太田さんの放浪原点? … 大衆酒場「金盃 森井本店(きんぱい もりいほんてん)」(神戸・三宮)
「八島 東店」を出て、目の前の道路の向かい側にあるのが、太田和彦(おおた・かずひこ)さんが「私がこの『ニッポン居酒屋放浪記
』で最初に書き、日本中の居酒屋を歩いてみようと思うきっかけになった店だ」と書かれている大衆酒場、「金盃 森井本店」です。
白いのれんの右端に、「良心的な大衆酒場」と自分で書いてるのがおもしろいなぁ。こういう風に自己申告されると、なんだか胡散(うさん)臭く感じるお店もあるのですが、この店の場合、そののれんの上に木の地肌に、金色の文字で「森井本店」と(右から左へと)書かれた、歴史を感じさせる扁額(へんがく)がデーンと掲げられているので、「うーむ。昔から良心的だったに違いない」なんて、妙に納得させられるところがあります。良心的な商売を続けてこなければ、長く生き残る店にはなりませんもんね。
入口引き戸を開けて店内に入ると、L字カウンターの店内には、先客は3組6人ほど。それぞれが二人連れというのも、正しいカウンター席の使い方ですね。後で聞いたところでは2階にテーブル席と座敷席があり、多人数のグループは最初から2階へ上がるんだそうです。
店名のとおり、ここはもともとは灘(なだ)の金盃酒造の宣伝酒場だそうですので、カウンターのまん中あたりに座って、まずはその金盃(1合290円)を燗酒でいただくと、お通し(250円)にはキンピラが出されます。
大正7(1918)年創業というこのお店は、今年で創業90年。ただし、みなさんもご存知のとおり、この辺りは平成7(1995)年1月17日の震災で大きな打撃を受け、「金盃 森井本店」も建て替えを余儀なくされたのだそうです。だから、昔の店から引き継いだ扁額や、店内の絵などからは、老舗の様子が伺えるのですが、それ以外は新しい、今風のお店になっているのでした。昭和20(1945)年にも、一度建て替えているそうなので、この新しいお店も、これからの歳月を重ねることによって、また老舗らしさが出てくることでしょう。
さて料理。関西の酒場に来ると、忘れてはならないのが“生(き)ずし”です。関東風に言うとシメサバなんですが、生ずしの場合はサバだけじゃなくて、他の魚も〆るようです。この店のメニューに載っているのは、サバの生ずし(530円)と、タイの生ずし(630円)、それとその両者を盛り合わせた生ずし盛合せ(680円)です。明石(あかし)の鯛も有名なので、ここはひとつ盛り合わせでいってみますか。
横長いお皿に、左はタイ、右はサバと盛り付けられた生ずしは、見た目もとても美しい。刺身を食べるのと同じように、一切れとってワサビをつけ、醤油でいただきます。サバのほうは普通のシメサバと同じ感じですが、タイは皮もついたままなのが珍しい。刺身の松皮造りともまた違った食感が楽しめます。
メニューを眺めながら飲んでいると、この店にも「玉ひも」というのが載っています。先ほどの「八島 東店」のメニューにも「玉ひも」とあって、『なんだろうなぁ?』と思ってたのでした。
「玉ひもって、どんな料理なんですか?」
さっそくカウンター内の店主らしき男性に確認してみると、
「鶏の玉子なんですけど、まだ体の中にある状態のもの、つまり体内卵と、そのまわりのモツの部分なんですよ」
と言いながら、大きな器に盛られた玉ひもを見せてくれます。ほぉほぉ。こりゃ、内臓好きは絶対たのまないといけない一品でしょう。さっそく一人前お願いすると、
「煮たの(320円)と、串に刺して焼いたの(2本350円)がありますが、この煮たのでいいですか?」
と店主。さっき見せてもらった煮たのをいただきますか。
うちの親戚に養鶏場をやっている家があったこともあって、体内卵をはじめとする鶏モツは子供のころから慣れ親しんだ味で、今でも大好物。それが神戸で「玉ひも」と呼ばれているとは知らなかったなぁ。関西地方では、比較的一般的な呼び方なんでしょうか。
東京の酒場にもこの「玉ひも」みたいなのがあるといいんだけど、あまりお目にかかったことがないんですよねぇ。荻窪タウンセブンの地下の鶏肉屋さんで、お惣菜として売ってるので、それを買って帰って、わが家でつまみにするくらいです。
燗酒をもう1合(290円)もらって、2時間ほどの滞在は1,830円でした。どうもごちそうさま。
・店情報
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