こんな静けさは珍しい … バー「ブリック(BRICK)」(中野)
中野駅北口の路地の中にあるバー「ブリック」。昭和39(1964)年にトリス・バーとして開店したというこのバーは、今年で創業43年の老舗です。
月曜日、午後9時過ぎのこの時間、1階店内は珍しく先客なし。
酒場が名店かどうかの違いは、こうやってお客さんがいないときに、はっきりとするんですよねぇ。白いジャケットの店員さんたちは、店内の定位置で、それぞれに与えられた役割をこなしていて、無駄口ひとつない状態。ドアを担当するおにいさんは、ずっと店の外の様子を見ていたようで、私が店に近づくと、スッとドアを開けて迎え入れてくれたのです。
お客のいないカウンターは、すべての椅子が、正面に向かって右30度くらいの角度で、ずらりと美しく並べられ、この均整を崩してしまうのが、なんだかもったいないほど。
そのうちのひとつに、右後ろから回り込んで腰をおろし、角度を正面に向けます。
「いらっしゃいませ」
椅子が正面を向いたところで、あったかいお絞りが手渡されます。メニューの飲み物のページを開いて、渡してくれようとするおにいさんに、
「トリハイ(210円)と野菜スティック(400円)をお願いします」
と先手を打って、飲み物と料理を注文。トリハイ(=トリスのハイボール)は、この店の名物なのです。
通常の場合は、手渡してくれる飲み物メニューから飲み物を選んで注文。今度は料理のページを開けて渡してくれるので、その中から食べ物を選んで注文。すると、何品か用意されているお通し(400円)の中から、注文した料理とかぶらないような品物を選んで出してくれる、という流れになります。
まずトリハイが作られ、それを飲み始めたところへ、追いかけるようにお通しの松の実が出されます。
しばらくして出された野菜スティックは、セロリ、キュウリ、ニンジンの3種が、それぞれ3本ずつ。添えられた辛子マヨネーズをつけて、パリッといただく歯応えの心地よさ!
やわらかくBGMの流れる店内は、店員さん同士がおしゃべりをすることもなく、静かに静かに時が流れます。ここの店員さんは、こちらから話しかけると応えてくれますが、自らお客に語りかけることは、あいさつなどを除いては、ほとんどありません。だから、静かに過ごしたければ、こちらが話しかけさえしなければ、いつまでも静かに過ごせるのです。
カランッ
残りわずかなトリハイを飲み干すために、グラスの底を水平以上に持ち上げると、中の氷が移動して音を立てます。これがグラスが空いたという合図になります。
スッと空いたグラスを差し出して、トリハイのおかわりを注文すると、目の前の店員さん(=バーテンダー)は、新しいグラスを取り出して、カクテル用のメジャーカップできっちりと45ml(1ジガー)のトリスを計量してグラスに移し、炭酸水を入れてステア。最後にピッとレモンピールしたら完成です。
そうやってトリハイができていく様子を眺めているのも、また楽しいもの。さすがにバーだけあって、最安値のこのカクテルにも、手抜きはありません。
しかしながら、人気のお店だけに静かな時間は、そう長くは続きません。4人、2人、また4人なんてお客さんが入ってきて、あっという間に1階の店内も、にぎやかになってきました。こういう状態が普段の「ブリック」ですね。
最後にもう1杯、トリハイをいただいて、1時間ちょっとの滞在は1,430円(400円が2品に210円が3杯)でした。
店頭のショーケース / トリハイと松の実 / 野菜スティック
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