金曜日は古漬けの刻み … 酒亭「北国(きたぐに)」(中野)
中野駅南口の小さな路地の中に、毎日、常連さんたちが集う店、「北国」があります。今年で創業50年ですので、開店したのは昭和32(1957)年のこと。
カウンター8席、テーブル4席、小上がり4席の小ぢんまりとした店内は、今日もやっぱりカウンターは満席模様。かろうじて空いているのは、カウンター中央部の特等席、1席のみ。
「いらっしゃい。ここへどうぞ」
と、女将(ママ)さんが、その席を指し示してくれます。
この席がなぜ特等席かというと、この空間のど真中に1本だけある柱が、この席のすぐ後ろにあって、そこにもたれかかることができるからなのです。そのため、たいていの場合は、この店が開店したころから通い続けている大常連さんが座っていることが多い、私のような新参者には、ちょっと恐れ多い席でもあるのです。
遠慮がちに、その席に腰をおろし(諸先輩たちがずらりと並ぶ中、もちろん、後ろの柱にもたれることなんて、できません!)、ウイスキーの水割りを注文すると、今日のお通しは、なんと、もつ煮込み。これは珍しいですねぇ。
「寒くなったから、作ってみたのよ。おでんが始まるのは来月からだからね」
店を手伝っているユミさん(女将さんの姪)が、そう話してくれます。この店の名物でもある、おでんは、毎年11月10日から始まると決まっているのです。
ウイスキーは、サントリーホワイト。氷入りの大ぶりのグラスに、レモンスライスを1切れ入れて、計量用の小グラスでホワイトを注ぎ、水道水を入れてかき混ぜたらできあがり。このなんでもない、まるで単身赴任寮で飲むような水割りが、妙においしく感じるんですよねぇ。店の雰囲気のなせる技か、それとも料理のなせる技か。熱々のもつ煮込みもうまいよなぁ。
この店は、カウンター席以外は、どっちかというと補助席的な位置付けで使われることが多くて、ほとんどのお客さんは、ひとりでやってきてカウンター席に座ります。最初に書いたように、長年通っている常連さんが多いので、店内はまるで親戚、兄弟同士で話をしているような感じで、店全体で、ワイワイと楽しく会話が進行していくのです。
そんな常連さんたちの会話もつまみに、水割りをおかわりすると、グラスにはレモンスライスが1枚追加されます。
水割りの杯数は、レシートにチェックされてますし、レモンスライスは「入れないで」と言っておけば、レモンスライスなしの水割りを作ってくれるので、レモンスライスの数で杯数を確認しているわけではないようです。でも、(ウイスキーを注文する)たいていの人は、レモンスライスを入れてもらってるので、そのレモンスライスの枚数を見ただけで、その人が何杯飲んでるかが、だいたい分かるのでした。
「白菜漬(300円)をください」と注文すると、
「今日は金曜日だから、古漬けの刻みがあるわよ。普通の白菜漬でいいの?」と確認してくれるユミさん。
「そうなですか。じゃ、古漬けの刻みのほうをお願いします」
この店は、土日が休みなので、金曜日になると漬物各種を小さく刻んで出してくれるのだそうです。これ自体、ちゃんとした名称のつまみだったのですが、なんていう名前だったか失念してしまいました。
この古漬けの刻みが、これまた、やたらおいしくて、水割りもさらにもう1杯、おかわりです。
約1時間半の滞在は、ウイスキーの水割り3杯に、もつ煮込み(お通し)と、古漬けの刻みで、1,650円でした。どうもごちそうさま。
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