメの品を注文したから、これから行ってみてくれ。足りなけりゃ追加すればいいから」とN條さん。
お通しの肉じゃがをつつきながら、生ビールを飲んでいるところへ、どーんと登場したのはカツオ刺と馬刺。
厚みが1センチ以上はあろうかというカツオ刺は、添えられた穂紫蘇(ほじそ)の緑色がチカチカ感じるほど、鮮やかな赤。口に含むと、戻りガツオのような濃厚さです。今日から8月がスタートばかりなのに、もうこんなカツオが味わえるんですねぇ。
馬刺のほうも、厚みについては同じく1センチ以上あるかという厚切り。こちらは、いわゆる霜降り状態で、ピンクのきれいな身の中に、白い脂肪がチラチラチラと混ざっています。
「オレは(馬刺をよく食べる)長野の出身なんだけど、こんなきれいな馬刺は、この店ではじめて見たよ。カツオも、最初に食べたときは驚いたねぇ!」
とN條さん。2品とも、本日の黒板メニュー(仕入れによって替わるメニュー)ながら、この店では比較的定番の品のようです。
生ビールを2杯ずついただいたあとは、焼酎のボトル(黒伊佐錦、2,800円)をもらいます。
焼き鳥の1品目は砂肝(2本260円)。大きな砂肝が、1串に6個ずつで、塩焼き。手に持つとズシっと重みを感じます。その砂肝を、割り箸で、先っぽから1個ずつはずして食べていると、
「なにお上品に食べてんだよ。串のまま、ガツっといかなきゃ!」
とN條さん。そうはいうものの、砂肝が大き過ぎて、ひと口に1個丸ごとガシっとはいけないのです。塩加減、焼き加減も絶妙ですねぇ。たしかにN條さんが自慢するだけのことはあります。
続いてはハツ(2本260円)塩焼き。これまた1串に5~6個の鶏心臓が刺さったボリューム品。これらが2本で260円(1本あたり130円)というのは、とても安いと感じます。ひとりでやってきたら、2品(4本)も食べると、もう満腹だろうなぁ。
やきとり(2本260円)はタレ焼きで。大きな肉3個の間に、ネギが挟まれた、いわゆるネギ間焼き。この肉が、とろけるようにやわらかく、タレの甘みと絶妙にマッチしています。んーっ。鶏肉、うまいなぁ! 改めて、そんなことを感じさせられます。
ツクネのことは、この店ではタタキと呼ぶようで、そのタタキには、普通にタレか塩で焼いたもの(2本260円)のほかに、たたきポンズ(2本420)というのもあって、N條さんは、たたきポンズのほうを注文。たたきポンズは、素焼きしたタタキの上に、刻みネギをたっぷりとのせて、ポン酢醤油をかけたもの。さっぱりとしていて、他では食べたことのない味わいです。まさに、この店のオリジナル品なんですね。
呼び方が異なると言えば、この店には、どんどり(2本300円)という焼き鳥メニューがあります。なんだか分かりますか? これは、ボンボチ、ボンジリのことだそうです。所変われば、いろんな呼び方があるんですね。
それにしても、店の人たちは当然として、入ってくるお客さん、入ってくるお客さんが、みんなN條さんのことを知っているというのも、ものすごい。しかもみなさんから異口同音に「どうしたの? 今日は早いじゃない」という声がかけられています。N條さんは、この近くに住んでいるものの、職場は都内なので、いつもは閉店間際くらいの遅い時間にやって来ることが多いんだそうです。今日は、私を案内してくれるために、会社を早上がりしてくださったとのこと。どうもありがとうございます。
焼き物のほうは、チーズの入ったポテトサラダをベーコンで巻いた、ポテトベーコン巻と、プチトマトをベーコンで巻いた、トマトベーコン巻。これらも黒板メニューで、日によって、あったり、なかったりするんだそうです。正統派の焼き鳥もさることながら、この2つのベーコン巻も、いいですねぇ!
満員の店内に、じっくりと腰を据えて、次々に繰り出される名物の焼き物に舌鼓を打ちてば、地元のみなさんとの会話もまた弾んできます。今回のように常連さんにご案内していただくと、店に入った瞬間から、スッと店にとけ込める。ひとり静かに、その店の雰囲気の中に実を沈めるというのもいいものですが、今回のようにスッととけ込むのも、またいいものですね。地元のみなさんに、とても愛されているお店であることも、よく分かりました。
焼酎のボトル1本が空いて、2時間半ほどの滞在。お勘定は、ふたりで7千円ほど(ひとり3,500円ほど)でした。やぁ、美味しかった。
この支払いとは別に、N條さんが「家族にお土産を持って帰りなよ」と、やきとりと、たたきのタレ焼きを、4本(家族の人数分)ずつ、お土産で持たせてくれました。
「本当はグリルの上にクッキングホイルを敷いて、そこで焼き鳥を温めなおすのがいいんだが、めんどくさかったら電子レンジでもいいや。丼に熱々のご飯をよそって、その上に焼き海苔を敷く。その上に、温めなおした、やきとりと、たたきを乗せれば、焼き鳥丼のできあがりだ。タレも入れてもらってるから、多めにかけてな。家族が喜ぶよ!」
翌朝、やってみたら、まさに家族に大受けでした。温めなおしても、やきとりはその軟らかさを保っているし、大きな長方形の、たたきは、やっぱりジューシー。できたて熱々のご飯との相性もピッタリです。
店内のメニューにも、やきとり重と親子丼があって、それぞれ、みそ汁、つけもの付きで840円。できたての焼き鳥で作った、やきとり重は、すさまじくうまいんだろうなぁ。
人気のお店の、人気の品々。たっぷりと堪能させていただきました。重ね重ね、どうもありがとうございました。>N條さん

お通しの肉じゃがと生ビール / カツオ刺しと馬刺し / 砂ぎも

はつ / やきとり / たたきポンズ

ポテトベーコン巻 / トマトベーコン巻 / 翌日食べた焼鳥丼
《平成19(2007)年8月1日(水)の記録》
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