深化した居酒屋(2) … 居酒屋「井のなか(いのなか)」(錦糸町)
かくま豚の鍋
濁り酒の燗に続いて、次々に出してくれる燗酒も、それぞれしっかりとしていて、ワインで言えばフルボディといったタイプ。レバーにもけっして負けなかったし、刺し盛りのときに出してくれた燗酒もまた、刺身といいバランスです。燗の温度も、お酒によって微妙に変えてくれているようです。
そして出されたのは、暑い日なのに鍋!
中身は12時間煮込んで作ったという、豚肉の骨付きブロックです。本当に大きなひと塊(かたまり)が鍋の中央にドーンと鎮座しています。たっぷりの空芯菜が一緒に茹でられている外観は、まるで常夜鍋のよう。
「こういうのをバラすのが好きなんですよ」
と言いながら、築地王・小関さんがナイフとフォークを器用に使って、豚肉の塊をバラしてくれます。スープの味がよく染み込んだ豚肉は、脂肪のプリプリのところも実にうまいっ。これはまさに和風アイスバインですね。豚肉は、茨城の鹿熊さんが育てた「かくま豚」という豚のものなのだそうです。
さらには、同じ「かくま豚」のローストです。
「100度で1時間くらい焼くと、きれいなピンクに焼きあがるんですが、豚肉でピンクだと嫌がるお客さんもいるので、もうちょっと火を通しています」
と店主の工藤さん。それでも十分きれいなピンク色ですけどねぇ。添えられたニンジンがまた、野趣あふれてて、いいのです。
たっぷりと食べたあとは、まだまだ燗酒をいただきながらの歓談タイム。
「築地の店もいろいろと行ってみたいんですけど、有名店は、ものすごい行列になっていることが多くて」
と語る、利き酒師・いずへいさんに、
「行列の店は、それでも行列して入ってみて、はじめてその店のことを語ることができるようになるんです。築地には、人が行列するだけのことはあるなぁ、と思わせてくれるお店が多いので、行列しても行ってみるべきだと思いますよ」
と答える、築地王・小関さん。
そういえば、ここ「井のなか」も、今や非常に予約が取りにくい店なのだそうで、今日も、カウンター席、テーブル席ともに、ずっと満席状態です。
そうやって歓談している間も、燗酒はいろいろと銘柄を変えながら次々に出続け、料理のほうもカマンベールチーズフライ(1人前730円)や、子うるか(アユの卵巣の塩辛)、ゲンゲ(幻魚)の干物を炙ったもの、さらには黄色いジャガイモ(インカのめざめ?)のフライなどを出してくれます。なんと大贅沢な飲み会でしょう。
そろそろ時刻も午後11時半が近くなり、ラストオーダーとして注文したのは、シメの能代(のしろ)うどんです。刻みネギ、刻み海苔がトッピングされた、極細麺の能代うどんは、まるで冷麦のような感じ。冷たい出汁もおいしくて、満腹以上に満腹の状態なのにスルスルと食べることができてしまいます。
この能代うどんは、稲庭うどんや本庄うどんなどと同じく、秋田のうどんのひとつだそうです。秋田のうどん文化もすばらしいですね。
その能代うどんも食べ終えて、お勘定は4人で32,460円(ひとりあたり8,115円)。あんなに食べて、あんなに飲んだ割りには安いなぁ、という印象です。(確実に、ひとり1万円は超えるものと思ってました。)
深化した居酒屋は、呑ん兵衛が軽く飲み食いするにしては高いので、あまり足を踏みいれたことがなかったのですが、和食の店やレストランなどで飲み食いするよりも、はるかにコストパフォーマンスがいいんじゃないかと思います。そういうところが、「深化した居酒屋」に人気が集まっている主要因なのかもしれませんね。今日、「井のなか」の料理と、お酒をいただいて、改めてそう感じました。
どうもごちそうさま。ご一緒いただいたみなさん、楽しい時間をありがとうございました。また次の機会を楽しみにしています!
かくま豚のロースト / カマンベールチーズフライ / 子うるか
・店情報 (同じときの「いずへいのうまいもん日記」)
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