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2008年3月

〔コラム〕 天玉そばの食べ方は?

「大船軒」の天玉そば


 麺類がとっても好きなので、朝食として麺類を食べることも多いのです。特に単身赴任寮で過ごすウイークデイの朝食は、会社の食堂で天玉そば、というのがお決まりのパターン。刻みネギもたっぷりとトッピングして、甘辛いダシ汁とともに、ズズズッと麺をすすり込むと「さぁ、今日もがんばろう!」という力がわいてくるのでした。

 ところで、この天玉そばの生卵。みなさんはどうやって食べてますか?

 この問題、10年ほど前にも取りあげたことがありまして、未だに自分の中では結論が見出せていない奥深いテーマ(なのか?)なのです。

 まずひとつは、生卵のままつぶさず置いておいて、そばを食べている途中、しかるべきタイミングで、生のまま、つるりといただくというやり方。この方法だと、汁(つゆ)も濁らず、汁そのものの味を楽しむことができるほか、玉子も「丸のまますべていただいた」という満足感があります。

 玉子を食べるタイミングですが、食べはじめ早々に生卵をすすってしまっては、まだ口中が暖まっていないので、冷たい感覚ばかりが残ってしまうし、麺も具(かき揚げ天ぷら)も全部食べきってから、最後に生卵を食べるというのも口の中に生卵っぽい後味が残って、あまりよろしくない。麺も具も、それぞれ半分くらい食べた頃合いが望ましいように思います。天玉そばをすすり込むことで、口中が熱くなったところへ、冷たい生卵がスルリと入ってきて、ちょうどいいリフレッシュ(口直し)になるのです。

 そんなわけで、現時点では、この「途中で生卵を丸ごとすすり込む」というのが、私の中での主流の食べ方になっています。

 もうひとつは、生卵をつぶしてかき混ぜ、汁と一体化してしまう方法。汁の味がマイルドになるとともに、食べている間中、ずっと均等に玉子の味わいが楽しめます。ただし、汁を完飲しない限り、玉子を全部食べることができないのが難点です。

 呉(広島)で、毎日のように天玉うどんを食べていた時代(今から20年ほど前)には、この食べ方が私の主流で、汁(つゆ)も毎日、完飲でした。

「天玉そばの生卵。どうやって食べてますか?」

 この質問を、よく路麺のことも書かれているG.Aさんに投げかけてみたところ、返ってきた答えは、

「溶いて、すき焼きのように絡めて食べます」というもの。

 翌朝の天玉そばで、さっそくこの食べ方を試してみました。天玉そばの生卵は、丼のふちのところに入れられていることが多いのですが、これをプツンとつぶして、あまり汁に混ざりこんでしまわないように、玉子の部分だけを軽く混ぜます。そうすると、汁の中でこの一角だけが、すき焼きの溶き玉子状態になります。この溶き玉子の中をくぐらせるようにしながら麺をすすり込むと……。

 なぁーるほど。こうやって食べると、玉子の味わいも濃厚ですねぇ。

 関東の路麺は、醤油、砂糖、味醂でかなり甘辛く味付けされています。この味付けは東京(関東地方)の標準的な味付けのようで、すき焼きも、どじょう鍋も、鳥鍋も、桜鍋も、基本的にこのタイプ。これらに溶き玉子がよく合うのと同じように、溶き玉子を絡めながらいただくそばもまた合うのです。

 汁(つゆ)の上で作った溶き玉子なので、そばを絡めながら食べているうちに、じわりじわりと玉子が汁の中に混ざっていって、食べ終わるころには完全に汁と一体化していくのですが、混ざり込む玉子の量は、最初に生卵をつぶしてかき混ぜた場合と比べると、ほんのわずか。汁を完飲しないでも、ほぼ玉子を全部食べられたんじゃないかなぁ、という満足感が得られます。

 これはいいですねぇ。しばらくはこの食べ方でいってみることにしましょう。

 みなさんが実践されている食べ方や、おすすめの食べ方、おもしろい食べ方がありましたら、ぜひこの記事へのコメント、トラックバック等でご紹介ください。

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ベジタリアン・ナイト … 居酒屋「満月(まんげつ)」(鷺ノ宮)

「満月」


 西荻窪の「くらのすけ」をあとに、今宵の2軒目は鷺ノ宮の「満月」です。

 赤ちょうちんの両側に入口がある「満月」は、元々2軒だった店の間の壁を抜いて1軒にしたのだそうで、両側の入口から入ると、それぞれ元々のお店なりの独立した空間になっているのです。店全体でみると、漢字の「四」のような感じで、「四」の左上の空間、右上の空間にお客が入るのでした。

 金曜日の真夜中、ちょうど日付けが変わって土曜日になろうかという店内は、まだまだ満席状態。左側の空間で飲んでいたFさんが、ひとつ奥側の狭い空間にずれてくれて、Fさんの手前に入れてくれます。

 このところ、「満月」に来るとよく飲むのがトマト割り(300円)。焼酎をトマトジュースで割って作ったこの飲み物は、トマトのさっぱりとした飲み口が心地いいのです。簡単に言えば、有名なカクテル「ブラッディ・マリー」の、ウォッカを焼酎に変えたものですよね。ブラッディ・マリーのように、レモンを添えるとより美味しいかもね。

芽キャベツ 料理メニューは、店の入口から見て左側の壁一面に張り出されていますが、カウンター上段にずらりと並んだ大皿の料理を、実際に見ながら選ぶお客さんのほうが多いようです。私も目の前にあった芽キャベツ炒め(300円)を注文すると、長方形のお皿に取り分けて、マヨネーズ+ケチャップが添えられて出されます。

 焼酎のトマト割りに、芽キャベツとは、なんとも健康的な感じがしますねぇ。

 そういえば今日は1軒目でも、じゅん菜や、大根のビール漬けなど、野菜中心の肴(さかな)を選んだので、ねらったわけではありませんが、なんだかベジタリアンな夜になっちゃってます。

イチゴ その後もトマト割りを何杯かおかわりし、最後はFさんが注文したイチゴをちょっともらって、しめくくります。いつも、なにかしら果物(400円ほど)を置いているのも、この店の面白いところなんですよねぇ。

 午前1時半頃まで楽しんで、今日は1,500円でした。ごちそうさま。お休みなさーい。

店情報前回

《平成20(2008)年3月7日(金)の記録》

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オリジナルひっつみ麺 … 食酒「くらのすけ」(西荻窪)

ひっつみ麺


 昨年末、西荻窪駅南口にオープンした高橋さんのお店、「くらのすけ」に来ています。

 それにしても、なぜ「みちのくの料理とお酒」のお店を開いたんですか? 高橋さんは東京の人じゃありませんでしたっけ?

「そうなんですよ。私自身は、東京生まれの東京育ちなんですが、実は両親が仙台の出身で、ルーツは東北地方なんですよ」

 あらら。そうだったんですか。ご両親が仙台ということならば、自宅の食事なども自然に仙台風になっていたに違いありません。わが家だって、カミサンが広島、私が愛媛なので、料理は知らず知らずのうちに、そのあたりの味に近い物になっています。うちの子供たちは、東京生まれの東京育ちですが、味の記憶としては、瀬戸内の味が刷り込まれているに違いありません。なるほどなぁ。高橋さんの場合は、それが仙台の、引いては東北の味だったんですね。

 先客の男性は、「仙台牛すじ肉の煮込み(ガーリックトースト添え)」(550円)を注文。ガーリックトーストが付いてるってことは、スープまで余さず飲んで欲しい、ってことですよね。

 新たに入ってきた若い男性ひとり客は、私と同じく、今日が初来店の様子。3品のほかに、コンポーク(550円)を注文します。これは自家製ハムなんだそうで、薄くスライスすると、まるで生ハムのような感じです。

 カウンター奥の壁に「農園便り 300~400円」と書かれたメニューを発見し、高橋さんに聞いてみたところ、栃木県の川田農園から届けられる野菜で作った料理なんだそうで、そのときに届いたもので内容が変わるんだそうです。今日の「農園便り」は、「大根のビール漬け」(400円)なんだそうです。

大根のビール漬け さっそくそのビール漬けを注文して、飲み物のほうも、今度は「阿部勘」の特別本醸造(650円)を燗でもらいます。出されたビール漬けは、これがビールっぽい感じは全くなくて、あっさりと大根の旨みがよくわかる仕上がりに、燗酒も進みます。

 入口近くに入ってきたお客さんは、すでに何度か来ているらしく、すぐに注文したのは「仙台麩(ふ)の卵とじ」(550円)。まるで厚揚げのように見える、大きな麩(ふ)が2枚、フライパンの上に並んで調理されていきます。へぇーっ。仙台麩、はじめて見たなぁ。

 その他にも、「これはいったいなんだろう?」「どんなものが出されるんだろう?」と興味津々のメニューが、それぞれ4~600円くらいで並んでいて、何度かやって来ないと全品制覇はむずかしそうです。

 店に入るのが午後9時半と遅かったので、気がつけばもう11時。そろそろシメにかかりますか。

 事前にこの店の「ぐるなび」を見ていて、ぜひ食べてみたかったのが「ひっつみ麺」(530円)。曰く「ラーメンでも日本そばでもない、つるりとした麺の喉ごしは一度食べたらやみつきです。スープは昆布とかつお、そして比内鶏のガラから丹念に取ったWスープ」。これは食べてみないといかんでしょう。

 その、ひっつみ麺を注文すると、高橋さんが他のお客さん(3人)にも「ひっつみ麺を作りますが、いかがですか?」と声をかけて、結局、私も含めて4人全員で、ひっつみ麺をいただくことになりました。

「その場で麺を打つので、4人くらいから注文してもらえるとありがたいんですよ」

 と言いながら、高橋さんが麺を作り始めます。水で練った小麦粉を、ひっつんで(引きちぎって)作るから「ひっつみ」(←岩手の郷土料理)と言うらしいのですが、高橋さんオリジナルの「ひっつみ麺」の麺は、パスタマシンで延ばしたものを、適度な大きさに切り分けて作っていきます。

 お椀に盛られて出された「ひっつみ麺」は、Wスープにとろみが加わった汁の中から、小さいラザニアのような平たい麺がチュルンと出てきます。

 なるほど。普通の「ひっつみ」の場合は、ひっつんだ部分がグルテン化して、麺のコシが生まれるらしいのですが、高橋さんの「ひっつみ麺」はパスタマシンで作っているので、全体にコシがある。うーん。これはまさにジャパニーズ・パスタですね。

 おろした長芋でつけているというとろみも絶妙。シメとしてももちろんですが、これ自体が十分に酒の肴になりますよねぇ。

 オリジナル・ひっつみ麺を堪能して、午後11時半まで、2時間ほどの滞在は3,680円でした。

 西荻窪も、いろいろと行ってみたいお店が多いエリアながら、これまで何故か足が向きにくかったのですが、これからはここ「くらのすけ」を拠点として、西荻窪も散策できそうですね。楽しみです。

店情報前編もあり)

《平成20(2008)年3月7日(金)の記録》

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みちのくのお酒と料理 … 食酒「くらのすけ」(西荻窪)

調理中の店主


 「竹よし」などで、よくご一緒させていただいていた高橋さんが、昨年の12月に、ご自分で居酒屋を開業されたのだそうです。場所は、中央線沿線のグルメタウンとして知られる西荻窪。駅からもほど近い場所に、高橋さんのお店、「くらのすけ」はありました。

 ビルの半地下にあるお店は、透明なガラスの入った入口扉ながら、半地下ということもあって、店内がちらりと見える、ちょうどいい状態になっています。あまり見えないと、なんだか開けるのが怖いし、見え過ぎると、店に入ってからが落ち着かない。ちょうどいいバランスが必要なんですね。

 半地下への数段の階段を下りていくと、そのガラス窓から徐々に店内の様子がよく見えるようになってきます。やぁ、高橋さんだ。本当に店主をしてる!

「こんばんは。ご無沙汰してます」

 と、高橋さんに声を掛けながら店内に入っていくと、

「いやぁ、実はこんなことになりまして」

 なんて言いながら、高橋さんも笑顔で迎えてくれます。

 自分の知り合いが、店主としてカウンターの中に立ってる姿というのも、最初のうちはなんだか違和感があるんですよねぇ。「秋元屋」に最初に伺ったときもそうでした。なかなか「マスター」とも呼びにくくて、つい今までの呼び方で呼んでしまうのです。

 店内は軟らかい曲線を使ったカウンター席のみ10席ほど。これを高橋さんひとりで切り盛りされています。

 金曜日、午後9時半の店内には先客は男性客ひとり。このお客さんも高橋さんの知り合いの様子です。その先客の奥側に座って、まずは瓶ビールを注文すると、瓶ビールは初めていただくエビスのザ・ホップ(中瓶、600円)です。

「日替り、週替りで、東北の酒肴9菜というのを出してましてね。お通し代わりに3品ほど選んでもらうようにしてるんです」

 そう言いながら見せてくれる今日の9品(3品で750円)は、小じゃがのみそ漬、玉こんにゃく、秋田なめこピリ辛煮、生じゅんさいの酢のもの、仙台長なす漬け、仙台笹かまぼこ、小玉ねぎの甘酢漬け、茎わかめのゆずみそ和え、焼みそ。これらが9つに仕切られたお皿の、ひとつひとつの部屋に並んでいます。こうして見せられると、全部に引かれてしまいますねぇ。うーむ……。

「今日は生じゅんさいがおすすめでしょうか。焼みそも人気があるんですよ」

 迷っていると、高橋さんが助け船を出してくれます。

「それじゃ、そのふたつと、あと笹かまぼこをお願いします」

 ビールを飲み終わったところで、日本酒に切り換えます。店の奥の冷蔵保管庫の中に入っているのは、青森の「田酒」、山形の「上喜元」、福島の「大七」、岩手の「南部美人」、秋田の「刈穂」など、東北6県の地酒群。なかでも宮城の「阿部勘」は、特別本醸造、特別純米、純米吟醸と3種類そろった、この店の看板地酒的な存在のようです。

 その「阿部勘」の特別純米(750円)を冷酒でいただくと、「阿部勘」と書かれた塗りの升にグラスが置かれ、一升瓶からトクトクと、グラスからあふれて、受け皿代わりの升が表面張力になるまで注いでくれます。

「これでちょうど正一合になるんです」

 と高橋さん。以前から、日本酒がお好きでしたもんねぇ。質も良く、量もたっぷりと、というわけですね。

生じゅんさい 笹かまぼこ 焼みそ
生じゅんさいの酢のもの / 仙台笹かまぼこ / 焼みそ

店情報後編に続く)

《平成20(2008)年3月7日(金)の記録》

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店情報: 食酒「みちのくらさん」(西荻窪)

    080307z
  • 店名: 食酒「みちのくらさん」
  • 電話: 03-3334-8654
  • 住所: 167-0054 東京都杉並区松庵3-38-15
  • 営業: 17:00-23:30LO、火休(日祝は営業)
  • 場所: JR中央線・西荻窪駅の南口を出て右(吉祥寺方向)へ。左手の「松屋」の手前を左に入り、突き当りを右へ。その先の左手「牛角」の手前を左に入った先、左手ビルの半地下。駅から徒歩3分ほど。食べログぐるなび
  • メモ: 平成19(2007)年12月創業。東北6県の旨い銘酒の店。店内はカウンター10席ほど。
    お通し(日替わり・週替わり)400。
    〔肉&魚〕仙台牛すじのすき焼き風牛皿680、仙台牛の肉サラダ680、くらさんの怪しい焼き鳥630、いわしのさんが焼き680、あん肝のみそ漬け・クリームチーズ添え650、まぐろのにんにく味噌バター焼き630、たたきまぐろの山かけ焼き680、ダブル・ねぎわんたん580、ほや塩辛のとろとろ卵とじ680、たい焼きステーキ580。
    〔野菜など〕しらす屋ねぎべえぃ(ネギたっぷりチヂミ)580、人参一本サラダ560、江戸の煮奴(池波正太郎の小説の味!?)580。
    〔定番〕すじポン(仙台牛すじのポン酢あえ)630、くらしきカレー(くら・しきは旨い!)650、エロうま豆腐(熱々崩し豆腐)550、仙台油麩の卵とじ630、仙台油麩丼780、くさやチーズ(くらさんオリジナル)850、チーズ納豆(くらさんオリジナル)630。
    〔麺〕冷やし稲庭うどん650、AKB48(あさりとかきとベーコンのパスタ!)650、くらしきナポリタン(くら・しきは旨い!)650、仙台牛すじのぼっかけうどん650。
    〔飯〕酒によく合う・えび焼きめし650、仙台牛すじのソース焼きめし680、くらしきハヤシライス(くら・しきは旨い!)650。
    〔日本酒(正一合)〕《宮城》阿部勘(特別純米)850、日高見(特別本醸造)750、《青森》田酒(特別純米)880、《岩手》南部美人(純米吟醸)880、あづまみね(特別純米)850、《秋田》刈穂(超辛口・純米)850、雪の茅舎ぼうしゃ(山廃純米)850、《山形》初孫(純米)850、《福島》大七(生もと・純米)800、笹の川・黒(竹炭入り、90ml)480。
    〔ビール&焼酎&紹興酒&ウィスキー〕生ビール琥珀エビス(中)650・(小)500、サッポロラガービール(中瓶)580、麦焼酎「麦のすけ(かめ出し)」(福岡)90ml 550、芋焼酎「芋のすけ(かめ出し)」(鹿児島)90ml 550、そば焼酎「蕎麦のすけ」(熊本)90ml 600、栗焼酎「ダバダ火振」(高知)90ml 600、八年熟成「本格紹興酒」(中国・紹興)150ml 580・250ml 950、ニッカハイボール650。
    〔ハイサワー(焼酎はたっぷり90ml)&ソフトドリンク〕緑茶ハイ550、ウーロンハイ550、ウコンハイ650、グレープフルーツサワー650、シークヮサーサワー650、梅酒ホッピー580、特製・白玉レモンサワー650、特製・白玉梅干サワー650、レッドアイ650、梅酒サワー、ゆずのシャーベットロック680、緑茶450、ウーロン茶450。
    〔季節のおすすめ飲み物(2016年2月の例)〕シークワサーサワー650、しゃりきnハイサワー650、しゃりきんコークハイ650、グリーンスムージーロック650、ジンジャーハイサワー650、ココアの焼酎ロック630、メキシコのハト(テキーラのグレープフルーツソーダ割り)680、ゆずのシャーベットロック680、赤酒の焼酎ロック680、梅酒ホッピー580。(2016年2月調べ)

    日替りでホワイトボードに書き出される「本日の9品」は、好きな3品を選んで750円。ある日の9品は、小じゃがのみそ漬、玉こんにゃく、秋田なめこピリ辛煮、生じゅんさいの酢のもの、仙台長なす漬け、仙台笹かまぼこ、小玉ねぎの甘酢漬け、茎わかめのゆずみそ和え、焼みそ。その他に、自家製ハム(コンポーク)550、鶏手羽の梅酒煮450、焼き温麺(うーめん)500、仙台牛すじ肉のテール風スープ550、仙台牛すじ肉の煮込み・ガーリックトースト添え550、ポテトサラダ450、奥多摩のわさび漬け400、かつおの塩辛のクリームチーズ添え550、葉たまねぎのオーブン焼き550、肉詰めきりたんぽ550、仙台麩の卵とじ550、青森産ホタテと茄子のチーズ焼き600、いわしつみれと大根の煮物550、あぶら揚げのゴマ焼き530、湘南のフルーツトマト400、新玉ねぎと海草のサラダ450、大根のビール漬け400、自家製白菜漬け400(小は300)、ひっつみ麺530。
    〔日本酒(正一合)〕阿部勘(宮城)特別本醸造650、特別純米750、純米吟醸850、日高見(宮城)芳醇辛口純米800、田酒(青森)特別純米850、南部美人(岩手)純米吟醸850、刈穂(秋田)超辛口・純米800、たてのい 生もと(秋田)特別純米750、初孫(山形)純米750、東北泉(山形)特別純米850、上喜元(山形)特別純米750、大七 生もと(福島)純米700。
    〔ビール〕エビス生ビール(中)550、サッポロラガービール(中瓶)500、サッポロエビス ザ・ホップ(中瓶)600。
    〔焼酎(90ml)〕米蔵(秋田)米焼酎550、蔵蛍(秋田)そば焼酎550、麦のすけ・かめ出し(福岡)麦焼酎550。
    玉露ハイ400、ウーロンハイ400、グレープフルーツハイ450、りんごおろしサワー450、ゆずみつサワー450、玉露茶300、ウーロン茶300。(2008年3月調べ)
    2008年6月、店名を「くらのすけ」から「みちのくらさん」に変更しました。同名のチェーン店が銀座にあったことによるものです。(2008年6月追記)

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相変わらず安いよなぁ … 国民酒場「じぃえんとるまん」(横浜・上大岡)

ホタルイカ


 「いづ屋」をあとに、再び道路を渡って、先ほど満員で諦めた「じぃえんとるまん」をもう一度のぞいてみます。午後9時過ぎの店内は、さっきとはうって変わってガラガラ状態。数人が、まばらに立ち飲んでるといった感じです。

 我われも、入口正面の立ち飲みカウンターに立ち、にっきーさんは生ビール(中、350円)を、私はジョッキにたっぷりの焼酎の豆乳割り(300円)をもらって、本日2度目の乾杯です。

 さてつまみは、と選び始めると、「揚げ物はもう終わりました」とカウンターの中のおにいさん。なるほど。この店は午後10時までの営業なので、午後9時を回ると揚げ物なども終わっちゃうんですね。それでお客さんも減ってたのか。それじゃ、揚げ物以外をということで、にっきーさんは季節のホタルイカ(200円)を、私は菜の花ニシン(200円)をもらいます。

 ここの揚げ物は、たとえばアジフライやメンチ、コロッケ、ウズラ串などがそれぞれ100円と、とっても安いのです。揚げ物でなくても、とにかくいろんなものが安いのが「じぃえんとるまん」の大きな特長。大瓶のビールが350円だし、刺身だって200~300円くらいだし、今もらったホタルイカだって、200円でたっぷり1ダースくらいのホタルイカが盛られてますからねぇ。人気があるのもわかります。ここ上大岡の他に、杉田店、関内店と、着々と系列店も増えているようです。

フカヒレ煮こごり 続いては焼酎のトマト割り(300円)をもらって、つまみにはフカヒレ煮こごり(200円)を追加。このフカヒレ煮こごりだって、この値段で煮こごりがたっぷりと5切れ分ですから、そのコストパフォーマンスに驚かされます。

 その他に、人気があるのが100円メニュー。たとえば、納豆、塩らっきょう、枝まめ、塩エンドウ、マヨ辛レンコン、うめにんにく、正油にんにく、四川風わかめ、辛みそ、味つけおから、冷やっこ、キムチなどが、その100円メニューです。

 さらには冬場に出されるおでんも、さつま揚げ、すじ、厚揚げ、ちくわぶ、ちくわ、こんにゃく、大根などの具が、それぞれ1品100円。

 タラコスパゲティーやペペロンチーノ、ピザ、焼おにぎりなどだって、それぞれ200円というんだから驚きますよねぇ。今日の一番高い料理は、ハム野菜サラダの400円かな。マグロ刺身が200円、馬刺だって300円というなか、ハム野菜サラダの高級感がきわ立ちます。

 閉店時刻まで、1時間弱の立ち飲みタイムは、キャッシュオンデリバリー(商品引き換え払い)で、ひとり千円ずつといったところ。相変わらず安いお店ですねぇ。

            ◆   ◆   ◆

 月曜日だし、にっきーさんは都内の自宅まで帰らないといけないので、このへんでそろそろ止めておけばいいのですが、そうはいかないのが呑ん兵衛の性(さが)ですねぇ。

 にっきーさんの終電ギリギリまで、もう1軒行こうと向かったのは、「じぃえんとるまん」側から見て駅の向こう側にある、「飲み処○(まる)」です。ここは渋谷酒店(045-842-1447)という酒屋さんが、店内で営業している日本酒バーのようなお店。

塩辛で一献 ここで塩辛などをつまみながら、美味しい日本酒を一献。

 にっきーさんと私は、自宅も、職場も、それぞれご近所同士ながら、にっきーさんはご自宅からの通勤を、私は単身赴任を選択しているので、平日の通勤にかかるロード(労力)は、うんと違うようなのです。

 でも、この辺りから西武線沿線に帰ろうとすると、一昔前には午後10時台にはこちらを出なければならなかったのが、今は11時半近くまでは大丈夫(その代わり着くのは午前1時ごろ)なので、けっこう遅くまで飲むことができるのです。

 とはいえ、そろそろその終電の時間。遅くまでお付き合いいただき、ありがとうございました。寝過ごさないように、気をつけて帰ってくださいねー!

・「じぃえんとるまん」の店情報前回

《平成20(2008)年3月3日(月)の記録》

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きりりとホウボウ刺し … やきとり「いづ屋(いづや)」(横浜・上大岡)

ほうぼう刺身


 週明け早々から、にっきーさんと示し合わせて、上大岡(かみおおおか)に出ます。先週の火曜日から、昨夜(日曜日)まで、ずっと旅の空だったので、関東エリアで飲むのもほぼ1週間ぶりですねぇ。

 上大岡に到着したのは午後8時前。すぐ近くの酒屋の角打ち、「成田屋酒店」に心引かれつつも、ここは8時半までの営業ということで、そのすぐ近くにある立ち飲みの「じぃえんとるまん」に入ります。ところが、この「じぃえんとるまん」が、超がつくほどの満員状態。立ち飲みなので、むりやり入り込むこともできないことはないのですが、こんなに多いと、注文を通すのも大変そうです。それにしても、月曜日からこの状態とは、すごいですねぇ。

「「鳥佳」に向かいますか?」

 という話も出たものの、もしかすると「鳥佳」も同じように満席かもしれないので、まずは目の前にある「いづ屋」をのぞいてみることにします。「いづ屋」も、横浜地区の酒場ブログにときどき登場しているお店。一度、行ってみたかったのです。

 「やきとり」と書かれた白いのれんをくぐって店内に入ると、奥に向かって長い店内は、おもしろいことに入ってすぐ右手が小上がりの座敷席で、店の奥、右側がカウンター席、左側がテーブル席になっていて、こちらも店内は大盛況。

 「いらっしゃいませ」と迎えてくれるおねえさんに、「ふたりです」と申告すると、「こちらにどうぞ」と、カウンターの一番奥側を指し示してくれます。なるほど、カウンター席は空いています。グループ客が多くて、座敷席、テーブル席から埋まっちゃったんですね。

焼き鳥お任せ1人前(塩) まずは大瓶のビール(キリンラガー、630円)をもらって乾杯し、「焼き鳥お任せ1人前」(5本で500円)を、塩焼きでお願いすると、タン、豚バラ、カシラ、ハツ、レバの5本が出されます。カウンター上に置かれているニンニク風味の味噌を付けて食べるのが横浜流ですよね。焼き鳥はそれぞれ1本が110円なので、お任せ1人前だと1割ほどお得になるんですね。

 店は若い男女二人が切り盛り中。ご夫婦かと思いきや、これがご兄妹で、しかも妹さんのほうは、正規の店員さん(女性)がやって来るまでのつなぎで手伝ってるとのこと。ここ「いづ屋」は、このご兄妹の親御さんが昭和51(1976)年12月に開いたんだそうで、現在、創業31年。ここもまた、いつもお客さんでにぎわっているお店なのです。

 メニューは、20種類ほどの焼き鳥のほかに、ホワイトボードに魚介類や、季節の料理が書き出されています。その中からホウボウ刺身(520円)を注文し、飲み物は「1本だけ残ってました」と冷蔵庫の中から探し出してくれたアサヒ熟撰(小瓶、430円)をいただいてから、燗酒(「会津ほまれ」二合徳利、680円)に切り換えます。

 ホウボウ刺しの、きりりとシンプルな白身魚ならではの味わいに、「会津ほまれ」も進みます。しっかりとした身の弾力感もまたいいではありませんか。これが520円とは、安いですねぇ!

 1時間ちょっと楽しんで、ふたりで2,760円(ひとりあたり1,380円)でした。どうもごちそうさま。

店情報

《平成20(2008)年3月3日(月)の記録》

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店情報: やきとり「いづ屋(いづや)」(横浜・上大岡)

    080303z
  • 店名: やきとり「いづ屋」
  • 電話: 045-844-3707
  • 住所: 233-0002 神奈川県横浜市港南区上大岡西1-13-19
  • 営業: 18:30-22:30、第3日定休+日曜日を中心に不定休
  • 場所: 上大岡駅を西側に出て、鎌倉街道向かい側にある商業施設「カミオ」の裏手。
  • メモ: 昭和51(1976)年12月創業。焼き鳥お任せ1人前5本500、カシラ110、タン110、ハツ110、レバー110、シロ110、ナンコツ110、鳥ねぎ110、豚バラ110、つくね110、鳥かわ110、砂ぎも110、アスパラ巻き170、ピーマンチーズ巻き170、しそ巻き170、手羽先焼き170、トンとろ串焼き170、ギンナン170、ししとう110、しいたけ110、ねぎ110、にんにく170。日本酒1合420、2合680、生ビール(中)520、生ビール(大)680、瓶ビール(大瓶)620、焼酎1合330、ウイスキー水割り(ダブル)350、ボトルワイン1,200より、グラスワイン420、ソフトドリンク(コーラ、オレンジジュース、ウーロン茶)各320。焼酎ボトルは2,100~2,960。サワー類もあり。焼き鳥以外のメニューは、店内のホワイトボード。(2008年3月調べ)

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帰省して、瀬戸のメバルに舌鼓

メバルの煮付け


 せっかく神戸までやって来たので、週末はちょいと足を伸ばして愛媛に帰省です。今回は広島、神戸の順に出張に来ましたので、愛媛に向かうには少し後戻りすることになっちゃいますが、東京から帰省することを考えると近いもんです。逆順(神戸、広島の順)だと、もっと帰省しやすかったのですが、いたしかたありませんよねぇ。

 今回は、火曜日以降、ずっとホテル暮らしだったし、ゆっくりできるのが1日(土曜日)だけしかないこともあって、どこにも出かけず、実家でのーんびりとくつろぐことにしました。

 父母が用意してくれてたお酒は、地元、雪雀酒造の純米吟醸酒「風恋(ふうれん)」。これを燗酒でいただきます。

 この燗酒に合わせていただいた、瀬戸内海の海の幸をダイジェストでご紹介します。

 メバルの煮付け。メバルは春告魚とも表記されるほど、春を代表する魚のひとつです。こちらでは薄口醤油で味をつけるので、魚そのものの色がよりわかりやすいですね。「2尾も食べられないよ」と言いながら食べ始めたのですが、結果的にはペロリと2尾でした。

 ヒラメ。わが家の魚はいつも、手押し車でやってくる行商のおばちゃんから買うのですが、そのおばちゃんが「今日は、ええヒラメが入っとるよ」と進めてくれた逸品だったのだそうです。その半身分をまず刺身としていただくと、素晴らしい身の弾力感がうれしいですねぇ。残りの半身は、鯛めしならぬ、平目めしとして、炊き込みご飯でいただきます。

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ヒラメ刺身 / ヒラメめし / 焼き穴子

 穴子もまた、子供のころからよく食べていた、このあたりの味のひとつ。対岸の広島(宮島)の穴子ごはんが有名ですが、こちらの穴子も負けてません。正月のお雑煮のダシも、干した穴子でとるくらい、このあたりでは身近な食材のひとつなのです。中骨もカリッと焼いて、骨せんべいとしていただきます。

 タコも瀬戸内海ならではの味のひとつ。小さいタコ(イイダコ)を、さっと茹でて、酢みそをちょっと付けて食べるというシンプルな食べ方なのに、箸が止まらなくなるほど進んでしまうのです。頭の中に入ってる卵がまた美味しいんですよねぇ。プリッと丸い袋の中に、まるで米粒のような卵がぎっしりと詰まっています。これがご飯にも似ているから、飯(いい)ダコと呼ばれるんですね。

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茹でダコ / タコの天ぷら / タコのおでん

 タコは天ぷらとしてもいただきます。比較的大きめにカットしたものを、そのまま天ぷらにすることもあるのですが、今回は茹でたイイダコを小さく切ったものを、かき揚げにしてくれました。添えられているのはゴボウのかき揚げと、アスパラのかき揚げ。野菜はすべて、裏庭の菜園で取れ立てのもので、これがまた甘みがあっていいですねぇ。

 山のようにあったタコは、これでもまだ食べきれず、最後はおでんとしていただきます。おでんの具としてタコ(イイダコ)が入っているのも、このあたりでは割りと当たり前の光景です。

 あ。念のために書き添えておきますが、これらすべてを1食で食べたわけではなくて、帰省した金曜日の夜から、実家を出発する日曜日の朝食まで、都合5回の食事でいただいたものです。

 「風恋」は、すべての食事のお伴としていただいて、きっちりと飲みきって自宅をあとにしたのでした。あぁ、美味しかった。

前回

《平成20(2008)年3月1日(土)の記録》

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今日は2階でミニ宴会 … 大衆酒場「金盃 森井本店(きんぱい もりいほんてん)」(神戸・三宮)

玉ひも焼

「みんな(8人)で飲みに行けるところ、どっか知らないかな?」

 うーむ。神戸でそう聞かれてもなぁ。待てよ。そういえば昨日行った「金盃」の2階にテーブル席や座敷席があるって言ってたな。みんなで「金盃」に行ってみますか。

 そんなわけで、神戸での初日の仕事を終えて、今日は仕事仲間たちとみんなで「金盃」です。

「こんばんは」と店に入ると、店主が「いらっしゃい。お2階へどうぞ」と笑顔で迎えてくれます。大人数なので、先ほど電話でお願いしておいたのです。

 飲み物をもらって乾杯したら、料理のメニュー選びです。

「きずしって知ってる? 玉ひも、知ってる?」

 さっそく、昨夜仕入れたばかりの、にわか知識を自慢します。今日のメンバーの多くは関東地区の出身。予想どおり、生ずしも玉ひもも、聞いたことがないようです。

 そんなわけで、今日も生ずしの盛り合せ(タイとサバ、680円)をもらって、玉ひもは、今日は玉ひも焼(2本350円)のほうを注文してみます。

 「玉ひも」というのは、鶏モツの一部で、「玉」が玉子になる前の黄身(キンカン)のことを、そして「ひも」が輸卵管のことを指すようです。玉ひも焼きも、串の下のほうから順に、ひも、ひも、キンカン、ひも、ひも、キンカンになる前の小さな体内卵の集合体、と刺されたものが、タレ焼きで出てきます。

 いやぁ、昨日の玉ひも煮(320円)も良かったですが、この玉ひも焼きもおいしいなぁ。(首都圏で玉ひもを食べられる酒場があれば、ぜひ教えてください。>みなさん)

 さらに昨日から気になっていたハモ皮酢(370円)ももらいます。これは細く切り分けられたハモの皮を酢の物にしたもの。東京ではマグロの皮を同じようにして出してくれるお店がありますが、ハモの皮を使うというのが、いかにも関西らしい感じがしますよね。

「そろそろラストオーダーですので」

 という声に、みんなで「お茶漬けか何かを食べる?」なんて相談していると、「うちのお茶漬けは、焼おにぎりを使ったお茶漬けなので、少し時間がかかりますよ」とおねえさん。「えっ。焼おにぎりのお茶漬けなんですか!?」なんて、かえって人気が出ちゃって、われもわれもとお茶漬け(450円)の注文です。お茶漬けは明太子、鮭、ちりめん山椒の3種類から選べるようになっていて、私は明太子をもらいます。

 閉店時刻の午後10時半まで、2時間半ほどの滞在は、8人で19,100円(ひとりあたり2,400円弱)でした。どうもごちそうさま。

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はも皮酢 / 漬物盛合せ / お茶漬(明太子)

店情報前回

《平成20(2008)年2月28日(木)の記録》

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太田さんの放浪原点? … 大衆酒場「金盃 森井本店(きんぱい もりいほんてん)」(神戸・三宮)

生ずし盛合せ


 「八島 東店」を出て、目の前の道路の向かい側にあるのが、太田和彦(おおた・かずひこ)さんが「私がこの『ニッポン居酒屋放浪記』で最初に書き、日本中の居酒屋を歩いてみようと思うきっかけになった店だ」と書かれている大衆酒場、「金盃 森井本店」です。

 白いのれんの右端に、「良心的な大衆酒場」と自分で書いてるのがおもしろいなぁ。こういう風に自己申告されると、なんだか胡散(うさん)臭く感じるお店もあるのですが、この店の場合、そののれんの上に木の地肌に、金色の文字で「森井本店」と(右から左へと)書かれた、歴史を感じさせる扁額(へんがく)がデーンと掲げられているので、「うーむ。昔から良心的だったに違いない」なんて、妙に納得させられるところがあります。良心的な商売を続けてこなければ、長く生き残る店にはなりませんもんね。

 入口引き戸を開けて店内に入ると、L字カウンターの店内には、先客は3組6人ほど。それぞれが二人連れというのも、正しいカウンター席の使い方ですね。後で聞いたところでは2階にテーブル席と座敷席があり、多人数のグループは最初から2階へ上がるんだそうです。

 店名のとおり、ここはもともとは灘(なだ)の金盃酒造の宣伝酒場だそうですので、カウンターのまん中あたりに座って、まずはその金盃(1合290円)を燗酒でいただくと、お通し(250円)にはキンピラが出されます。

 大正7(1918)年創業というこのお店は、今年で創業90年。ただし、みなさんもご存知のとおり、この辺りは平成7(1995)年1月17日の震災で大きな打撃を受け、「金盃 森井本店」も建て替えを余儀なくされたのだそうです。だから、昔の店から引き継いだ扁額や、店内の絵などからは、老舗の様子が伺えるのですが、それ以外は新しい、今風のお店になっているのでした。昭和20(1945)年にも、一度建て替えているそうなので、この新しいお店も、これからの歳月を重ねることによって、また老舗らしさが出てくることでしょう。

 さて料理。関西の酒場に来ると、忘れてはならないのが“生(き)ずし”です。関東風に言うとシメサバなんですが、生ずしの場合はサバだけじゃなくて、他の魚も〆るようです。この店のメニューに載っているのは、サバの生ずし(530円)と、タイの生ずし(630円)、それとその両者を盛り合わせた生ずし盛合せ(680円)です。明石(あかし)の鯛も有名なので、ここはひとつ盛り合わせでいってみますか。

 横長いお皿に、左はタイ、右はサバと盛り付けられた生ずしは、見た目もとても美しい。刺身を食べるのと同じように、一切れとってワサビをつけ、醤油でいただきます。サバのほうは普通のシメサバと同じ感じですが、タイは皮もついたままなのが珍しい。刺身の松皮造りともまた違った食感が楽しめます。

 メニューを眺めながら飲んでいると、この店にも「玉ひも」というのが載っています。先ほどの「八島 東店」のメニューにも「玉ひも」とあって、『なんだろうなぁ?』と思ってたのでした。

「玉ひもって、どんな料理なんですか?」

 さっそくカウンター内の店主らしき男性に確認してみると、

「鶏の玉子なんですけど、まだ体の中にある状態のもの、つまり体内卵と、そのまわりのモツの部分なんですよ」

 と言いながら、大きな器に盛られた玉ひもを見せてくれます。ほぉほぉ。こりゃ、内臓好きは絶対たのまないといけない一品でしょう。さっそく一人前お願いすると、

「煮たの(320円)と、串に刺して焼いたの(2本350円)がありますが、この煮たのでいいですか?」

 と店主。さっき見せてもらった煮たのをいただきますか。

玉ひも うちの親戚に養鶏場をやっている家があったこともあって、体内卵をはじめとする鶏モツは子供のころから慣れ親しんだ味で、今でも大好物。それが神戸で「玉ひも」と呼ばれているとは知らなかったなぁ。関西地方では、比較的一般的な呼び方なんでしょうか。

 東京の酒場にもこの「玉ひも」みたいなのがあるといいんだけど、あまりお目にかかったことがないんですよねぇ。荻窪タウンセブンの地下の鶏肉屋さんで、お惣菜として売ってるので、それを買って帰って、わが家でつまみにするくらいです。

 燗酒をもう1合(290円)もらって、2時間ほどの滞在は1,830円でした。どうもごちそうさま。

店情報

《平成20(2008)年2月27日(水)の記録》

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店情報: 大衆酒場「金盃 森井本店(きんぱい もりいほんてん)」(神戸・三宮)

  • 森井本店店名: 金盃 森井本店
  • 電話: 078-331-5071
  • 住所: 650-0012 兵庫県神戸市中央区北長狭通2-31-42
  • 営業: 17:00-22:30(22:00LO)、日祝休
  • 場所: 阪急・三宮駅西口を出て、元町方面に徒歩約2分。ガード下商店街が途切れた先の信号交差点を渡った先、左手。
  • メモ: 大正7(1918)年、本高田商店(後の金盃酒造)に奉公していた森井重二さんが現在の神戸市役所の近くで創業。最初の店は昭和20(1945)年の空襲で焼失し、この場所に移った。平成7(1995)年1月17日の震災に伴う電車の高架工事のため、建物が建てかえられて今に至る。現在の店主は三代目の森井隆弘さん・美穂さん。1階はカウンター8席と2人用テーブル×2卓、2階は座敷25席。予約可。
    《以下、価格は税表記》お通し200。
    〔煮物〕小芋310、玉ひも310、バイ貝400、どて焼き(国産和牛)570、豚の角煮480、鯛あら酒蒸し(数量限定、入荷のない時もあり)650。
    〔造り物〕さば()ずし650、たい生ずし670、生ずし盛合せ(さば・たい)800、本日のお造りは白板にて。
    〔焼き物〕ねぎみ(1本)170、つくね(1本)軟骨入り170、玉ひも焼き(1本)170、手羽先(1本)180、せせり(1本)170、焼き鳥盛合せ(5本)780、厚揚げ(1枚)350。
    〔炒め物〕野菜とせせり炒め500、焼きうどん580、塩焼きそば580、ピリ辛焼きそば600。
    〔一品物〕とまと350、じゃこおろし360、もろきゅう380、漬物盛合せ400、ポテトサラダ380、分葱(わけぎ)の鉄砲和え(辛子酢みそ)420、山芋(たんざく)400、山芋(とろろ)430、はも皮酢400、茄子田楽(夏期は賀茂茄子)480。
    〔揚物〕メンチカツ330、ちくわのサラダ揚げ430、ピリ辛チキンバー(5本)460、れんこんはさみ揚げ(4枚)600、とうもろこしのかき揚げ430。
    〔ご飯物〕白ご飯(小)160、焼きおにぎり(2個)400、お茶漬(明太子・梅)480、どて丼680。
    〔夏季限定メニュー〕汲み豆腐(自家製)400、出し巻き400。
    〔冬季限定メニュー〕おでん100~250、鍋物520~。
    〔ビール〕キリン生ビール(大)860・(中)510・(小)370、びんビール(中びん、クラシックラガー・一番搾り)490、黒ビール(小びん、夏季のみ)420。
    〔金盃の酒〕清酒(一合)330・(二合)650、本醸造(一番星、1合)390、純米酒(1合)520、たる酒(冷1合)540、生酒(冷300ml)950、大吟醸生酒(冷300ml)1,300。
    〔焼酎〕麦焼酎(二階堂)360・(ボトル900ml飲み切り)3,400、芋焼酎(白波)360・(ボトル900ml飲み切り)3,400、ほうじハイ420、たんたかたん400、ソーダ割500、レモンハイ390。
    〔果汁生搾り酎ハイ〕レモン480、ライム500、グレープフルーツ550。
    〔ウイスキー〕シングル400、ハイボール410。
    〔梅酒〕梅酒360、梅酒ソーダ460。
    〔ノンアルコール/ソフトドリンク〕キリンゼロイチ(350ml)340、ほうじ茶160。
    〔梅干〕梅干80。(2020年10月調べ)

     

    《これ以下は税込み表記》お通し250。
    〔煮物〕小芋310、玉ひも320、バイ貝400、どて焼き430、豚の角煮400、鯛あら酒蒸し550、おでん90~。
    〔造り物〕生(き)ずし 鯖530、生ずし 鯛630、生ずし 盛合せ680、その日の刺身(二種盛、三種盛も可)。
    〔焼物〕ねぎみ(2本)320、つくね(2本)350、玉ひも焼(2本)350、手羽先(2本)350、セセリ(2本)320、焼き鳥盛合せ(5本)680、厚揚げ350、生蛸焼き680。
    〔炒め物〕野菜とセセリ炒め480、鶏肉の柔らか炒め400、塩焼きそば450、焼きうどん450。
    〔一品物〕汲み豆腐400、胡瓜(もろみそ又は梅肉)350、とまと300、じゃこおろし300、ちりめん山椒煮350、ポテトサラダ360、山芋(たんざく・とろろ)380、なっとう270、漬物盛合せ350、はも皮酢370、分葱の酢みそ和え350、茄子田楽430、ちーずかまぼこ430。
    〔揚物〕メンチカツ(1個)200、とり竜田揚360、れんこんはさみ揚げ460、ちーずかまぼこ天ぷら450、串かつ盛合せ(5本)500、えびのフリッター500、生蛸天ぷら680。
    〔鍋物〕とりだんご鍋580、とうふチゲ鍋550、ぶたチゲ鍋650。
    〔ご飯物〕白ご飯200、赤だし200、焼きおにぎり(2個)370、お茶漬(明太子・鮭・ちりめん山椒)450、どて丼500。
    〔デザート〕手作り杏仁豆腐300。(他に日替りのホワイトボードメニューあり。)
    〔ビール〕生ビール大800、中480、小360、びんビール(キリン中びん)450、黒ビール(小びん)400。
    〔日本酒(金盃)〕清酒一合290、二合580、生酒・小550、中900、純米酒(グラス一合)480、にごり酒一合(千代菊)330、梅酒350、ソーダ割り+100。
    〔焼酎〕レモンハイ350、ウーロンハイ420、麦焼酎(二階堂)350、ボトル(900ml)2,800、芋焼酎(白波)350、ボトル(900ml)3,000、梅1個60、レモン50、ライム100、グレープフルーツ100。
    〔ソフトドリンク〕ウーロン茶200。(2008年2月調べ)

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フンワリ熱々玉子焼き … 大衆酒場「八島 東店(やしま ひがしてん)」(神戸・三宮)

ネギ入り玉子焼と湯豆腐


 広島での仕事を終えて、神戸まで移動。明日と明後日は神戸での仕事なのです。

 神戸は、これまでに数回程度しか来たことがなくて、ほとんど何も知らないといっても過言ではない地域。こういう土地にやってくるときに頼りになるのが、太田和彦(おおた・かずひこ)さんが出されている、全国を対象とした酒場本(近著は「太田和彦の居酒屋味酒覧 第2版―精選173」)ですよねぇ。前回(8年ほど前)神戸に来たときにも、「太田和彦の全国居酒屋巡礼」で紹介されていた「金盃 東店」に行ったことを思い出します。

 今回は、久しぶりに「ニッポン居酒屋放浪記 望郷篇」(新潮文庫)の「神戸」のところを読み返してみて、まずは「男がこれだけ玉子焼を注文する店は少ない」と書かれている「八島 東店」に行ってみることにしました。

 三宮駅に到着したのは午後8時。近くのホテルにチェックインして、荷物だけ置いたらすぐに阪急・三宮駅のガードに沿って元町方面へと向かいます。この通り沿い、古びた酒場がけっこう残っていて、酒場ファンにはたまらないエリアですねぇ。「正宗屋」の素晴らしいのれんにも引かれつつ進んでいくと、通りの右手に「八島 東店」です。うーん。こちらも負けず劣らず渋いっ!

 濃い茶色地ののれんに、大きなのれんに負けないくらい大きな白字で「八島」と書かれ、その横に縦書きで「東店」と添えられています。「八島」の字が、右から左へと書かれているのが、これまた時代を感じさせるではありませんか。

 まん中で両側に開くようになっている入口引き戸をヨッと開けて店内へ。どーんと満員の店内を眺めながら、目の前のおねえさんに「ひとりです」と申告します。

 店内は、右手が置くまでまっすぐ続く直線カウンター席で、左手は8人掛けくらいの横長いテーブル席が、店の奥に向かって数列並んでいます。

「それじゃ、こちらにお願いします」

 と案内されたのは、一番奥のテーブル席のまん中あたり。横長テーブルの左側では作業服姿の若い男性ふたり連れが、右側ではスーツ姿の中年男性ふたり連れが、それぞれすでにワイワイと話しながら飲んでる状態で、その間に入れてもらいながら、は瓶ビール(大瓶450円)を注文すると、瓶ビールにはアサヒとキリンがあるとのこと。昨日がアサヒだったので、今日はキリンをいただきましょうか。

 こういう大衆酒場には似つかわしくないタイプの、若くてきれいなおねえさんが瓶ビールを取りに行ってくれている間に、店内のメニューをさっと確認します。

 件の「ニッポン居酒屋放浪記 望郷編」には『玉子焼は290円。通はメニューにないネギ入りを頼む。ただし10円高くなるというのがいい』と紹介されているので、ぜひそのネギ入りを食べてみたいのですが、一見さんでも大丈夫かなぁ。なんて思いながら見てみると、「玉子焼 300円」というメニューに並んで、「ネギ入り玉子焼(ネギ玉)320円」というのがあるではありませんか。なるほどねぇ。いまや隠れメニューではなくて、正々堂々の表メニューになっちゃったんですね。

 ビールを持ってきてくれたおねえさんに、そのネギ入り玉子焼と、太田さんが『温めた豆腐におぼろ昆布と関西特有の刻み青ネギをのせダシで割った薄口醤油をまわした関西型湯豆腐』と書かれている湯豆腐(270円)を注文します。

 予想どおり、湯豆腐はあっという間に登場。これをつつきながら、ネギ玉が焼きあがってくるのを待とうという計画なのです。

 満員の店内に響くのは、当然のことながらバリバリの関西弁。いやぁ、旅に出かけてきた感じがしますねぇ。

 いや、昨日から旅には出てたんですが、広島はもともと何年間か住んでた土地だし、生まれ故郷の愛媛とも似たところが多いので、「旅に来た」というよりは、むしろ「帰ってきた」という思いのほうが強いのです。

「ネギ玉、お待たせしましたー」

 わっ。はやっ。まだ湯豆腐を二口分くらいしかつついていないのに、もうネギ入り玉子焼が出てきました。さっきから他の人の注文を聞いていても、相変わらず、どんどん注文が入る人気の品の様子。厨房も作りなれてるんでしょうね。

 ホカホカと湯気の立つネギ玉をひと口分切り分けて口に運ぶと、箸でつまんだ感触どおりのフンワリとした食感に、ひとりで飲んでるにもかかわらず、思わず笑顔がこぼれてしまいます。これはうまいっ。人気があるのがわかるなぁ。

 メニューには、140円なんて品もずらりと並んでいます。いか塩辛、東京納豆、チーズ、らっきょ、雲丹くらげ、などがそうです。東京納豆って、多分、普通の納豆ですよね。関西ではあまり食べないらしいから、わざわざ“東京”って付けてるんでしょうか。そして200円が、玉ひも、モロキュー、ナスビなど。

 大瓶のビールが450円というのも安いですが、日本酒(大関)も1合250円と、これまた安い。なにしろ日本の酒どころ、灘(なだ)のお膝元ですからねぇ。お客さんたちにも、日本酒をガンガン飲んでもらわなくっちゃ。

 でも、私はもう1軒、行ってみたいお店があるので、この店はここまで。お勘定は1,040円でした。どうもごちそうさま。

店情報

《平成20(2008)年2月27日(水)の記録》

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店情報: 大衆酒場「八島 東店(やしま ひがしてん)」(神戸・三宮)

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  • 店名: 八島食堂 東店
  • 電話: 078-331-1466
  • 住所: 650-0012 兵庫県神戸市中央区北長狭通2-1-3
  • 営業: 16:00-23:00、日祝休
  • 場所: 阪急・三宮駅西口を出て、元町方面に徒歩約2分。ガード下商店街が途切れた先の信号交差点を渡った先、右手。(同じ通りの向かい側が「金盃森井本店」)
  • メモ: いか塩辛140、東京納豆140、チーズ140、らっきょ140、雲丹くらげ140、玉ひも200、モロキュー200、ナスビ200、湯豆腐270、かまぼこ280、オニオン280、ゲソ280、コロッケ280、たこ焼(5個)300、鮭焼300、玉子焼300、ネギ入り玉子焼(ネギ玉)320、いわしフライ320、豚キムチ400、にらレバー炒め380、ホタルイカ380、釜揚げ新子380、イカナゴ380、牛ホルモン380、かしわ豆腐煮400、とんかつ470、肉豆腐煮480、マグロ刺身480、生(き)ずし340、いわしのショウガ煮300、カツ丼650、イカスタミナ380、するめいかの唐揚げ390、モヤシ炒め380、いか焼400、カレイから揚げ400、エビフライ480、酢ガキ550、カキフライ600、焼ビーフン550、とりとしめじバター炒め380、鯖煮付け340、和牛たたき340、大関(一級酒)250、大関(生酒)350、大瓶ビール(キリン、アサヒ)450(2008年2月調べ)

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広島での朝食と言えば … 広島駅弁当「うどん」(広島)

天ぷらうどんと巻き寿司


 広島での朝食と言えば、広島駅在来線1番ホームにある立ち食いうどんです。

 今回の出張の本来の目的地は呉なのですが、昨晩のうちに呉まで移動してしまわないで、広島に宿をとった理由のひとつが、この朝食にあります。今日は、天ぷらうどん(340円)と巻き寿司(2切れ100円)をいただきます。

 大学を卒業して、はじめて配属になった赴任地が、これから向かう呉の町。その時代(今から25年ほど前)には、今のように新幹線も速くなく、飛行機も運賃が高い上に便数が非常に少なかったので、本社(東京)への出張はもっぱら夜行寝台特急「あさかぜ」を利用していました。最初のころはご多分にもれず、私もちっとも眠ることができなくて、本社への出張は嫌で嫌で仕方がなかったのです。

 ところが就職して何年かがたち、ひとりでも酒が飲めるようになってくると状況が変わってきました。広島から東京に向かうときは、当時広島駅ビル内にもあった「源蔵」で小イワシの天ぷらや刺身をつつきながら「あさかぜ」の出発時刻(午後8時)までを過ごし、ウイスキーのポケット瓶と簡単な乾きもののつまみを買って電車に乗り込む。電車に乗っても、すぐに自分の寝台に行くことはせず、ラウンジカーの一角に陣取って、移りゆく車窓の風景もつまみにしながら夜遅くまでチビリチビリとウイスキーを楽しみ、「それではこれにて車内放送も終わらせていただきます。明朝まで、みなさまお休みなさい」なんて放送が流れ、車内のメインライトも消灯されてから、おもむろに寝台まで戻ると、酒の酔いも手伝って本当にぐっすりと眠ることができ、ふと気がつけばもう東京に到着です。

 飲みながら旅情が楽しめ、かつ長時間の移動をゆっくりと寝ながら過ごしてしまえるという世界でした。

 逆も同様で、東京駅の八重洲地下街や日本橋あたりで一杯飲んでから寝台特急に乗り込んで、ラウンジカーでゆるりゆるり。本当は食堂車が付いていると一番うれしいのですが、私が寝台特急をよく利用していた時代には、残念ながら、すでに食堂車は廃止されていました。

 ただし、東京発の「あさかぜ」は、出発時刻が午後7時と早いのが難点。慣れてくると、午後9時ごろまで東京駅近くの酒場で過ごして、それから新幹線で名古屋まで。途中で追い越した「あさかぜ」に名古屋駅で乗り換えて、爆睡しながら広島へと向かったものでした。

 そして、寝台特急「あさかぜ」が広島駅1番ホームに到着すると、ちょうどそのホームにあるのが、この立ち食いうどん屋だったのです。

 我われは、ここで「あさかぜ」を降りて、呉方面に行く電車に乗り換えるので、比較的ゆっくりと朝のうどんを楽しめるのですが、まだ先まで行く乗客たちも、そのうどん屋にやって来ては、「あさかぜ」が発車するまでの短時間の間に、お持ち帰り用のうどんを作ってもらって、大急ぎで車内へと引き返していた姿を覚えています。

 そうやってせっかく大好きになった寝台特急での出張だったのに、その後、新幹線も速くなり、飛行機も新幹線と十分競争できるほど値段が下がってきて、今や日本国内、たいていのところは日帰りで出張ができてしまう状態。当然のように夜行寝台特急もどんどん廃止されて、たいへんお世話になった「あさかぜ」も、今はもう走っていないのでした。

            ◆   ◆   ◆

 昼も昼とて、社員食堂で天玉うどん(230円)に、盛り合せ寿司(220円)。もともとが瀬戸内(愛媛)の生まれなので、こちらのダシが身体に合うのか、こっち方面に帰ってくると、うどんを食べることが多いのです。

 以前にも何度か書きましたが、呉のうどんは麺がとっても細いのが特徴。この細い麺に、おいしいダシがよく絡むのです。

 盛り合せ寿司は、いなり寿司が2個に、巻き寿司が3切れ。朝食でも天ぷらうどんと巻き寿司をいただいたように、こちらでは、うどんにあわせて巻き寿司を食べることが多いのです。

 こちらに勤務していた若いころは、普通に昼食を食べた上に、さらに追加で天玉うどんをペロリと食べたりしていたものですが、今は天玉うどんに盛り合せ寿司の組み合せでも、苦しく感じてしまいます。うーむ。年かなぁ……。

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1番ホームの「うどん」 / 呉の天玉うどん / 盛り合せ寿司

・「うどん」の営業は06:00-22:00(無休)(前回

《平成20(2008)年2月27日(水)の記録》

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ホテルのメインバーで … バー「メイフラワー(Mayflower)」(広島)

スティンガー


 「萬歳本店」で夕食も兼ねてちょいと飲んだ後、もう少しアルコール分を補給しようとやって来たのは、広島駅に隣接する「ホテルグランヴィア広島」のメインバー、「メイフラワー」です。

 店内は、ホテルのメインバーらしい重厚な造りで、カウンター席にも、ボックス席にも、ゆったりと身体を包み込むような大きな椅子が置かれています。

 火曜日の夜11時というこの時間、店内の先客は5~6人ほど。全体で45席あるという店内に、ポツンとお客が入っているといった感じです。

「いらっしゃいませ。カウンター席でも、ボックス席でも、お好きなところへどうぞ」

 入口で迎えてくれた店員さんの案内にしたがって、カウンターのまん中あたりに座り、最初はスティンガー(1,000円+税・サ)をいただきます。

 国内でも海外でも、知らない町に出かけたときには、ホテルのバーほど安心できる酒場はありません。ホテルの中にあるので変なお客(?)は入ってこないし、ぼられる心配はないし、しかも一見さんでも入りやすい。バーのことをあまり知らない人が、バー入門として行くにも最適な場所ではないかと思うのです。

 最近のシティホテルでは、メインバーと、展望ラウンジのふたつを備えている場合が多くて、ここグランヴィア広島にも1階のメインバー「メイフラワー」と、21階のラウンジ「L&R」があります。ひとりで静かに飲んだりするにはメインバーが、友人達との二次会、三次会などでワイワイと来る場合などにはラウンジが向いているように思います。

 2杯目として注文したのはマティーニ(1,000円+税・サ)です。先ほどのスティンガーはシャカシャカとシェイクして作るカクテルだったのですが、マティーニはミキシンググラスでステア(かき混ぜ)して作られます。

「こちらへは、ご出張ですか?」

 カウンターの中の店員さんが、笑顔で声をかけてくれます。誰かと話したいときには会話に付き合ってくれたり、話したくないときは放っておいてくれたりするのがバーのいいところ。ホテルの中のバーでも、それは同じです。

 ゆっくりと1時間ほどの滞在は2,310円でした。

店情報

《平成20(2008)年2月26日(火)の記録》

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店情報: バー「メイフラワー(Mayflower)」(広島)

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  • 店名: バー「メイフラワー(Mayflower)」
  • 電話: 082-262-1135
  • 住所: 732-0822 広島市南区松原町1-5(ホテルグランヴィア広島内)
  • 営業: 17:00-02:00(日は -24:00)、無休
  • 場所: JR広島駅新幹線口に直結している「ホテルグランヴィア広島」の1階。
  • メモ: 総席数45席。カクテルはマティーニやスティンガーが1,000円。会計時には消費税+サービス料(10%)が加算される。(2008年2月調べ)

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昭和24年創業の老舗 … 居酒屋「萬歳本店(ばんざいほんてん)」(広島)

萬歳本店の店主


 出張で広島に到着したのは午後9時。すぐに駅近くのホテルにチェックインし、小雨の中を「源蔵本店」へと向かうと、なんと、もう看板の灯りが消えて、片付けモードに入っているではありませんか。そうか。この店は朝9時半から夜9時半までの12時間営業だったんですね。やられたー。事前チェックが甘かったですねぇ。

 広島駅方面に戻りながら、どこかで食事をしようと信号交差点を渡ると、すぐそこにあったのが、大衆食堂のような、大衆酒場のような雰囲気の「萬歳本店」です。店は古いし、店名もなにやら「源蔵本店」にも似たところがあるし、店頭に置かれたメニューを見ると小イワシの刺身などもあるようです。今日はここにしてみますか。

 「こんばんは」と入った店内は、まるで教室のように広くて、右手は店の奥まで続く直線カウンター、そのカウンター部分以外の、中央から左手にかけてはずらりとテーブル席が並んでいます。

 この店も午後10時までの営業ということで、テーブル席にひと組いたサラリーマン5人連れが今まさにお勘定をしていて、他にはカウンター席に男性客がひとりいるのみ。

 そのカウンターの手前側、テレビの下あたりに陣取り、瓶ビール(アサヒスーパードライ大瓶、520円)に、「瀬戸の味、広島の味」と注記された、小イワシ刺身(470円)と小イワシ天ぷら(470円)を一気に注文します。なにしろ営業時間があと1時間もないので、食べたいものは急いで注文しておかなければ。

 すぐに出された小イワシ刺身は、10尾分ほどで、長方形のお皿に山盛りです。生姜醤油でいただくと、小さいのに旨みたっぷり味わいが口の中いっぱいに広がります。

 小イワシの天ぷらもできあがってきました。こちらも同じく10尾分ほどで、丸ごと天ぷらにされている熱々のものを、サクッといただきます。

 カウンターの中にいる店主に伺ったところ、この店は昭和24(1949)年の創業で、来年で創業60年。古いこの建物(ほめ言葉です!)も、そのときに建てたものなんだそうで、天井の辺りにむき出しの鉄骨が走っていたりするところにも歴史を感じます。

「最近は取材の依頼なども多いんですが、あと数年で広島市民球場がこの近くにやってくる計画があって、そのときにはこのあたりも再開発されてしまうんですよ」と店主。

 このあたりも、広島駅のすぐ近くにありながら、昔ながらの闇市的な雰囲気の漂う町なのですが、やはり再開発の波は押し寄せてきているようです。この風情がなくなってしまうのは残念だなぁ。

 ビールの後は、日本酒です。メニューには「お酒・正一合」の「上」(350円)と「並」(300円)の2種類があり、店主に違いを確認してみると、

「どちらも西条鶴(さいじょうづる)なんですが、上は本醸造、並は普通酒です」

 と言いながら、ガラスの1合瓶に入った両方のお酒を見せてくれます。

「じゃ、上のほうを、燗でお願いします」

 小イワシの刺身には、広島の日本酒がぴったりです。

 この店は、外観もそうだったのですが、実際にずらりと並んでいるメニューも大衆食堂と大衆酒場を兼ねたようなもので、酒の肴のほかにも、定食や丼物、ラーメンなどが並んでいます。そんな中に鍋物メニューもあって、すべてひとり用として注文できるようです。カキ鍋(750円)、カワハギのちり鍋(680円)、寄せ鍋(680円)、ホルモンニンニク鍋(700円)と、それぞれ引かれる品ぞろえ。そんな中から「ばんざい名物、安くて、うまい!」と、イラスト付きのメニューも出されているトーフ鍋(500円)を注文します。

 出されたトーフ鍋は、野菜がたっぷりと入ったスープで豆腐を煮て、最後に玉子でとじたもの。野菜のいい甘みが出ていて、このままいただいても十分においしいのですが、熱々の豆腐は、添えられた小鉢のポン酢醤油でいただいくのも、また美味です。これが500円というのは、本当に安いなぁ。

 店主の話も伺いながら、閉店時刻を少し過ぎるまでゆっくりさせていただいて、お勘定は2,310円でした。遅くにどうもすみませんでした。ごちそうさま。

 いやぁ、それにしても、この店が再開発でなくなってしまうというのは、まことにもって残念ですねぇ。

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小イワシ刺身 / 小イワシ天ぷら / トーフ鍋

店情報

《平成20(2008)年2月26日(火)の記録》

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店情報: 居酒屋「萬歳本店(ばんざいほんてん)」(広島)

    080226z1
  • 店名: 「萬歳食堂駅前店」(←タウンページの表記名)
  • 電話: 082-263-9370
  • 住所: 732-0823 広島県広島市南区猿猴橋町1-15
  • 営業: 11:00-15:00 & 16:00-22:00、不定休(第1・3日または第2・4日などを基本に、月毎に休日を設定し、店内に掲示)
  • 場所: JR広島駅南口を出て、駅前広場を左に回り込むようにして大州通り(バス通り)に添って、道成りに次の信号交差点(猿猴橋町)まで進む。その交差点の左手前角。駅からは徒歩約5分。
  • メモ: 昭和24(1949)年創業。お酒(上)正一合350、お酒(並)正一合300、ビール大瓶520、ビール小瓶380、生ビール(中)500、焼酎(200ml)500、酎ハイ400、魚沼(本醸造辛口)450、グラスワイン500、ウーロン茶200。カンパチ刺身790、生子450、あじ刺身550、小イワシ刺身470、タコ刺身470、イカ刺身470、カツオタタキ550、カンパチ刺身790、タコ刺身470、小イワシ刺身470、イカ刺身470、サバ刺身470、カツオタタキ550、アジ刺身550。カキフライ700。〔鍋料理〕すき焼鍋850、魚(ハゲ)ちり680、よせ鍋680、ホルモンニンニク鍋700、鍋焼うどん630、当店名物・トーフ鍋500、カキ鍋750。生子450、イイダコ470、イカ煮470、サザエ煮550、ホルモン500、豚耳500、焼肉(豚)500、レバニラ500、とり唐揚げ500、野菜炒め580、タコ天ぷら470、小イワシ天ぷら470、アサリ酒蒸し530、ウインナーソーセージ470、奴トーフ350。
    〔生ビールセット〕生ビール(中)2杯と料理(付出料理)2品で1,000円。
    〔お食事メニュー〕ひれかつ定食850、刺身定食990、焼肉(豚)定食680、すき焼定食990、から揚げ定食680、ラーメン定食680、鍋焼うどん630、かつ丼790、うどん定食680、親子丼580、玉子丼580、チキンライス630、オムライス780、焼めし630、焼うどん550、キツネうどん470、ざるそば550、冷やしうどん550、お茶漬420、むすび350、とんかつ500、ライス(大)250、(中)190、(小)160。(2008年2月調べ)

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お祝い前のひとり呑み … もつ焼き「ホルモン」(沼袋)

燗づけ器


 立石のもつ焼き店、「宇ち多゛」を中心に、記憶をなくすまで飲み歩く様子を、きれいな写真とともに、おもしろく綴っていることで人気のブログ、「宇ち中」が、100万アクセスを突破したということで、今日はそのお祝いのオフ会です。

 所用のため、午後4時開始の一次会には出席できなかったのですが、二次会からの合流を前に、ひとり「ホルモン」で下ごしらえです。素面(しらふ)のまま合流すると、ひとりだけテンションが違っちゃいますもんねぇ。

 店に着いたのは午後5時半。土曜日の早い時間帯は比較的静かなようで、焼き台の両側に並ぶ平行カウンター14席ほどと、テーブル席2卓8席の、合わせて22席程度の店内は、私も含めて8人(3割6分)程度の入り。

 今日もまた寒い1日なので、燗酒(260円)をもらって、煮込み(290円)にお新香(100円)からスタートです。

 煮込みは、焼き台横の寸胴(ずんどう)で煮込まれているのを小鉢によそい、刻みネギをぱらりとトッピングして出されます。焼きものの注文が多くて焼き台が渋滞しているときでも、すぐに出してもらうことのできる料理です。カウンター上に置かれている一味唐辛子を振りかけていただきます。

 ほとんどのお客さんが注文する、人気のお新香も、あらかじめ奥の冷蔵庫でスタンバイされていて、すぐに出されます。今日のお新香はカブとキュウリです。

 焼き台が空いたようなので、レバとコブクロを2本ずつ(もつ焼きは各1本100円)、ちょい焼きでもらいます。この店では、昔からもつ焼きを生で出すことはしていないのだそうで、一番、生の状態に近いのが、この「ちょい焼き」という、表面をちょっと炙った状態で出してもらう食べ方です。レバとコブクロの2品だけが「ちょい焼き」の対象で、素焼き(素炙り?)したものに、おろし生姜と刻みネギとを添えて、醤油(または好みでポン酢醤油)をかけて出してくれます。

 ちょい焼きが出たところで、燗酒をおかわり。燗酒は、カウンター中央部に埋め込むように据え付けられている燗づけ器で作られます。一升瓶からチロリにお酒を入れ、そのチロリのお酒を、燗づけ器の上部にある漏斗(じょうご)のような口から注ぎ込み、下に付いている蛇口の下に空いたチロリを置いて、蛇口をひねれば、もう燗酒のできあがりです。

 燗づけ器の内部にはお湯がたっぷりと入っていて、上の口から入れたお酒が、そのお湯の中を細長いチューブ(らせん状に巻いていると思われます。)で通り抜ける間に、燗がつくという仕組みになっているようです。四ツ谷の「鈴傳」、虎ノ門の「鈴傳」も同じタイプの燗づけ器ですね。

「店の前の景色が変わったでしょう?」と店主。

 店の向かい側に建築中だったマンションが、ほぼできあがって、姿を現したのです。

「もっとこっちに迫ってて圧迫感があるんじゃないかと心配してたんですけど、思ってたよりは距離がありますねぇ。安心しました」

 今日もそのマンションのすぐ横を抜ける新たな路地からやってきたのでした。

 もう1杯、燗酒をもらって、アブラ、オッパイ、ナンコツを塩で焼いてもらいます。なにしろこの店のアブラとオッパイが好きなんですよねぇ。ナンコツは久しぶりです。

 ピピピッと携帯が鳴って、みなさんが二次会に移ったという知らせ。クイッと燗酒を飲み干して、ちょうど1時間の滞在は1,870円でした。どうもごちそうさま。

            ◆   ◆   ◆

 そんなわけで、宇ち中さんの100万アクセス記念オフ会に、二次会の「野方五丁目商店」から合流し、その後は「満月」「ペルル」に、再び「満月」というゴールデンコースをたどって、フラフラになるまでお祝いしたのでした。

 電車で帰るメンバーと別れた後、最後の最後に、にっきーさんともう1軒、「及゛(ぎゅう)」に行ったらしいのですが、記憶の中にはありませぬ。(爆)

店情報前回

《平成20(2008)年2月23日(土)の記録》

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カラスの足跡に導かれ … 居酒屋「烏森醸造(からすもりじょうぞう)」(新橋)

カラスの足跡


「場所がわかりにくいので、カラスの足跡を見つけてください」

 なぬ? 新橋でカラスの足跡だって? マジかい!?

 と疑いながらも、烏森(からすもり)神社前の細い路地を進んでいくと……。

 や、本当にあった! 路地の左手地面に黒や赤のカラスの足跡です。その足跡の先には、人ひとり、やっと通れるかどうかの細い路地(というよりもビルとビルの間のすき間)が続いています。ここに違いない。

 最近、めっぽう新橋づいている感がありますが、金曜日の今日は、築地王こと、小関敦之(こせき・あつし)さん(「東京ランチレボリューション」「東京・築地 五つ星の味、極上の逸品」など著書多数)主催のオフ会で新橋の居酒屋「烏森醸造」です。

 カラスのマークがついた引き戸を開けて店内に入ると、奥に長い長方形の店内には、その形に合わせたような大きなテーブルが1卓。まわりには10個ほど椅子が並んでいます。

 この店は完全予約制で、1日2組まで。今日は我われが7人で予約しているので、これにて打ち止めです。次のオフ会は「烏森醸造」でやろうという話は、かなり前に持ち上がっていたのですが、その時点で予約できる日が、今日しかなかったというほど人気があるお店です。(定員が少ないということもありますが…。)

 すでに到着されていたのは、つきじろうさん。「お久しぶりです」なんて挨拶を交わしているところへ、店主があったかいお絞りを出してくれます。このお絞りが、ミントの香りがスッと漂って、とっても心地よい。

 すぐに小関さんや、月島仮面さん、くにさんジュネさんに、小関さんの本を編集されているYさんも到着されて、本日のメンバー7人が勢ぞろいです。

 ここには何度かいらっしゃっている小関さんが「最初はビールで」と注文してくれて、まずはエビスビールの小瓶からスタートです。この店は、基本的に料理もおまかせ、飲み物もおまかせで、おいしい料理と、おいしい日本酒が飲めるんだそうです。

 最初に登場したのは、モンゴウイカの雲丹和え。「よくかき混ぜて食べてくださいね」という店主の言葉に従って、グリグリとかき混ぜて、細く切られたモンゴウイカの刺身を口に含むと、フワッと雲丹の風味が漂ってきます。うーーーん。日本酒が欲しい。でも、最初から飛ばすと、長丁場が持たないからなぁ。ガマン、ガマン。

 2品めは長崎産・鰆(さわら)の焼き魚。ふんわりと焼きあがった重量感のある身を、酢橘(すだち)を搾った煮きり醤油でいただきます。

 3品め。厚岸(あっけし)産の牡蠣(かき)を酢ガキで。大粒の牡蠣が、ひとりにたっぷりと6個ずつ。このポン酢醤油がまた、カツオダシがよく効いていて美味しいのです。「ほとんどのお客さんは飲み干しますよ」と店主。これは絶対日本酒だ。3個だけをツルリといただいて、残り3個は日本酒用に取っておくことにします。

 そして出された1本目の日本酒は、岡山の「歓びの泉」(純米大吟醸)。ふだんはグラスで出してくれるそうなのですが、今日は7人いるので、新しい一升瓶がドンと置かれます。店主は日本酒にも詳しいらしく、これはという日本酒を自分で選んできて店で出しているんだそうです。

 続いて(4品め)は、牡丹エビをひとり2尾ずつ生で。「頭のところは、足を引っ張るようにすると上手く取れるから」と教えてもらって、殻の中の濃厚なミソをチューチューとすすります。1品1品のボリュームがけっこうあるので、いつも少量の肴で酒を飲んでる私なんて、もうほとんど満腹です。

 5品めは、焼きホタテと焼き平貝の盛り合せ。平貝は瀬戸内産で岡山に上がったもので、厚みがすごくあるので、厚さ方向に半分にスライスして焼いたんだそうです。ホタテは北海道産で、小鉢のど真ん中にデンと鎮座しています。これに刻んだ万能ネギをたっぷりとのせて、ワサビマヨネーズでいただきます。

 たたみ込むように、出されたのはアン肝(6品め)。このアン肝は、ニッカの蒸留所のある余市(よいち)でとれたアンコウのものなんだそうです。これもポン酢醤油なんだけど、ポン酢は柚子(ゆず)と酢橘(すだち)とのことで、アン肝の甘みを引き立てます。

 2本目のお酒は、ひやづめ純米山田錦「開運」。静岡のお酒です。

 7品めの料理は、和歌山で上がったという本マグロの大トロ。さっきの岡山のお酒に岡山の平貝という瀬戸内同士の組み合せも良かったのですが、今回の静岡のお酒に和歌山のマグロという黒潮文化圏の組み合せもいいですねぇ。しかし、もう満腹で苦しいほど。

 飲むほどに酒の進みは速くなって、3本目は秋田の「春霞」美山錦・純米吟醸です。

 もう、これ以上の食べ物は無理、という8品めはキュウリの漬物。これなら大丈夫かな。それにしても、グルメブログの方々は、さすがにみなさん健啖家で苦しい様子も見せずにペロリと平らげてしまいます。

 閉店時刻の午後11時まで、3時間の滞在は、ひとり11,000円ずつでした。うーー、満腹。

            ◆   ◆   ◆

「このお店、11時からはワインバーとして営業するんですよ。ワインバーにも残る人?」

 という小関さんの問いかけに、「はーい!」と手が上がります。私も「電車がなくなるので、少しだけ…」と手を上げて、7人中5人が残ることになりました。

 午後11時までの居酒屋の部の店主は、ここで帰り支度をして帰路につかれ、入れ代わりに、イタリア人のマウロさんがやって来て、朝まで店を切り盛りするんだそうです。

 ワインバータイムになった店内は、照明が落とされ、テーブル上の3~4箇所にキャンドルが置かれます。たったこれだけのことで、店内の雰囲気がうんと変わってしまうのが素晴らしいですねぇ。

 スパークリングワイン(米国のアーガイル)を1本飲みきったところで、月島仮面さんと私はタイムアップ。この時点でいったんお勘定をしてもらい、ひとり1,260円ずつ支払って「お先にー!」と二人で戦線離脱です。

 やぁ、実におもしろくて、おいしくて、ボリュームたっぷりのお店でした。今回も、どうもありがとうございました。

店情報

《平成20(2008)年2月22日(金)の記録》

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店情報: 居酒屋「烏森醸造(からすもりじょうぞう)」(新橋)

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  • 店名: 「烏森醸造」
  • 電話: 03-3508-0688
  • 住所: 105-0004 東京都港区新橋2-15-3
  • 営業: 17:00-23:00(22:30LO)、土日祝休(土は5名以上なら予約可)
     《ワインバー》23:00-夜明けまで、土日祝休
  • 場所: SL広場の裏側、烏森神社前の路地に入って、道路左側を気にしながら50mほど進むと、左手足元に“カラスの足跡”あるので、その足跡の進む方向に、人ひとり分がやっと通れるほどの路地を入った左手。
  • メモ: 楢の一枚板テーブル1卓10名分の席は、完全予約制で1日2組のみ。おまかせの料理に、ビール小瓶、日本酒3~4杯で1万円程度。夜11時を過ぎると、店主が替わってワインバーになる。こちらは予約なしでも入れる模様。(2008年2月調べ)

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三杯までとおこられて … 酒亭「武蔵屋(むさしや)」(横浜・桜木町)他

先代の姿を模した人形


「無理いうて 三杯までと おこられて」

 横浜・野毛にある古い酒亭「武蔵屋」の店内に飾られている色紙に書かれている句です。この店では、創業者である先代の木村銀蔵さんのころから、お酒はひとり3杯まで。店内にはそのことを詠った歌や、指を3本立てている先代の姿を模した人形などが置かれています。

 木曜日の仕事を終えて「武蔵屋」にやってきたのは午後8時。店内はゆるやかに満席状態ながら、6人ほど座れるカウンターを4人でゆったりと使っていた2人連れ2組が詰めてくれて、なんとかカウンターの入口側の端っこにすべり込みます。

 この店は、お酒(桜正宗)を楽しむための酒亭なので、店に入った人には必ずお酒のセットが出されます。3杯を超えてお酒を飲むのもご法度ですが、お酒を飲まないのもご法度なのです。ソフトドリンクは置いてません。

 お酒を飲む前にビールをいただくのはOK。店のおねえさんが「最初からお酒でいいですか?」と聞いてくれるので、そのときに「最初はビールをください」と注文すればビールと、ビール用のおつまみ(たいてい豆類)を出してくれます。ビールはキリン一番搾りで、小瓶が500円、大瓶だと700円です。

 今日もまずは小瓶のビールをもらって、喉を潤してから燗酒に移行します。

 店に入った時点で、すぐに酢漬の玉ねぎと、おからが出され、やや遅れてお客が入ってから作り始めるらしいタラ豆腐が出されます。これに加えて、2杯目をおかわりすると納豆が、3杯目をおかわりするとお新香が出されて、都合、3杯と5品で終了となります。このセットが2千円。1杯だけとか、2杯までというように、途中で止めることはできるようで、その場合は値段も割安になるみたいです。

 そうやってセットとして出される料理の他に、小肌や煮貝、きぬかつぎなどが、1品それぞれ400円で用意されています。

 今日の「武蔵屋」は、ひとり客があまりいないようで、ほとんどが2人連れ以上のグループ客。特にカウンターが、先に書いたとおり、私以外は2人連れが2組で、それぞれの会話がそのふたりの間で完結しちゃって、まったく発展性がない状態。これは悲しいなぁ。

 ここ「武蔵屋」には、テレビもなければ、ラジオもない。もちろん有線放送もなくて、店内は酔客たちのザワザワとした空気だけが流れるだけ。したがって、カウンターに座る常連さんと女将との会話そのものが、他のひとり客にとって、貴重な酒の肴であったりもするのです。

 酒場なので、人それぞれに楽しめばいいとは思うのですが、せっかく「武蔵屋」に来ていながら、自分たちのグループ内での話に終始するというのは実にもったいないことだと思うし、お酒も料理も置きっぱなしで話に夢中になってるという状態は、店をのぞいては「いっぱいか…」と残念そうに帰っていく人たちにも申しわけないと思うんですよねぇ。

 「武蔵屋」のような酒場は、ある意味、文化遺産的な存在でもあります。だから、その店に集うお客さんたちも含めて、みんなでその価値を守っていくことが重要なのではないかと思うのです。

 このところ「武蔵屋」の記事を書くたびに、ちょっと愚痴っぽくなっちゃってますねぇ。反省、反省。

 午後9時まで、ちょうど1時間の滞在は、小瓶のビールと燗酒3杯で2,500円でした。

            ◆   ◆   ◆

 この酒量で、まっすぐに帰宅すれば、明日に残らないきれいな飲み方になるのですが、ほろ酔い加減の両足は、そんな主人の思いとは無関係に都橋商店街の「ホッピー仙人」へと向かいます。

 すでに樽生ホッピーは売り切れていて、今日は瓶の白ホッピー(500円)をもらって、満員の先客たちと乾杯です。

 今日、はじめて知ったこと。「ホッピー仙人」にはヌキッピー(抜きッピー?)という、焼酎抜きのホッピー(いわゆるソトだけ)もあるんだけど、これもレモン汁を入れて、飲み物(ノンアルコールカクテル)として美味しく飲める工夫がされているということ。

 そして、この店の陶陶酒(とうとうしゅ)のカクテルは、陶陶酒と高麗人参酒をブレンドして作るもので、この店では珍しく、ホッピーを使わない飲み物だということ。近くにあった、今はもうないお店のレシピを受け継いでいるんだそうです。

 そんな話を聞きながら、1時間弱の滞在は500円でした。どうもごちそうさま。

・「武蔵屋」の店情報前回) / 「ホッピー仙人」の店情報前回

《平成20(2008)年2月21日(木)の記録》

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脂がのった寒ブリ刺身 … 魚河岸料理「初恋屋(はつこいや)」(田端)

寒ぶり刺身


 横浜から京浜東北線1本でやってきたのは田端です。山手線内にある唯一の北区が、ここ田端駅。赤羽、十条、王子などの呑ん兵衛タウンを有する北区だけに、田端駅周辺にもいい酒場が何軒もあるのです。

 そんな中、今日やってきたのは駅のすぐ東側(山手線の外側)にある魚河岸料理の「初恋屋」です。

 この店には以前一度グループで来たことがあって、また今度、ひとりでじっくりと来てみたいと思いながら、なかなかやって来ることができなかったのでした。

 交差点の角に建っている「初恋屋」は、ちょうどその角を斜めに切り落としたところが入口で、そこから店内に入ると、正面にやわらかく「く」の字に曲がったカウンターがあり、入口から見て右側に小上がりの座敷席が、左側に何卓かのテーブル席が並んでします。

 火曜日、午後9時の店内はゆるやかに満席状態。しかし「く」の字カウンターは、上の辺にふたり、下の辺にふたりが座り、ちょうど角のところが空いていて、そこに案内されます。

 総席数30席あまりの店内を切り盛りしているのは店主夫妻。お互いのことを「パパ」「ママ」と呼び合うお二人が初恋で結ばれたから、この店は「初恋屋」というロマンチックな店名なんだそうです。パパはカウンター内の厨房で調理を担当しており、ママはホール全般を受け持ちます。

 まずおしぼりが出され、割り箸とお通しの小鉢が用意されます。今日のお通しはなんとイカゲソの塩辛です。

 食文化史研究家の永山久夫(ながやま・ひさお)さんが書かれた「酒の肴雑学百科」によると、酒の料理のはじまりはわたもの、つまり塩辛がいいのだそうです。2千年も大豆醗酵食品を取り続けてきた日本人の舌は、塩辛のようなグルタミン酸系の食べ物をのせると、感覚がシャープになる。さらにタンパク質がアミノ酸に分解されて消化酵素も多いので、消化薬を飲むような働きもあるというから、ありがたいではありませんか。

 こうなると、はなから日本酒がいいですね。ここの標準的な日本酒、つまり銘柄の指定をしないで「お酒」とたのんだら出てくる日本酒は、「奥の松」本醸造が大徳利(二合)で500円。普通に本醸造酒を出してくれるというのがうれしいですねぇ。さっそくその「奥の松」を燗でいただきます。

 前に来たときにすごくおいしかったアラ大根煮(300円)を注文すると、すぐに出されるアラ大根煮は、大きく切られた大根が3切れに、いろんな魚やイカなどのアラがたっぷりです。黒々と色艶よく煮込まれた大根からほっくり、ハフハフといただきます。うーん。これはうまいっ!

「どう。美味しいでしょう。それでも今日から煮込みはじめたものだからねぇ。明日になると、もっとうまいよ」

 とカウンターの中から笑顔で声をかけてくれるパパ。ねじり鉢巻をキリリと締めた姿は、魚河岸の親父風でちょっと強面(こわもて)なんだけど、ニコッと笑うと、とても優しそうな表情になるのです。

 たっぷりのアラ大根煮で大徳利を飲み干して、燗酒をおかわりするとともに、料理のほうは、今度は寒ブリの刺身(480円)を注文。出されたのはつややかに輝く、大きな刺身が8切れほど。プリプリと脂ののり切った寒ブリのうまいことといったら! うー、お酒、お酒。

 カウンター上のネタケースには、寒ブリ以外にも旬の魚介類がずらりとならんでいて、最高値の釣りアジ(豊後アジ)刺身でも680円、大トロや、カマ中トロなどが500円、クジラやエンガワなどが480円と、とにかく安いのです。

「うちは関サバだって980円で出すからねぇ」とパパ。

 関サバは仕入れがキロ5,500円くらいなので、刺身に造ると半分くらいになって、キロ1万円を超える品物になるんだそうです。

「それを1人前100グラムぐらいずつ出すから、ほとんど儲けはないんだよ。それでも回転良く出てもらって、明日もまた新しい魚を仕入れられたほうがいいからね。寒ブリも、明日もまた仕入れるよ!」と元気に笑います。

 となりに座っている女性ふたり連れが食べているのはネギマ鍋(900円)。このネギマ鍋も、この店の冬場の名物なんだそうです。

 1時間半ほどの滞在は、ちょうど2千円。お通しは220円だったんですね。どうもごちそうさま。

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「初恋屋」 / ゲソ塩辛と燗酒 / アラ大根煮

店情報前回

《平成20(2008)年2月19日(火)の記録》

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少し値上げしたのかな … もつ焼き「秋田屋(あきたや)」(浜松町)

ナンコツとカシラ


 金曜日の今日は、会社の同僚・Iさんと浜松町駅で待ち合わせて「秋田屋」です。

 今日もまた、最高気温が9度までしか上がらないという厳しい寒さの中、午後7時過ぎの「秋田屋」は、いつものように店内のみならず、外の立ち飲みテーブルまでお客さんがあふれている状態。そんな中、かろうじて空いていた入口左手の小さなステンレス製の立ち飲みカウンターに入り込んで、まずは瓶ビール(キリンラガー大ビン、580円)で乾杯します。

 つまみは、この店の名物でもある、ひとり1本限定のたたき(肉だんご、220円)を注文したものの、残念ながらすでに売り切れ。Iさんは牛にこみ(450円)を、私は牛にこみどーふ(450円)をもらって、あったか物からスタートです。

 焼き物は、ナンコツとカシラを2本ずつ、塩焼きでお願いします。メニューでは、もつ焼きは2本一皿で360円となっているので、それぞれ2本ずつ注文したのですが、実は1回の注文で2本以上になれば、混ぜ合わせてもいいみたいです。

 前回来たときは、2本一皿で320円だったと思うのですが、その後、値上がりしてるみたいですね。1本あたりのボリュームはあるものの、1本180円となると、けっこう高い感じがしますね。そう言えば瓶ビールも550円から580円に値上がりしてるようです。

 2本目の瓶ビールを飲み干したところで、飲み物をレモンハイ(400円)に切り換えます。

 店の奥にはエレベーターもあって、お客さんが2階へもどんどん上がっていくんだけど、特に2階から注文が通されたり、お勘定がお願いされたりする様子はありません。

「2階はどうなってるんですか?」

 と目の前のおかあさんに聞いてみたところ、

「1階とほとんど同じ感じなんですよ。ほとんど同じ位置に厨房があって、カウンター席があって、テーブル席があるんです」

 なるほど。2階に上がってしまえば、2階のだけで注文からお勘定まですべて完結できるようになってるんですね。2階にも焼き台があるとは知りませんでした。

 もつ焼きと牛にこみを食べ終えたところで、次なるつまみを選びます。

「自家製の漬物も、人気あるみたいなんだよね」

「ふーん。お新香(300円)と一夜漬(300円)の2種類があるのか。両方たのんでみましょう」

 お新香は、大根、キュウリ、ニンジン、白菜のぬか漬を小鉢に盛り合せたもの。一方の一夜漬は、キャベツとキュウリ、ニンジンを細く切って塩でもんだものが、小鉢に山盛りで盛られます。

 これは燗酒が合いそう。さっそく小徳利(550円)を1本もらいます。ここの燗酒は「高清水」。小徳利といいながらも二合徳利と大きいのです。大徳利(1,300円)は、その値段から考えて五合くらい入るのでしょうか。けっこう大きな徳利です。

 この店では、ほとんどの店員さんが腰におそろいのウエストポーチを着けていて、お勘定をお願いするとその場でチャチャチャッと清算してくれます。このウエストポーチの中に、売り上げ金が入っていて、そこからお釣りなども払うようになっているようなのです。したがって、お客さんたちは自分のいる場所から動くことなく清算が終わります。

 午後9時半の閉店時刻まで、あと10分ほどとなった店内は、あちこちで清算が行われています。

「こっちも、お勘定をお願いします」

 と近くのおかあさんにお願いすると、伝票を手に筆算で計算。2時間半の滞在は、2人で4,980円(ひとりあたり2,490円)でした。どうもごちそうさま。

店情報前回

《平成20(2008)年2月15日(金)の記録》

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店員さんがかわいくて … 家庭料理「和(かず)」(新橋)

「和」の店員さん


 「大露路」をあとに、再びニュー新橋ビルの地下1階へ。先ほど入れなかった「和」に再挑戦です。

 木曜日、午後7時半の「和」は、まだまだお客さんが多いものの、ちょうど一組のお客さんがお勘定をしているところで、空いたテーブルに4人ですべり込みます。

 「和」の店内は4人掛けテーブル席が主で、奥の厨房のところにカウンター席もあるものの、主として厨房との品物のやり取りに使っているようで、お客さんは座っていません。あるいは、もうちょっと込みあってくると、カウンター席も使うようにするのでしょうか。

「ここは朝(午前9時半)から開いてるので、早い時間からでも飲み始めることができるのと、今日はダメでしたけど、いつもはたいてい空(す)いてるので、よく来るんですよ」と、この店の常連のSさん。

「値段は大衆酒場なんかに比べるとちょっと高いんだけど、店員さんがかわいくて、その娘(こ)たちが、ちょっと話し相手になってくれたりするのがいいんですよ」

 なるほど、中瓶のビールが630円というのは、たしかにちょっと高いですね。

 その店の値段のレベルを見るときに、瓶ビールの値段というのは大きな指標になるのです。中瓶のビールは、たいていのお店で500円程度の値段。これより高いと「この店はちょっと高めかな」と分かります。大衆酒場の場合には、大瓶のビールが500円しないところも多いですよね。横浜(上大岡)の「じぃえんとるまん」なんて、大瓶が350円ですからねぇ。恐るべきコストパフォーマンスです。

 ここ「和」では、チューハイ類も450円ほどと、下町酒場の1.5倍程度の値付けです。

 しかし、Sさんが言うとおり、女の子たちはカワイイ! 彼女たちは中国からの留学生で、学校に通うかたわら、ここでアルバイトをして生活費を稼いでるんだそうです。容姿そのものもそうですが、なにより受け答えをするときに、いつもニコニコ笑顔なのがいいではありませんか。

「我われしか知らないと思ってたのに、かわいい娘がいるのが、みんなにも知れ渡っちゃったかなぁ」

 と、いつもはすぐに入れる店に、満席で入れなかったことがちょっとショックな様子のSさん。

 この店のあるニュー新橋ビルは、その昔、新橋駅近くにあった闇市を整理したときに建てられたビルで、その闇市にあったお店がビルの中に入ったのだそうです。そんなことから、今でも特に地下1階には酒場が多くて、それぞれの店の前では女性たちが「はい、おにいさん。席が空いてますよどうですか」とか、「美味しいお刺身がありますよ」と行き交うサラリーマンたちに声を掛ける光景が見られます。これら、店のおねえさんたちを除くと、ほぼオヤジ率100%という空間なのでした。

 2軒目なので、最初から焼酎(芋焼酎「黒霧島」)をボトル(900mlが3,300円)でもらい、それぞれロックやお湯割りにして乾杯です。

 つまみのほうは枝豆(550円)や、だし巻き玉子(530円)、馬刺し、手作りさつま揚げ(600円)に、鮭はらす(650円)などなど。

 おねえさんたちとの話も楽しく過ごすうちに、気がつけばもう午後10時半。うーむ。3時間も飲んじゃいましたか。お勘定は4人で16,500円(ひとりあたり4,125円)でした。

 たしかに安いお店ではないけれど、これもまた新橋あたりの酒場ならではの風情なのかもしれませんね。おもしろいお店でした。

店情報

《平成20(2008)年2月14日(木)の記録》

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店情報: 家庭料理「和(かず)」(新橋)

    080214z
  • 店名: 魚と家庭料理の店「和」
  • 電話: 03-3501-2017
  • 住所: 105-0004 東京都港区新橋2-16-1 ニュー新橋ビルB1F
  • 営業: 9:30-24:00(土日祝は10:30- )、無休
  • 場所: JR新橋駅を西側に出た目の前(SL広場の横)、ニュー新橋ビルの地下1階。
  • メモ: テーブル席とカウンター席で30席ほど。晩酌セットは生ビール(または焼酎)に小鉢(煮物、おしんこ、丸干、板わさ、おひたし、冷奴、厚揚げ、網焼き)が2品で980円。ビール中ビン630、生ビール560、酒一合320、酒二合630、焼酎お湯割り450、焼酎ウーロンハイ450、レモン・ウメ・ライムサワー各450、生グレープフルーツサワー530、生レモン・フルーツサワー各450、梅酒サワー・ロック各500、ワイン赤・白1,300、ちょこべこ(麦720ml)3,000、いいちこ(麦900ml)3,300、白波(芋900ml)3,300、黒霧島(芋900ml)3,300、冷酒(大関・辛丹波・八海山・久保田(千寿)・雪中梅)各1合750。アスパラ(おひたし)550、菜の花(辛子和え・マヨネーズ和え)650、冷しトマト500、梅きゅう480、枝豆550、鳥手羽焼き(3個)650、めざし600、うるめ若干し550、ぶり照焼き800、銀だら西京焼き840、野菜天ぷら700、江戸前あなご天750、いわししそ揚げ780、豚の角煮680、寒ぶりあら煮780、寒ぶりかま焼き980、いかそうめん550、かき揚げ530、若鶏唐揚600、手作りさつま揚げ600、カキフライ700、アスパラバター炒め600、椎茸バター炒め530、ほうれんそうバター炒め480、コンビネーションサラダ480、キャベツオムレツ600、ごま和え530、おひたし480、ニラ玉480、鮭はらす650、うるめいわし600、いか姿焼き650、ししゃも550、丸干580、ポテトサラダ480、だし巻き玉子530、筍土佐煮600、なす味噌炒め580、おから550、チーズ盛合せ480、鮭・梅茶漬け(漬物付き)700など。(2008年2月調べ)

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料理全品300円均一 … 大衆酒場「大露路(おおろじ)」(新橋)

ハムフライ


 都内での仕事が早めに終わったものの、職場(横浜)まで帰れるほど早くもなく、仕方なく(?)同行者たちと4人で新橋です。

「新橋に、よく行ってるお店があるんですよ」

 と連れて行ってくれたのは、新橋駅前、ニュー新橋ビルの地下にある魚と家庭料理の店、「和(かず)」。ところがっ! まだ午後5時前であるにもかかわらず、「和」の店内はスーツ姿のサラリーマンたちで満席で、しかもみなさん、すでにけっこう出来上がっていらっしゃる。この店、朝の9時半から年中無休でやってるそうですからねぇ。さすが新橋です。

「このすぐ近くに行ってみたいお店があるので、まずそちらに行ってみませんか?」

 そうみんなに提案して向かったのは、新橋駅西口の酒場がひしめく横丁内にある「大露路」です。ここには、実はこれまで3度くらいやって来ているのですが、いつも満員で入れたことがないのです。午後4時開店の「大露路」なので、午後5時前のこの時間帯なら、まだ大丈夫じゃないかな。

「こんにちは。4人です」

「いらっしゃいませ。どうぞどうぞ」

 と迎えてくれる店内は、先客はなし。やったーっ! はじめて入ることができた「大露路」は、口開けのお客となりました。

 まずは瓶ビール(キリンラガー大瓶、550円)をもらって乾杯。お通しにはモヤシのナムルっぽいのが出されます。

「ここは、料理は全品300円均一なので、好きなのを何品かもらいましょう。私は名物のハムフライをお願いします」

 と口火を切ると、みんなもそれぞれ鯨ベーコンや、なす油ミソ、ポテトサラダなどを注文します。鯨ベーコンも300円というのは驚きですね。

 ハムフライは、分厚い丸いハム2枚に衣をつけてカツにしたものですが、このハムが、1枚、2枚と数えるには単位が間違っているんじゃないかと思うほど分厚く切られていて、ボリューム満点。それを食べやすいように4等分に切り分けて、ウスターソースがかけられ、横には練り辛子が添えられています。

 店内はテーブル席のみで、左手に8人掛けが2卓、右手に6人掛けが2卓並び、奥のカウンターのところでも2~3人なら立ち飲み可で、合わせて30人ほどのキャパシティ。これを女性ふたり(ひとりは厨房、ひとりはホール)で切り盛りしています。

 しばらくビールを飲んだ後は、焼酎のお湯割り(300円)や酎ハイ(300円)など、それぞれ自分の好きな飲物に切りかえます。私も燗酒(300円)に切り替えると、ヤカンからとくとくとグラスに注いでくれる燗酒は、広島(呉)の「千福」です。

 5時半頃になると、だんだんと人が入ってきて、あっという間に店内は満席模様。

 料理のほうも、ギンナンや、シシャモ子を追加。軽く炙ったシシャモ子を、七味唐辛子をたっぷりとかけたマヨネーズ醤油でいただくと、お酒が進むこと進むこと。

 2時間半ほどの滞在は4人で7,600円(ひとりあたり1,900円)でした。どうもごちそうさま。

店情報前回

《平成20(2008)年2月14日(木)の記録》

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そ、それは私なんです … おでん「米久(よねきゅう)」(阿佐ヶ谷)

おそ松くん(手前)と里芋


「うちの店が本に載ったのよ」

 この店をひとりで切り盛りしている、おかあちゃん(=女将)が、そう言いながら渡してくれたのは、なんと「酒場百選」ではありませんか。

「うっ。この本、私が書いたんですけど……。黙って載せてすみません」

「やっぱりそうだったの。写真の顔と似てるなぁと思ったんだけど、人違いだったらいけないから、この本を渡してみたのよ。そう、あなただったの! ねぇみんな。この人だって、この本を書いたのは!」

 そう言って、入口近くにずらりと居並ぶ大常連さんたちに紹介してくれます。

「いつも静かに飲んでるから、作家さんとは思わなかったわよ」

「いや、あの、作家さんではなくて、普通のサラリーマンなんですけど…。たまたま、こういうことになりまして……」

 なんて、もう、しどろもどろ。毎日のように訪れる常連さんたちに「勝手に紹介しやがって!」と叱られるんじゃないかとビクビクしていると、

「そうか。あんただったか。いやぁ、店の雰囲気がよく書けてるよなぁ」

「誰だろうって、みんなで話してたんですよぉ」

「載ってるって話は聞いてたんだけど、本屋に置いてなくてねぇ。最近になってやっとYさんが古本屋さんで見つけてきてくれたんだよ」

 と、みなさんも受け入れてくれて、ひと安心です。

 テレビや雑誌などの取材の場合は、まず取材依頼をして、取材日時などを決めた上で、テレビクルーや、ライターさん、カメラマンさんなどがやってきて一気に取材をしていくようなのですが、ブログの場合は、ごくごく普通のお客として飲んでる人が書いてることが多いので、だれが書いてるんだかわからないんでしょうねぇ。

 たまーに、料理などの写真を撮ってる人を見かけると「ブログかな?」と思ったりします。ということは、逆に私が撮ってるときにも、そう思われてるのかなぁ。

 ここは阿佐ヶ谷駅北口にある古いおでん屋「米久」。

「おかえりなさ~い!」と迎えてくれる店内は、うなぎの寝床のように細長く、客席も店の奥までをズドーンと貫く、長~いカウンター席のみ。そのカウンターの中央、やや手前に四角いおでん鍋が組み込まれていて、それより入口側はカウンターの幅(奥行き)が広くなっていて、まるでテーブル席のような感じで使える変わった構造なのです。

 そのテーブル席のようになった部分に、毎日のようにやってくる大常連さんたちが陣取ります。なにしろそこが入口引き戸を開けた目の前なので、この店にやってくるお客さんたちは一様に、大常連さんたちの横を通過しながら店の奥へと進まないといけない仕組みになっているのでした。

 おかあちゃんのみならず、大常連さんたちも「おかえりなさ~い!」と迎えてくれることが多いのが嬉しいですね。

 3銘柄(アサヒ、キリン、サッポロ)選べる瓶ビールをサッポロ(ラガー大瓶)でお願いし、おでん(1個90円~310円)は、おそ松くんと里芋をもらいます。

 おそ松くんというのは、1本の串にハンペン、ボール(球状の薩摩揚げ)、鳴門巻き(棒状のまま)が刺された、「おそ松くん」の漫画ではチビ太がいつも手にしているおでんなのです。三角、丸、四角と、形はそれぞれ異なるものの、すべて練り製品ですからねぇ。練り物好きにはたまらない一品です。ちなみに製法も、茹で(ハンペン)、揚げ(ボール)、蒸し(鳴門巻き)と異なります。(なお、漫画のチビ太のおでんは、コンニャク、ガンモドキ、鳴門巻きという設定です。)

 この店では、最初は必ずおでんをいただくというのが決まり事。おでんをもらっておいてから、ボードに書き出された今日のオススメ品を注文するのです。今日は鯨ベーコン(1,100円)、馬刺(900円)、まぐろ赤身刺(800円)、みる貝刺(700円)、カツオたたき(600円)、イカ刺(600円)、シメサバ(600円)、ハムステーキ(600円)、サンマ刺身(600円)、サンマ塩焼(600円)といった品々に加えて、ある程度定番の塩辛、塩らっきょう、サラダ、ししゃも、わかさぎ(それぞれ400円ほど)などなどが並んでいます。

 なにしろ、おかあちゃんがひとりで切り盛りしているので、まずはおでんを食べておいてもらって、その間に料理を作りましょう、ということなんでしょうね。

 ちなみにこのお店、「米久」になる前は、「おかあちゃん」というお店だったんだそうで、店内にはそのころの看板も残っています。

「だから昔から、おかあちゃん、って呼ばれてたのよ。今も、ママとか、女将さんとか呼ばれると、自分のことだと思えなくて」

 と笑いながら話してくれるおかあちゃんのエプロンの胸元にも「おかあちゃん」という刺繍が入っています。

 そのおかあちゃん、若いころは卓球の選手として活躍し、都の大会で個人優勝して全国大会へと進んだんだそうです。

「全国でも軽く3位以内には入るだろうと思ってたら7位でねぇ。ちょっとショックで、それ以来、止めちゃったのよ」

「でも、温泉旅館なんかでピンポンをすると、やっぱりすごいのよねー」

 と話してくれるのは、大常連さんのひとりで、『阿佐ヶ谷の歌姫』とも呼ばれている、ジャズシンガーの塚越洋子(つかこし・ようこ)さん。そのとなりで飲んでいるのは、ご主人で、この店では『先生』と呼ばれている塚越仁慈(つかこし・ひとじ)画伯という、芸術家ご夫妻なのです。

 ビールに続いては、焼酎を温かいプーアール茶で割った、プーアール茶割りをいただいて、おでんはガンモドキ、玉子、そしてチクワブをお願いすると、最初に入れたガンモドキだけで、もう器がいっぱいになってしまいます。

「大きくて、ごめんなさいね」

 これが、おかあちゃんの口癖のようになってしまってるくらい、ここのおでんのネタは大きいのです。さすがに玉子こそ普通の大きさですが、チクワブもまたどかんと長い1本なのです!

 たっぷりと満腹になるまで、おでんをいただいて、2時間半の滞在は1,860円。おかあちゃんや、常連さんたちの笑顔に見送られながら、店を後にしたのでした。

店情報前回

《平成20(2008)年2月12日(火)の記録》

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一人、一人と集まって … 「竹よし」(都立家政)~「さぬき亭」(野方)

「さぬき亭」の焼きうどん


 「秋元屋」をあとに、トコトコと1駅分(約10分ほど)歩いて「竹よし」にやってきました。日曜日は、夕食の前(午後4~6時ごろ)に自宅近くの酒場で軽く飲んでから、家族での夕食に臨むことが多いのですが、今日は日曜日ながら三連休の中日(なかび)。明日も休みなので、腰を据えて飲むことができるのです。

 同じような考えの人も多いのか、午後6時過ぎの「竹よし」店内は、左手に2卓あるテーブル席は空いているものの、右手の6~7席分ほどのカウンターには、すでに5人の先客がいる状況です。

 空いているカウンターのまん中の席に座り、まずは燗酒(菊正宗、350円)をもらうと、今日のお通し(200円)は刻んだ野菜が入った具入り玉子焼です。

 1軒目として「竹よし」にやってくると、肴(さかな)は刺身からスタートすることが多いのですが、今日はすでに「秋元屋」で煮込みやもつ焼きをつまんできての2軒目。いきなり、コッテリ系でも大丈夫かな。

 そんなことを思いながらメニューを眺めていると、先客のひとりから天ぷら盛り合せ(1,000円)の注文が入ります。ふむふむ。久しぶりに天ぷらもいいですねぇ。油を温めたついでに、私も天ぷらをいただきますか。

「私は、山菜天ぷらの盛り合せをお願いします」

 山菜天ぷら盛り合せ(700円)は、たらの芽、ふきのとう、こごみ、うるいの4種を盛り合せたもの。この季節ならではの天ぷらですね。

 天ぷらを待っているところへ、ガラリと引き戸が開いて入ってきたのは、なんとjirocho親分ではありませんか。カウンターは私を含めて6人で、すでに緩やかに満席状態なので、jirochoさんは後ろのテーブル席に座り、私もテーブル席に移動しようとしたところへ、またまたガラリと引き戸が開いて、やってきたのは腹黒屋さんです。

 うーむ。打ち合わせたわけでもないのに、それぞれひとり客としてやってきて、店の中で合流するというのがおもしろいですねぇ。

 しかしながら、この合流は偶然とは言えないかもしれません。実は昨日、土曜日が「竹よし」の夕食会の日。今月の夕食会のテーマはスッポンで、スッポン鍋や雑炊に舌鼓を打ったのだそうです。その食材が残っているかもしれないという期待感で、私も含めて、みんなが続々とやって来た、というのがこの合流の舞台裏なのです。

 残念ながら、スッポンは夕食会の中で完食だったのだそうで残っていませんでしたが、サブの食材として出された活ジメのスズキは、少しだけなら残っているのだそうです。

「それじゃ、そのスズキの刺身(650円)をください」

「こっちは、スズキのカマ焼き」

 そうこうしているうちに、Hさんご夫妻もやって来て、テーブル席あたりはちょっとした宴会状態です。

 こうなると、そのまま終わるはずもなく、午後10時半頃にお勘定を済ませ(私の分は3,700円)、野方の手打ちうどん酒房「さぬき亭」へと流れます。

 最後のシメも兼ねて、つまみには焼きうどん(650円)をもらって、みんな(4人)で湯割りの芋焼酎です。

 jirochoさんも、腹黒屋さんも、Hさんも、それぞれ独り呑みも得意な酒場好きなので、いろんなお店に行かれています。なにしろ呑ん兵衛同士の口コミ情報ほど正しい情報はありませんので、こういう機会は重要ですよねぇ。

 日付けが変わるころまで、ゆっくりと楽しんでお勘定は4人で6,200円(ひとり1,550円)でした。どうもごちそうさま。

・「竹よし」の店情報前回) / 「さぬき亭」の店情報前回

《平成20(2008)年2月10日(日)の記録》

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店主自ら大衆酒場好き … やきとん「秋元屋(あきもとや)」(野方)

ガツ(手前)とテッポウ


 日曜日は「よじあき」(=土日の開店時刻である午後4時に「秋元屋」に行くこと)の予定だったのですが、自宅を出発するのが遅れてしまい、店に着いたのは午後4時半。「今日はダメかなぁ」と思いつつも、店の入口のところにいる店主に「ひとりです」と申告すると、「じゃ、そこのテーブルに相席で入ってください」と、テラス席左側のテーブルを指し示してくれます。

 土日は、15席あるコの字カウンターは開店と同時に、開店を待っていたお客さんたちで埋まってしまい、入れないひとり客は、表のテラス席に2卓あるテーブル席(各4人掛け)に入れ込みで座るのです。

 今日もテラス右側のテーブル席は、定員を超える5人のひとり客(常連さんたち)が囲んでおり、左側にも男性がふたり座っています。この時期、防寒用のビニールシートがあって、外からは左側のテーブル席に入れないので、常連さんたちが座っているテーブルと、カウンターの後ろ側のすき間を縫うように、奥のテーブル席に入れてもらいます。

 開店から30分ほど経っても、焼き台はまだフル操業のようなので、まずは焼き台を使わない料理の、煮込み玉子入りに、飲み物は瓶ビール(サッポロラガー大瓶)をもらってスタートです。

 「秋元屋」の焼き台は、4年前の開店当初から現在のサイズで、どんなに客が多くなっても変えていません。焼き方ひとりの気配りが、ちょうど行き届くサイズなんだそうです。

 極論すれば、もつ焼きは、豚の臓物などを一口大に切って、串を打って焼くだけ、という単純な料理なのですが、そういう単純な料理だけに、ちょっとした差が大きく結果に響いてくる料理とも言えるようです。仕入れも、下ごしらえも、串打ちも、焼きも、そしてタレも。どこかの手を抜くと、たちまち味の評価となって跳ね返ってくるような、ある意味、怖い料理なのです。

 ここ「秋元屋」は、店主自らが、無類の大衆酒場好き、もつ焼き好きで、自分が理想とする酒場を目指して、この店を開店したということもあって、もつ焼きもさることながら、他の料理も、それぞれ大衆酒場好きにはたまらない逸品に仕上がっていて、開店4年にして、すでに「西武線に秋元屋あり」と言われるほどの名店になっているのでした。

 志を高くして店をやっていけば、開業数年の新しい酒場であっても、老舗酒場と伍していけるといういい例ではないかと思います。

「焼き物も聞いておきましょうか?」

 そう声を掛けてくれるタッちゃん(店を手伝っているおにいさん)に、ガツとテッポウを1本ずつ(各100円)醤油でお願いし、ついでに氷なしの黒ホッピー(三冷黒、380円)ももらいます。

 もつ焼きの味つけは、基本的には塩かタレ(塩焼きかタレ焼き)なのですが、ここ「秋元屋」には、操業当時から味噌ダレもあります。これは、店主の修業先だったもつ焼き屋の名物だったのだそうで、開店時にその味噌ダレも受け継いだのだそうです。私の記憶では、最初の頃はもうちょっと甘い味噌ダレだったように思うのですが、今はピリッと辛味も入って、どのもつ焼きにでも合うような味噌ダレになっています。

 そして、先ほど注文した「醤油」は、素焼きで焼いたもつ焼きに、最後にさっと醤油をかけて仕上げる焼きかた。ガツやテッポウ、牛ミノなどに、とてもよく合う味つけだと思います。

 相席させていただいたみなさんとの話も盛り上がり、気がつけばもう午後6時。超満員の中、1時間半も長っ尻しちゃいましたか。そろそろ腰を上げましょう。お勘定は1,590円でした。

店情報前回

《平成20(2008)年2月10日(日)の記録》

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雪降る夜に塩辛で燗酒 … 立ち飲み「やき屋(やきや)」(荻窪)

いか塩辛に燗酒


 江東区の酒場2軒を巡って荻窪まで帰ってきました。最後は地元で軽くシメますか。アウェイで飲むと、電車でホーム(地元)まで帰ってくる間に、ある程度酔いが醒(さ)めた感じになってしまい、ついつい最後にもう1軒行きたくなってしまうんですよねぇ。

 そんなわけでやって来たのは、荻窪駅北口東側の旧闇市の一角にある、イカ料理中心の立ち飲み屋、「やき屋」です。「やき屋」のある横丁は風俗店も多く、その中で「やき屋」だけがグンと異彩をはなっています。

看板にも雪が 最初にこの店に来たきっかけは、この横丁の両側の入口に立てられた「つまみ全品150円」の赤い看板でした。こんなところに立ち飲み屋があるのかと、仕事の帰り道に探索に出かけてみたところ、すでに立錐の余地がないほど大人気の様子。日を改めて、会社が休みの日に、開店時刻をねらって入ったことを思い出します。それが平成13(2001)年のことなので、もう7年もここに通ってるんですね。わが家の近くにある名酒場の1軒です。

 少しだけ積もった雪を踏み締めながら店内に入ると、土曜日・午後9時の店内は、こんな天候にもかかわらず、半分程度の入り。それでも、いつも満員の「やき屋」から比べると、とっても静かな状況で、

「いらっしゃい。お酒でいいの?」

 と、こちらが注文するより先に女将さんが声を掛けてくれます。

「はい。あったかいのをお願いします。あと塩辛をください」

 ここの日本酒は「北の誉」で1合が230円(+税)。燗酒は冬場しかやってないのですが、徳利と猪口で出されます。

 自家製の塩辛(150円+税)は、カウンターの中にいる店長のゲンさんが、冷蔵庫に保存している広口の瓶から、小鉢にたっぷりと取り分けてくれます。塩辛は、店によって、イカ刺しのワタ和えに近いフレッシュタイプのものから、じっくりと発酵させた熟成タイプのものまで、いろいろとありますが、ここ「やき屋」のものは前者のフレッシュタイプ。八戸からやってきた新鮮なイカを、毎日ここでさばくからできるフレッシュさなんですね。

 塩辛の旨味は、燗酒ともベストマッチで、すぐに2本目をおかわりです。

 店内は、右手が8人ほど立てるカウンターになっていて、左手は手前側が4人分ほどの壁に作り付けたサブカウンターで、奥側がさらに左側に入り込んで8人ほど座れるテーブル席が1卓。これを女将さんと、店長のゲンさんの二人で切り盛りします。

 つまみは、全品がおすすめ(ハズレはない)といって過言ではない状態ですが、中でも私が好きなのは、今いただいている塩辛と、冬場だけ出される、じっくりと煮込まれた熱々のイカ大根。イカ下足の上部、胴体の中に入っている部分を、ひと口大にカットしてタレ焼きしたイカなんこつ焼きもいいですよねぇ。エンペラの部分を細くスライスしたイカみみ刺しもまた、普通のイカ刺しとはちょっと食感が違っていて楽しいし、イカ納豆もお酒が進みます。あぁ、こうやって思い出すにつけ、食べたいものばかり。これらがすべて150円(+税)というんだから、うれしいではありませんか。

 今日は、すでに満腹状態なので、塩辛1品でお酒を2本。約40分ほどの滞在は641円(610円+税)でした。どうもごちそうさま。

店情報前回

《平成20(2008)年2月9日(土)の記録》

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山盛りおでんが四百円 … 大衆酒場「みたかや酒場」(菊川)

おでん盛合せと燗酒


 私の今年の酒場巡りのテーマは「じっくりと」。私自身、お酒はそれほど強いほうではないので、「せっかくこの土地に来たんだから」と、その近くにある、あちこちの酒場を巡ると、どの酒場の印象も希薄になってしまいがちだし、最後のほうの酒場は記憶さえない状態になってしまうのです。それゆえ、最初の1軒に気合いをこめて「じっくりと」、というわけです。

 そんなわけで今日の「じっくりと」は、先ほど行った南砂の「山城屋」だったのですが、この地域に来るともう1軒、行っておきたい酒場がある。酒場詩人・吉田類(よしだ・るい)さんオススメの「みたかや酒場」です。すでに「山城屋」にじっくりと行った後なので、今回は下見程度ということで行ってみましょう。

 「山城屋」のある清洲橋通りを、清澄白河(きよすみしらかわ)方面に向かうこと30分ほど。途中には、それぞれいい感じに鄙(ひな)びた実用洋食の「七福」や、やきとりとお食事の「松屋」、中華洋食の「ことぶき本店」などと、なにやら呑ん兵衛心をくすぐられるようなお店も多くて、「みたかや酒場」に到着する前から、すでに「このあたりも近いうちに再訪しなきゃなぁ」という気分が芽生えてきます。

 目指す「みたかや酒場」に到着したのは、午後7時前。

 紺地(こんじ)に白で「みたかや酒場」と染め抜かれた横長いのれんをくぐって店内に入ると、うなぎの寝床のように細長い店内は、その奥行き方向に細長い変形コの字カウンター(縦の辺がうんと長い)が走り、入口あたりからはよく見えませんが一番奥にテーブル席も(1卓だけ?)あるようです。

 あいにくのみぞれ模様ということもあってか、店内のお客はそれほど多くなく、先客は4~5人ほど。私も、入口近くの男性2人連れと、ひとり客の間、ちょうどカウンターの角のあたりに腰掛けて、まずは燗酒を注文します。

 下町酒場なのでホッピーか酎ハイと行きたいところですが、なにしろシンシンと降る雨(みぞれ混じり)の中を30分近く歩いてきたので、身体が冷えきっているのでした。

 すぐに出された燗酒は、大徳利で500円。お猪口に一杯クゥ~ッと飲んで、人心地つきます。大徳利を両手で包み込むようにすると、冷えた手も暖まっていいですね。

 さて、つまみ。ここに座ってから気がついたことですが、この店のメニューはカウンターの背後の壁などに張り出されていて、それがけっこう店の奥のほうにあるのです。したがって、入口近くのこの席からはちょっと見えにくい。今日のオススメが書き出された黒板も、店の奥のほうにあって、こちらも残念ながら見えにくい状態。料理はだいたい250~600円といったところで、400円台くらいが多いのかな。

 そんな中から、おでん盛り合せ(400円)を注文すると、店主が大きな丸皿に大根、はんぺん、ちくわぶ、玉子、コンニャク、つみれ、昆布に、数種類のさつま揚げなど、10品程度のおでんを盛り合わせて出してくれます。うーん。この量で400円というのは、これまで食べてきたおでんの中でも最安値かも!

 熱々で湯気の立つおでんをつつきながらいただく燗酒のうまいこと。

 店は、さっきおでんをついでくれた物静かな店主と、ニコニコと元気のいい、ふくよかな(失礼!)おかみさんの二人で切り盛りされている様子。ご主人が刺身などの料理を担当し、おかみさんが主として店内の接客などを担当されてるんですね。

 男性常連客の多い下町酒場の常で、常連さんたちから下ネタもばんばん飛び出すのですが、おかみさんはニコニコ笑顔のまま、いったんはその話を受け止めつつも、するり、さらりと話題を切り換えていきます。このワザ(話術)は、実にみごとなものですねぇ。その様子をここで文章で紹介しても、うまくニュアンスが伝わりにくいと思います。ぜひお店で実体験してみてください。

「最後におにぎり(1個200円)をもらおうかな」と入口近くの二人連れ。

「ひとり1個ずつ、2個でいいのね?」

 そう確認したおかみさん、まずは丼にたっぷりと熱々ご飯をついで、それに具を入れたら、手のひらに取って、両手でふんわりと握ります。なにしろ丼いっぱいのご飯なので、おかみさんの両手の中に収まるわけはなく、ちょうど手毬(てまり)を両手で丸めているような状態から、徐々に大きな三角形に整形されていきます。その大きなおにぎりを、それに負けないくらい大きな海苔で巻いたらできあがり。このボリュームで200円は素晴らしいなぁ。シメに注文する人が多い一品なんだそうです。

 このおにぎりにも引かれたものの、今日は10品ほどのおでんで、もう満腹。これ以上、入りそうにありません。1時間ちょっとの滞在は900円。

「雨だから足元気をつけてね」

 と笑顔で見送ってくれるおかみさんとご主人に、「ごちそうさま」と声を掛けつつ店を後にしたのでした。

 今度は、この店にもじっくりとやってきたいですね。でも、おでんのみならず、どの料理も1品あたりのボリュームがけっこうあるようなので、今度は複数人で来たほうがいろいろと楽しめるかもしれませんね。

店情報

《平成20(2008)年2月9日(土)の記録》

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店情報: 大衆酒場「みたかや酒場」(菊川)

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  • 店名: 大衆酒場「みたかや酒場」
  • 電話: 03-3632-4744
  • 住所: 135-0004 東京都江東区森下4-20-3
  • 営業: 16:30-24:00、日祝休
  • 場所: 菊川駅A2出口を出て左へ。新大橋通りを森下方面(西)に2ブロック(約200m、徒歩4分ほど)進み、右手に「柾谷歯科医院」がある信号交差点を左折して、道成りに進むこと約100m(徒歩2分ほど)、左手。A2出口を出て徒歩約6分。
  • メモ: 牛煮込み400、まぐろぶつ500、かつおさしみ500、とり手羽先400、ホタルいか400、とんかつ600、ベーコン900、いか一夜干400、おしんこ250、もつ焼400、じゃがいも煮350、めかぶ300、とり貝500、そらまめ400、帆立貝400、さざえ400、グレープハイ350、カキフライ600、野菜炒め400、黒ホッピー400など。おにぎり1個200円。注文を受けてから、熱々でにぎってくれる、大きなおにぎり(1個200円)も名物。

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店中がまるで親戚同士 … 大衆酒場「山城屋(やましろや)」(南砂)

カブのぬか漬(手前)とイワシ丸干


 地下鉄が通ってなかったころ(1988年以前)の豊洲(江東区)は、一番近い駅が、歩いて30分ほどかかる地下鉄東西線・門前仲町駅という交通の便の悪い土地でした。

 そんな不便な土地であったにもかかわらず、あるいは不便な土地であったからこそ、豊洲交差点の近くには、古い小さな酒場がたくさん並んでいて、夜な夜な、近くの工場での仕事を終えたおじさんたちが、煮込みやレバ刺しをつまみながら、ホッピーを飲んでいたものでした。

 開けっ放しの入口越しに見えるその様子が、ものすごく美味しそうに感じたのですが、当時はまだ、ひとりでそういう酒場に突入するほどの勇気もなく、うらやましく眺めるばかりだったことを思い出します。

 しかしながら、地下鉄有楽町線・豊洲駅が開業するや、豊洲界隈は急激に都会化。古い小さな酒場群はあっという間になくなり、その後しばらくすると周りの工場群までなくなって、再開発が進む街(商業地)になってしまったのでした。往時を偲ぶことができる酒場は、もはや「山本」くらいしかないのかも。そういえば「山本」にも、ずいぶん行ってないなぁ。

 そんなわけで、本格的な下町酒場は、多少交通の便の悪いところにあるんじゃなかろうかと思い立って、やってきたのは江東区南砂にある大衆酒場「山城屋」です。

 今日は地下鉄東西線・東陽町駅から、トコトコと30分ばかり歩いてやってきましたが、この店は、都営新宿線の住吉駅、西大島駅、そして地下鉄東西線の東陽町駅、南砂駅という4つの駅を結んでできる長方形の、ちょうどまん中あたり。どの駅からも歩くと20分以上かかるという、まさに不便な立地条件(失礼!)なのです。

 来てみて初めて気がついたのですが、店のすぐ目の前に都バスの「北砂一丁目」バス停があります。後日調べてみたところ、秋葉原駅前が始発で、神田駅前、岩本町駅前、東日本橋駅前、水天宮前、清澄白川駅前などを経由して、このバス停を通り、最終的には葛西駅まで行く、都バス・秋26系統(1時間に3本程度)が通っているようです。これに乗ってくれば、もっと楽にやって来ることができたんですね。今度からはそうしましょう。

 で、「山城屋」。土曜日、午後4時20分の店内は、開店から20分しか経ってないにもかかわらず、奥の座敷は団体客でいっぱい。手前右手にある9人分ほどの直線カウンター席では、中年のご夫婦が仲良く談笑しており、左手に3つ並ぶ4人掛けテーブル席の一番奥には、2人連れの年配男性客がいて、盃を傾けています。

 私もカウンターのまん中付近に座り、まずはホッピー(320円)と煮込み(370円)をもらってスタートです。

 同じ下町でも、京成線沿線あたりはハイボール(チューハイ)文化で、江東区あたりはホッピー文化という感じがするんですが、どうなんでしょう?

 この店のホッピーは、生ビール中ジョッキに氷入りの焼酎が出され、それとは別に瓶入りホッピー(ソト)が出されるタイプ。カウンターの夫婦連れも「ナカください」と、ちょうどナカ(ホッピーの焼酎部分)のおかわりをしたところです。

 長方形っぽい平皿に盛られた煮込みは、ほとんどシロで、白いコンニャクもちょっと入っていて、刻みねぎをトッピング。外は寒いこともあって、カウンター内に置かれた鍋でクツクツ煮込まれている煮込みは大人気です。

 奥の座敷は、まず小上がりの座敷席があって、その奥に一般家庭の茶の間のような和室もある変わった造り。不思議そうに眺めていると、

「ふだんは手前側しか使わないんだけど、今日はお客さんが多いので、奥の間まで開けてるのよ」

 と、ホールを担当しているおねえさん。店はこのおねえさんを中心に、お父さん、お母さん、弟さん、甥っ子という5人で切り盛りしているようです。切り盛りも家族なら、お客さんたちもみんな含めて親戚同士のような雰囲気で、店全体にほんわかムードが漂います。今入ってきたお客さんも、

「いやいや、久しぶり。先週の土曜日以来だからなぁ。1週間も来れなかったよ」

 なんて言いながら、テーブル席の先客と合流しています。このテーブル席の人たちは、グループ客ではなくて、それぞれひとり客として入ってきた常連さんたちのようです。まわりに小さな町工場みたいなのも多く、交通の便もそんなによくないこの地域。この酒場が地域のコミュニケーションの場にもなってるんでしょうね。

「はい。ぬか漬、お待たせー」

 カウンターの夫婦連れのところに出されたのは、カブ1個分をきれいにスライスして盛りつけた、カブのぬか漬(210円)。カブそのものもそうですが、緑の茎の部分も刻んで入っているのが、いかにも美味しそう。

「すみません。私もカブのぬか漬をください。あと、『今日のお酒』は、燗(かん)をつけてもらうこともできるんですか?」

「はいはい、できますよ」

「じゃ、燗でお願いします」

 典型的な下町酒場といった雰囲気の「山城屋」なのに、飲み物メニューには「越乃寒梅」(630円)、「久保田・千寿」(580円)、「八海山」(530円)といった地酒が比較的安価に並んでいるほか、『今日のお酒』と書かれた張り紙に、新潟の「荒澤岳」(420円)という銘柄が書き出されていたので、それを注文したような次第です。

 ちなみに、普通に「お酒!」と注文すると、「白馬の雪」(270円)が出されるようですが、奥の座敷にも日本酒ファンのお客さんがいるようで、「荒澤岳」の売れ行きがよくて、すぐに一升瓶が空いてしまいます。

 おねえさんが、カウンター奥の壁にずらりと並ぶ短冊メニューをかき分けると、そこには棚があって、新品の各種地酒がずらりと並んでいます。その中から1~2本を取り出して、厨房の弟さんと相談。結果、次なる『今日のお酒』として選ばれたのは、山形の「米の力」(「亀の尾」の純米酒)です。値段は450円と設定されました。

 これはいい仕組みですねぇ。一升瓶の地酒を1本ずつ、『今日のお酒』として設定し、なくなったら次なる1本がまた出される。このやり方だと、あれもこれもが抜栓(ばっせん)された状態で長く置いておかれることが少なそうです。

 さっそくその「米の力」を、またまた燗でいただいて、つまみにはイワシ丸干(300円)をもらうと、出されたのは見るからにおいしそうに焼けたイワシが3尾。煮込みといい、カブぬか漬といい、イワシ丸干といい、それぞれ呑ん兵衛の琴線に触れる品々でうれしいなぁ。

 料理は、キュウリぬか漬、モロキュウの210円から始まって、らっきょう、キムチ、冷奴、めかぶとろろ、アジじゃこ天などの270円と続き、高くても磯ツブ貝(470円)、トラフグ皮(580円)、カキフライ(680円)、鯨刺身(740円)、生うに(780円)、金目鯛刺身(800円)、鯨ベーコン(840円)と、すべて3桁台(千円未満)です。

 それらの料理とは別の一角に並んでいる鍋物も、一人分から注文可能なようで、カキ鍋(1,050円)、白子鍋(1,050円)、豚鍋(980円)、鳥鍋(850円)、湯豆腐(680円)と、これまたそれほど高くない。冬場は、鍋をひとつ注文すると、あとはもう何もいらないくらいの肴になっちゃいますもんね。

 最後にトマトハイ(320円)と目玉焼(270円)をいただいて、2時間ちょっとの滞在は2,660円。外は、みぞれ混じりの雨が降るあいにくの天候ですが、店内は下町酒場らしいアットホームなあたたかさで満ちあふれるお店でした。どうもごちそうさま。

店情報

《平成20(2008)年2月9日(土)の記録》

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店情報: 大衆酒場「山城屋(やましろや)」(南砂)

    080209z1
  • 店名: 「山城屋酒場」
  • 電話: 03-3644-3098 / 03-3644-8612
  • 住所: 136-0076 東京都江東区南砂1-6-8
  • 営業: 16:00-23:00、日休
  • 場所: 地下鉄・清澄白川駅前から、都バス「秋26:葛西駅前行き」(1時間に3本ほど)に乗り、6つ目、砂一丁目下車、道路の反対側(進行方向に向かって右側)。住所は南砂だけど、バス停は北砂であることに注意。「秋26」のバスは、秋葉原駅前が始発で、神田駅前、岩本町駅前、東日本橋駅前、水天宮前などを経由して清澄白川駅前にやってくる。
    店は地下鉄・住吉駅、西大島駅、地下鉄東西線の東陽町駅のちょうど中間あたりにあり、どの駅からも徒歩20分以上かかる。
    住吉駅からは四ツ目通りを東陽町方面に南下。小名木川を渡って、扇橋二丁目信号交差点(駅から650m、徒歩12分ほど)を左折して清洲橋通りに入る。道成りに700m(徒歩13分)ほど進んだ右手。駅からの全行程は1.3キロ、徒歩約25分。
    東陽町駅からは、逆に四ツ目通りを住吉駅方向に北上すること1.2キロ(徒歩約23分)、川南小学校入口信号交差点の次の名前のない信号交差点を右折して、道成りに700m(徒歩13分)ほど進み、突き当たり(清洲橋通り)を左折したすぐ先、左手。駅からの全行程は2キロ、徒歩約36分。
  • メモ: ライス(大)300、(中)250、親子丼680、玉子丼580、お茶漬(たらこ・梅)400、おにぎり2個(たらこ・梅・おかか)350、焼おにぎり2個350、久保田(千寿)580、八海山530、吉乃川370、白馬の雪270、特上霜降・馬さし1,050、生ビール(大)660、生ビール(中)430、ビール500、ホッピー320、ホッピー(黒)320、ウーロンハイ320、梅ハイ320、トマトハイ320、レモンハイ320、酎ハイ270、緑茶ハイ370、生酒530、にごり酒530、目玉焼270、えいひれ370、板わさ320、いなご370、肉ニラ炒580、野沢菜270、山いも千切り320、らっきょう270、しらすおろし320、キムチ270、きゅうりぬか漬210、はんぺん焼320、たらこ470、スタミナ納豆530、いか塩辛320、鯨ベーコン840、たこブツ470、酢だこ470、小肌370、赤いかさしみ530、上ブツ切530、いかバター焼400、あじフライ530、いわしさしみ470、ポテトフライ(ガーリック味)280、コロッケ370、さば塩420、特選さけ500、あじじゃこ天270、うなぎきも2本400、にら玉370、もろきゅう210、冷奴270、めかぶとろろ270、あげなす370、カクテキ270、月見300、はんぺんバター焼370、博多明太子470、ブツ納豆370、いかオクラ250、〆さば530、ぶりさしみ700、ねぎとろ450、とらふぐ皮580、磯つぶ貝470、いか丸焼400、あじたたき530、いわしフライ470、いわし丸干300、わさび漬320、剣先するめ320、かぶぬか漬210、あさりバター420、山かけ330、カキフライ680、にこみ370、いか納豆370、あんきも480、生うに780、活たこさしみ450、鯨さしみ740、きんめ鯛さしみ800、カキ鍋1,050、豚鍋980、鳥鍋850、湯豆腐680、白子鍋1,050、白子ポン酢530、トンカツ580、ポークソテー580、オムレツ530(2008年2月調べ)

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