深化した居酒屋(1) … 居酒屋「井のなか(いのなか)」(錦糸町)
薩摩豚レバ刺し
8月の築地「やまだや」に続いての、築地王・小関さんやくにさんとの飲み会は、錦糸町の居酒屋「井のなか」です。
錦糸町は、WINS(場外勝馬投票券発売所)のある街でもあります。WINSのある街は、いい酒場があることが多いのです。浅草しかり、新橋しかり、野毛(横浜)しかり。WINSの存在を許すような街の空気が、大衆酒場の存在も、おおらかに許してくれるんでしょうね。
「井のなか」は、そんな大衆酒場の街、錦糸町に昨年(2006年)の3月にオープンした、いわゆる「深化した居酒屋」。この「深化した居酒屋」というのは、太田和彦さんの造語で、これまでのオヤジ居酒屋とは一線を画した「モダン和風の店内でおいしい日本酒と創作料理を味わう」という、レストラン感覚の居酒屋のことです。
「井のなか」については、「日本酒ソムリエが通う東京のizakaya」の著者・神沢柚実子さんが、その開店までの記録を、ご自身のブログの1カテゴリとしてご紹介されていますので、そちらをご覧ください。
そして、今日、紅一点で参加してくれたのは、神沢さんと同じく、開店前からこの店に関わっていて、開店日には店のお手伝いもされたという、利き酒師・いずへいさんです。
店内は、入口の正面から左手にかけて、コの字カウンター20席ほど。そして右手に掘りごたつ式の座敷席が14席ほど。掘りごたつ席は2人用テーブルがずらりと並んだ形になっていて、予約人数に応じてそれを組み合わせていく仕組み。今日は手前から6席、4席、4席にセットされていて、我われ4人は、まん中のテーブルを囲みます。
席の予約とともに、お料理のほうもお願いしてくれているのだそうで、あとは何も考えずに、楽しく飲んで食べるのみ。まずは生ビールで乾杯です!
あらかじめ席上に用意されていたのは、青のり豆腐やポテトサラダ、野菜煮、アボカドとトマトのサラダなどの小鉢物9点。その中のひとつ、鮑(アワビ)の肝の即製塩辛は、ものすごく濃厚で、ぜひ日本酒に合わせたい味です。
前菜9種に続いて出されたのは、この店の名物のひとつだというレバーペースト(1人前650円)です。一緒に出されたバケットに塗りつけるようにしていただくと、これがまた、いいつまみになります。
さっきの前菜9点盛りのときにも、「私なんか、この9品で十分なくらいだなぁ」と思ったものですが、このレバーペーストも、バケットがたっぷりと(15切れほど)付いていつので、これだけでかなり長く飲めるほどです。
しかし、今日はグルメ系ブログを書かれている健啖家がそろっているので、これだけの食べ物も、あっという間になくなっていきます。見ていても気持ちいいですねぇ。
生ビールを2杯ほどいただいたあとは、燗酒に切りかえます。銘柄は、店主の工藤さんにおまかせすることとして、おすすめの燗酒を出してもらいます。
最初に出してくれた濁り酒(燗)は、静かに注ぐと荒々しい味に、高いところから注ぐとマイルドな味わいになるのが、私が飲んでもわかるくらいのお酒。「どうですか!」と言いながら、両方を並べてくれた工藤さんは、「どう飲めば美味しいかと、いろいろとやってみてるときに気づいたんですよ」と、その発見ができたことが、とてもうれしそうです。本当に日本酒が好きなんですねぇ。
続く料理は、深紅のレバ刺し。かけられたオリーブオイルの淡い緑色とも相まって、とてもきれいです。
「薩摩の黒豚のレバーなんですよ。残念ながらレバーがいい豚は、肉はあまり良くないんですねぇ。あとで肉もお出しする予定ですが、それは別の豚のものです」
と説明してくれる工藤さん。このレバーは、本当に濃厚そのものです。
里芋は、皮ごと焼いた大ぶりのものが、ひとりに1個ずつ。皮を剥いて、塩をつけて食べるだけというシンプルな料理なのに、焼きたてホクホクの里芋のうまいこと。
続いて出された刺身盛り合わせは、サバ、カツオ、カンパチ、サンマの炙りの4点盛り。
「やっぱりなぁ。築地の市場でも、今はマグロが良くないんですよ」
と築地王・小関さん。刺身盛り合わせの中に、東京の酒場の華であるマグロが入ってないのは、そういう理由なんですね。あとで店主の工藤さんも「マグロは今、ダメですねぇ」と同じことを話してくれました。
・店情報 (同じときの「いずへいのうまいもん日記」)
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