初めて食べた生アン肝 … 魚料理「竹よし(たけよし)」(都立家政)
「あまりにきれいなアン肝だったから、生で出してみたんですよ」
そう言いながら出してくれた生アン肝は、ツヤツヤと光る肌色も美しく、口に入れるとトロリととろける軟らかさ。アン肝は何度も食べたけれど、生で食べるのは初めてですねぇ。
西武新宿線・都立家政(とりつかせい)駅のすぐ近くにある、魚料理と天ぷらの店「竹よし」では、毎月第2土曜日に予約制・会費制(ひとり5千円)の夕食会をやっており、昨日がその日だったのです。
今月のテーマ食材はアンコウ。
普段の営業日にも、アン肝や、アンコウ鍋がメニューに挙がる「竹よし」ですが、普段は、すでに下ごしらえを終えたアンコウの肝や身を仕入れてくるのだそうです。しかし、夕食会のときは、アンコウを丸ごと仕入れて、店でさばきます。予約制なので、材料を歩留まりよく仕入れることができるからです。
夕食会のときに材料が足りなくなってもいけないので、たいていはちょっとだけ多めに仕入れをしているのだそうで、その余った分があれば、夕食会の翌日、日曜日のメニューとしてもいただけるのでした。
昨日の夕食会では、7.2キロの北海道産アンコウを使って、刺身、どぶ汁、アン肝、唐揚げ、雑炊が出されたのだそうです。
どぶ汁も、アンコウの夕食会のときには定番の品。生のアンキモをたっぷりと鍋に入れて炒め、お酒を足し、アンコウの身や野菜類を入れて、味噌で味をつけたもの。水分はアンコウや野菜から出たものだけというのが大きな特徴です。これだけは翌日には食べられなくて、夕食会に参加した人たちだけが食べられる一品です。(ちなみに、普通のアンコウ鍋は、普段の営業日にも食べることができます。)
生のアン肝に続いて出されたのは、アンコウの刺身。まっ白な身は、外側に近づくにつれてピンク色が増してきて、一番外側に淡く赤いふち取りがあるように見えるのが特徴。タラの刺身にも似た食感なんだけど、アンコウのほうが弾力感が強い。
今日は普通のポン酢醤油+紅葉おろしに加えて、生アン肝醤油でもいただいてみましたが、カワハギなどと比べると、アンコウは元々の身の味が強いので、そのままポン酢醤油でいただいたほうがいいようでした。あとで思ったことですが、アンコウの身に生アン肝を載せて、それを醤油ではなく塩でいただくと美味しかったのかもね。
合わせるのは、今日も「菊正宗」の燗酒(350円)。
燗酒はとても好きな飲み物で、できればいろんなお店で燗酒を飲みたいところなのですが、残念ながら燗酒のおいしい酒場は非常に少ないというのが実情です。いろんな地酒をそろえている店でも、燗ができるのは、それ専用の普通酒1銘柄のみで、しかもそれが不味(まず)かったりするのです。これらを料理と一緒に出すと、料理に合わないどころか、逆に料理の味を損なわせてしまいます。こういうお酒を出している酒場もをさることながら、造ることそのものを止めないかぎり、日本酒業界は自分で自分の首を絞めているようなものだと思うんですけどねぇ。
ここ「竹よし」では、一番普通の燗酒が「菊正宗」の上撰(本醸造酒)。これを正一合の徳利に入れて、湯煎で燗をつけてくれるのです。店主ひとりで料理も燗づけもやらないといけないので、たまーにちょっと熱燗になっちゃったりするのも、またご愛嬌もの。そういう燗付け方法なので、店に置いている地酒類もすべて燗でいただくことが可能です。
刺身に続いては、アンコウの唐揚げです。これも普段営業のときもメニューに載ることの多い、この店の冬場の名物料理のひとつですが、夕食会翌日の今日は、いつもよりも新鮮なアンコウ七つ道具(柳肉、卵巣、ひれ、胃袋、えら、皮、ほほ肉)が材料です。
こういう油ものにも合うところが、本醸造酒のおもしろいところ。本醸造酒は日本酒発酵の最終段階である醪(もろみ)の段階で、醸造アルコールを加えて酒質を調整したもので、酒税法上は日本酒ですが、製法から考えると混成酒(リキュール)にあたるかもしれない飲み物です。
どのくらいの比率で混成されているかを既存のお酒のカクテルに置き換えてみると、アルコール度数15度の純米酒20に対して、アルコール度数25度の甲類焼酎3を加え、水2を加えて混ぜ合わせてできる、アルコール度数15度の飲み物ということになります。
この比率を一升瓶(1,800ml)のお酒で考えてみると、純米酒が1,440ml(8合)、焼酎が216ml(1.2合)、水が144ml(0.8合)という割合になります。
少量の焼酎をウーロン茶で割ったのをウーロン割りと呼ぶのと同じように、少量の焼酎を日本酒で割った、焼酎の日本酒割りと言えるかもしれません。だから、唐揚げのような油ものや、もつ焼きや、コロッケ、サラダ類などの、現在の大衆酒場で出される料理にも合うのかもしれませんね。
他のお客さんたちとの会話も楽しく、気がつけばもう9時半。4時間以上も、くつろいじゃいましたか。お勘定は4,400円でした。
次回の夕食会は1月12日(土曜日)、テーマ食材は寒ブリの予定だそうです。
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コメント
昨年暮れ近く、「あんこう食べたいわね~」と家人の一声で
2泊3日で茨城へ行ってきました。私もその時に初めて、
生あんきもを頂きました。それはそれは素晴らしく新鮮で
「これを鍋のお出汁にしてしまうの?!」と感じました。
茨城、面白みに欠けそう・・と少し思っていましたが温泉もあり、なかなかどうして(笑
ただ地元湘南からは、非常に微妙な距離でした。遠からず
近からずで。。これならいっその事、福島まで行こうかと。
投稿: 姫 | 2008.01.05 05:15
姫さま
茨城で本場のアンコウですね。うらやましい。
アン肝やアンコウ鍋もさることながら、アンコウの唐揚げもまたおすすめです。機会があれば、ぜひ!
投稿: hamada | 2008.01.14 16:59