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できたて絶品シメサバ … 居酒屋「鳥八(とりはち)」(鷺ノ宮)

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「今日はマスターが釣ってきた釣りサバがあるんですよ。今、ちょうどシメ終わったところですけど、いかがですか?」

 瓶ビール(サッポロ黒ラベル中瓶、530円)を飲みつつ、メニューを選んでいると、おかみさんから、そんな声がかかります。なんと、なんと。釣りサバですか! それはぜひ、いただきましょう。

 うちの近所にある居酒屋「鳥八」は、外から見ると、まるであばら家ながら(失礼!)、一歩店内に入ると、凛(りん)とした空気が漂う、この地域の名店なのです。今日も、カウンターのこの1席を除いて、すでに予約でいっぱい。ふたりで切り盛りする店主と、おかみさんも、予約客の食事の支度に、おおわらわの状態です。

 シメサバも、そんな準備の一環として作っていたもののようです。予約のお客さんたちは、まだ誰も来ておらず、店内の客は私ひとりの状態。みなさんに先んじて、まっ先に今日の釣りサバのシメサバをいただくことになりました。

 出されたシメサバは、大きな6切れ。中心はピンクで、そこからグラデーションで白くなる美しさ。皮の厚みもしっかりとしていていいですねぇ。ちょいと山葵(わさび)をのせて、醤油をちらりと付けて口に入れると、ウワァーッと広がるサバのうまみ。ックゥーッ。たまりませんなぁ。

「日本酒を、今日は冷酒でください。どれがいいですかねぇ」

 この店では、燗酒(小360円)を飲むことが多いのですが、今日のこのサバには、冷酒のほうが合うように思えたのです。冷酒は「八海山」、「久保田・千寿」、それと「越後杜氏(純米)」の3種で、それぞれ1合650円。

「この「越後杜氏(えちごとうじ)」は、店主の故郷のお酒なんですよ。いかがですか」

 と、おかみさん。寡黙な店主は、いつもと同じように、一所懸命調理している顔をちょっとあげて、ニコニコと笑顔を向けてくれます。

「じゃ、それをお願いします」

 冷酒は冷蔵庫で冷しているのではなくて、室温で保存しているものを、注文を受けてからガラスの徳利に注ぎ、その徳利ごと、氷水が入った小さなバケツに入れて冷やしてくれます。

「冷やしすぎると味がわからなくなるでしょう?」

 と、おかみさん。そうそう。私も、そう思います。キーンと冷えた冷酒は、どのお酒も、同じような味に感じてしまって、ダメなのです。もっと味に敏感な人であれば、この状態でもわかるんでしょうが、私は燗酒なんかのほうが、わかりやすくて好きなのです。

 こうやって冷水で冷してくれると、室温よりはちょっと低いくらいの状態で、お酒が楽しめていいですよね。なるほど、この「越後杜氏」はマイルドな口あたりだけど、日本酒らしい(麹っぽい)香りと味わいで、魚にもよく合います。

 店主ご夫妻は、もともと赤坂にあった飲食店で働いていたそうなのですが、バブルがはじけた頃に、その店が閉店。そのときのメンバーが各店の商号を継ぐことになり、店主は「鳥八」という屋号をもらって、ここに店を構えたのだそうです。

 名前のとおり、もともとは焼き鳥屋だったのですが、魚好きの店主が魚を釣ってきたり、おかみさんの田舎から野菜を送ってもらったりするうちに、自然と今のように、魚も野菜も出すようなお店になっていったのだそうです。

「でも、創業の原点である焼き鳥とウナギは、今も必ず置いてるんですよ」

 と、おかみさん。なるほど、ウナギも創業時からあるんですね。今日のメニューの中ではウナギが最高値で、「浜名湖産・うなぎ蒲焼(大)」が1,400円です。

 「越後杜氏」をおかわりして、

「今まで食べたことがないもので、おすすめのものはないですか?」

 と、たずねてみたところ、

「鳥皮ネギ塩炒め(700円)なんてどうでしょう。人気がありますよ」

 ということで、そのおすすめに従います。

 この店は、魚は店主が、その他の炒め物などは、おかみさんが調理してくれるので、今日は店主のシメサバと、おかみさんの鳥皮ネギ塩炒めをいただく、ということになりますね。

 鳥皮ネギ塩炒めは、その名のとおり、鳥皮とネギを炒めて、塩で味付けしただけというシンプルなもの。ネギに加えて、ミョウガも入っていて、これがまたいい味を出しています。ミョウガって、炒めても美味しいんですね。

 午後6時半になって、予約のお客さんたちが来はじめたところで、私はボチボチと腰をあげることにします。開店の5時から、1時間半の滞在は3,830円でした。

 お通し(今日はイワシの生姜煮)が、たしか500円なので、釣りサバのシメサバは800円だったんですね。今まで食べたことのあるシメサバの中で、一番おいしいと思ったシメサバでした。どうもごちそうさま。

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「鳥八」 / お通しのイワシ / 「越後杜氏」冷酒

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キノコの煮物 / 店内の様子 / 鳥皮ネギ塩炒め

店情報前回

《平成19(2007)年9月17日(月)の記録》

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コメント

浜田さん、こんにちは~

こむこむです。なんとご近所なんですね。
川沿いに週末ジョギングしていて、いつも
気になっていたお店なんですよ。

岩がきとか表の品書きに書いてあったりして。

今度、行ってみたいと思います。

投稿: こむこむ | 2007.10.28 17:41

>こむこむさま
コメントありがとうございます。
外から見ると、まるであばら家(失礼!)なのに、中はピシッとした空気が流れていて、隠れ家的な雰囲気の中で、美味しい魚が食べられる名店だと思います。

投稿: hamada | 2007.11.24 14:18

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 西武新宿線・鷺ノ宮(さぎのみや)駅を南側(改札口を出て左側)に降り、目の前の橋を渡りきったところを左へ。そのまま川(妙正寺川)に沿ってトコトコ、トコトコ歩くこと15分ほど。左手に鷺宮製作所の建物がある右手の橋のたもとに忽然と現れるのが老舗の居酒屋「鳥八」です。  8月15日にも関わらず、金曜日・午後7時過ぎの店内はなんと満席状態で、かろうじて空いていたカウンターの一番手前側の席に座らせてもらいま... [続きを読む]

受信: 2008.09.28 12:35

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