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熱々の肉豆腐が大人気 … 大衆酒場「細雪(ささめゆき)」(渋谷)

肉豆腐


 京王井の頭線のガード下には、焼き鳥屋を中心とした、古くから続く酒場街が形成されていて、「渋谷にも名酒場あり」といった風情を見せつけてくれます。

 その一角にある、いかにも大衆酒場然とした酒場が「細雪」です。

 ホッピーと書かれた赤提灯をくぐり、電源の入っていない自動ドアを手でヨイショと開けて店内へ。まさに今、看板に灯がともったばかりの、開店時刻、午後5時です。

「こんばんは。もう入ってもいいですか?」

「はい、どうぞどうぞ。どこへでも」

 笑顔で迎えてくれる、おかみさん。ご主人は奥のテーブルで、今日の魚メニューを書いているところです。

 店内は4人掛けのテーブルが、ずらりと8卓ほど。このテーブル席に、呑ん兵衛たちが夜な夜な入れ込みで入ってくるのでした。

 今日は口開け第1号の客になったので、席は選びたい放題。ちょうど真ん中にある席の奥側に座ります。この席は、テーブルが独立している上に、後ろが壁なので、背もたれもあり、かつテレビもほぼ真正面という、この店で最もいい(と私が思っている)席なのです。何度か来たけど、この席に座れたのは初めてだ!

 外は寒いけど、まずはやっぱり瓶ビール(アサヒスーパードライ大、550円)をもらって、この店の名物のひとつである肉豆腐(350円)を注文します。

「肉豆腐は、ちょっと時間がかかるけど、いい?」

「そうか。開店直後ですもんね。いいですよ、ゆっくりで!」

 そう返事しつつ、1杯めのビールの泡を慎重に作ります。なにしろ、この1杯めが楽しみなんですよねぇ。やぁ、おいしそうな泡になった。ちょっと観賞してから、ググゥ~ッと飲み干します。っあぁーっ、うまいっ。

 ビールが3杯めに入ったところで、肉豆腐もできあがってきました。深皿のまん中に、肉豆腐の煮汁でよく煮込まれた大きな豆腐が1個、デンと鎮座し、豚肉、玉ねぎの入った煮汁が掛けられています。味は東京らしい、醤油+砂糖の甘辛味。これに七色(七味唐辛子)をかけて、ハフハフといただくのです。

 そこへ「ヨッ!」と軽く手をあげながら入ってきたおじさんは、いかにも常連さんらしく奥のテーブルに座り、マグロ刺身(650円)と肉豆腐(350円)そ注文して、飲み物はホッピー(320円)です。

 マグロ刺身も、この店の名物のひとつ。いつも素晴らしいマグロがでてきます。

 ホッピーは、焼酎の入ったジョッキと、瓶入りのホッピーとが出され、自分で割る仕組み。このおじさんは、いつもそうしているのか、ホッピーが出るのと同時に、おかわり用のナカ(1合290円)も別のコップで同時に出されます。

 ここ「細雪」は、渋谷のど真ん中にありながらも、最安値180円のお新香からはじまって、塩辛、塩ラッキョウ、トマト、モロキュウなどが250円、冷奴が270円、シシャモや丸干イワシ、ポテトサラダなどが300円と、その値段は、正しき大衆酒場価格なのです。当然のように、ひとり鍋もメニューにあって、湯豆腐が450円、タラチリが550円です。

 この店の中では高い肴なのが、毎日、小さな厚紙に手書きされる刺身類。新しいお客が入ってくると、まずこの刺身メニューの書かれた厚紙が手渡されるのです。

 今日の刺身は、コハダ(400円)、タコ刺(450円)、ヤリイカ刺(550円)、〆サバ(600円)、コチ刺(550円)、ヒラメ刺(550円)、シマアジ刺(550円)、ハタ刺(550円)、マダイ刺(550円)、カンパチ刺(550円)、ブリ刺(550円)、そして最高値が件のマグロ刺(650円)です。

「やぁ、今日はハタがあるんだ。ハタ刺身をください」

 さっき入ってきた、おにいさんは手渡されたメニューからハタ刺(550円)を選択します。そうそう。ハタも美味しそうなんですよねぇ。

 飲み物のおかわりに燗酒(「関の春」280円)を注文すると、奥の湯煎式の燗付け器で、じっくりと燗を付けてくれます。燗が付くのを待ちながら、

「今日は、どの刺身がおすすめ?」

 と聞いてみると、奥の厨房にいる店主から、

「今日はカンパチもいいねぇ」

 という返事で、そのカンパチ刺(550円)を注文。美しいピンクの刺身が出されます。へぇ。カンパチって、ブリやハマチなどに近い系統の刺身だと思ってたのに、こういうピンクの身もあるんですねぇ。

 そのカンパチ刺身で、燗酒をチビチビとやりながら、この店の営業時間や定休日を確認します。いつも、お客さんがいっぱいで、こういう話をうかがうチャンスもなかったのです。

「昔は土曜日もやってたんだけど、今は土・日と祭日はお休みにしてるのよ」

 と、おかみさん。そんな話をしているうちに、だんだんとお客さんも増えてきました。名物の肉豆腐、マグロ刺身がよく出ているほか、冷奴(270円)やポテトサラダ(300円)も人気があるようです。この店には、サラダ系はポテトサラダしかないので、お店の人も、お客さんも、単に「サラダ」と呼ぶんですね。小さな新発見です。

 午後6時まで、ちょうど1時間の滞在は、1,730円でした。どうもごちそうさま。

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「細雪」 / 燗酒 / かんぱち刺身

店情報前回

《平成19(2007)年12月5日(水)の記録》

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» 3月末日をもって閉店 … 呑み処「細雪(ささめゆき)」(渋谷) [居酒屋礼賛]
 2年ぶりに「細雪」にやってきたら、火曜日の夜9時半にもかかわらず、店内は「超」が付くほどの満席状態。  入口すぐのテーブル席に相席させてもらって、私はホッピーセット(350円)を、同行者は燗酒(300円)をもらって乾杯し、つまみは自慢の刺身をおまかせで盛り合わせてもらう。  ホッピーセットには、自動的にコップ1杯(=180ml)分のナカ(焼酎、300円)が付いてくるので、合計は650円となる。し... [続きを読む]

受信: 2017.04.20 22:04

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