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2007年12月

老舗酒場がまたひとつ … バー「羊仔(ようこ)」(中野)

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 いろいろな酒場を飲み歩いていてつらいのは、やっと出逢った酒場が閉店になってしまうこと。これまでにも何度かそういう経験をしましたが、またひとつ、老舗酒場がなくなってしまうのだそうです。

 中野ブロードウェイ西側の路地にたたずむ、バー「羊仔」の創業は、昭和34(1959)年。中野5丁目の一大酒場街の中でも屈指の老舗酒場です。

 創業時はトリスバーとして開店したのだそうで、その当時、トリスのストレートが40円、ハイボールが50円だったと言います。そして、平成19(2007)年現在、各種カクテル1杯が400円という、この値段もまた、中野5丁目にあるバーの中では、一番安いのではないかというバーなのです。

 店は、息子さんが私と同年代(1歳違い)という店主夫婦が切り盛りしています。

 金曜、午後9時半の店内は先客はふたりで、やわらかくS字を描くカウンターの奥のほうに座っています。私はその逆の入口側に座り、店名を冠した「羊仔カクテル」(400円)をいただきます。

 今日、はじめて知ったのですが、“羊仔(ようこ)”というのは、店主のお姉さんのお名前なんだそうです。その羊仔さんが、今年、88歳で永眠されたいうこともあり、店主も、そろそろお店をたたもうという決心をされたのだそうです。

 定年制度のある会社員と違って、酒場の仕事は、自分で引き際を決めなければなりません。

 後継者がいれば、その人に後を任せて、ご本人は悠々自適の隠居生活、なんてことになるんでしょうが、たいていの老舗酒場は後継者難。その人が引退するときが、すなわち店仕舞いのときとなってしまう酒場が多いのです。

「こんばんは。今日も来たよー」

 と入ってきた、いかにも常連さんらしきおにいさんは、ハイボールをちょいちょいと飲むと、

「さぁ、今日も歌うか!」

 とカラオケを開始。レコードや8トラック(←知ってますか?)、そしてカセットなどの、いわゆる古~~いカラオケ装置が鎮座しているのは知ってたけれど、これって使えたんですね。しかも、歌詞カードは手書きだし!

 かけつけで何曲か歌ったおにいさんから、

「ほら、みんなも歌って」

 と歌詞カードが回ってきます。なんとまぁ、きれいな文字ですねぇ。

 今日は居ないんだけど、この店を手伝っている女性がひとりいて、その人が手書きで作った歌詞カードなんだそうです。お店の閉店とともに、この歌詞カードなんかも使われなくなっちゃうのが、もったいないなぁ。よーし。私も今日は歌おう!

 他のお客さんたちや店主夫妻も加わって、飲んで歌って、歌って飲んで。閉店の寂しさを紛らわすかのように、みんなで大騒ぎしながら、中野5丁目の夜は更けていったのでした。

 バー「羊仔」は、12月29日(土)に営業を終えます。

店頭の電灯看板 「羊仔カクテル」 手書きの歌詞カード
店頭の電灯看板 / 「羊仔カクテル」 / 手書きの歌詞カード

店情報前回

《平成19(2007)年12月7日(金)の記録》

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金曜だけの、かくや漬 … 酒房「北国(きたぐに)」(中野)

かくや漬け


「あれ、なんて言うんでしたっけ? 金曜日だけにある、古漬けを刻んだようなの。あれは今日もあるんですか?」

「あぁ。“かくや”のことね。準備はしてないけど、これから作るからいいわよ」

 中野駅南口にある、創業50年の酒房「北国」。7席ほどのカウンター席をメインにして、テーブル席と小上がり席が各1卓ずつの小ぢんまりとした店内は、今日もまた、毎日のようにやってくる常連さんたちでにぎわっています。

 そのカウンター席のまん中あたりに座り、今日は燗酒でスタートです。

 日本酒は「剣菱」「八鶴」「桃川」、そして「新政」とそろっているのですが、銘柄指定をせずに「お酒」と注文すると、「新政」を出してくれます。昔ながらの燗付け器で、1本1本、きっちりと燗をつけてくれるのが嬉しいですね。

 今日のお通しは、鴨のツクネが入ったお椀。外が寒くなってくると、こういう温かいお通しがありがたい。燗酒とともに、芯から身体をあたためてくれます。

 お椀が一段落したところで、この店の冬場の定番、おでんを注文。まずは、玉子、すじ、ちくわぶ、の3品です。

071207a ここの玉子は、殻付きのまま、おでん鍋に入っているのが特徴。ゆで揚げた殻付きの玉子を、おでん鍋の縁にコツンとあてて、殻の一部を割ってから、おでん鍋に投入。そのままクツクツと煮込むと、煮崩れず、殻の剥きやすい玉子に仕上がるのだそうです。熱くて剥けない人には、女将(ママ)さんが殻を剥いて出してくれます。

 すじと、ちくわぶは、東京方面独特のおでん種。関西方面では“すじ”と言えば牛すじですが、関東では魚のすじ(白身魚のすり身+軟骨)のことでした。最近は、関西からの影響もあってか、牛すじも置いているお店が多くなってきていますので、関西では、関東では、という切り口では分けられない状況になっていますよね。ここ「北国」で扱っているのは、今も魚のすじだけです。

 燗酒をおかわりして、2巡目は、がんもどき、つみれ、大根、の3品をいただきます。

 都合、6品のおでんでお腹が満足したところで、3本目となる燗酒をおかわりして、冒頭の、かくや漬けの注文となったのでした。

 この店の肴(さかな)のメニューは、毎日ホワイトボードに書き出される刺身や焼き魚、漬物、珍味などの十数品で、それぞれ300~500円ほど。品数は少ないながら、よく吟味された呑ん兵衛好みのする品々で、常連さんたちを飽きさせないのです。

 毎日、必ずメニューに掲げられている、お新香は、この店の奥の厨房で漬けられている自家製のもの。店は土日がお休みなので、金曜日になって古漬けが余っていると、それを細かく切り刻んで、生姜と混ぜて、かくや漬けを作ってくれるのでした。

 今日の、かくや漬けの中身はキュウリ、大根、ニンジン、ナスなど。これをチマチマとつまみながら、合わせる燗酒のなんとうまいことよ。

 この、かくや漬け、できたて熱々のご飯に載せて食べたり、お茶漬にして食べたりしても美味しそうですよねぇ。

 金曜日だけと言わず、毎日でもメニューに登場して欲しい逸品を楽しんで、2時間弱の滞在は、2,250円でした。やぁ、今宵もまた、満足、満足。

店情報前回

《平成19(2007)年12月7日(金)の記録》

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メニューにはない品々 … 豚料理「味珍(まいちん)」(横浜)

インチキ煮込み


 どの酒場もそうですが、常連さんになればなるほど、いろいろとワガママもきくようになるし、他の人は食べられないようなものを、ちょいと出してもらったりもできるようになるもの。

「今日は味珍(まいちん)で飲む予定です」

 というメールをいただいた、濱の酒場通・iiさんも、「味珍」では「大」の字が5つも6つも付きそうなほどの大常連さん。その大常連さんぶりは、常連さんぞろいで知られる「味珍」の本店2階でも、他の常連さんたち全員が、やって来たとき、帰るときに、店長とともにiiさんにも挨拶するほどなのです。(もっとも、iiさんの場合、「味珍」に限らず、そういう大常連のお店が数多いのです。)

 店に到着してみると、すでにiiさんをはじめとする、5人ほどの飲み仲間が、本店2階の片隅に1卓だけある、小さなテーブル席(本来は4人程度用)を囲んでいるところ。さすがにここには入れそうにないので、カウンターの一番テーブル席寄りの端っこにでも座ろうかとしていると、

「大丈夫。まだ入れるから!」

 とiiさん。カウンター席の椅子を持っていって、ギュッと詰めると、こんな小さいスペースに6人が座れちゃいました。ここに6人座ること自体、すでに大常連さんならではの技なり。

 まずは、かけつけで瓶ビール(キリンラガー中瓶、500円)をもらって乾杯。他のみなさんは、すでにヤカン(焼酎のこと、350円)に進んでいます。

 小皿に練り辛子と酢、そしてラー油を溶いたら、すでにテーブルの上にずらりと並んでいる豚の胃、耳、尾、舌(各700円)や、中国風の白菜漬物、辣白菜(ラーパーツァイ、300円)をいただきます。大勢で来ると、いろんなものが食べられるのがいいんですよね。

 こういう普通のものの中にも、常連さんならではという品物が混ざっているのです。それは舌(タン)。この店で、普通にタンをたのむと、薄くスライスしたタンが出されるのですが、目の前にあるタンは、小さく立方体状にカットされたもの。この切り方自体は、それほど常連さん度が高くなくても、「タンをぶつ切りでお願いします」と注文すれば、やってもらえるのだそうです。

 今回は、そのタンのぶつ切りを、腐乳(ふにゅう、150円)をお酢で溶いたタレでいただいているのです。iiさんたち、常連さんは「石井バージョンでね」と注文されるのですが、これは、もともと石井さんという常連さんが開発(?)したタレだから、そう呼ぶようです。

 これだけは、なかなか真似できません。というのも、石井さんご自身が、この店の大常連さんであり、お店にもしょっちゅういらしているからです。ご本人がいるのも気づかないような状態では、「石井バージョンで!」と注文するわけにはいきませんもんねぇ。

 「味珍」の豚は、独自の醤油ベースのタレで長時間煮ることで、香辛料を使うことなく内臓肉独特のクセを取っているのが特徴なのですが、その分、味わいも比較的あっさり目。石井バージョンのタレでは、これに腐乳ならではのコクが加わって、味わいが深くなるのです。

「頭(カシラ)のぶつ切りもおいしいんですよね」

 と、カシラ(700円)も、ぶつ切りで追加注文。これも通常はスライスで出されるものを、ぶつ切りにして出してくれます。

「ここの牛もつ煮込み(550円)は食べたことありますか?」

 と、iiさん。

「いや。前に牛すじ(450円)はいただいたんですけど、煮込みは、まだ食べたことがないんですよ」

「そりゃ、ぜひ食べたほうがいいですよ。えーと、煮込みをひとつと、今日はインチキ煮込みはできるの? できれば豚足2つと尻尾1つで!」

 と、さっそく注文してくれるiiさん。煮込みは、1階にある大鍋で煮込まれているそうなのですが、そこから小鉢に盛られた1人前の煮込みと、インチキ煮込みを作るための小鍋いっぱいの煮込み汁が届けられます。

 牛もつ煮込みは、牛のシマチョウあたりをじっくりと煮込んだもので、大きめに切られた豆腐もいくつか入っています。味はけっこう濃い目ですが、汁まで完飲できるくらいの濃さ。ヤカン(350円)にもよく合います。

 そして出されたインチキ煮込みは、先ほどの小鍋いっぱいの煮込み汁で、カットした豚足や尻尾を煮込んだもの。もともとが醤油ベースでじっくり煮込んだものを、冷ましていただく、この店の豚足や尻尾。煮込み汁に入れてさっと煮るだけで、よく煮込まれたあとの、トロトロの状態になってしまうんですね。やぁ、これは表メニューであるとうれしい一品です。特に豚足が、驚くほどうまいっ。

 このインチキ煮込みは、店の忙しさなどによってもできたり、できなかったりすることがあるのだそうで、iiさんほどの大常連さんでも、いつでも食べられるとは限らない一品のようです。

「馬刺し(800円)や皮蛋(ピータン、300円)も食べてみたいな」という声に、

「馬刺しと、ピータンはサラダと盛り合わせてもらえる?」

 と注文をするiiさん。そのままピータンをもらうよりも、くらげサラダ(350円)と一緒に盛り合わせてもらうのがオススメなのだそうです。

 なるほどなぁ。おいしく飲み食いするためには、こうやって店にあるいくつかのメニューを組み合せてみたりする工夫も必要なんですね。

 そういえば、うちの近所の「やき屋」でも、冷奴にイカ塩辛を載せて食べたり、珍味わた和えのタレにイカ刺身を絡めて食べたりと、常連さんたちはいろんな工夫をされてますもんね。

 そうやって工夫した品物が、先ほどの「石井バージョン」のように、その開拓者の名を冠して呼ばれるようになれば、常連冥利に尽きると言うものです。

 たっぷりと飲んで、食べて、3時間近く過ごしても、ひとりあたり2千円程度ずつというお勘定。人数が多ければ多いほど、いろんなものが安価に楽しめるお店です。

 大勢で来る場合は、向かい側にある新店2階が、「味珍」4店舗の中で一番大きい(テーブル席が多い)お店ですので、そちらを目指すといいかもしれません。

 ただし、この店に限らず言えることですが、常連さんが開拓されたメニューの数々は、常連さんと一緒のときか、何度も通って自分も常連さんになってから注文したほうがいいと思います。

 さて、横浜。これだけの人数が集まって、「味珍」だけでおとなしく終わるはずもなく、このあとさらに石川町の「車橋もつ肉店」から、野毛の「福田フライ」へとハシゴして、木曜日とは思えないほど、たっぷりと飲んだのでした。

 一部のメンバーは、「福田フライ」を出たあとも、さらにどっかに向かっていたような……。(爆)

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カシラぶつ / 牛もつ煮込み / 馬刺し

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ピータン&くらげサラダ / 「車橋もつ肉店」 / 「福田フライ」

店情報前回

《平成19(2007)年12月6日(木)の記録》

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里いも煮はホクホクと … 居酒屋「金田(かねだ)」(自由が丘)

里いも煮


 自由が丘の名店、「金田」にやってきました。昭和11(1936)年創業のこの店は、今年で創業71年の大老舗です。

 午後6時半の店内は、平日ながら、ゆるやかにいっぱいですが、そこは独り呑みの気楽さ。ダブル「コ」の字カウンターの一角に空いている隙間に入れてもらって、燗酒(菊正宗、420円)を注文すると、すぐに冬場の定番お通し(サービス)である、ミニスープ豆腐が出されます。

 その燗酒を手酌で注いで、まず1杯。……あぁ、身体中に染み渡りますねぇ。

 お酒が染み渡ったところで、カウンター上に置かれたメニュー(手書きでA3用紙にコピーされているもの)を手にとって、ずらりと並んだ百品目近いメニューを確認します。

 ここは居酒屋と和食屋(割烹)の中間的な感じの料理がそろっていることでも知られており、今日もカキ山椒焼き(840円)や、カキおろし煮(840円)、穴子煮こごり(700円)、ウニ煮こごり(750円)、フグぬた(700円)、マグロぬた(650円)、魚の子煮(530円)、カニとも和え(530円)、イカ塩辛(530円)、ホヤ塩辛(420円)、フグ皮の酢物(600円)といった、呑ん兵衛心をくすぐる品々が並んでいます。

 そんな中から、いかにも冬らしい一品、能登産のナマコ酢(400円)を注文します。

 ナマコ酢は大好物のひとつで、呉(広島県)に住んでる頃は、冬になると同好の独身寮生と連れだって、わざわざナマコ酢を食べに出かけていたものでした。こちら(東京)に来ると、ナマコ酢はちょっと高級っぽい食材なのか、大衆酒場ではあまりお目にかからないんですよねぇ。

 んー。紅葉おろしもピリッと効いて、ポン酢の酸っぱさの中に、コリコリとしたこの食感がいいではありませんか。燗酒とも実によく合いますねぇ。

 となりに座っているカップルも、

「たくさんあり過ぎて、困っちゃうよねー」

 と言いながらメニューを選んでいます。

 高いものは高く、そして安いものは安く。それでいて安くても、うまいっ、というのがこの店のメニューの特徴。今日のメニューの最高値は、トラフグ刺身とスッポン鍋の2品で、それぞれ2,000円。でもまぁ、2,000円と言われても、さもありなん、といった感じの食材ですよねぇ。

 逆に最安値は、焼き鳥(1本150円)と、つくね(1本160円)を別格とすると、自家製・切干大根の350円。切干大根も「自家製」と言われると、なんだか食べてみたいと思わせますよね。

 そうだ。この店は煮物もおいしいんだった。里いも煮(450円)や、炊き合わせ(湯葉・ニシン・里いも、630円)がありますねぇ。

「お酒のおかわりと、里いも煮をお願いします」

 すぐに出された燗酒(菊正宗、420円)を飲みながら、待つことしばし。出された里いも煮は、なんとなんと、できたて熱々の一品。ホクホクといい按配に煮あがっていて、味もよく染み込んでいます。どこまで下ごしらえして、どうやって仕上げたら、この状態になるんだろうなぁ。「里いもって、こんなにうまかったんだ」と思わせる一品です。

 ゆっくりと1時間ほど愉しんで、今日は1,690円でした。どうもごちそうさま。

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「金田」 / 燗酒とお通し / 能登産なまこ酢

店情報前回

《平成19(2007)年12月5日(水)の記録》

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熱々の肉豆腐が大人気 … 大衆酒場「細雪(ささめゆき)」(渋谷)

肉豆腐


 京王井の頭線のガード下には、焼き鳥屋を中心とした、古くから続く酒場街が形成されていて、「渋谷にも名酒場あり」といった風情を見せつけてくれます。

 その一角にある、いかにも大衆酒場然とした酒場が「細雪」です。

 ホッピーと書かれた赤提灯をくぐり、電源の入っていない自動ドアを手でヨイショと開けて店内へ。まさに今、看板に灯がともったばかりの、開店時刻、午後5時です。

「こんばんは。もう入ってもいいですか?」

「はい、どうぞどうぞ。どこへでも」

 笑顔で迎えてくれる、おかみさん。ご主人は奥のテーブルで、今日の魚メニューを書いているところです。

 店内は4人掛けのテーブルが、ずらりと8卓ほど。このテーブル席に、呑ん兵衛たちが夜な夜な入れ込みで入ってくるのでした。

 今日は口開け第1号の客になったので、席は選びたい放題。ちょうど真ん中にある席の奥側に座ります。この席は、テーブルが独立している上に、後ろが壁なので、背もたれもあり、かつテレビもほぼ真正面という、この店で最もいい(と私が思っている)席なのです。何度か来たけど、この席に座れたのは初めてだ!

 外は寒いけど、まずはやっぱり瓶ビール(アサヒスーパードライ大、550円)をもらって、この店の名物のひとつである肉豆腐(350円)を注文します。

「肉豆腐は、ちょっと時間がかかるけど、いい?」

「そうか。開店直後ですもんね。いいですよ、ゆっくりで!」

 そう返事しつつ、1杯めのビールの泡を慎重に作ります。なにしろ、この1杯めが楽しみなんですよねぇ。やぁ、おいしそうな泡になった。ちょっと観賞してから、ググゥ~ッと飲み干します。っあぁーっ、うまいっ。

 ビールが3杯めに入ったところで、肉豆腐もできあがってきました。深皿のまん中に、肉豆腐の煮汁でよく煮込まれた大きな豆腐が1個、デンと鎮座し、豚肉、玉ねぎの入った煮汁が掛けられています。味は東京らしい、醤油+砂糖の甘辛味。これに七色(七味唐辛子)をかけて、ハフハフといただくのです。

 そこへ「ヨッ!」と軽く手をあげながら入ってきたおじさんは、いかにも常連さんらしく奥のテーブルに座り、マグロ刺身(650円)と肉豆腐(350円)そ注文して、飲み物はホッピー(320円)です。

 マグロ刺身も、この店の名物のひとつ。いつも素晴らしいマグロがでてきます。

 ホッピーは、焼酎の入ったジョッキと、瓶入りのホッピーとが出され、自分で割る仕組み。このおじさんは、いつもそうしているのか、ホッピーが出るのと同時に、おかわり用のナカ(1合290円)も別のコップで同時に出されます。

 ここ「細雪」は、渋谷のど真ん中にありながらも、最安値180円のお新香からはじまって、塩辛、塩ラッキョウ、トマト、モロキュウなどが250円、冷奴が270円、シシャモや丸干イワシ、ポテトサラダなどが300円と、その値段は、正しき大衆酒場価格なのです。当然のように、ひとり鍋もメニューにあって、湯豆腐が450円、タラチリが550円です。

 この店の中では高い肴なのが、毎日、小さな厚紙に手書きされる刺身類。新しいお客が入ってくると、まずこの刺身メニューの書かれた厚紙が手渡されるのです。

 今日の刺身は、コハダ(400円)、タコ刺(450円)、ヤリイカ刺(550円)、〆サバ(600円)、コチ刺(550円)、ヒラメ刺(550円)、シマアジ刺(550円)、ハタ刺(550円)、マダイ刺(550円)、カンパチ刺(550円)、ブリ刺(550円)、そして最高値が件のマグロ刺(650円)です。

「やぁ、今日はハタがあるんだ。ハタ刺身をください」

 さっき入ってきた、おにいさんは手渡されたメニューからハタ刺(550円)を選択します。そうそう。ハタも美味しそうなんですよねぇ。

 飲み物のおかわりに燗酒(「関の春」280円)を注文すると、奥の湯煎式の燗付け器で、じっくりと燗を付けてくれます。燗が付くのを待ちながら、

「今日は、どの刺身がおすすめ?」

 と聞いてみると、奥の厨房にいる店主から、

「今日はカンパチもいいねぇ」

 という返事で、そのカンパチ刺(550円)を注文。美しいピンクの刺身が出されます。へぇ。カンパチって、ブリやハマチなどに近い系統の刺身だと思ってたのに、こういうピンクの身もあるんですねぇ。

 そのカンパチ刺身で、燗酒をチビチビとやりながら、この店の営業時間や定休日を確認します。いつも、お客さんがいっぱいで、こういう話をうかがうチャンスもなかったのです。

「昔は土曜日もやってたんだけど、今は土・日と祭日はお休みにしてるのよ」

 と、おかみさん。そんな話をしているうちに、だんだんとお客さんも増えてきました。名物の肉豆腐、マグロ刺身がよく出ているほか、冷奴(270円)やポテトサラダ(300円)も人気があるようです。この店には、サラダ系はポテトサラダしかないので、お店の人も、お客さんも、単に「サラダ」と呼ぶんですね。小さな新発見です。

 午後6時まで、ちょうど1時間の滞在は、1,730円でした。どうもごちそうさま。

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「細雪」 / 燗酒 / かんぱち刺身

店情報前回

《平成19(2007)年12月5日(水)の記録》

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こんな静けさは珍しい … バー「ブリック(BRICK)」(中野)

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 中野駅北口の路地の中にあるバー「ブリック」。昭和39(1964)年にトリス・バーとして開店したというこのバーは、今年で創業43年の老舗です。

 月曜日、午後9時過ぎのこの時間、1階店内は珍しく先客なし。

 酒場が名店かどうかの違いは、こうやってお客さんがいないときに、はっきりとするんですよねぇ。白いジャケットの店員さんたちは、店内の定位置で、それぞれに与えられた役割をこなしていて、無駄口ひとつない状態。ドアを担当するおにいさんは、ずっと店の外の様子を見ていたようで、私が店に近づくと、スッとドアを開けて迎え入れてくれたのです。

 お客のいないカウンターは、すべての椅子が、正面に向かって右30度くらいの角度で、ずらりと美しく並べられ、この均整を崩してしまうのが、なんだかもったいないほど。

 そのうちのひとつに、右後ろから回り込んで腰をおろし、角度を正面に向けます。

「いらっしゃいませ」

 椅子が正面を向いたところで、あったかいお絞りが手渡されます。メニューの飲み物のページを開いて、渡してくれようとするおにいさんに、

「トリハイ(210円)と野菜スティック(400円)をお願いします」

 と先手を打って、飲み物と料理を注文。トリハイ(=トリスのハイボール)は、この店の名物なのです。

 通常の場合は、手渡してくれる飲み物メニューから飲み物を選んで注文。今度は料理のページを開けて渡してくれるので、その中から食べ物を選んで注文。すると、何品か用意されているお通し(400円)の中から、注文した料理とかぶらないような品物を選んで出してくれる、という流れになります。

 まずトリハイが作られ、それを飲み始めたところへ、追いかけるようにお通しの松の実が出されます。

 しばらくして出された野菜スティックは、セロリ、キュウリ、ニンジンの3種が、それぞれ3本ずつ。添えられた辛子マヨネーズをつけて、パリッといただく歯応えの心地よさ!

 やわらかくBGMの流れる店内は、店員さん同士がおしゃべりをすることもなく、静かに静かに時が流れます。ここの店員さんは、こちらから話しかけると応えてくれますが、自らお客に語りかけることは、あいさつなどを除いては、ほとんどありません。だから、静かに過ごしたければ、こちらが話しかけさえしなければ、いつまでも静かに過ごせるのです。

 カランッ

 残りわずかなトリハイを飲み干すために、グラスの底を水平以上に持ち上げると、中の氷が移動して音を立てます。これがグラスが空いたという合図になります。

 スッと空いたグラスを差し出して、トリハイのおかわりを注文すると、目の前の店員さん(=バーテンダー)は、新しいグラスを取り出して、カクテル用のメジャーカップできっちりと45ml(1ジガー)のトリスを計量してグラスに移し、炭酸水を入れてステア。最後にピッとレモンピールしたら完成です。

 そうやってトリハイができていく様子を眺めているのも、また楽しいもの。さすがにバーだけあって、最安値のこのカクテルにも、手抜きはありません。

 しかしながら、人気のお店だけに静かな時間は、そう長くは続きません。4人、2人、また4人なんてお客さんが入ってきて、あっという間に1階の店内も、にぎやかになってきました。こういう状態が普段の「ブリック」ですね。

 最後にもう1杯、トリハイをいただいて、1時間ちょっとの滞在は1,430円(400円が2品に210円が3杯)でした。

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店頭のショーケース / トリハイと松の実 / 野菜スティック

店情報前回

《平成19(2007)年12月3日(月)の記録》

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牡蠣南ばんで蕎麦屋酒 … そば「おおひら」(野方)

牡蠣かき南ばん


 わが家の近くにある手打ちそばの「おおひら」。テーブル席が3卓ほどと、座敷席も3卓ほどの、この蕎麦屋には、季節ごとに、その季節ならではの蕎麦が1,000~1,500円くらいで用意されています。この季節の蕎麦を食べながら、チビチビといただくお酒が実にいいのです。

 12月に入ったばかりの今の時期、品書きに並ぶのは、「きのこ汁せいろ」(980円)、「姫鱒(ひめます)天せいろ(いくら御飯付き)」(1,380円)、「牡蠣(かき)かき南ばん(小ライス付き)」(1,260円)の3品です。

 どれにするか、しばらく悩んだ末に、今回は「牡蠣かき南ばん」をもらうことに決定。「かきかきなんばん」という、言葉の響きもかわいらしいですね。

「お酒のつまみとしていただきますから、すぐに出してください」

 注文するときに、そう付け加えておきます。

 席に座るとすぐに出される揚げそばと、お酒のお通しとして出されたセリのお浸しをつまみながら、信州・佐久の地酒、「菊秀(きくひで)」の燗酒(420円)をチビリチビリ。

 蕎麦屋で飲む酒が好きな人は非常に多いようで、蕎麦屋酒に関する本も、数多く出版されています。

 まず蕎麦味噌か、板ワサ、焼き海苔などで日本酒を飲み始め、お酒をおかわりする頃に、鴨や天ぷらなどの、ちょっとこってりとした系統のつまみへと進み、最後にズズッと、せいろでしめる。こういうのが、粋(いき)な飲み方の例として紹介されています。

 ここ「おおひら」にも、おしんこ(400円)、とろろ(420円)、板わさ(420円)や、鴨焼き(790円)、あなご天ぷら(790円)、季節の野菜天ぷら(950円)、盛り合わせ天ぷら(1,260円)などのつまみメニューも用意されているのですが、ひとりでやって来たときに、それらを注文したことはありません。

 こういうつまみ類からはじめると、私の場合には、ついもう1杯、もう1杯とお酒が進んでしまって、シメのそばまで行き着かなかったりして、『なんのために蕎麦屋に入ったんだろう?』なんてことになりがちなのです。

 もっと問題なのは、粋な飲み方は、軽めにしか飲まない割りには、けっこう高くついてしまうということ。値段設定がかなり安めの、この店でも、板わさ(420円)、鴨焼き(790円)、せいろ(580円)と食べ進むうちに、菊秀(420円)を3本ばかりいただくと、お勘定は3,050円になりますからねぇ。

 引き合いに出して申しわけありませんが、超有名店ということでご容赦いただくとして、「神田やぶそば」で、同じような楽しみ方をすると、かまぼこ(630円)、あいやき(1,260円)、せいろうそば(630円)に、菊正宗(735円)が3本で、なんと4,725円と、とても「軽~く」とは言えないお勘定になってしまうのです。

 そんなこんなで、結局この店では、季節の蕎麦を注文して、それをつまみにお酒を飲む、というパターンが、私のお気に入りになっているのでした。

「お待たせしました、牡蠣かき南ばんです」

 やぁ、来た来た。塗りのお盆の上には、牡蠣南ばんそばの他に、茶碗のご飯、お新香(キュウリとカブ)、そして薬味(おろし生姜と刻みネギ)の小皿が載っています。

 どーれどれ。まずは牡蠣をひと口。

 ヌォーッ。うまいっ。

 下味をして、衣をつけ、いったん唐揚げにされている牡蠣は、よく火が通っていながら、その衣のおかげで、牡蠣特有のコクと深みのあるうまみが、ちっとも失われていません。これはいいなぁ。あぁ、合わせるお酒も、うまいっ。

 酒のつまみでいただくときには、そばもフニャっとふやけて、伸びた状態でも十分いけるのですが、せっかくの新そばなので、伸びてない、シャキッとしているうちに、麺の三分の一ほどをいただいておきましょうか。箸で軽くつまみあげては、ズズッ、ズズッ、ズズッと、そばをすすり込みます。

 牡蠣がつまみになり、そえられている春菊もつまみになり、今やフヤフヤと伸びかけている麺もまたつまみになり、そして、最高のつまみは、なにしろその汁(つゆ)そのものです。

「お酒のおかわりをお願いします」

 当然のようにお酒もおかわりし、ちょっと蕎麦をつついてはお酒を飲み、お酒を飲んでは蕎麦をつつき。最後に、具として入れられているネギで、添えられたご飯をいただくと、思いっきり満腹です。

 1時間半の滞在。けっきょくお酒は3本いただいて、今日のお勘定は2,520円でした。

 このシーズン、ぜひもう一度食べに来たい「牡蠣かき南ばん」ですが、向こうのおにいさんが食べていた「姫鱒天せいろ」もおいしそうだったよなぁ。次回もまた、何を注文するか迷うに違いない。ぜいたくな悩みなり。

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「おおひら」 / 揚げそばとセリのお浸し / 牡蠣かき南ばん

店情報前回

《平成19(2007)年12月2日(日)の記録》

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15周年おめでとう! … 立ち飲み「和一(かずいち)」(門前仲町)

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 さて、今日この日に森下賢一(もりした・けんいち)さん、吉田類(よしだ・るい)さんの両巨頭が「河本」の店内でそろったのは、決して偶然ではなくて、門前仲町の立ち飲み屋、「和一」が開店15周年を迎えたので、そのお祝いのために、ここ「河本」で待ち合わせたのだそうです。

「おもしろい店ですから、いっしょにどうですか」

 と誘ってくださる類さんのお言葉に甘えて、祝さんご夫妻とともに、ご一緒させていただくことにします。

 「和一」のことは、類さんたちが、立ち飲み研究会というグループとして著した「立ち飲み屋」(ちくま文庫)という本でも紹介されていて、前から気になっていたのです。15周年記念のこの日に初訪問できるとは。

「こんばんは。おめでとう!」

 先頭を切って店に入って行く類さん。手には、先ほど近くの花屋さんで購入した大きな花束を抱えています。

「やぁ、類さん。ありがとう」

 店主の声が返ってきますが、10人も立てるかどうかの店内は、すでにお祝いのお客さんでいっぱいです。

「15周年だから、あいさつだけでもさせてもらおうと思ってね。いっぱいだねぇ」

 という類さんに、常連のお客さんたちがギュギュギュッと詰めてくれながら、

「なに言ってんだよ。せっかく来たんだから入っていきなよ。久しぶりだねぇ」

「ほら、類ちゃん。こっちこっち」

 と口々に声をかけてくれます。さすが類さん。この店でも人気者ですねぇ。

店内の様子 ギュギュッと詰めてもらったところに入り込んだのは、森下さん、類さんに、森下さんの句会に参加されているというジャズシンガー・REIKAjjさん、祝さんご夫妻と私の、合わせて6人。いっぱいだったはずの店内に、さらに6人も入れちゃうというのが、立ち飲みならではですよねぇ。

 類さんが、「立ち飲み屋」の中で『客たちの話題はもっぱら山の話である。経済性重視の立ち飲み屋に対し、むしろ精神的な安堵を求めるサロン的要素が魅力の店。10人も並べばいっぱいになるカウンターに、馴染み客との会話が楽しみでやってくる』と書かれているとおり、店内がひとつの話題で盛り上がっていくタイプの酒場の様子。

 類さんご自身が、どこの酒場でも、すぐにお客さんたちの会話の中に溶け込んでいって、その場の雰囲気を共有されるタイプなので、こういうサロン的な酒場は、まさにピタリとはまります。

「類ちゃんが来たんなら、オレはちょっと家からワインを持ってくるから。待っといてな」

 と、すぐ近くらしい自宅に走る大常連さん。すぐにマグナムボトルを持って現れます。もちろん本来は飲み物の持ち込みなんてご法度ですが、今日はお祝いのホールケーキも持ち込まれているし、15周年記念の無礼講ですね。居合わせたみんなで、おいしくワインをいただきます。

「ここは魚がうまいんだよ」

 類さんにそう言われてカウンター内の黒板メニューを見ると、そこには、天然平目刺(800円)、平政刺(700円)、生牡蠣酢(500円)といった魚介類が15品ほど、魚介類以外の、湯豆腐(鯵つみれ入り、650円)、ポテトサラダ(250円)、煮合せ(大根・蒟蒻・厚揚・椎茸、400円)、牛モツ煮込み(550円)などと合わせると全25品ほどが並んでいます。すべて漢字で記載されているところも、なにやら割烹風です。

 そんな中から、刺身盛合せ(1,200円)を注文すると、大皿に盛られて出てきた盛り合せは、マグロ、ヒラメ、ヒラマサ、アオリイカ、コハダ酢、甘エビの豪華六点盛り。

 森下さんがセイコ蟹(400円)を注文すると、小さいながら、まるごと一杯の蟹が出されます。

蛸皿の仕上げ ジャーッと、その音も豪快に、熱した油をかけて仕上げるのは蛸皿(たこさら、550円)です。丸皿にレタスを敷きつめて、薄く切ったタコを並べ、その上に輪切りのピーマンや、白髪ネギをトッピングし、最後にジャーッとやってできあがる、この蛸皿も「和一」の名物なんだそうです。

「こっちも蛸皿をもらおうか」と類さんが注文してくれますが、

「ごめん。今、作ったので終わっちゃった」とのこと。

「今日はアジのナメロウ(700円)もあるよ」と代わりのオススメを教えてくれます。

「ナメロウがあるんだったら、それをもらおうか」

 類さんは、ここのアジのナメロウが大好きで、よく注文していたんだそうです。

 今日は15周年記念で、全品表示価格の半額とのこと。ゆっくりと3時間ほどの立ち飲みは6人で4,800円(ひとりあたり800円)という15周年スペシャル価格。しかも、類さんにご馳走になってしまったのでした。どうもありがとうございます。>類さん

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刺身盛合せ / 蛸皿 / 鯵嘗めろう

店情報

《平成19(2007)年12月1日(土)の記録》

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店情報: 立ち飲み「和一(かずいち)」(門前仲町)

  • 店名: 海鮮立呑処「和一」
  • 電話: 03-5245-9050
  • 住所: 135-0047 東京都江東区富岡1-7-10
  • 営業: 17:00-22:30、基本的に月休(登山のため連休あり)
  • 場所: 地下鉄東西線2番出口を出て、永代通りを左(日本橋方面)に50mほど進み、左手の酒場が並ぶ小路に入った先、右手。
  • メモ: 平成4(1992)年12月1日創業。メニューは毎日黒板に書き出される。たとえば、鮪刺、天然平目刺800、平政刺700、アオリ烏賊750、小肌酢、甘海老刺650、以上六品の刺身盛合せ1,200、鯵刺700、鯵嘗めろう700、生牡蠣酢500、焼牡蠣600、〆鯖600、明太子550、蛸皿550、イナダ味噌漬400、セイコ蟹400、鰻串焼(2本)550、地鳥叩き500、豆腐蟹餡掛け550、湯豆腐(鯵つみれ入)650、芽かぶ300、生野菜450、ポテトサラダ250、煮合せ(大根、蒟蒻、厚揚、椎茸)400、牛モツ煮込み550など。(2007年12月調べ)

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冬場はおでんも大人気 … 大衆酒場「河本(かわもと)」(木場)

おでん


「久しぶりに「河本」の煮込みが食べたいなぁ」

 そんな思いで、早めの夕方に家を出て、地下鉄東西線で木場へと向かいます。

 都内に勤務していたころは、帰りにちょいと足をのばせば、やってくることができた「河本」。今は、土曜日をねらって、出かけていかなければなりません。なにしろ営業時間が午後4時から8時までの4時間(土曜日は7時までの3時間)と短いので、平日の営業時間内には、到着すること自体が難しいのです。

 店に着いたのは、午後5時前。変形コの字カウンター15席分程度の店内はゆるやかーに満席模様ですが、そこはひとり客の身軽さ。かろうじて空いているすき間に入れてもらいます。

 冬場の「河本」には、人気のおでん(300円)がメニューに加わります。煮込みは、あとのお楽しみに取っておいて、まずはおでんからいきますか。

「いらっしゃい。今日はお休みなの」

 と声をかけてくれる真寿美さん(=女将)に、

「えぇ、そうなんです」と返事をして、

「ホッピーと、おでんをお願いします。おでんは豆腐を入れてください」と注文します。

 カウンターの中には、四角いおでん鍋と、丸い煮込み鍋が並び、「おでん」と注文すると、そのおでん鍋から適当に3~5個程度のネタを選んで、お皿についでくれるのです。「豆腐を入れて」とか、「玉子を入れて」とお願いしておくと、そのネタを入れて盛り合わせてくれます。今日は、豆腐に、がんも、コンニャク、焼きちくわ、ツミレという五点盛りです。

 まずはその豆腐をハフハフと。なにしろ、夏場の奴さん(小、100円)や、冬場の湯豆腐(小、100円)も名物のこのお店。おでんの豆腐もまた、とてもいいのです。

 となりに座っている大きな男性は、大きいのも道理で、元・力士さんなんだそうです。

「数ヶ月前に、この店を知ってさぁ。それ以来、ほぼ毎日、ここで飲んでるんですよ。ホッピーがおいしいねぇ。5杯くらいで止めとこうと思うのに、ついつい8杯ほど飲んじゃうんですよ」

 シェーッ。3杯飲めば完全にできあがり、5杯も飲めば、もしかすると立てないかもしれないと言われるほどの「河本」のホッピー。それを8杯とは、さすが元・お相撲さんですねぇ。ホッピーのジョッキが小さく見えますもん。

 そのお相撲さんがホッピーをおかわりするのと同時に、私もホッピーをおかわりし、いよいよ満を持しての煮込み(200円)です。

「煮込みは、玉子を入れてもらえますか」

「はいはい。ニコタマね」と真寿美さん。

 この店のメニューには「煮込み」としか書かれておらず、ニコタマは、もともと常連さんだけが知っている裏メニュー的な存在だったらしいのです。最近は、ネット上でもよく紹介されているからか、一見(いちげん)さんに近いお客さんから、いきなり「ニコタマ!」という注文が入ったりして、驚くこともあるのだそうです。

 ニコタマは、煮込みの量が減るかわりに、同じ煮込み鍋でじっくりと煮込まれた玉子をひとつ付けてくれて、同じ値段(200円)です。

 ここの煮込みは、私としては東京の煮込みの中で、もっともホッピーに合うと思っている一品。もつはシロ(腸)のみで、少量のコンニャクと一緒に煮込まれていて、特筆ものはシロの裏にたっぷりとついた脂肪! この脂肪の甘さと、脂っこさが、ホッピーとベストマッチなのです。ックゥ~ッ。今日も、うまいなぁ。

 毎月、第一土曜日にやってくる近所の句会のみなさんが「今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします」と席を立ちます。そうか。今日は12月1日なので、次の句会は、もう来年なんですね。

 句会のみなさんがいなくなって、ポンと空いた空間に入ってきたのは、間もなく新婚1周年を迎える、祝さんご夫妻です。これはこれは、お久しぶりです。

 今日は、ホッピー2杯くらいで、と思っていたのですが、祝さんご夫妻もいらっしゃったので、もう1杯いきますか。これですっかりできあがる3杯目ですね。つまみには、かけじょうゆ(400円)をもらいます。

 かけじょうゆというのは、小皿に盛られたマグロぶつ切りに醤油をかけたもの。奥の厨房でアンチャン(=真寿美さんの弟さん)が調理して出してくれます。土曜日には、ないことのほうが多いので、珍しいなぁと思っていたら「かけじょうゆは、これで売り切れ」とのこと。これが最後の一品でしたか!

 午後6時も回り、土曜日の営業時間もあと1時間を切ったところで、ガラリと引き戸が開いて入ってきたのは、酒場詩人・吉田類(よしだ・るい)さんです。類さんは、以前はこの近くに住んでいて、ここ「河本」にも毎日のようにいらしていたのだそうです。今日も、「河本」常連のみなさんから「類ちゃん、久しぶりだなぁ」「類ちゃん、元気だったのか」と、次々と声がかかっています。

 そこへ登場されたのは、なんと森下賢一(もりした・けんいち)さんです。このブログのタイトル「居酒屋礼賛」が、森下さんの著書「居酒屋礼讃」から借用したものであることは、すでに何度も書いているとおり。森下さんは、まさにこの近くにお住まいで、「河本」にもちょくちょく顔を出されているのだそうです。「居酒屋礼讃」は、すでに絶版になっていて新品は手に入らないのですが、祝さんは、ちょうどこの日、古本屋で「居酒屋礼讃」を入手されたばかり。さっそく森下さんにサインをいただいています。いいタイミングでしたねぇ!

 森下さん、類さんという両巨頭のそろい踏みに、店内も華やいで、あっという間に午後7時の閉店時間。

 ゆっくりと2時間の滞在は、ホッピー3杯に、料理が3品で、1,800円でした。どうもごちそうさまでした。

ニコタマ かけじょうゆ 森下さん(左)、類さん(右)と
ニコタマ / かけじょうゆ / 森下さん(左)、類さん(右)と

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《平成19(2007)年12月1日(土)の記録》

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ハムエッグスで燗酒を … 大衆酒場「大山酒場(おおやまさかば)」(大井町)

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 大井町は、東小路、平和小路などの、昭和闇市の名残を残す横丁のある街。今日は、そんな横丁の入口にある大衆酒場、「大山酒場」にやってきました。

 水曜日、午後7時過ぎの店内は、右手フロアはけっこうお客さんが多いものの、左手のカウンター席は比較的空いている状況。右手フロアにはテレビが置かれているので、そちらのほうが人気が高いのでしょうか。

 左手カウンターの一角に座り、

「いらっしゃいませ」

 と声を掛けてくれる、カウンターの中のおかあさんに、

「瓶ビール(大瓶、560円)と、湯豆腐(350円)をお願いします」

 と注文します。

「瓶ビールはアサヒとキリンがありますけど」

「じゃ、キリンで」

 すぐに出された瓶ビール(キリン一番搾り大瓶)をコップに注いで、まずは今日の1杯目をググゥーッと飲み干します。あぁ、うまいっ。この1杯が、まさに甘露ですねぇ。

 今日も、最高気温が12度くらいまでしか上がらないような、11月にしては寒い1日だったのですが、それでもやっぱり最初の1杯は、よく冷えたビールをグイッとやりたい。そのかわりに、つまみは温かい湯豆腐にしたのでした。

 1杯目のビールを飲み干して、改めて短冊メニューを確認すると、この季節、おでんもあるようです。おでんのタネの中では、豆腐が一番高くて300円。ロールキャベツ、肉だんご、シューマイが各200円。大根、はんぺん、こんにゃく、しらたき、里いもが各150円。ちくわぶ、ちくわ、つみれ、がんも、さつま、すじ、玉子が各120円と、大衆酒場らしい価格設定です。

「はい。湯豆腐です」

071128a 受け皿つきの器には、半丁分くらいの熱々豆腐がドンと入っていて、カツオ節と刻みネギを載せて、温かいポン酢醤油がかけられています。熱い間に、ツルリ、ツルリといただきます。飲み始めの、お腹がすいているときに、この温かい豆腐はありがたいですよねぇ。

 湯豆腐で、すきっ腹も落ち着いてきたところで、玉子料理を1品注文しますか。

 ここ「大山酒場」は、玉子料理が豊富なことも特徴の、ひとつなのです。そのラインナップは、目玉焼き(380円)、ハムエッグス(420円)、にら玉(380円)をはじめ、特筆物はオムレツ。その種類が半端じゃないのです。プレーン、キャベツ、ネギのオムレツが各500円。チーズ、しらす、ハム、納豆、ちりめんのオムレツは各550円。そして最高値のハムチーズオムレツが600円と、オムレツだけでも実に9種類。

 玉子料理が好きじゃない呑ん兵衛というのは、あまり見たことがありません。お客さんからの注文で、ひと品、またひと品と増やしていってるうちに、今のような品ぞろえになったんじゃないかと推測します。

 にら玉の注文が飛び交っていて、とても人気がある様子ですが、ここはやはり、大好物のハムエッグスをもらいますか。

 玉子料理類は、いずれも注文を受けてから、店のおかあさんがカウンター内で調理して、できたての熱々を出してくれるのです。

 そのハムエッグスができあがったところで、燗酒(300円)を注文すると、湯煎されている大きな徳利から、受け皿にあふれるほどのお酒を注いでくれます。

 となりに入ってきたおにいさんは、樽酒(280円)を冷やで注文。私が注文した燗酒は、「連山」という銘柄のお酒なのですが、こちら樽酒は、銘柄が「樽酒」だし、樽酒なのに普通のお酒よりも値段が安いしと、なにかとおもしろいお酒なのです。

 樽酒を受け取ったおにいさん、まずは口から迎えにいって、コップの上のほう1センチ分くらいをクイッと飲み、受け皿にこぼれたお酒をコップに移したあと、ググゥ~ッと一気に飲み干してしまって、すぐに2杯目をおかわりです。

『ほぉーっ。なかなかすごい飲みっぷりだなぁ』

 と思いながら、ハムエッグスをひと口つついて、燗酒をチビッと飲むと、となりからコンッというグラスの音。あららぁーっ。となりのおにいさん、2杯目ももう飲み干しちゃいましたか。はやっ。

 さらに3杯目も、1杯目と同じく、一口目で表面張力のところから数センチをまでを飲み、受け皿の酒をコップに移すと、二口目で全部飲み干してしまいます。

「なにか料理を作る?」

 という、カウンターの中のおかあさんからの問いかけにも、

「今日はいいや」

 と答えて、4杯目となる樽酒をもらっています。

 その4杯目も、同じペースでググゥーッと飲み干して、「ごちそうさん」と席を立ちます。店には15分いたかどうか。お勘定、1,120円を支払って、スゥーッと帰っていきました。

 おかあさんとの会話の様子から判断すると、かなりの常連さんのようでしたが、ものすごい飲み方ですねぇ。びっくりしてしまいました。真似して飲んだら、急速に血中アルコール濃度が上がって、ぶっ倒れてしまいそうです。

 燗酒をもう1杯いただいて、1時間ほどの滞在は、1,930円でした。どうもごちそうさま。

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《平成19(2007)年11月28日(水)の記録》

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食のブロガーは健啖家 … 創作料理「北品川(きたしながわ)」(北品川)

鴨のスモーク穴子フライギアナ海老フライ
厚岸の酢牡蛎ポークシチュー・ライス赤ワイン・白ワイン
氷見のブリ刺カブの煮物柿バター炒め


 先日、錦糸町の「井のなか」での飲み会のときに話題に上った「北品川」にやってきました。

 集まったのは、築地王・小関さんくにさんいずへいさんという「井のなか」オフ会メンバーに加えて、今回の幹事役を引き受けていただいた、む~とんさんに、そのむ~とんさんの友人で、「北品川」の常連さんでもあるsakuさん、築地王・小関さんの奥様、「フードジャーナリスト会議」主宰で放送作家のわぐりたかしさん、「ゴージャスカレー姉妹」の華麗叫子さん、「フェティッシュダディーのゴス日記」のジュネさん、そして以前、木場・門仲方面でもご一緒させていただいた「春は築地で朝ごはん」のつきじろうさん、というとっても豪華な面々です。

 ここ「北品川」は、一見(いちげん)さんは入ることができないお店なのだそうで、今日も、この店の常連さんであるsakuさんと、そのsakuさんとともに、何度もこの店に来たことがある、む~とんさんの予約により、みんなでこの店に来ることができたのでした。

 まず生ビール(キリン・ブラウマイスター)をもらって乾杯すると、すぐに出されたのは、片面に黒胡椒がビッシリとまぶされた、鴨肉のスモーク。「これはうまいっ」と食べ始める私に、向かい側に座る、いずへいさんや、む~とんさんが、

「この先、すごい量の料理が出ますから、最初から飛ばし過ぎると、後のほうは食べられなくなりますよぉーっ!」

 と教えてくれます。

「知り合いの女性ブロガーのみなさんも、けっこう食べる人たちだけど、途中でギブアップしたそうですからねぇ」

 と、優しい表情でドキッとすることをおっしゃる、つきじろうさん。

 うーむ。もともと、それほど健啖家ではないほうなので、そんな量が食べられるだろうか。鴨のスモークは2切れぐらいで抑えておこうっと。

「伊勢で捕れた、朝開きの穴子です。ひとり3尾ずつありますからね」

 ニコニコと嬉しそうに説明してくれる店主。店は店主夫妻で切り盛りしており、店主は料理をするのが楽しくて仕方がない様子です。

 穴子は、開いたものを1本丸ごとフライにしてあります。塩も一緒に出してくれたのですが、何も味をつけなくても、おいしくいただけます。

「熱いうちに食べなきゃね!」

 と、みんなで一所懸命、穴子フライと向きあいます。

 続いて出されたのは、大きな海老フライ。ギアナ海老という、この店以外ではあまりお目にかからない種類の海老なんだそうです。

 む~とんさんとsakuさんは、次の飲みものの相談中。といっても、この店には生ビールの他はボトルのワイン(赤・白)しかなくて1本9千円ほど。

「料理は、ひとり4千5百円というお決まりコースなんですが、ワインを飲みすぎると高くついちゃうんですよ」

 とsakuさん。たしかに! 呑ん兵衛が集まると、ひとり1本分くらいは、すぐに空いちゃうから、えらいことになってしまいそうです。

「次は牡蠣なんだけど、厚岸(あっけし)産のとてもいい牡蠣だから、食べられる人にだけ出すからね。食べる人?」

「はーい!」

 と元気よく手が挙がりますが、やはり何人かは食べられない人もいるようです。けっこう好き嫌いがはっきりと出る食材ですもんね。

 厚岸の牡蠣は、大ぶりの身が、ひとり5個ずつ。酢ガキで出されます。さっそくツルリと1個いただくと、なんとも濃厚な牡蠣だこと!

 オーストラリアなど、海外で牡蠣をいただくと、まさに「海のミルク」というたとえがピッタリとくるような牡蠣が出てくることが多いのですが、国内の牡蠣は生食用の処理をしているからか、なんだか淡白なことが多いんですよねぇ。こんな濃厚な牡蠣は久しぶりです。あぁ、うまいっ。やっぱり牡蠣はこうでなくっちゃ。

「この店では的矢(まとや)の牡蠣が出ることが多いんですけどね…」

 と、常連のsakuさん。そこへ、ちょうど店主がやってきて、

「今の時期は、厚岸の牡蠣がキロ(55個分ほど)あたり5千円ほどなのに対して、的矢のものは1万円ほどするから、予算に合わないんですよ。的矢のものは、もうちょっとしてからですね」

 と説明してくれます。

 牡蠣の次の料理は、なんとポークシチュー。ご飯にかけて、ハヤシライス風に出してくれます。それにしても、よーく煮込まれたポークの大きいこと!

 それにしても、揚げ物2品に続いて、生もの(酢ガキ)が出て、そのあとにポークシチュー・ライスとはねぇ。ものすごく考えられてるのか、それとも考えられてないのか、さっぱり分からないような順番ですよねぇ。

 と、そんなことを思っていたら、次にドーンと大皿で出されたのは、ひと切れあたりの厚みが3センチほどはあろうかという、ブリの刺身です。いやぁ、ここで刺身ですかぁっ!

 この刺身、ひと切れ、ひと切れの大きさも、相当大きいのですが、なにしろ厚みがあるので、写真に撮ってしまうと、バランス的に普通のブリ刺しのように見えてしまいますねぇ。でも、本物は、普通にイメージしたブリ刺しを、厚さ方向にも、幅方向にも、それぞれ2~3倍したくらいの量ですからね!

「これは氷見(ひみ)の寒ブリで8キロものです。これくらいの厚さに切らないと、ブリのおいしさはわからないですよ」

 と店主。ブリも届いてすぐ使うんじゃなくて、ちょっと寝かして熟成させてから、大きくカットするんだそうです。こんなに大きな刺身なのに、トロリととろけるように軟らかくて、脂(あぶら)ののりも絶妙です。あぁ、燗酒がほしい。

 ブリの刺身をペロリと平らげたら、今度はカブとブナシメジの煮物です。カブは、ひとりずつに、直径15センチほどもあろうかという大きなのが丸ごと1個ずつ。こんなに大きなカブなのに、箸でさっくりと切り分けられるほどの軟らかさ。いったい、どれほど煮込んだんでしょう。

 最後に出されたデザートは、柿のバター炒め。テレビで紹介されていたのを見て、真似して作ってみたのだと言います。櫛切りにした柿をバターで炒めて、生クリームを足しただけという簡単な料理なんだそうですが、柿の甘さと、生クリーム&バターの風味がよく合って、不思議なおいしさです。

 いやいや。ものすごい物量に、どうなるかと心配しましたが、となりに座っている、つきじろうさんをはじめとして、グルメブロガーのみなさんは健啖家が多いので、なんとかすべてを完食です。やぁ、よかった、よかった。量もさることながら、そのすべてが美味しいのが嬉しいですね。

 と安心していたら、向かい側に座る、いずへいさんから、

「ポークシチューライス、おかわりしていいですか。食べられるかどうか、わからなかったので、全部出終わるまで、おかわりするのを待ってたんです」

 という、驚くべき「おかわり」のコール! いやぁ、この華奢な身体のどこに、こんなにたくさんの料理が入っていくんでしょう!

「あんまり飲むと高いからねぇ」

 と釘を刺されていたワインも、気がつけばたっぷりといただいてしまった3時間半。お勘定は、11人で10万5千円でした。うー、苦しいほど満腹じゃーっ。

 あ、そうだ。この夏ご一緒させていただいたときに企画中だった本が、いよいよ今日(11月22日)発売されたのだそうです。本のタイトルは「東京ランチレボリューション」(東京書籍)。築地王・小関敦之さんを筆頭に、OL美食特捜隊のみなさん、ラーメンの大崎裕史さん、カフェの川口葉子さん、美食の王様・来栖けいさん、カレーの水野仁輔さん、うどんの蓮見壽さん、焼肉のYAKINIQUESTのみなさん、B級グルメ・柳生九兵衛さんという豪華な執筆陣の各々が、自分のおすすめのランチを紹介した1冊です。奇しくも、話題の「ミシュランガイド東京2008」と同じ発売日となった「東京ランチレボリューション」ですが、こちらは、より身近なランチが対象ですので、読んですぐに出かけることができそうですね!

店情報

《平成19(2007)年11月22日(木)の記録》

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店情報: 創作料理「北品川(きたしながわ)」(北品川)

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  • 店名: 「北品川」
  • 電話: 03-3458-7250、03-3471-7332
  • 住所: 140-0001 東京都品川区北品川1-23-23
  • 営業: (未調査)
  • 場所: 京急・北品川駅の改札(1ヶ所)を出て、左に回り込むようにして踏切を渡り、京急線の東側(海側)に出る。突き当りを右に折れ、古い商店街を進むと、100mほど先、左手。駅から徒歩5分ほど。
  • メモ: 夜はひとり4,500円のコース料理だけだが、これが食べきれないほどの量であることでも有名。飲み物は生ビール(ブラウマイスター)とワインしかなくて、ワインは1本9,000円ほどするらしい。一見(いちげん)さんお断りだそうなので、この店のお馴染みさんに幹事をやってもらって集まるというのが基本的な利用法。(2007年11月調べ)

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初のツナコーンサラダ … 焼き鳥「川名(かわな)」(阿佐ヶ谷)

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 自宅近くの行きつけの店、「川名」。もう、何十回も足を運んでいるのに、いまだに初めての料理に遭遇したりするのが、おもしろいですよねぇ。

 ハルカさん(店を手伝っている女性)が、向こうのテーブルに運んでいったのは、ひとり用の土鍋にボリュームたっぷりに盛られたサラダ。真っ赤なトマトも、丸ごと1個分が入っているようで、見た目にもおいしそうです。

 ハルカさんが戻ってくるところを、「ちょっと、ちょっと」と呼び止めます。

「ね。今、向こうに持っていたの、なに?」

「ん? ツナコーンサラダのこと?」とハルカさん。

「えっ? トマトが入ってる、鍋みたいなのだよ?」

「そう。あれがツナコーンサラダ」

「そうなんだ。じゃ、それ、ひとつ」

「はーい」

 メニューの名前から想像するのとは違うものが出てくるのも、ここ「川名」のおもしろいところ。

 以前にも、となりの人が食べているトロミのついた、これまたボリュームたっぷりのスープ豆腐みたいな小鍋が、おいしそうで、おいしそうで。そのお客さんは、当時は店に来るたびにその小鍋を食べていたので、何度目かに意を決して、

「いつも召し上がっている、この鍋は、なんていう料理なんですか?」

 と聞いてみたところ、

「あぁこれ? これはマーボ豆腐ですよ」

 と教えてくれたのでした。普段目にする麻婆豆腐とは、まったく異なる料理と言ってもいい「川名」のマーボ豆腐(現在は504円)。実際に食べてみると、見た目どおりおいしくて、しばらくの間、はまっていたのを思い出します。

「はい。ツナコーンサラダです。これでしょ?」

 とハルカさん。そうそう。これです、これです。へぇ、やっぱりこれがツナコーンサラダだったんだ。

 ひとり用の土鍋に、まずレタスを敷きつめて、その三分の一には丸ごと1個のトマトをスライスして載せ、次の三分の一には、たっぷりとツナを載せ、残りの三分の一には、これまたたっぷりのコーンを盛り込んで、マヨネーズが添えられています。

 改めて短冊メニューを確認すると、このツナコーンサラダが336円。なるほどねぇ。こういう品物でしたか。

 ちなみに他のサラダ類は、大根サラダが336円、トマトサラダ、キャベツサラダが各294円、ゴーヤサラダ、セロリサラダが各252円などで、さらにキムチや野沢菜、白菜のお新香などの漬物類は126円です。これが野菜系メニューのホンの一部。この店には野菜料理も多いのです。

 今日、日曜日のヨジカワ(=開店時刻の午後4時から「川名」で飲むこと)。お通し(サービス)のリンゴ2切れに、サッポロラガービール(大瓶、504円)から始まって、飴色に照り輝く黒ソイ刺し(420円)で、和歌山の地酒・「黒牛」(462円)に移行。店内でクマさんや、jirochoさんとも合流し、ホウレン草(168円)をもらって、「黒牛」もおかわり。そして出会ったのが、冒頭のツナコーンサラダだったのです。

 そのツナコーンサラダをつまみに、最後にもう1杯「黒牛」をもらって、午後8時まで。なんと4時間ものヨジカワは、2,352円でした。ずいぶんと長居してしまって、ごめんなさい。どうもごちそうさまでした。

 マーボ豆腐同様、このツナコーンサラダもまた、しばらくの間、はまりそうな一品です。

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ビールとお通し / 黒ソイ刺身 / ホウレン草

店情報前回

《平成19(2007)年11月18日(日)の記録》

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寒くなったらイカ大根 … 立ち飲み「やき屋(やきや)」(荻窪)

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 荻窪駅北口にある、つまみが全品150円(+消費税)の立ち飲み「やき屋」。値段が安いということもさることながら、大人気の理由(わけ)は、それら150円のつまみが、うまいということにあります。

 ここの店主の出身地は、青森県八戸市。その八戸は、自ら「イカの街」と称するほどイカの水揚げが多い町で、その量は全国1位なんだそうです。

 「やき屋」のつまみは、その八戸から毎日送られてくるイカを使った料理が主体。

 刺身は、胴体を細切りしたイカ刺し、エンペラの部分を細切りしたミミ刺し、そして足の部分のゲソわさと3品があって、もちろんすべて150円。イカ納豆は、イカ刺しの量が減る代わりに納豆が入って、これももちろん150円。

 焼き物は、ミミ焼き、ゲソ焼きに加えて、イカ足の付け根のあたりを焼いてくれるナンコツ焼きも人気の品。その他にも、ゲソをイカワタで和えた珍味ワタ和えや、自家製のイカ塩辛もそろっていて、丸ごとイカ一杯を、余すところなく味わい尽くせるのです。しかも一品150円で!

 これだけでも、もう十ニ分に通い詰める価値のあるお店なのですが、さらに嬉しいことに、冬場になると冬季限定のイカ大根がメニューに加わります。

 たっぷりのイカの身(ゲソが多い)とともに、大鍋で煮込まれるのは、ざっくりと大きくカットした大根。いったい何時間煮込んでいるのか、その大根は真っ黒で、箸にちょっと力を加えただけでスゥーッと切れるほどの軟らかさなのです。しかも、イカよりも、もっとイカらしい、その味わい。この大きな大根2切れほどに、一緒に煮込んだイカも添えられて、くどいようですが150円ですからねぇ。そんじょそこらで食べる、おでんの大根よりもはるかに安くて美味いのです。

 今日なんて、午後7時半に店に入るなり、女将さんに、

「イカ大根食べに来たんでしょ。あるわよ」

 と笑顔で迎えられたくらい、冬になったら必ず注文する一品なのです。合わせるのは、もちろん燗酒(北の誉、230円)ですよねぇ。イカに燗酒はぴったりです。

 でも、この店で一番人気のある飲み物はホッピー(300円)です。氷入りのタンブラーで出されるホッピーは、あとでナカ(おかわり焼酎)だけ、ソト(おかわり瓶ホッピー)だけも追加できて、各150円。ちょっと濃い目に、ソト1・ナカ3の割り合いで飲めば、なんと600円でベロベロ状態。これにつまみを2品とっても+300円ですからねぇ。まさにセンベロ(千円でベロベロに酔っ払うこと)のお店なのです。

 冬ならではのイカ大根を堪能したあとは、燗酒をおかわりして、自家製塩辛(150円)を注文すると、店長のゲンさんが、冷蔵庫の中に貯蔵されている塩辛の瓶から、たっぷりと小鉢に入れてくれます。

071117z ここの塩辛は、熟成し過ぎず、辛過ぎず。とってもフレッシュで食べやすい。しかも量もたっぷりとあるので、これだけで燗酒の3本、4本は軽くいけちゃいそうです。できることなら、お土産としてお持ち帰りして、最後のシメに、ごはんに載せて食べたいくらい。

 となりに入ってきたお兄さんは、ホッピー(300円)に、もつ煮込み(150円)を注文。そうだった、そうだった。この店には、もつ煮込みなどの、イカ以外の料理もあるんでした。

 1時間の立ち飲みタイムは、2品と2本で798円(760円+消費税)でした。どうもごちそうさま!

店情報前回

《平成19(2007)年11月17日(土)の記録》

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うな丼の予定が昼間酒 … 大衆酒場「まるます家(まるますや)」(赤羽)

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「今日はお出かけなので、どっかでお昼ごはんを食べておいてねー」

 そう言って、家を出て行くカミサン。土曜日は、私立高校・中学に通っている娘、息子も学校に行ってるので、ひとりで昼ごはんです。となると、赤羽かな! 「まるます家」で、熱いのを1本もらって、うな丼(きも吸い付き、750円)でもいただきますか。

 トコトコと環七まで出ると、そこから赤羽まではバスで1本(210円)。バスに揺られてウトウトしているうちに、終点・赤羽駅東口に到着です。

 昼前に着けば大丈夫だろうと、少し早めに家を出たので、「まるます家」に到着したのは午前11時過ぎ。入口引き戸をガラリと開けて店内へと進むと、この時間なのに店はもう満席で、年配のご夫婦二人が待ち席で待っています。なんとまぁ、この時間から、もうみなさん飲んでるんですねぇ。

 しかし、ほとんど待つこともなくご夫婦はコの字が二つ並んだカウンターの奥へと案内されて、

「おにいさん。おひとりなら、まん中の席でいい?」

 と、二つのコの字カウンターのまん中に1席だけある席に案内されます。この席に座るのは、これで2度目。「まるます家」のオペレーションをじっくりと観察することができる、とてもおもしろい席なのです。(オペレーションの様子は前回記事をご覧ください。)

 まずは予定どおり「富久娘」(350円)を燗酒(ホット)でもらって、料理は、この店の名物のひとつ、鯉のあらい(400円)です。前回は、最初に瓶ビールをもらって鯉のあらいを食べたのですが、やっぱり鯉のあらいには、燗酒のほうが合いますね!

 まわりを見わたしてみると、地元の人と思われる年配のお客さんに、若いカップルなども混ざっていて、まさに老若男女、さまざまな客層になっています。

 名店の条件として、万古不易(ばんこふえき)な営業形態と、老若男女満遍ない客層ということが挙げられるとすると、昭和25年創業のこの店は、まさにその両者を兼ねそなえた名店と言えるでしょう。

 昼どきだけあって、うな丼が飛ぶように出ています。まぁ、この値段(きも吸い付き、750円)だったら、そうですよねぇ。

 呑ん兵衛たちに人気があるのは、すっぽん鍋(700円)に、つみれ鍋(700円)。私が座っているこの場所は、厨房から、両側のカウンターへの料理の通り道でもあるので、どんな料理がよく出ているのかが、ボォーッと飲んでても、すぐに分かるのです。ひとり用の鍋にたっぷりと作られた鍋物が700円ですからねぇ。まさにこれだけで酒の2本、3本はすぐに飲めそうです。

 こうやって、昼間っから、みんながザワザワと飲んでる中に入っちゃうと、「熱いのを1本やって、次は、うな丼」って気分にもなりにくいなぁ。やっぱり、もうちょっと飲んじゃいますか。

「すみません。富久娘(350円)のホットをおかわり。それと、サメのにこごり(300円)をください」

「はいっ、こちら、カワイコちゃんホットに、サメのにこごりぃーっ!」

 と謳うように注文が通されます。カワイコちゃんというのは、この店での「富久娘」の呼び方です。

 鍋もそうですが、サメのにこごりも、冬らしい品物のひとつですよねぇ。出された煮こごりは、お皿に4切れ。透きとおった茶色ごしに、サメの皮がうねうねと並ぶ様子も美しいですねぇ。

 1時間ちょっとの昼間酒。お酒2本の、ちょうどいいほろ酔い加減で、お勘定は1,400円でした。あぁ、実にいい休日だ!

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「まるます家」 / 鯉のあらい / サメのにこごり

店情報前回

《平成19(2007)年11月17日(土)の記録》

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胃袋でトマト割り完成 … 立ち飲み「ぼんそわ」(新橋)

071116y (トマト割り)

 「日乃家」を出たところで、帰路につかれるG.Aさんを見送り、残る3人はタクシーで新橋へ。にっきーさんが、まだ行ったことがないという「ぼんそわ」へと向かいます。

 去年(2006年)の5月にオープンした、立ち飲みの「ぼんそわ」は、工夫あふれる安くて美味しい料理や、臨界点と恐れられる焼酎の量が入ったホッピーや酎ハイなので、あっという間に呑ん兵衛仲間の間では知らない人がいないくらいの店になっていったのでした。

 店に到着したのは、午後10時前。金曜日の夜とあって、平日でも満員の店内は、予想どおり満員。でも、店の表に、はじめて見る立ち飲みテーブルが出されていて、おっとこまえH氏、にっきーさんと3人で、そのテーブルを囲み、近ごろ流行りの下町のシャンパン(ワイン(350円)+炭酸(150円))をもらって乾杯です。

 店内は「ぼんそわ」の牢名主とも噂されているクマさんが、今日も当然のようにいらしていて、外の立ち飲みテーブルまで出てきてくれます。クマさんの話によると、この立ち飲みテーブルは、いつも店内が満員であることを憂いた常連さんからの寄付なんだそうで、テーブル下部には、「ぼんそわ」のシンボルマークである、お酒を飲むリスの影絵も付いている優れもの。テーブルの上部には、グラスやボトルを差し込んで置いておける穴(ホルダー)も付いています。

 さらに、クマさんによると、ここのワイン「モンシェルヴァン(Mon Cher Vin)」(株式会社サドヤ)も、甲府産で、そんなに高いワインではないんだけど、街なかの酒屋では手に入れることができないんだそうです。すっきりと飲みやすくて、呑ん兵衛好みのするワインですよね。この店でワインを飲んでいるお客さんが多いというのも、うなずけます。

 そうこうしているうちに店内にも少し余裕ができ、我われも外の立ち飲みテーブルから店内へと移動し、カレー肉みそ生キャベツ(250円)や、魚肉ソーセージ炒め(200円)、アボカド酒盗カマンベール(250円)といった、まさに「ぼんそわ」ならではの品ぞろえ、そして「ぼんそわ」ならではの値段の料理を楽しみます。

 そこへ、ふらりと表れたのは、歩く酒場データベース、Kさんご夫妻です。いい酒場あるところに、必ずKさんご夫妻あり。いろんな酒場情報を教えてもらわなければと、いつも思いながら、お会いするたびに必ず徹底的に酔っ払ってしまって、なかなか目的が果たせずにいるのでした。

 飲み物のおかわりに、トマト割りを注文すると、氷入りのグラスになみなみとたっぷりの焼酎(金宮)と、それとは別に缶入りのトマトジュースです。とてもトマトジュースの入るすき間はないので、トマトジュースをチビチビと飲みながら、それを肴(さかな)に金宮焼酎をロックでいただきます。ということは、胃の中でトマト割りができあがるってことですね!

 そろそろ日付けが変わる頃になったので、本日はこれにて解散。やぁ、よく飲んだ。改めて、すごいお店ですねぇ!

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ワイン+炭酸 / お通し(おひたし) / カレー肉みそ生キャベツ

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魚肉ソーセージ炒め / アボカド酒盗カマンベール / トイレにも「ぼんそわ」マーク

店情報前回

《平成19(2007)年11月16日(金)の記録》

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松茸を安く楽しむ会!? … 天ぷら「日乃家(ひのや)」(白金高輪)

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「松茸を安く楽しむ会をしませんか?」

 「Gaily Amaha の 未熟な舌 過敏な腸」のG.Aさんからいただいた、そんなお誘いに、集まったのは「アル中ハイマー日記」のにっきーさん、おっとこまえのH氏、そして私の計4人。店は、白金高輪にある天ぷら割烹「日乃家」です。

 店主夫婦と、その娘さんで、まさに店の看板娘の聖子さんの3人で切り盛りするこのお店。G.Aさんは、今は20代になった聖子さんが、まだガキンチョ(失礼!)だった頃からこの店に通っていて、今でも季節ごとに、必ずその時期の料理を食べに来るのだそうです。G.Aさん曰く、

「この店のタラの芽で春を知り、稚鮎で夏を楽しみ、松茸で秋を憂い、日乃家鍋で冬を耐える」(G.Aさんの「陸ボケ日記」2007年11月16日分より)のだそうです。

 テーブルを囲み、まずは瓶ビール(キリンラガー大瓶、600円)をもらって乾杯すると、今日のお通しは生の桜海老です。桜海老は駿河湾だけで獲れる、透きとおったピンク色のエビ。漁ができる時期が4~6月、10~11月に限られているので、こうやって生の桜海老がいただけるのも、年に2シーズンだけなのです。このあたりから、すでに季節を感じさせてくれますねぇ。

 さぁ、そして。今日の松茸尽くしの第1弾として登場したのは、なんと松茸と牡蠣のバター炒めです。まるでエリンギか、マイタケでも使っているかのように、無造作にどっさりと入れられた松茸。こんなのはじめて食べるなぁ。うへぇぇっ、牡蠣もうまいや。なにしろ、どちらもこの季節の品ですからねぇ。

「すごいよねぇ。熱いうちに食べようね」

 と、みんなで一所懸命、松茸と牡蠣に取り組んでいると、続いて出されたのは「松茸と言えば」ともいえる一品、土瓶蒸しです。飲み物は芋焼酎「邑(むら)」をボトル(2,800円)でもらって、各人の好みで湯割りやロックでいただきます。

 まずは土瓶蒸しの汁(つゆ)をつまみに、焼酎湯割りをチビリチビリ。松茸の香りあふれる汁が、本当にいい肴になります。

「今年は、小さい松茸しかなくてねぇ。今日までにそろえられるかどうか心配したのよ」

 と、おかみさん。なんとか今日の松茸尽くしに足る品物を手に入れることができたのだそうです。

 ひとしきり汁を楽しんだところで、土瓶蒸しのふたを取って、スダチをちょいと搾りかけて具材を楽しみます。これまたたっぷりの松茸に、イカ、エビ、トロに銀杏です。

 そこへ登場した第3弾は、いよいよ天ぷら割烹「日乃家」の本領発揮ともいえる、松茸の天ぷらと、桜海老のかき揚げの盛り合わせです。

「塩だけで食べるほうがおいしいですよ」

 と言いながら、G.Aさんが手渡してくれたのは赤穂の天塩です。この天塩、なんとG.Aさんのマイ塩で、この店に瓶ごとキープしているのだそうです。さすが行きつけのお店ですねぇ。

 こんなに松茸を食べたのは、生まれてはじめてかもなぁ。ゲップまで松茸の香りたっぷりで、大々満足です。

「あらかじめお願いしている料理はここまでなので、あとは好きなものをたのみましょう」

 ということで、焼酎ボトル(「邑」、2,800円)をおかわりし、注文したのはカキフライ(900円)です。さっきのバター炒めの牡蠣がおいしかったですからねぇ。

 出てきたカキフライは、予想どおりの美味しさ。火の通り具合が絶妙ですねぇ。

 さらにはポテトサラダ(400円)に、生たらこ煮(500円)、そして穴子天ぷら(1本、400円)ももらって飲み進めると、店主が揚げ銀杏を出してくれます。

 この店、夜の部の営業は、午後5時から始まって、9時がラストオーダー。この4時間の間に、天ぷらや刺身を楽しむために、大勢のお客さんがやってくるのだそうです。今日はG.Aさんがあらかじめ予約しておいてくれたスペシャルコースでしたが、普段でも、天ぷら、刺身の他に2品が付く「親父おまかせコース」が1,500円で楽しめるのだそうです。

 午後7時から始まった楽しい時間は飛ぶように過ぎて、あっという間に閉店時刻です。あんなに松茸を食べて、いったいいくらくらいになるんだろうと、ドキドキしながらお勘定を待っていると、そのお勘定はなんと4人で23,000円。ひとりあたり、なんと5,750円だったのでした。

 冬場の鍋もおいしいんだそうで、これもまた楽しみです。ぜひまたご一緒させてください!>G.Aさん

071116a 071116b 071116c
桜海老とビール / 松茸の土瓶蒸し / 芋焼酎「邑」

071116d 071116e 071116f
松茸と桜海老の天ぷら / カキフライ / ポテトサラダ

071116g 071116h 071116i
生たらこ煮 / 穴子天ぷら2本 / あげ銀杏

店情報

《平成19(2007)年11月16日(金)の記録》

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店情報: 天ぷら「日乃家(ひのや)」(白金高輪)

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  • 店名: 酒処・めし処「日乃家」
  • 電話: 03-3441-5394
  • 住所: 108-0073 東京都港区三田5-20-6
  • 営業: 11:00-13:30と17:00-21:30(21:00LO)、土日祝休
  • 場所: 地下鉄白金高輪駅3番出口を出て、桜田通り(国道1号線)を三田方面に170mほど進み、魚藍坂下信号交差点を左折。1ブロック(30mほど)進んだ右手に、案内電灯看板が出ているので、そこを右折して4軒めくらい。左手2階。駅からの全行程は230m(徒歩4分)ほど。
  • メモ: 親父おまかせコース(天ぷら、刺身、他2品)1,500円、ママおまかせコース 1,200円、天ぷら盛り合わせ 1,200円、お刺身盛り合わせ 1,400円、煮物・焼物各種 400円~ 。飲み物は生ビール中ジョッキ(サッポロ)600円、ビンビール大瓶(キリンラガー) 600円、お酒熱燗・冷酒 700円、ウーロンハイ・レモンサワー等 400円、焼酎いいちこボトル 3,000円、ウイスキーオールドボトル 4,000円など。メニューは手書きで、仕入れによって変わる。ある日のメニュー例は、カニチャーハン700、にら玉子400、湯どうふ600、玉子やき600、あらびきウインナー500、あげ銀杏500、はまぐり酒むし600、生ハム400、ポテトサラダ400、かにサラダ600、紙カツ500、カキフライ900、牛肉しぐれ煮500、あつあげ煮400、生たらこ煮500、〆さば500、ほたて刺600、まぐろ刺800、穴子天ぷら(1本)400、桜えびかきあげ500、小柱かきあげ600、しらうおかきあげ600、特製かきあげ600、天ぷら盛り合せ1,200など。公式サイトあり。(2007年11月調べ)

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牛蜂の巣のピリ辛炒め … 台湾料理「相思豆(ちゃんすうとう)」(鎌倉・大船)

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 G.Aさんが美味しくて、値段も安い台湾料理屋を発見されたのだそうで、さっそくご紹介していただくことになりました。

 やってきたのは大船駅南口から、歩いて7分ほどのところにある「相思豆」。以前はもう少し大船駅寄りで「来来亭」というお店をやっていたという店主夫婦が、昨年(2006年)11月に新装開店したお店なのだそうです。店内は右手がL字型のカウンターで、左側の壁沿いにテーブル席が数卓並びます。もともと居酒屋だった店舗を、居抜きで借りたんでしょうね。

 L字カウンターの短辺の位置にG.Aさんと並んで座り、まずは瓶ビール(キリンラガー中瓶、450円)を注文すると、お通しは、小皿に山盛りの中華風春雨です。

 第一巡目の注文として、G.Aさんが前回来たときにとても美味しかったとオススメの「トマトと豆腐と玉子炒め」(650円)と、前回引かれたけど注文していないという「牛のはちの巣のピリ辛炒め」(750円)の2品を注文します。

 カウンター奥の厨房で、台湾出身の店主がジャッジャッジャッと中華鍋をふって調理して、できあがった料理を日本人の奥さんが席まで持ってきてくれます。夫婦ふたりで切り盛りしているこのお店、接客は主として奥さんが、調理はご主人が担当してるんですね。

 トマトと豆腐と玉子炒めは、その名のとおり、トマトと豆腐と玉子を炒めて、とろりと仕上げた一品。グリーンピースも加わって、赤、白、黄、緑の色合いも美しく、中華料理にしてはやさしい味つけで、とろりとやわらかいこともあって、実に食べやすい。第1品目にいただく料理としてピッタリだと思います。それにしても、トマト、豆腐、玉子が同じくらいの食感に仕上がっているのがすばらしいですねぇ。

 そして牛のはちの巣のピリ辛炒め。はちの巣のしっかりとした弾力が嬉しくて、パクパクと食べてしまいます。

 飲み物は台湾紹興酒(ボトル、1,500円)を、ボトルごと燗付けてもらって、氷を入れたグラスでいただきます。燗付けロックにすると、味がやわらかい感じになるのです。

 第二巡目は、ボードに手書きされた「本日のおすすめ」メニューから「牛バラ肉の煮込み」(750円)を注文。一口大のブロック状にカットされた牛バラ肉は、冬瓜(とうがん)や青菜と一緒にじっくりと煮込まれたもので、肉もとってもやわらかい。

 店の名の「相思豆」は、「ちゃんすうとう」と読み、孔雀木という植物の種なんだそうです。台湾では「縁結びの種」として、お守りとしても使われているそうです。店内にも、その赤い種が置かれています。

 最後のシメとしてもらったのは「台湾風焼きそば」(650円)。具だくさんの中華風焼きそばに、ちょっとお酢をたらして食べると、これがまたうまい。しかし“ラ族”(=ラーメン好きな人たち)のG.Aさんによると、前回食べた焼きビーフン(650円)のほうが、もっと絶品だったのだそうです。

 それぞれに美味しい料理に舌鼓を打ちながらの1時間半。お勘定はふたりで4,750円(ひとりあたり2,375円)でした。どうもごちそうさま。

 他の料理もいろいろと食べてみたいお店です。

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ビールとお通し(春雨) / トマトと豆腐と玉子炒め / 台湾紹興酒

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牛バラ肉の煮込み / 台湾風焼きそば / 相思豆

店情報


 「相思豆」を出て、次に向かったのは、これまたG.Aさんが最近発見したという、大船駅すぐ横の「ちょいのみてい」です。店に入ると、すぐ横におつまみの小鉢類がずらりと並んでいて、それをトレーにとって奥のレジへと進み、飲みものを注文する仕組みの立ち飲み屋さん。

 特徴的なのは、店員さんがみなさん若い女性であることで、胸にはみなさん「No.1」と書かれた名札を付けています。近くでよく見ると「明るさ、No.1」とか、「元気な返事、No.1」と、それぞれの人が、自分のNo.1のアピールポイントを手書きしているようです。

 もともとは藤沢からはじまったようなのですが、今やここ大船や、横浜、川崎にも店舗展開しているという立ち飲みチェーン店です。

 店員さんたちが若くてかわいいのはいいのですが、お酒に関する知識(呑ん兵衛の常識みたいなの?)はあまりないようでした。

 いろんな立ち飲み屋が流行るようになってきたんですね。

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「ちょいのみてい」 / 飲み物と料理 / 店内の様子

《平成19(2007)年11月14日(水)の記録》

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店情報: 台湾料理「相思豆(ちゃんすうとう)」(鎌倉・大船)

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  • 店名: 台湾家庭料理「相思豆」(チャンスウトウ)
  • 電話: 0467-48-5526
  • 住所: 247-0056 神奈川県鎌倉市大船3-2-9
  • 営業: 17:30-00:30、日休
  • 場所: JR大船駅の南改札を出て東口に下り、右へ。道成りに徒歩約5分(300mほど)進み、「大船駅東口交通広場前」信号交差点を左折。そこから100mほど先の右手。東口の階段を下りてからの全行程は、徒歩約7分。
  • メモ: 平成18(2006)年11月オープン。〔点心〕ぎょうざ400、水ぎょうざ450、エビぎょうざ500、フカヒレぎょうざ500、大根もち500、ちまき500、スープ入りまんじゅう500、しゅうまい450。〔スープ〕玉子スープ400、野菜スープ450、酸辣湯600、ふかひれスープ850。〔麺類〕ラーメン450、台湾ラーメン、ジャージャーメン600、四川風坦々メン650、あんかけ焼きそば700、台湾風焼きそば650、焼きビーフン650、汁ビーフン500。〔ごはん類〕チャーハン600、にんにくチャーハン650、エビチャーハン750、カニチャーハン750、中華丼650、天津丼850、ライス(スープ付き)150。〔一品料理〕干し大根入り玉子焼600、チンゲン菜炒め600、空芯菜炒め600、野菜炒め650、トマトと豆腐と玉子炒め650、麻婆豆腐650、レバニラ700、からつきエビのからあげ700、牛のはちの巣のピリ辛炒め750、ナスミソ750、かに玉750、にがうり炒め750、豚足の煮込み750、エビチリ800、豚の角煮800。〔おつまみ〕メンマ150、ザーサイ150、ピータン300、豚耳350、豚足350、おしんこ150、腸詰450、焼き豚600、など。〔飲みもの〕生ビール450、瓶ビール(中)450、青島ビール450、ウーロンハイ300、レモンサワー350、梅サワー350、ライムサワー350、ライチサワー350、巨峰サワー350、グレープフルーツサワー350、グアバサワー350、老酒ミニボトル(180ml)500、台湾紹興酒ボトル1,500、中国紹興酒ボトル1,500、中国焼酎1,500、杏露酒ボトル1,500、グラス380、冷酒600、日本酒(1合)300、ソフトドリンク各200、仙草ゼリー350、杏仁豆腐350。これら定番メニューの他に、ボードに「本日のおすすめ」が書き出される。ある日のおすすめメニューは、牡蠣玉750、カレイの甘酢あんかけ750、ゲソとセロリのピリ辛750、牛バラ肉の煮込み750の4品。商店街サイトあり。(2007年11月調べ)

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たっぷりとタラ尽くし … 魚料理「竹よし(たけよし)」(都立家政)

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 毎月、第2土曜日は「竹よし」の夕食会が開催される日。予約制・会費制(ひとり5千円)で、その月々のテーマ食材と、飲み物が楽しめるのです。予約定員は特に設定しない代わりに、参加者が座席数(14人分)を超えると「立ち飲みでの対応もよろしく!」という会なのです。

 そんな夕食会も、会を重ねて今回が第70回目。テーマ食材は「北海道産・活じめ真だら」で、このタラを、昆布じめ、刺身から始めて、にぎり寿司、生食の白子、あら煮で楽しんだ上に、第二素材として殻付きのホッキ貝が、網焼きで出されたのだそうです。

 明けて、今日は日曜日。このところ、夕食会の翌日に「竹よし」に出かけていって、夕食会の残り食材でチビチビとやるのを楽しみにしているのです。

 ただし、いつも夕食会の食材が残っているとは限らなくて、たまには全部なくなってしまうこともあります。

 まずは瓶ビール(アサヒスーパードライ中瓶、500円)をもらって、お通し(200円)の海鮮サラダ風ソーメンをつつきながら、さっそく店主(マスター)に確認してみます。

「昨日の食材は残ってますか?」

「昨日はねぇ。若いお客さんが多かったからか、みなさん、よく召し上がっていただいて、刺身は、かろうじて1~2人前ほどが残ってるという状態です。お造りしますか?」

「よかった。ぜひお願いします」

 待つことしばし。出されたのは、タラ刺身と、同じタラの昆布じめの2種盛りです。とろけるよな軟らかさのタラ刺身ももちろんですが、絶品は昆布じめ。昆布でしめたことで、ある程度水分も飛んで、しっかりとした弾力感が出てきています。昆布のうまさともあいまって、すばらしい味わいですねぇ。

 これはやっぱり燗酒(菊正宗、350円)ですね。

 続いては、生のタラ白子。紅葉おろしをちょいと添えて、ポン酢醤油でいただきます。

「今回の白子は、ちょっと若かったね」

 と店主が言うとおり、全体がピンク色で、小ぶりの白子なんだけど、これはこれでまたうまいのです。

「あら煮も、ホンのちょっとだけ残ってるからお出ししましょう」

 と、タラのあら煮をお椀によそってくれます。海鮮サラダ、刺身、白子ポン酢と、冷たい料理が続いたところへ、このあったかいタラあら煮。舌先が変わって、燗酒も進むは進むは。今、何本目だっけ!?

 最後にもう1品と、店主に無理を言って作ってもらったのは、白子の天ぷら。サクッとかじった熱々の衣の中から、トロリと出てくる白子のなんとも絶なる美味さよ! 大贅沢なタラ尽くしですねぇ。

 開店直後の、午後5時過ぎから午後9時まで。ちょっとだけ楽しむ予定が、4時間弱も長居してしまい、今日のお勘定は3,800円でした。どうもごちそうさま!

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タラの刺身(手前)と昆布締め(奥) / タラあら煮 / 白子天ぷら

店情報前回

《平成19(2007)年11月11日(日)の記録》

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幻の煮込みで大々満足 … もつ焼き「石松(いしまつ)」(中野)

071109y (煮込みハーフ)


 中野での2軒目は、もつ焼きの「石松」です。カウンター7~8席しかない店内は、たいていいつも満席状態。今日はどうかな、と恐る恐るのぞき込むと、なんと空きが2席ほど。やったーっ。

 さっそくキープしている金宮ボトルを、生茶割りでいただくと、今日のお通し(380円)は、牛ハツ刺し。はじめて食べるお通しです。

 入口近くに座っているお客さんが、若鶏ねぎ間串焼(120円)を注文したので、すぐに私も便乗注文です。

 「石松」は、もつ焼きが「超」が付くくらい有名なので、その影に隠れてますが、実は焼き鳥メニューもあるのです。今注文した、ねぎ間串焼のほか、若鶏砂肝串焼(100円)、若鶏手羽串焼(180円)、そしてこの店の名物のひとつでもあるツクネ(正式名称は若鶏つくね串焼、150円)の4種類です。

 もしかすると、若鶏ねぎ間串焼を食べるのは、はじめてかも!

 「石松」の店主(マスター)は、焼き方がものすごく上手なので、普通の鶏肉っぽいのに美味しいんですよねぇ。店主には、焼いてる肉の内側が見えてるとしか思えないような焼き具合なのです。

 若鶏ねぎ間串焼の次は「石松」と言えばの一品、レバ刺しです。そのレバ刺しをハーフ(半人前)にしてもらって、その代わりにレバの串焼き(100円)を塩とタレで1本ずつ焼いてもらいます。生レバーもさることながら、焼いたレバーがまた美味いのです。

 なにしろ注文を受けてから、大きなレバーから切り出して作る、レバ刺しと、レバ串焼きですからねぇ。これほど新鮮なものはありません。レバーぎらいの人も、この店のレバーを食べると、考えが変わるはず! ぜひオススメします。

 そして個人的な大好物、ガツ醤油(100円)にテッポウ醤油(100円)。

 そうこうしているうちにツクネ(150円)の準備が始まったので、これまた私も便乗注文。先ほどと同じく、塩とタレで1本ずついただきます。

 ツクネも注文を受けてから、挽き肉をこねはじめ、それを丸めながらお湯の中に投入して茹で、串に刺して焼き上げるという、まさにできたてホヤホヤのツクネなのです。

 いやぁ、今日のツクネも、おいしいなぁ、と顔をほころばせているところへ、店主から

「煮込み食べる?」の声。

「も、もちろんいただきますっ!」

 と、勢い込んで返事です。

 冴えないオヤジが、酒場で注文するものの代名詞的に使われるのが「煮込みにチューハイ」。なんだか安っぽいイメージがあるんでしょうが、その煮込みも、極めるところまで極めたら、ものすごい料理になるのです。その煮込みを求めて、わざわざやってくるお客さんが現れるほどに!

 この店の煮込みも、そんなスーパー煮込みのひとつに挙げられる品物。

 煮込みといえば、それ専用の鍋でグツグツ煮込むようなイメージが強いでしょうが、この店の煮込みは、普通の家庭用の鍋で作られるのです。しかも、いつもあるわけではなくて、店主がその気になったときにしか作られません。さらに言えば、煮込みがある日でも、店主のOKが出なければ食べることはできないのです。

「煮込みは、まだ食べられないの」

 夜の10時ごろに、待ちきれずにそう聞いたりするお客さんもいますが、

「まだ、煮込みが浅いからダメ」

 と、なかなかOKを出してもらえないのです。

 現在の時刻は、午前0時。ちょうど日付けが変わったところです。日によって違うんでしょうが、このくらいの時間になって、煮込みが食べられる状態になるんですね。

 この店の煮込みは、とろけるように軟らかいのが大きな特長です。それも、軟らかいのに弾力感があるという、絶妙なバランスなのです。うーん。さすがですねぇ。

 久しぶりに幻の煮込みをいただいて、約2時間の滞在は1,420円でした。どうもごちそうさま。

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牛ハツ刺し / 若鶏ねぎ間串焼 / レバ刺しハーフ

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レバ串焼き(タレ・塩) / つくね塩 / つくねタレ

店情報前回

《平成19(2007)年11月9日(金)の記録》

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五十周年おめでとう! … 酒亭「北国(きたぐに)」(中野)

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 中野駅南口の裏路地にある酒場「北国」。昭和32(1957)年11月の開店し、このたび、めでたく50周年を迎えたのだそうです。

 店内には50周年記念の「八鶴」樽酒が用意され、やってきた常連さんたちに祝い酒がふるまわれます。この店に集う諸先輩方(みなさん、この店に通って数十年という常連さん!)と比べると、まだまだヒヨッコとも言えぬ若輩者ながら、私もその記念の樽酒のご相伴にあずかります。ックゥ~ッ。樽酒のなんとうまいことよ。

「お蔭様にて北国が五十周年を迎えることができました。ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします」

 冒頭に、そう書かれた記念の写真集には、女将さんの、とっても若い頃の写真もあって、50年の月日を感じさせます。店を手伝っているユミさん(女将さんの姪)も若いなぁ。もっと興味深いのが、常連さんたちの昔の写真。なにしろみんな、若々しい青年の姿なのです!

「この店に通って、もう30年だよ」

 というような常連さんたちの話は、よく伺っていたのですが、こうやってその頃の写真を目の当たりにすると、改めてその歴史に驚かされます。みなさん、こんな若いころから「北国」に通ってたんですねぇ。

 ひと言に50年といいますが、これだけ長い年月、人に愛されて、店を続けていくこと事態が、ものすごいこと。ママさんやユミさんの頑張りもさることながら、通い続ける常連さんも一緒に築き上げた金字塔だと思います。

 ふるまい酒のあとも、板わさ(400円)をつまみに、同じ「八鶴」の燗酒を2本ほどいただいて、約1時間の滞在は、1,700円でした。

 毎年11月10日から、「北国」名物のおでんもはじまります。今年はその日が土曜日なので、12日の月曜日からの開始ですね。これもまた楽しみです。

 この先、60周年、70周年、……と、ますます楽しく過ごせますように!

店情報前回

《平成19(2007)年11月9日(金)の記録》

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アラ煮を肴に燗酒2本 … 居酒屋「夕凪(ゆうなぎ)」(横浜・屏風浦)

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 魚がおいしい店で食べる、アラ煮ほど、お酒に合う肴はありません。チマチマと身をほじらないといけないので、長持ちするし、そうやってほじくり出した骨ぎわの身のうまいことと言ったら!

 豚や牛、鳥などが、肉もさることながら、内臓がもっと美味しいのと同じように、魚の普通の身の部分より以上に美味しいのが、魚のアラなんですよねぇ。

 京浜急行線・屏風浦(びょうぶがうら)駅のすぐ近くにある居酒屋「夕凪」も、そんな魚がおいしく食べられる店の1軒。店主自ら、佐島漁港(横須賀市)に出かけて仕入れてくるという新鮮な魚介類がそろっているのです。

 会社帰りにちょっと立ち寄って、まずはお通しの三点盛り(500円)をつまみながら瓶ビール(キリンラガー大瓶、750円)でウォームアップ。ほんのりと心地よくなったところで、いよいよアラ煮(580円)を注文し、飲みものも燗酒(高清水、400円)に移行します。

 「夕凪」は、店主と、そのお母さん、そして手伝いの若い女性(アニメの声優さんのようなカワイイ声の持ち主!)の3人で切り盛り中。店内は6~7人座れるカウンター席と、4人掛けのテーブル席が数卓。その他に座敷席もあって、会社の宴会などにも対応できるようになっています。

 木曜、午後9時過ぎのこの時間、店内は比較的静かで、カウンター席の先客は男性ひとり客と、男性ふたり連れの、計3人です。

 さぁ、店主のお母さんが作ってくれていたアラ煮ができあがりました。丸皿に、2種類の魚の頭の部分とカマの部分が盛られています。

「手前がショッコで、赤いのはハチビキです」

 と店主が教えてくれます。ショッコというのはカンパチの子供。ハチビキは、形がサバに似ていて、全体が赤いことから、アカサバとも呼ばれているのだそうです。

 さっそく頭の部分をくずしながら、骨の周りに付いた肉にしゃぶりつきます。ん~。このやや甘みのある醤油味がいいですねぇ。くちびる(なのか?)や目玉の周りにある、フルフルの肉の食感もいいですねぇ。

 たっぷりのアラ煮は、お酒1本だけでは食べきれず、もう1本(400円)、燗をつけてもらいます。

 久しぶりに、店主ともゆっくりと話をしながらの2時間弱。今日のお勘定は2,630円でした。どうもごちそうさま!

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「夕凪」 / ビールとお通し / 燗酒

店情報前回

《平成19(2007)年11月8日(木)の記録》

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家族といるより長い? … 小料理「銀漢亭(ぎんかんてい)」(神保町)

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 酒友・呑んだフルさんとともに「兵六」を出て、神保町駅方面に向かいながら、「兵六」の常連のみなさんが、「兵六」終了後に流れるという店の数々を紹介してもらいます。「兵六」を好む人たちが通う酒場だけあって、どの店もなかなか良さそうです。

「今日は、ここに入りましょう」

 と、呑んだフルさんが入っていったのは、創作小皿料理の「銀漢亭」。入口近くはL字カウンターの立ち飲みで、店の奥のほうは普通に座れるテーブル席になっています。我われは、立ち飲みカウンターに立ち、呑んだフルさんオススメのシークワーサーハイ(300円)を注文します。

 飲み物は、シークワーサーも含む酎ハイ各種が300円のほか、生ビール400円、日本酒(浦霞など)や焼酎が400円、グラスワインが350円といったところ。

 料理のほうは、さすがに創作小皿料理の店らしく、黒板に「本日のおすすめ料理」が手書きされています。その内容は、鶏モツ赤ワイン煮、いかのうまみ干、鯖の山椒煮、烏賊と大根のうま煮、いなだの昆布〆め(以上各600円)、やりいかの酒盗和え(500円)、豆腐よう(400円)などなど。他にも肉料理、野菜料理、魚料理といってジャンルに分かれて、それぞれ10種類程度ずつの料理が並んでいて、どれもそれぞれに美味しそうです。

 そんな中から、選んだ料理は、じゃがバターと塩辛(600円)。ひと口大にカットして、ずらりと並べられた、じゃがバターの上に、イカの塩辛がトッピングされています。

 そうこうしているうちに、「兵六」の閉店時刻(午後10時半)を過ぎ、「兵六」で飲んでいた常連さんたちも続々と登場。店はますます、にぎやかになってきました。なるほどなぁ。「次は銀漢亭!」なんて約束をしてなくても、みなさん、知らぬ間に同じ店に流れてくるんですねぇ。もしかすると、家族と過ごす時間よりも、常連さんたち同士で過ごす時間のほうが長いくらいかもしれませんね!(笑)

 明日の仕事に備えて、今日は横浜まで帰らないといけません。それじゃ、私はボチボチと引き上げますね。どうもごちそうさま。みなさん、お先に!

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シークワーサーハイ / じゃがバターと塩辛 / 店内の様子

店情報

《平成19(2007)年11月6日(火)の記録》

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店情報: 小料理「銀漢亭(ぎんかんてい)」(神保町)

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  • 店名: 創作小皿料理「銀漢亭」
  • 電話: 03ー3264ー7107
  • 住所: 101-0051 東京都千代田区神田神保町2-20
  • 営業: 16:30-23:00、土日祝休
  • 場所: 地下鉄・神保町駅(新宿線、三田線、半蔵門線)A4出口を出て、白山通りを、JR水道橋駅方面に向かい、すぐの角を左折し、20mほど先の、トの字を右折し、少し進んだ先、左手。A4出口から徒歩約1分。JR水道橋駅からは徒歩10分ほど。
  • メモ: 公式サイトあり。
    料理:〔肉料理〕熊本の馬刺900、博多地鶏のたたき800、沖縄の豚角煮(ラフテー)600、ガーリックウィンナー550、豚しゃぶザーサイ450、バジル鶏450、鶏手羽先の黒酢煮400、チーズ・サラミ・クラッカー450、スパムとパン450。
    〔野菜料理〕じゃがバターと塩辛600、栃尾のジャンボ油揚400、春雨のうま煮400、沖縄の島らっきょ450、ピクルスとアンチョビオリーブ400、漬物の盛合せ500。
    〔魚料理〕知床たこのカルパッチョ650、いか刺し600、いわしのオイル漬とパン500、宇和島のじゃこ天400、干物魚の盛合せ500、鮭のとば250、川海老の唐揚400、自家製ちりめん山椒350(お土産用100g 850)。
    〔ほっこりごはん〕ガーリックライス450、山椒じゃこのおにぎり400。
    〔本日のおすすめ料理(黒板に手書き)〕鶏モツ赤ワイン煮600、いかのうまみ干600、鯖の山椒煮600、烏賊と大根のうま煮600、いなだの昆布〆め600、やりいかの酒盗和え500、豆腐よう400など。
    飲物:〔ビール〕サントリーモルツ生400、サントリープレミアムモルツ瓶600、アサヒ黒生缶450、ギネスビール650、〔酎ハイ〕シークワーサー、レモン、ライム、ウーロン茶、梅 各300、〔焼酎〕芋・麦・米400、泡盛(於茂登・くら)500、泡盛(瑞泉古酒45°)600、黒糖(気)600、いいちこ300、デキャンタ1,500、〔ワイン〕ハウスワイン赤・白 各350、デキャンタ1,500、サンタカロリーナ(チリ)400、ボトル2,200、ボルトリ(オーストラリア)400、ボトル2,200、サングリア350、〔日本酒〕菊水辛口・浦霞400、辛丹波350、〔ウイスキー〕サントリー角300、ダブル550、サントリーオールド400、ダブル700、〔バーボン〕アーリータイムス300、ダブル550、〔カクテル〕銀漢ブルー400、ウォッカグレープフルーツ400、ジンライム400、ジンサワー400、〔果実酒〕梅酒400、濁り梅酒(日本酒ベース)550、〔ソフトドリンク〕ウーロン茶300、梅干ジュース400。(2007年11月調べ)

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