金曜だけの、かくや漬 … 酒房「北国(きたぐに)」(中野)
「あれ、なんて言うんでしたっけ? 金曜日だけにある、古漬けを刻んだようなの。あれは今日もあるんですか?」
「あぁ。“かくや”のことね。準備はしてないけど、これから作るからいいわよ」
中野駅南口にある、創業50年の酒房「北国」。7席ほどのカウンター席をメインにして、テーブル席と小上がり席が各1卓ずつの小ぢんまりとした店内は、今日もまた、毎日のようにやってくる常連さんたちでにぎわっています。
そのカウンター席のまん中あたりに座り、今日は燗酒でスタートです。
日本酒は「剣菱」「八鶴」「桃川」、そして「新政」とそろっているのですが、銘柄指定をせずに「お酒」と注文すると、「新政」を出してくれます。昔ながらの燗付け器で、1本1本、きっちりと燗をつけてくれるのが嬉しいですね。
今日のお通しは、鴨のツクネが入ったお椀。外が寒くなってくると、こういう温かいお通しがありがたい。燗酒とともに、芯から身体をあたためてくれます。
お椀が一段落したところで、この店の冬場の定番、おでんを注文。まずは、玉子、すじ、ちくわぶ、の3品です。
ここの玉子は、殻付きのまま、おでん鍋に入っているのが特徴。ゆで揚げた殻付きの玉子を、おでん鍋の縁にコツンとあてて、殻の一部を割ってから、おでん鍋に投入。そのままクツクツと煮込むと、煮崩れず、殻の剥きやすい玉子に仕上がるのだそうです。熱くて剥けない人には、女将(ママ)さんが殻を剥いて出してくれます。
すじと、ちくわぶは、東京方面独特のおでん種。関西方面では“すじ”と言えば牛すじですが、関東では魚のすじ(白身魚のすり身+軟骨)のことでした。最近は、関西からの影響もあってか、牛すじも置いているお店が多くなってきていますので、関西では、関東では、という切り口では分けられない状況になっていますよね。ここ「北国」で扱っているのは、今も魚のすじだけです。
燗酒をおかわりして、2巡目は、がんもどき、つみれ、大根、の3品をいただきます。
都合、6品のおでんでお腹が満足したところで、3本目となる燗酒をおかわりして、冒頭の、かくや漬けの注文となったのでした。
この店の肴(さかな)のメニューは、毎日ホワイトボードに書き出される刺身や焼き魚、漬物、珍味などの十数品で、それぞれ300~500円ほど。品数は少ないながら、よく吟味された呑ん兵衛好みのする品々で、常連さんたちを飽きさせないのです。
毎日、必ずメニューに掲げられている、お新香は、この店の奥の厨房で漬けられている自家製のもの。店は土日がお休みなので、金曜日になって古漬けが余っていると、それを細かく切り刻んで、生姜と混ぜて、かくや漬けを作ってくれるのでした。
今日の、かくや漬けの中身はキュウリ、大根、ニンジン、ナスなど。これをチマチマとつまみながら、合わせる燗酒のなんとうまいことよ。
この、かくや漬け、できたて熱々のご飯に載せて食べたり、お茶漬にして食べたりしても美味しそうですよねぇ。
金曜日だけと言わず、毎日でもメニューに登場して欲しい逸品を楽しんで、2時間弱の滞在は、2,250円でした。やぁ、今宵もまた、満足、満足。
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