嘉永3年創業の超老舗 … 立ち飲み「鈴傳(すずでん)」(四ツ谷)
四ツ谷方面での仕事を終えて、久しぶりにやってきたのは、酒屋としての創業は江戸時代末期の嘉永3(1850)年という超老舗、「鈴傳」です。
古い酒屋の左端にある、知る人ぞ知る扉を開けて、左側の壁に張りつくように作り付けれた立ち飲みテーブルの並ぶ細長い通路を進むと、その奥がドーンと広がる立ち飲みスペースになっているのです。
火曜日、午後7時の店内は、立ち飲みカウンターも、立ち飲みテーブルも、まだ若干の余裕がある状況。
立ち飲みカウンターの一番手前にある注文場所で、小瓶のビール(キリンラガー、350円)と刺身(350円)を注文し、支払いを済ませて、立ち飲みカウンター中央部の、やわらかく弧を描いたところに陣取ります。
地酒が安く楽しめるこの店ながら、最初はやっぱりビールですね。小瓶は350mlで、きれいに泡立てながら注いで、ビアタンに3杯分程度。飲みはじめの喉潤しにちょうどいいのです。プハァーッ。今日の仕事が終わった感じがしますよねぇ。この瞬間が一番好きです。
喉が潤ったところで地酒ですね。
「燗で飲めるのはどれ?」
と聞いてみると、
「上の段に並んでるものなら大丈夫よ」
とカウンターの中のおねえさん。
地酒のメニューは、注文カウンター横の壁に、上下2段に短冊で張り出されているのです。今日の上の段は、宮城「日高見」(450円)、静岡「正雪」(380円)、富山「満寿泉」(380円)、千葉「腰古井」(380円)、宮城「一ノ蔵」(380円)に、北海道「千歳鶴」(350円)の6種類。これが、ビールメーカーのビアタン1杯にちょっと溢れる量(つまり正一合以上!)の値段なのだから、うれしいではありませんか。酒屋に併設された立ち飲みならではですよね。
そんな中から、『漁師の酒』と注記された、千葉の「腰古井(こしごい)」(380円)を燗で注文すると、カウンターの中では、いったんは冷蔵庫で保存されている「腰古井」を、普通に冷酒でもらうようにビアタンに溢れさせて注いだ後、その溢れた分も含めて、カウンター内の燗づけ器の注ぎ口から注ぎ込みます。その受け皿付きのビアタンを、今度は燗づけ器の下に置き、蛇口を開けると、ちょうどよく燗のついた「腰古井」のできあがりです。
刺身は、ここに来るたびに、だいたいいつも注文している定番の品。最初のころは、立ち飲みカウンターの上にあるガラスケースをのぞき込んで、「マグロください」なんて単品で注文していたのですが、あるとき、常連さんが注文しているのを見てると、単に「刺身!」と注文している。これで、その日の刺身を小皿に盛ってくれるんですね。それ以来、私も真似して「刺身」と注文しているのでした。
今日の刺身はカツオのたたきとネギトロ。横に刻んだミョウガも添えられているのがうれしいですね。醤油を回しかけて、ちょいちょいとワサビを付けながらいただきます。燗酒ともよく合いますねぇ。
刺身をつまんでは、酒を飲み。酒を飲んでは、刺身をつまみ。あっという間に、酒も魚もなくなります。
今日の2杯目は、今度は『由比漁港の銘酒』と書かれた静岡の「正雪(しょうせつ)」(380円)を、これまた燗で注文し、つまみにはガラスケースの中で、私に一番近いところにあった煮物(350円)をいただきます。
煮物は、厚揚げ、つみれ、さつま揚げ、がんもどき、など。具材のひとつひとつが、それぞれ酒に合うのがいいですねぇ。
ちなみに、2段に並んだ地酒のうち下の段(冷酒で飲むのがおすすめ)は、山形「楯野川」(500円)、宮城「撰勝山」(600円)、福島「にごり酒」(600円)、富山「成政」(500円)、栃木「四季桜」(500円)、山形「出羽桜・吟醸生」(600円)の6品です。
となりにやって来た若いおねえさんは、つまみを1品に、地酒(冷酒)を1杯、キューッと飲んで「ごちそうさま」と帰っていきました。店内に15分も居たかどうか。粋(いき)ですねぇ。
それに引き換え、私のほうは、ゆっくりとチビチビと飲み進めて、1時間ほどの滞在は1,810円でした。どうもごちそうさま。
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コメント
こんにちは。
成政酒造の杜氏、シマと申します。
鈴傳には、とんとご無沙汰しております。
と申しますか、東京から遠ざかっております・・・。
その昔、四谷を根城にしていたのが懐かしく思い出されます。
今度は弊社の『純』をいってみてくださいませ。
よろしくお願い申し上げます。
投稿: シマ | 2007.12.04 07:34
>シマさま
「鈴傳」のお酒はどれもおいしくて、いつも感激しながらいただいています。
富山「成政」の「純」、ぜひいただいてみます。
どうもありがとうございます。
投稿: hamada | 2007.12.09 22:40