和服で蕎麦を愉しむ会 … そば「和邑(わむら)」(目白)
先日、「井のなか」で飲んでいたときに、いずへいさんからお誘いを受けたのが「和服で蕎麦を愉しむ会」。その名のとおり、和服を着てお蕎麦を食べることを愉しもうという集まりなのだそうです。しかし、残念なことに、私は和服は持っていません。
「大丈夫です。和のモノを取り入れた服装であればいいんです」
という、いずへいさんの言葉で、扇子(せんす)をパタパタさせながら参加することに決定。会場は、目白からも、池袋からも歩くと15分ほどかかる路地の中にある蕎麦屋「和邑」です。
集まったのは、「和服で蕎麦を愉しむ会」のみなさんに、「江戸ソバリエの会」のみなさんの合わせて15人ほど。本格的な和服姿の方も半数くらい居て、和食(蕎麦)を楽しもうという雰囲気たっぷりです。
店内は左手のテーブル席2卓と、小上がりの座敷2卓の、合わせて20席ほどという、比較的小さな造り。お店の方は「座敷の2卓をくっつけて10人。残りはテーブル席で」ということで、ゆったりとした空間を用意してくれていたのですが、
「詰めれば、みんな座れそうですよ。乾杯だけでも全員そろってやりましょう」
と、最初のビール(エビス中瓶)で乾杯。その後も、そのままみんなで座敷席に落ち着きます。狭くても、みんなで1個所に居たほうが話もはずみますもんね。
今回の「和服で蕎麦を愉しむ会」の会費は、料理に乾杯のビールが付いて、ひとり5千円。それ以降の飲み物は追加で支払う仕組みです。
まずはあらかじめテーブル上に並べられている料理に手を伸ばします。
笊(ざる)に持られているのは、そば屋の定番のつまみ、揚げそばです。細切りのそばを、そのまま油で揚げたもので、お通しとして出されることも多い一品です。ポリポリと香ばしい歯応えにビールも進みます。今日の揚げそばは、芥子切り(芥子を練り込んだ蕎麦を細切りにしたもの)なんだそうです。
板わさも、これまた、そば屋の定番。元々、そば屋のつまみは、そばの具を流用するところから始まったんだそうです。この板わさの蒲鉾は「おかめそば」の具です。他にも、たとえば焼き海苔は「花まき」や「ざるそば」の具だし、天ぷらや鴨肉だって、それぞれ「天ぷらそば」や「鴨南蛮そば」の具。こういうのを肴(さかな)に、そば前の酒をチビリといただいて、しめに「もり」でもサッとたぐる、というのが昔からの飲み方だったんですね。
ひとりが「お酒(日本酒)をもらおうか」と言い始めると、他のみんなも、ワレもワレもと日本酒の注文です。別に用意された日本酒のメニューから、「久保田・千寿」に「越の方舟」「雪中梅」を選ぶと、それぞれ違う形の酒器に入れて、どのお酒か分かるようにしてくれます。
蕎麦味噌も、そば屋ならではの肴で、しゃもじに塗り付けた蕎麦味噌に、斜め斜めに筋目をつけて、うっすらと焦げ目がつく程度に炙ったもの。これを箸でちょっとずつ、つまんでは、お酒をチビチビといただくのです。
まるで寒天か蒟蒻(こんにゃく)かといった感じの、うす灰色っぽい色合いで、つややかに光るのは蕎麦豆腐なんだそうです。
「稲荷(いなり)かと思ったら、蕎麦寿司だよ」
という感歎の声に、私もさっそく1個、その稲荷寿司を。パクリとかじると、たしかに中は蕎麦寿司だ。これもいいですねぇ。
続いて出されたのは、クレープ?
「そば粉で作ったクレープです。一緒に盛ってある具をくるんで、お食べください」
へぇ。これは初めてですねぇ。クレープの横には鴨のローストやプチトマト、レタスや細長い状態で切られたネギなどが添えられています。これらを、そば粉のクレープでくるんで、いただきます。和服のみなさんがクレープをかじってる姿も、なんだか楽しいですねぇ。
玉子焼きもまた、「そば屋の玉子焼き」とも言われるほど、そば屋の看板メニューのひとつ。これまた、お酒が進んで仕方がない一品です。
集まったメンバーの中には、年間の外食軒数が千軒以上で、しかもその千軒が、人もうらやむ店ばかりという方や、年間4~500軒ものそば屋に行き、パラオやボルドーでも、そばを打ったというソバリエの方。さらには、いろんなものを自分で作るのが好きで、ウイスキーやビールなども自分で作ってしまうほか、そばも、普通のそばでは飽きたらず、バニラ切りやモルト切り、ビール切りといった珍しい変わりそばを作っている人などもいて、個性豊かです。
登場したのは、鴨肉の串焼き。鴨肉、ネギ、鴨肉の3つが1本の串で焼かれています。「鴨ネギ」とは、よく言ったもので、これがまた合うんですねぇ。
みなさん、お酒も猛烈に強くて、出してもらった徳利が、あっという間に空いていく。
「めんどくさいから、一升瓶のまま出してくれてもいいんだけど」
なんて声も聞こえてきます。
最初のうちは、どれがどのお酒か、しっかりと判別できてたんだけど、すでに自分の盃(さかずき)に、どのお酒が入っていたかも定かではない状況。「まぁまぁ」と勧められるままに、どのお酒だって「いやいや、こいつはどうも」と盃を差し出しているので、いろんな名酒のブレンド状態になってるに違いない。
どーんと大皿で出されたのは天ぷらの盛り合わせです。内容は海老、しめじ、さつま芋、ししとう、など。しめじの天ぷらって、珍しいなぁ。
鴨も天ぷらも、そば屋の肴の高級品。まさに、盆と正月とが、いっぺんにやって来た状態です。
そして最後はもちろん、新そばの「せいろ」です。北海道空知地方でとれた新そばなんだそうです。「おかわりは、ないのー!?」という声も飛び交いますが、残念ながら、「せいろ」は今出されている分(ひとりあたり2盛り分)だけで終了だそうです。あとを引く美味しさですねぇ。
つけ汁を、そば湯でのばしたものを肴に、残ったお酒を全部いただいたら終了です。
おいしい料理、楽しい時間も、もちろんですが、和服のみなさんの出で立ちも、とてもいい肴になった、今宵の「蕎麦の会」でした。どうもありがとうございました。
蕎麦味噌 / 蕎麦寿司(いなり風)と枝豆 / 芥子切りの揚げ蕎麦と野沢菜漬
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