牡蠣南ばんで蕎麦屋酒 … そば「おおひら」(野方)
わが家の近くにある手打ちそばの「おおひら」。テーブル席が3卓ほどと、座敷席も3卓ほどの、この蕎麦屋には、季節ごとに、その季節ならではの蕎麦が1,000~1,500円くらいで用意されています。この季節の蕎麦を食べながら、チビチビといただくお酒が実にいいのです。
12月に入ったばかりの今の時期、品書きに並ぶのは、「きのこ汁せいろ」(980円)、「姫鱒(ひめます)天せいろ(いくら御飯付き)」(1,380円)、「牡蠣(かき)かき南ばん(小ライス付き)」(1,260円)の3品です。
どれにするか、しばらく悩んだ末に、今回は「牡蠣かき南ばん」をもらうことに決定。「かきかきなんばん」という、言葉の響きもかわいらしいですね。
「お酒のつまみとしていただきますから、すぐに出してください」
注文するときに、そう付け加えておきます。
席に座るとすぐに出される揚げそばと、お酒のお通しとして出されたセリのお浸しをつまみながら、信州・佐久の地酒、「菊秀(きくひで)」の燗酒(420円)をチビリチビリ。
蕎麦屋で飲む酒が好きな人は非常に多いようで、蕎麦屋酒に関する本も、数多く出版されています。
まず蕎麦味噌か、板ワサ、焼き海苔などで日本酒を飲み始め、お酒をおかわりする頃に、鴨や天ぷらなどの、ちょっとこってりとした系統のつまみへと進み、最後にズズッと、せいろでしめる。こういうのが、粋(いき)な飲み方の例として紹介されています。
ここ「おおひら」にも、おしんこ(400円)、とろろ(420円)、板わさ(420円)や、鴨焼き(790円)、あなご天ぷら(790円)、季節の野菜天ぷら(950円)、盛り合わせ天ぷら(1,260円)などのつまみメニューも用意されているのですが、ひとりでやって来たときに、それらを注文したことはありません。
こういうつまみ類からはじめると、私の場合には、ついもう1杯、もう1杯とお酒が進んでしまって、シメのそばまで行き着かなかったりして、『なんのために蕎麦屋に入ったんだろう?』なんてことになりがちなのです。
もっと問題なのは、粋な飲み方は、軽めにしか飲まない割りには、けっこう高くついてしまうということ。値段設定がかなり安めの、この店でも、板わさ(420円)、鴨焼き(790円)、せいろ(580円)と食べ進むうちに、菊秀(420円)を3本ばかりいただくと、お勘定は3,050円になりますからねぇ。
引き合いに出して申しわけありませんが、超有名店ということでご容赦いただくとして、「神田やぶそば」で、同じような楽しみ方をすると、かまぼこ(630円)、あいやき(1,260円)、せいろうそば(630円)に、菊正宗(735円)が3本で、なんと4,725円と、とても「軽~く」とは言えないお勘定になってしまうのです。
そんなこんなで、結局この店では、季節の蕎麦を注文して、それをつまみにお酒を飲む、というパターンが、私のお気に入りになっているのでした。
「お待たせしました、牡蠣かき南ばんです」
やぁ、来た来た。塗りのお盆の上には、牡蠣南ばんそばの他に、茶碗のご飯、お新香(キュウリとカブ)、そして薬味(おろし生姜と刻みネギ)の小皿が載っています。
どーれどれ。まずは牡蠣をひと口。
ヌォーッ。うまいっ。
下味をして、衣をつけ、いったん唐揚げにされている牡蠣は、よく火が通っていながら、その衣のおかげで、牡蠣特有のコクと深みのあるうまみが、ちっとも失われていません。これはいいなぁ。あぁ、合わせるお酒も、うまいっ。
酒のつまみでいただくときには、そばもフニャっとふやけて、伸びた状態でも十分いけるのですが、せっかくの新そばなので、伸びてない、シャキッとしているうちに、麺の三分の一ほどをいただいておきましょうか。箸で軽くつまみあげては、ズズッ、ズズッ、ズズッと、そばをすすり込みます。
牡蠣がつまみになり、そえられている春菊もつまみになり、今やフヤフヤと伸びかけている麺もまたつまみになり、そして、最高のつまみは、なにしろその汁(つゆ)そのものです。
「お酒のおかわりをお願いします」
当然のようにお酒もおかわりし、ちょっと蕎麦をつついてはお酒を飲み、お酒を飲んでは蕎麦をつつき。最後に、具として入れられているネギで、添えられたご飯をいただくと、思いっきり満腹です。
1時間半の滞在。けっきょくお酒は3本いただいて、今日のお勘定は2,520円でした。
このシーズン、ぜひもう一度食べに来たい「牡蠣かき南ばん」ですが、向こうのおにいさんが食べていた「姫鱒天せいろ」もおいしそうだったよなぁ。次回もまた、何を注文するか迷うに違いない。ぜいたくな悩みなり。
「おおひら」 / 揚げそばとセリのお浸し / 牡蠣かき南ばん
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