ノドクロ尽くしで満腹 … 魚料理「竹よし(たけよし)」(都立家政)
「ねぇ、マスター。メニューにあるノドクロ(1,500円)って、1尾丸ごと?」
「そうですよ。ちょっと小さめですけどね」
そう言いながら、冷蔵庫から取り出したノドクロを見せてくれる店主。
「小さいって言っても、これを1,500円で出したんじゃ、まったく儲けがないんじゃないんですか?」
「そうなんですけどね。うちの店で、なかなかそれ以上の値付けはできなくて」
うーん。たしかに、そうかもなぁ。刺身の盛り合わせや、天ぷらの盛り合わせだって1,000円で、それ以外の品は、ほとんど3桁の値段ですもんね。千円を超えてるのは、ノドクロと、アンコウ鍋(1,500円)の2品しかない。
そのノドクロは、姿焼きか、刺身にできるということなので、姿焼きで注文します。
今日は日曜日ながら、三連休の中日(なかび)。なんだか刺身が食べたくなって、開店時刻である午後5時に、「竹よし」にやって来て、瓶ビール(キリンラガー中瓶、500円)と刺身の盛り合わせからスタートしたのでした。
刺身を待つ間のお通し(200円)も、これまた大好物のアン肝。ビールを飲み始めた時点で、すぐに燗酒(菊正宗、350円)を注文したことは、言うまでもありません。このアン肝で燗酒を飲まなきゃ、なんで飲む! ってなもんですね。
アン肝をなめなめ、お酒をやっているところに出された刺身盛り合せは、シマアジ、戻りガツオ、中トロ、生サーモン、そして関サバという豪華5品盛り。それぞれ3切れずつ盛られているので、通常はこれだけ注文したら、もう十分っていうほどの量なのです。
この刺身盛り合せは、天ぷら盛り合わせと並ぶ「竹よし」の名物品のひとつ。
「ほっといても、どんどん出るんだから、もう少し値段を上げるか、刺身の量を減らせば?」
と気遣う常連さんも多いのですが、店主はガンとして、この価格、この量を維持しているのです。
そんなたっぷりの刺身に、やっと「刺身が食べたい!」という発作(?)もおさまり、おもむろに他のメニューを眺めているときに、冒頭に紹介したノドクロ(アカムツ)に気付いたのでした。
焼き網を強火の遠火において、まずはノドクロの表面を焼き、あらかじめ予熱した魚焼きグリルに入れて仕上げていきます。
「業者さんからも、よくサラマンダー(上から加熱できる調理器具)をすすめられるんですが、なにしろ店が狭いので置けなくてねぇ」
コンロやグリルを、うまく使い分けながら魚を焼いてくれるのは、そういう理由だったんですね。
さぁ、できあがりました。ノドクロの姿焼きです。焼き魚の王者・ノドクロは、箸で持ち上げた身が、テカテカと照り輝くほどの脂ののりで、口に入れると、もうトロトロ。たまりませんなぁ。
「いやぁ、きれいに召し上がりましたねぇ。残った頭と中骨のところをスープにしましょう」
と店主。しばらくして出された小鍋には、きのこや小柱なども追加されていて、それだけで何杯もお酒が飲めるようなスープに大変身。いやぁーっ。これは嬉しいなぁ。お酒も、おかわり、おかわり!
口開けに、ひとりでやってきて飲み始めたのに、ひとり増え、ふたり増えと、お客さんも増えていき、すでにカウンターはいっぱい。午後8時過ぎに、近所に住む酒友、となおとんさんと、ふじもとさんの二人がやって来たところで、一緒に後ろ側のテーブル席に移動します。
なおとんさん、ふじもとさん組も、さすがに目ざとくノドクロを発見し、「半分刺身で、半分焼き魚」というオーダー。他のお客さんもノドクロを注文したので、仕入れていた、すべてのノドクロが完売です。
横から、ひと切れいただいた、ノドクロの刺身。これもまた脂がのりまくりで、トロトロです。なるほど。焼いても、生の状態のトロトロ感を失わないのが、ノドクロの特長なんですね。焼いて熱が通ることで、身の香りや味わいがふくらむから、ものすごく美味しく感じるんだ。
さぁ、たっぷりと汁(つゆ)を残して、ノドクロのスープも食べ終わりました。さっき、これを出してくれたときに「汁が残ったら、あとで雑炊もできるからね」と言ってくれてたので、汁を大事にしながら食べてたのでした。今日は、まさにノドクロ尽くしですね。
大満足、大満腹で、ノドクロ雑炊を食べ終わったのは、午後11時。シェーッ、三連休の中日とはいうものの、6時間も飲んじゃいましたか!
「あと1時間ほど飲んでれば、開店時刻から閉店時刻まで、ずっと居たことになるのに。今まで、そんな人はいなかったから、もうちょっと頑張ってみる? 新記録だよ」と店主。
うーん。残念ながら、もう食べられないし、もう飲めません。
たっぷりと6時間分のお勘定は4,800円。なおとんさんや、ふじもとさんをはじめ、店内のお客さんたちに「お先に!」と、あいさつして、フラリフラリと家路についたのでした。あぁ、美味しかった。
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