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2008年4月

豊後産トロサバを堪能 … 魚料理「竹よし(たけよし)」(都立家政)

豊後産トロサバ


 刺身が食べたくて、わが家の近くにある魚料理のお店、「竹よし」にやってきました。カウンターの奥側に座り、まずは瓶ビール(アサヒスーパードライ中瓶、500円)をもらうと、今日のお通し(200円)は、酢みそでいただくホタルイカです。ホタルイカは産卵する前の今頃(4~5月ごろ)がまさに旬。茹でられて、ぷっくりと膨らんだホタルイカが、見るからにおいしそうではありませんか。

 さぁ、そして刺身です。ホワイトボードに書き出された今日の刺身は、黒ムツ(800円)、赤ムツ(ノドクロ、1,000円)、豊後産トロサバ(750円)に、トビウオ(600円)の4種類。店主(マスター)が、それぞれの食材も見せてくれて、今日は豊後産のトロサバをいただくことにしました。

 どれかに決めきれずに迷う時は、5種類の刺身が3切れずつ盛り合わされる刺身盛り合せ(1,000円)を注文することが多いのですが、「これは!」と思うものがあるときは、単品でたのんでたっぷりといただくのです。

 出されたトロサバは、濃いピンクの大きな刺身が7切れ。脂ののりが素晴らしいですねぇ。トロサバが出たところで、飲み物も燗酒(菊正宗、350円)に切り換えます。

 しばらくして入ってこられたのは、キャスバル坊やさんサーベルキラーさんご夫婦の3人組。私も燗酒をおかわりして、自家製のイカ塩辛(350円)をもらいます。

 ここ「竹よし」には、刺身、焼き魚、煮魚、天ぷらなどのメイン系の料理の他に、今もらった塩辛や、酒盗とクリームチーズ(400円)、辛子明太子(500円)、酢の物(500円)、ウド酢味噌(400円)、山芋千切り(350円)などのサイドメニューもあって、チビリチビリと長時間お酒を楽しむことができるのです。

 とは言うものの、日曜日なので午後8時になってところで切り上げることにします。瓶ビールと燗酒を2本、料理を2品いただいて、今日のお勘定は2,500円でした。どうもごちそうさま。

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ホタルイカ / 今日の食材 / イカ塩辛

店情報前回

《平成20(2008)年3月23日(日)の記録》

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宇ち中さんたちと合流 … 居酒屋「満月(まんげつ)」(鷺ノ宮)

つくしとトマト割り


 「ふくべ」(日本橋)、「三州屋」(神田)と回って、鷺ノ宮に帰ってきたのは午後10時過ぎ。ここで、今日は野方、鷺ノ宮方面で飲んでいた宇ち中さんや、その宇ち中さんと「秋元屋」で合流以降、一緒に「ほ里乃家」を回ってやって来たという黒ブタさん、金魚屋さんご夫妻と合流です。

 「満月」と言えばコーヒー割り(300円)というくらい、いつもコーヒー割りを飲んでたのですが、さすがに最近はちょっと飲み飽きてきて、このところのマイブームはトマト割り(300円)です。焼酎をトマトジュースで割ったトマト割りは、トマトを食べながら焼酎を飲んでるようなもので、つまみいらずの飲み物です。

「はい。これ食べて」

フキ と、ママさんが出してくれたのは、つくしのおひたし。これは季節感たっぷりでいいですねぇ。季節感たっぷりついでに、目の前の大皿に並んでいるフキの煮物(300円)もいただきましょうか。トマトにツクシにフキと、野菜ばっかりでなんだか健康的ですねぇ。

 今日は宇ち中さんも早く(午後4時)から飲み始めてたということで、午後11時過ぎにはお開きとします。

「気をつけて帰ってね。寝過ごさないように!」

 なんて笑いながら、鷺ノ宮駅の改札口で宇ち中さんを見送って、私も帰路についたのでした。

店情報前回

《平成20(2008)年3月22日(土)の記録》

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のんびりと、とり豆腐 … 大衆割烹「三州屋(さんしゅうや)」(神田)

とり豆腐


 都内各地に数ある「三州屋」の中で、今日は神田駅近くにある「三州屋」にやってきました。神田駅の近くだけでも3軒の「三州屋」があるのですが、今日やって来たのは北口に近い、構えの立派な「三州屋」です。

 「三州屋」の中でも、一番有名(雑誌等への登場回数が多い)のは銀座の「三州屋」だろうと思いますが、店の雰囲気が大衆酒場風なのは、むしろこちら神田のほうじゃないでしょうか。

 入口を入ると中央に細長いコの字型カウンターが店の奥まで通り、カウンターの左側は小上がりの座敷席、右側はテーブル席と分かれていて、お運びの女性たち数名がそのフロアを行き来します。

 カウンター席の一角に座り、さっそく燗酒の大きいの(白鶴、830円)と、「三州屋」全店の名物・とり豆腐(420円)を注文すると、お酒とともにお通しの白和えが出されます。徳利に袴(はかま)が付いてくるのが風情があっていいですよねぇ。

 とり豆腐は、どこの「三州屋」に行ってもメニューに載っているのですが、値段や内容は店によって異なります。値段で見てると、たとえばここ神田は420円、銀座は450円、飯田橋が480円、閉店した六本木は500円、新橋は630円と、1.5倍ほどの開きがあります。

 スープも透明なタイプから、白濁したものまで様々です。ここ神田は透明スープで、カツオ出汁。鶏肉、豆腐のほかに、ほうれん草が添えられています。器が丼ではなくて、丼よりは浅目の深皿で出てくるのも、神田の特徴でしょうか。

 神田には、とり豆腐以外にも、肉豆腐(480円)、かき豆腐(580円)、鯛豆腐(780円)というメニューが並んでいて、それぞれがひとり鍋の代わりになりそうです。(ひとり鍋はメニューにはありません。)

 他の「三州屋」もそうですが、ここ神田の「三州屋」も食堂も兼ねたような酒場になっていて、メニューには定食類も並び、昼からの営業です。ただし、これまた他の「三州屋」と同じく、昼から一品料理や酒類も注文することはできますので、呑ん兵衛にとっては「昼から呑める店」という、ありがたいお店なのです。

 料理の中心は魚介類で、刺身各種が600~1,200円ほどで、焼き魚は370~600円ほど。一品物は納豆(90円)、焼のり(170円)、チーズ(190円)、板わさ(210円)、もずく酢(240円)、お新香(260円)と、300円以下の料理も多いのが神田ならではでしょうか。また、「ご飯・お新香付き」(210円)というメニューもあるので、すべての一品料理を定食化することができるのです。

 数多い料理メニューの中から、里芋田舎煮(300円)を注文すると、ころりとまん丸い、かわいい里芋が5個、やわらかく煮付けられて、木の芽が添えられています。

 土曜日、午後8時過ぎの店内は、カウンター席こそ空席があるものの、座敷席(全32席ほど)やテーブル席(こちらも32席ほど)は、ほぼ満席状態。それに対して、お運びの女性が2~3人程度と、かなり不足気味といった感じもありますが、それもまた大衆酒場風といえば大衆酒場風でしょうか。サラリーマンが多いウイークデイは、お運びさんももっと多いのかもしれませんね。

 1時間半ほどゆっくりとして、今日は1,550円でした。ごちそうさま。

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「三州屋」 / 燗酒とお通し / 里芋田舎煮

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《平成20(2008)年3月22日(土)の記録》

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沸いて出る酒、金の色 … 酒亭「ふくべ」(日本橋)

燗酒と冷奴


「ふくべから 沸いて出る酒 金の色」

 酒場としては昭和14(1939)年創業という老舗「ふくべ」の、カウンター席と厨房とを仕切る暖簾(のれん)に書かれている句です。「ふくべ」というのは瓢箪(ひょうたん)のこと。瓢箪は昔、酒器としても使われていたので、それを店名にしたんだろうと思います。

 土曜日、午後6時前の「ふくべ」は、先客は、カウンターに二人ほど。八重洲という土地柄もあってか、平日ほどは混雑しないんでしょうね。

 「ふくべ」は、入口を入ると、すぐ目の前が12人ほど掛けられるL字のカウンター席で、そのカウンター席手前を右に抜けて別の間に入ると、そこにテーブル席が並ぶという造り。ひとり客はカウンター席に、グループ客はテーブル席にというのが基本的な流れです。そのカウンター席に座ると、すぐにお絞りと、木製のお盆にのった、お通しの昆布佃煮が出されます。

 「ふくべ」は、日本各地の日本酒がそろっていることでも知られていますが、その日本酒は最新流行の地酒ではなくて、古くから続く、いわゆる有名酒(ナショナル・ブランド)のものが多いのです。

 東京駅に近いということもあるのでしょうか。日本中どこの人が来ても、ほぼ自分の出身地近くのお酒を飲むことができます。たとえば、愛媛出身の私から見ると、梅錦(うめにしき)があるほか、高知の司牡丹(つかさぼたん)や土佐鶴、広島の千福や賀茂泉といったお酒に巡り合えるのです。

 しかしながら、この店に来たらぜひ飲みたいのが、カウンターの奥にデンと鎮座している四斗樽の菊正宗。今日はこれを燗(かん)でお願いすると、一合升が入った漏斗(じょうご)を徳利の上にのせて、樽の栓を抜きます。トックトックトックとお酒が入り、一合升からあふれたところでキュッと栓を閉めて、くるりと一合升をひっくり返すと、徳利の中には正一合+あふれた分の樽酒が入ります。これをカウンター内の湯煎式燗付け器で、じっくりと温めてくれるのです。

 それにしても、この一合升。漏斗の上で、くるり、くるりとひっくり返されてるうちに、見事に底の角がとれて、丸くなっています。「この升で、9年ほど使ってます」と店主。9年間、毎日、毎日の積み重ねが、この升の形になったんですねぇ。すごいっ。

 小さな紙に印刷された料理メニューは、あじ、かます、いか焼き、板わさ、キンピラ、エイヒレ、しらすおろし、マグロぶつ、くさや、さつま揚げ、しめ鯖、塩辛、冷奴、たらこ、タコ刺し、月見、たたみいわし、うるめいわし、納豆スペシャル(鮪、いか入り)、いか納豆、マグロ納豆、玉子納豆、トマト・玉子つきサラダ、はんぺん、生揚げ、玉子焼き、ぬた、もろきゅう、やまかけ、とろろいも、お茶漬け(たらこ、梅、海苔)、おにぎり、お新香、わかめのお吸い物という全34品。その他に、年中食べることができる、この店の名物でもあるおでんなどもあるようです。数はそれほど多くないものの、呑ん兵衛好みのする品々がそろっています。メニューには価格表記はないのですが、350~550円程度のものが多いようで、かますなどの魚類が900円ほどするようです。

 そんな中から、冷奴(400円)を注文します。

 それにしても、こんな大きな四斗樽をどうやってあそこに置くんでしょうねぇ。

「入口から店の奥までは台車で運んできて、そこからはカウンターの端のところをテコのように使って上にあげるんですよ」

 と、スキンヘッドで一見(いっけん)怖そうに見えるんだけど、話はじめるとすぐに優しいことがわかる店主が教えてくれます。この店主がお酒の支度をし、奥の厨房で女性ふたりが料理などを担当している様子です。

くさや 2杯目も「菊正宗」の樽酒を燗でもらい、つまみには、くさや(500円)です。炙ったあと、ざっくりと割かれたくさやは、噛みしめると旨みがたっぷり。これが燗酒にピタリと合います。この店のくさやは、それほど臭いがきつくないので、初心者(?)でも大丈夫じゃないでしょうか。量もけっこうあるので、これだけで2~3本はいけそうです。

 午後7時前まで、1時間ちょっとの滞在は、ちょうど2,000円でした。どうもごちそうさま。

店情報前回

《平成20(2008)年3月22日(土)の記録》

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店情報: 酒亭「ふくべ」(日本橋)

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  • 店名: 通人の酒席「ふくべ」
  • 電話: 03-3271-6065
  • 住所: 103-0028 東京都中央区八重洲1-4-5
  • 営業: 16:30-23:00(22:30LO)(土は -22:00(21:30LO))、日祝・第2土休
  • 場所: 地下鉄・日本橋駅A3出口のところにある八重洲ファーストフィナンシャルビル(信金中金本店)の裏手。JR東京駅八重洲北口からは外堀通りを神田方面へ、呉服橋バス停先を右折、約80m右手。駅から徒歩5分程度。
  • メモ: 昭和14(1939)年に酒屋から居酒屋に転身。全部で40席。1階は入口すぐにカウンター12席と、入口右手の別の間に4人掛テーブルが4卓、2人掛テーブルが1卓の合わせて30席。それとは別に2階に10席ほど。全国各地の日本酒は、それぞれ1合500~600円。おでん(3点盛り、600円)、塩らっきょう(350円)、あじ、かます(900円)、いか焼き、板わさ(350円)、キンピラ、エイヒレ、しらすおろし、マグロぶつ、くさや(500円)、さつま揚げ、しめ鯖(500円)、塩辛、冷奴(400円)、たらこ、タコ刺し、月見、たたみいわし(400円)、うるめいわし、納豆スペシャル(鮪、いか入り)、いか納豆、マグロ納豆、玉子納豆、トマト・玉子つきサラダ、はんぺん、生揚げ(400円)、玉子焼き、ぬた(550円)、もろきゅう、やまかけ、とろろいも、お茶漬け(たらこ、梅、海苔)、おにぎり、お新香(350円)、わかめのお吸い物。2階の予約制コースは、Aコース(4,000円)が、先付け、キンピラ、刺身、おでん、かます(干物)、玉子焼き(しし唐付)の6品。レディースコース(3,000円)が、玉子焼き、刺身、おでん、あじ(干物)、お吸い物(わかめ)の5品で、レディースコースのみ、土曜日は1階でも食べることができる。予約は前日午後6時まで受付。(2008年3月調べ)
  • HTML版(2003年以前): (01.08.10)(01.05.26)(01.04.24)

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羊の皮をかぶった狼? … バー「ピュアー(ぴゅあー)」(野方)

ロングアイランド・アイスティー


 「秋元屋」から、わが家までは歩いて20分ほど。その途中にポツンと現れるのが「ピュアー」です。うーん。ついつい、道路に置かれた電灯看板に導かれてしまうんですよねぇ。

 直線カウンターのみ、9席の店内は先客は3人ほど。そのカウンターの手前(入口側)のほうに座り、バックバーに掲げられた今月のおすすめカクテルから、「春の香」と注記された「スプリング・フィーリング(Spring Feeling)」(730円)を注文します。

 このスプリング・フィーリングは、ジンとシャトリューズ(Chartreuse)というフランス産のリキュールに、レモン汁を搾り入れ、シェイクして作られるショート・カクテル。ちょっと口に含んだだけで、口の中いっぱい、鼻の奥から鼻腔いっぱいにハーブの香りがたち込めます。強烈ですねぇ。この薬草っぽい感じは、養命酒にも似てる!?

 シャトリューズは、フランスの修道院で不老長寿の薬として、100種類以上の薬草(ハーブ)を原料として造られてるんだそうです。アルコール度数55%ですからねぇ。強いリキュールだ。

 今日のお通し(310円)はカニミソバターと、イタリア産の塩っぽいチーズ(名称は失念)。カニミソバターも、いつものとおりの濃厚な味わいながら、塩っぽいチーズがいいつまみになることといったら! 実にいいですねぇ。

 この店に来ると、いつもお酒ばっかり飲んでるけれど、ひとりで切り盛りするマスターは元々が料理人。いつ来ても、どれもこれも食べてみたいようなおすすめメニューがずらりと並ぶのです。

 今日のおすすめ料理メニューは、ハマグリの白ワインむし(630円)、イワシのガーリックオリーブ焼き(520円)、シュリンプカクテル(630円)、アイスバイン(骨付豚スネ肉、840円)、和牛モモ肉のガーリックステーキ(1,890円)、カナダ産大トロ馬刺し(1,050円)、かきのグラタン or 明太子ドリア(840円)、春キャベツのダイナミック温サラダ(480円)、ブルーチーズディップス(580円)、スペアリブロースト(730円)、カニサラダ・ミモザ風(840円)、かきの辛子マヨネーズ焼き(680円)、舌平目のムニエル(1,050円)、ほうれん草のオーロラソース焼き(480円)、帆立貝冷製タルタルソース(730円)の15種類。この他に、季節を問わない定番のメニュー類が並びます。

 値段がグッと押さえられた品々の中に、ときどき、和牛モモ肉のガーリックステーキなんて2千円近いメニューが割り込んでるのがおもしろいですよねぇ。すごいものが出てくるんだろうなぁ。

 そんなわけで、料理を目当てにやって来るお客さんも数多いのです。

 さてと。2杯目はなにをいただきましょうか。カクテルメニューの注意書きに「強い!」と書かれているのは、「ロングアイランド・アイスティー(Long Island Ice Tee)」(840円)です。よし。この強いのをクイッと飲んでシメますか。

 ロングアイランド・アイスティーは、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラという4大スピリッツを同量ずつ入れた後、コアントローとレモン汁をちょっと入れて、最後にコーラを足して軽くステアしてできあがり。コーラの色が薄まって、見かけ上はまさにアイス・ティーです。

「強さが足りなければ、どうぞご自由に」

 と笑いながら、マスターが4本のスピリッツを目の前に並べてくれます。これがまた、コーラの甘さと、炭酸のシュワシュワ感で、強いのに飲みやすく仕上がっています。まさに羊の皮をかぶった狼的なカクテルですね。危ない危ない。

 午前1時半まで、2時間ほどくつろいで、お勘定は1,880円でした。どうもごちそうさま。

【その後の顛末】 翌朝になって、最後にいただいたロングアイランド・アイスティーが、ものすごく効くお酒であったことがわかりました。昼前までつらかった……。

店情報前回

《平成20(2008)年3月21日(金)の記録》

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オッパイのアブラ!? … やきとん「秋元屋(あきもとや)」(野方)

オッパイのアブラ


「そういえば、オッパイのアブラは食べたことがありましたっけ?」と、焼き台を担当しているたっつんさんから声が掛かります。

「ないない。あればちょうだい」

 冷蔵庫から取り出されたオッパイのアブラ(たぶん100円)は、いかにも大事そうにラップフィルムに包まれています。

「オッパイのまわりにちょっとずつしかないので、数本しか作れないんですよ。これはタレ焼きが美味しいですからね」

 そう説明してくれながら、ラップフィルムをはずし焼き台へ。焼きあがったオッパイのアブラは、表面はカリッと芳ばしく、中はプリプリクニュクニュと絶妙です。鳥皮とアブラの、いいとこ取りをしたような感じかなぁ。

 金曜日。ちょっと仕事が長引いて、野方(のがた)駅で途中下車したのは午後10時過ぎ。この時刻なら大丈夫かと思いきや、そうはいかないのが「秋元屋」で、まだまだ満席状態。コの字カウンターのお客さんたちに、ちょっとずつ詰めてもらって、一番入口に近い角に席を作ってもらい、なんとか入店。さっそく三冷ホッピー(380円)と、ニコタマ(煮込み玉子入り、380円)からスタートしたのでした。

 この店のホッピーは、氷入りと、氷なしなどを選ぶことができて、普通に「ホッピー」とだけ注文すると、氷入りのほうが出されます。「三冷(さんれい)ホッピー」あるいは「ホッピーを氷なしで」と注文すると、キンキンに冷えたグラスに、キンキンに冷えた焼酎(宝)が注がれ、それとは別に、これまたよく冷えた瓶入りホッピーが出されます。

 ホッピー・ファンの間では圧倒的に人気の高い三冷スタイルですが、この店でお客さんたちの注文を聞いてると、多数を占めるのは氷入りホッピー派のようです。氷が入っているから、ゆっくりと飲んでも冷たさが維持されることと、2杯目はナカ(焼酎のおかわり)だけ注文すればいいという割安感があるのかもしれませんね。

 満席状態は続いているものの、この時間(午後10時半頃)になると、やきとんの注文は、さすがに途切れてくるようで、焼き台の上もそんなにいっぱいではない様子。この機会に私も焼き物をいただきましょうか。まずはレバみそ(100円)と、カシラみそ(100円)をお願いします。

 味噌ダレは、「秋元屋」の大きな特徴のひとつ。オリジナルのピリッと辛めの味噌ダレが、どのもつ焼きにも合うのです。

 煮込み、もつ焼きと、もつが続いたところで、サイドメニューを1品いただきますか。ここはサイドメニューも充実していて、山芋しょうゆ漬、わさび漬、青のり、おしんこ、梅きゅうり、みそきゅうり、冷奴、もずく酢、チーズ、冷しトマト、オニオンスライス、月見とろろ、なめたけおろし、じゃこおろし、マカロニサラダ、ポテトサラダと、「大衆酒場にありそうだなぁ」と思うつまみは、魚介類以外は、たいていあるのです。

 そんな中から、キュウリやニンジン、玉ネギなど野菜もたっぷりのポテトサラダ(280円)を注文し、三冷黒ホッピー(380円)と、アブラ塩(100円)、オッパイ塩(100円)を追加すると、塩焼きには、ニンニク味噌が添えられます。

 最近は、アブラも、いろんなもつ焼き屋でよく見かけるメニューになりました。内容的には頭(かしら)の脂身を出す店、背脂を出す店など、同じアブラでも店によって違うのですが、ここ「秋元屋」のアブラは、沼袋の「ホルモン」と同じくシロ(腸)のまわりにある脂なんだそうです。これって、今、はやりの内臓脂肪ってこと?

 午後11時を回り、焼き台担当が店主・秋元さんから、たっつんさんに代わったところで、最後のシメに大好物のガツ醤油(100円)を注文したところ、冒頭のオッパイのアブラの話になったのでした。

 ガツ醤油と、オッパイのアブラを食べ終えたところで、ラストオーダーとなる午後11時半。久しぶりに「秋元屋」のもつ焼きをたっぷりといただいて、今日は席料100円も含めて2,120円でした。どうもごちそうさま。

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煮込み玉子入り / レバ味噌 / カシラ味噌

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ポテトサラダ / アブラ塩(手前)とオッパイ塩 / ガツ醤油

店情報前回

《平成20(2008)年3月21日(金)の記録》

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久しぶりに野毛で呑む … FF~仙人~理容院(横浜市・桜木町)

「日の出理容院」で生ビール


 横浜勤務のにっきーさんと示し合わせて、久しぶりの野毛の町です。

 待ち合わせ場所でもある、「福田フライ」に向かうと、にっきーさんが女性と並んで楽しそうに飲んでいらっしゃる。「えぇーっ!」と思いながら近づいていくと、なんと「日の出理容院」のバーテンダー・めぐみさんです。

 「こんばんは」と、めぐみさんにも挨拶しながら、「福田フライ」のおかあさんにウイスキー水割り(ニッカブラック天然水割り300mlボトル、450円)をもらって乾杯です。

 めぐみさんは「日の出理容院」の開店前に、ちょっとビールを飲みに来たんだそうで、もうお店のほうに行かなければなりません。ほんのちょっとだけのご挨拶でした。

 「私たちも後で行きますからねー!」と、めぐみさんを見送って、揚げ物はカキ(120円)とクジラ(170円)を注文です。

 残念ながら、明日も祝日(春分の日)ながら出勤日なので、人気の辛いソースは止めて、普通のソースでいただきます。

 1軒目の「福田フライ」はさっくりと切り上げて、本日の2軒目は都橋(みやこばし)商店街の「ホッピー仙人」です。今日もカウンター席入口側は、ひろたろうさんたち、野毛の酒豪女性陣がずらりと並んでいて、女性密度が高い状態。カウンター席は空いていないので、カウンターの人たちの後ろに立って、ホッピー(500円)で乾杯です。

 今年の冬は、ずっと寒くて、昨年の11月以降、ずっと一桁台だった最低気温が、今週に入ってやっと二桁(10度)を記録する日も出てきた程度。この寒さで、この冬の間は横浜の酒場群からすっかり足が遠のいていたのでした。

 横浜での通勤手段は市営バス。会社のすぐ前のバス停から、単身赴任寮のすぐ近くのバス停まで、直通で連れて行ってくれるので、外が寒いとどこにも行く気にならず、まっすぐにバスへと乗り込む日々が続いていたのでした。

 かろうじて金曜日の自宅への帰り道にどっかに立ち寄るのと、土日の夕方に近場に出かけていく程度。自分のブログを読み返してみても、寒くなってからは出かける回数が減ってますよねぇ。今日も、にっきーさんに声をかけてもらってなければ、まっすぐ寮に帰っていたに違いありません。

 そこへハルさんも現れたので、休業している「武蔵屋」について情報収集。小さいおばちゃん(妹さん)の膝(ひざ)の関節痛が再発し、再手術のため入院されてるんだそうです。厨房の中は、ずっと立ち仕事なだけに、膝にもこたえるんでしょうね。早くお元気になることを祈りつつ、2軒目も終了。

 3軒目は「日の出理容院」です。ここはフェイマス・グラウスのハイボールからスタート。暗い小さな店内は、今日もお客さんたちでにぎわっています。ここもまた野毛らしい、不思議な空間ですよねぇ。

 いつもは、さや付き落花生しか出てこない「日の出理容院」ですが、今日はお客さんがお土産でチーズを持ってきてくれたのだそうで、我われもおすそ分けをいただきます。

 最後は「ビールが大好き」という、めぐみさんに合わせて、我われも生ビールをもらって乾杯。野毛の夜を生ビールで締めくくったのでした。

 それにしても、こうやって3軒をまわっても、ひとりあたり合計2千円ほどにしかならないというのも素晴らしい。あぁそれなのに、寒さに負けて、足が遠のいてるのが申しわけないですよねぇ。反省、反省。

・「福田フライ」 (前回) / 「ホッピー仙人」 (前回) / 「日の出理容院」 (前回

《平成20(2008)年3月19日(水)の記録》

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今より一歩高いところ … 焼き鳥「川名(かわな)」(阿佐ヶ谷)

真鯛かぶと煮


「大勢のお客さんに来ていただけるようになったので、今後は値段を少し上げてでも、しっかりとした料理を出すようにしたいと考えてるんですよ」

 そう言いながら、店主が真鯛のカブト煮を持ってきてくれます。

「この真鯛も、4尾で1箱の品でしてね。今後はこういうのを増やしていきたいと思ってるんです」

 日曜日の夕方、いつものように「よじかわ」(=開店時刻の午後4時から「川名」で飲むこと)でやって来て、ちょうど居合わせたクマさんや、「1000円台で楽しむ 大人の居酒屋」(ダイヤモンド・オンライン)の連載でお世話になっているTさんとともに、奥の座敷に移動して飲んでいるところへ、「席を移ってもらってすみませんでしたね」と、店主が真鯛カブト煮を持ってきてくれたのです。

 「川名」の店主・川名茂(かわな・しげる)さんの性格を一言で言い表すと、とにかく「一所懸命」。料理にも、アルバイトにも、お客さんにも、さらに店のことだけに限らず、町内会にも、ホノルルマラソンやボランティアにも、何をやるにも一所懸命で、の~んびりしている様子なんて見たことがありません。

 自分でも居酒屋をやろうと計画中のクマさんも、そんな一所懸命な店主が切り盛りする「川名」に毎週のように(視察に?)やって来るのです。そんなクマさんが注文していた肴(さかな)は、その立派な真鯛の刺身(420円)です。さすがに見る目がありますねぇ。

「今日の真鯛は、塩だけで食べても十分美味しいんですよ。よかったらどうぞ」

 と言ってくれて、先ほど、そのすごい真鯛をひと切れいただいたばかりだったのです。

 ここ「川名」は、店の表にお持ち帰り用の焼き鳥コーナーもある、典型的な「商店街の焼き鳥屋さん」という外観なのですが、一歩店内に入ると、そこは凛とした空気が漂う名酒場。カウンター上にはガラスの冷蔵ケースもどんと置かれていて、焼き鳥のみならず、魚介類もずらりと並んでいるのでした。

 今日も真鯛のほかにも、Tさんが注文した飛び魚刺身や、私が注文したタコブツのほか、シメサバ、サーモン、タコ刺しなどがあって、すべて1人前が420円。

 私がこの店に初めてやってきた、平成13(2001)年当時は、マグロブツなどの刺身類は、ほぼ全品294円(当時は税抜き表記だったので、表記上は280円)という驚くべき価格設定だったのです。

 それが平成17(2005)年に336円になり、平成18(2006)年に399円になり、平成19(2007)年に420円になりといったように、じわりじわりと値上がりしながら、仕入れるネタもじわりじわりと良くなってきたように思います。

 これまでは少しでも安いものを仕入れて、安い値段で店に出して、お客さんに喜んでもらおうとしていた店主が、今度は「値上げしても、しっかりとした料理を」と言い始めたということは、これまた相当な意気込みなのに違いありません。日々、「今よりも一歩高いところを目指す」という姿勢の店主の下、これからの「川名」がどう変わっていくか、ますます楽しみです。でも、びっくりするほどの値上げはしないでくださいね。

 ゆっくりと午後6時半まで楽しんで、ひとりずつ別々のお会計。私の分は1,428円でした。どうもごちそうさま。

店情報前回

《平成20(2008)年3月16日(日)の記録》

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酔ってても料理は上手 … もつ焼き「石松(いしまつ)」(中野)

店内の様子


 門前仲町の駅で地下鉄東西線に乗り込み、終点・中野に到着したのは、日付けが変わった午前0時過ぎ。

『この時間帯なら、もしかすると入れるかな』

 と向かった先は、もつ焼きの「石松」です。まわりの店はすでに閉店し、後片付けも終えている状態の中、「石松」の灯りだけが煌々と……、と言いたいところですが、「石松」はふだんの営業時間中も、店の外には照明は灯っておらず、焼き台の窓が開いているかどうかしない限り、開いてるのか開いてないのかもわからないような状態。まわりの灯りが消えた、この時間でも、近くに寄ってみるまで開いてるのかどうかのの確認ができないのです。

 やぁ、開いてる開いてる。でも席が空いてない。カウンターの中の補助席にまで、お客さんが座っている状態です。さすがですねぇ。この時間帯でも、いっぱいだったか!

「いいですよ。ここに入ってください。私が中に入りますから」

 と、席を譲ってくれるのはクマさんです。

「えっ。そんな。悪いですから…。私、後ろに立って飲みます」と遠慮しますが、

「いやいや。今日はマスターも気持ちよく酔ってらっしゃるので、そろそろ手伝いに入らないといけないんですよ」とクマさん。

 へっ? と見ると、キープのキンミヤ・ボトルを出してくれつつ、「何で飲む?」と聞いてくれるマスターの目はとろりんと、かなりすわり気味。ほんとだ。けっこう飲んだんですねぇ!

 ときどき「どんなお店が好きですか?」と聞かれることがあって、「店主の一所懸命さがビンビンと伝わってくるようなお店です」と答えることが多いのです。

 ひるがえって「石松」。「明日は営業?」と聞いても「うーん。まだ分かんない」。夕方、近くの飲み屋でバッタリと会って、「今日はお休みなんですか?」と聞くと、「このあと、気が向いたら開けるかも……」と、なんだか全然やる気がなかったりします。

 ところが、このマスターが作る料理がうまいときたから困ったもんなのです。

 事前の仕込みがめんどくさいから、その場で大きな塊から切り出して下ごしらえをして焼くようになったと思われるもつ焼きも、逆にその鮮度ゆえの美味しさが、この店の大きな特長となって輝いているし、気分が乗ったときにしか作らないもつ煮込みも、それゆえにいつ食べられるか分からない「幻の煮込み」として賞賛されているのです。

 黒ホッピー(ソト)をもらって、キンミヤを割って飲み始めると、まず出されたお通しはコブクロ刺しです。このコブクロ刺しからして、とても酔っ払って作ったとは思えないよなぁ。

 カウンターの中で、ゆらゆらと揺れながら支度をしているマスターに、「今、何を作ってるんですか?」と聞いてみると、「これ? これはハツの脂(あぶら)のところ。いる?」という返事。さっそく便乗注文して、私もはじめて食べる「ハツの脂のところ」をもらいます。

 筋肉だけかと思っていたハツ(心臓)にも、脂の部分があるというのも驚きですねぇ。取れる量も少ないのか、肉だけではなくて間にシシトウを挟んで焼かれます。

 続いては、これまた便乗注文でタン塩。酔ってても焼き加減や、味付けがちっとも狂わない(ように私には思える)のも素晴らしいところ。タンの焼きあがりも絶妙です。

 しかし、さすがに酔ってるだけあって、なんだかマスターの動きが遅いのです。ゆっくりと下ごしらえして、ハツの脂を食べてから、次のタン塩に至るまでが、約30分。すでに午前1時を回りました。この時間でも、店内が満席近い状態なのは、ゆっくり、ゆっくりと出てくるもつ焼きを、お客さんたちもじっと待ってるからなんですね。

 こんな時間なのに予約の電話まで掛かってきて、やってきたのは、大常連の藻塩(もしお)さんことSさんです。お久しぶりです。Sさんがレバ刺しを注文したところに便乗して、私もレバたれを注文します。

 そしてまたまた待つこと約30分。別に何もしないで待ってるわけではなくて、カウンターの中で洗い物をしているクマさんや、Sさんや、他のお客さんたちと話をしながら飲んでるので、30分なんてすぐに過ぎちゃうのです。(もし腹が減ってる人だったら、待てないかもねー。)

 このレバたれが、これまた絶妙のプリプリ感を残した焼き上がりなのです。なんで酔っててもこの状態に仕上げられるんだろう。串に刺して焼いてるレバの内側が見通せてるに違いない。

 本当は、もうちょっと「石松」のもつ焼きを食べたかったのですが、次をたのむとまた30分ほどかかるので、今日は断念。午前2時過ぎまで、2時間ほどの滞在は、お通しのコブクロ刺しと、ホッピー(ソト)、もつ焼きが3本で800円でした。

 ま、こんな感じで、儲けようなんて気はまったく感じられず、ときには今日のように酔っ払って店をやったりするマスターですが、その人がらと、天才的な料理のうまさに引かれて、私も含めて、大勢の「石松」ファンがやって来るのでした。

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コブクロ刺し / ハツの脂のところ / タン塩 / レバたれ

店情報前回

《平成20(2008)年3月15日(土)の記録》

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飲めや歌えの辰巳新道 … スナック「エコー」(門前仲町)

辰巳新道


 「東京古典酒場」第4弾(2008年4月10日発売)の座談会の流れで、座談会出席者5人で門前仲町にやってきています。牛もつ煮込みの「大坂屋」、『チューハイ1発!』と元気のいい「だるま」を経て、次に向かったのは「だるま」の筋向かいにある、古い酒場街、辰巳(たつみ)新道のスナック「エコー」です。

「あら、いらっしゃい。久しぶりねぇ、元気だった」

 ほぼ1年ぶりにやってきたのに、まるで昨日のことのように迎えてくれるママさん。いつ来ても、前とちっとも変わらない人がいて、ちっとも変わらない酒があって。

「前のキープが残ってるわよ」

 ありゃ。本当にちっとも変わらない、去年のキープボトル(いいちこ)まで残ってました。

 スナックというのも、おもしろい業態で、飲み物は瓶ビールか、ボトルキープの焼酎かウイスキー。そして、たいていの場合はメニューはなくて、座って飲んでるとチマチマと乾きものなどが出てくる。お腹がすいてるときは、そう伝えれば、焼きそばを作ってくれたり、玉子焼きを作ってくれたりと融通もきく。

 ほとんどのスナックにカラオケ装置が置かれていて、歌が途切れることがないくらいの店も多いようです。

 そしてお勘定は、ある意味、明朗会計ながら、地域によってほぼ相場は決まっていて、一人あたり3千円から5千円くらいのところが多いかな。店におねえさんがいたり、たのんでもないのにフルーツの盛り合せが出てくるタイプのお店の場合は、安くても一人あたり8千円くらいから、という感じでしょうか。かなり不明朗ながら、驚くほど高くもないというのも、スナックという業態が継続している理由のひとつだろうと思います。

 今日のメンバーは、みなさんそれぞれ酒場に関する情報をネット上に発信している人たちだけあって、辰巳新道の成り立ちなどに関しても興味津々。

 東京大空襲で、ほとんど更地の状態になったこの界隈では、大通り沿いに次々に露店が展開していって、闇市が形成されてきました。その後、区画整理で立ち退かないといけなくなった露店のために、この地域の材木屋さんが、土地を提供してくれたのだそうです。

 これが辰巳新道の始まりで、昭和28(1953)年のこと。それ以来、55年の歴史を刻んでいるのです。隠れ家にやって来たように感じる、横丁の風情がいいんですよねぇ。

 ひとしきり話も伺ったところで、「いいちこ」の新しいボトルを入れて、飲めや歌えの大騒ぎ。そんなみんなの様子を見ながら、ママさんがちょいとギンナンを炙ってくれたりします。まさに正しきスナックの姿ですねぇ。

「そろそろ電車がなくなりそう!」

 と腰を上げたのは午後11時半。お勘定は5人でちょうど1万円(ひとりあたり2千円)にしてくれました。あまり来れないのに、いつもどうもありがとうございます。>ママさん

 ご一緒させていただいたみなさんのサイトは、次のとおりです。(五十音順)
  ・「橋本健二の居酒屋考現学
  ・「やなちゃんの大阪一人酒の日々
  ・「酔わせて下町
  ・「Y-TABEのレミング2

店情報前回

《平成20(2008)年3月15日(土)の記録》

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皆で料理を分け合って … 大衆酒場「だるま」(門前仲町)

鳥あみ焼き


 「大坂屋」を出て、門前仲町での2軒目は、当初予定の「だるま」です。今日も「だるま」の店頭には、おやじさん(=店主)が立っていて「5人? 入れるよ。奥へどうぞ」と案内してくれます。

 「だるま」の店内は、入ってすぐのところに、厨房を囲むようにコの字のカウンターがあり、その奥に4人掛けのテーブル席が8卓ほど並ぶ造り。我われは奥のテーブル席へと通されます。まずはチューハイ(400円)を人数分(5発)注文して乾杯してから料理の注文です。

 「この店で私が好きなのは鳥あみ焼き(800円)と鳥つくね焼き(600円)なんですよ」とFさん

 鳥あみ焼き(800円)は、皮付きの大きな塊(かたまり)のまま焼いた鶏肉を、一口大に切り分けて、こんもりとお皿に盛ったもの。ボリュームもたっぷりだし、なにしろ肉がしっかりとした歯応えなのがいいですよねぇ。添えられた練り芥子をちょいと付けていただきます。

 鳥つくね焼き(600円)のほうは、ハンバーグのような形に整形された鳥つくねが2個、タレ焼きの、よく焼きで仕上げられて、こちらも練り芥子が添えられています。タレの照りもつやつやと、食べる前からすでに美味しそうです。こちらはそれほどボリュームフルじゃないので、ひとりで来たときにもおすすめですね。人気の串カツと同じくらいのボリューム感でしょうか。

 Yさんの注文はウインナー炒め(600円)。大衆酒場、大衆食堂から高級な割烹やレストランまで、値段に分けへだてなく「いい店」を愛するYさん。大衆酒場で出されるような、いかにもチープな感じの食べ物も好きなのだそうです。このウインナー炒めはその代表格のようなもの。斜めに刻みめを入れられたウインナーを炒めて、レタスと千切りキャベツの上に置き、練り芥子とケチャップが添えられます。魚肉ソーセージなどと同じように、なぜか酒が進むつまみなんですよねぇ。

 橋本さん、地元・やなちゃんは、牛モツ煮込みとおでん(700円)を注文です。

 牛モツ煮込みは、シロ(腸)を中心に、コンニャクをちょっと加えて煮込んだもの。カウンター内の大鍋から小鉢に取り分けられ、刻みネギがトッピングされます。基本的にボリュームが多いのが特徴のこの店のメニューの中で、この牛モツ煮込みは、割りと一般的な煮込みの量です。

 おでん(700円)も、煮込みと同様にカウンター内の鍋から、玉子、大根、厚揚げ、コンニャク、ちくわ、はんぺん、の6種がひと皿に盛り合わされます。

 私の注文は、ここに来るたびにたのんでいる、サラダ盛り合わせ(600円)ですレタスをひいた皿に、冷やしトマト、ポテトサラダ、マカロニサラダの3種が盛り合わされます。ひとりだと、これだけでお腹いっぱいになってしまうのですが、5人だとちょっとずつになっちゃいますねぇ。3人でひと皿をシェアするくらいがちょうどいいのでしょうか。

 チューハイもおかわりしながら、1時間半ほど楽しんで、5人で10,250円(ひとりあたり2,050円)でした。ひとりでも楽しめますが、この店はやっぱり今日のようにグループで来たほうが、いろんなものが食べられていいですね。値段が半分くらいで、量を半分以下(3分の1くらい)にしてくれると、私ひとりでも、いろいろつまめそうなんですけどねぇ。

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鳥つくね焼き / サラダ盛り合わせ / ウインナー炒め

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《平成20(2008)年3月15日(土)の記録》

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玉子スープの黄金の色 … 牛にこみ「大坂屋(おおさかや)」(門前仲町)

焼酎と牛にこみ


 「TOKIO古典酒場」第4弾『沿線酒場<京成&世田谷>編』(4月10日(木)発売予定)の座談会のあと、出席者のFさん橋本さんY-TABEさんやなちゃんと5人で門前仲町にやってきました。

 この人数でも入れそうな「だるま」を目指していると、その途中にあるのが牛にこみで有名な「大坂屋」です。

「小さな店なので入れないと思いますが、のぞいてみましょうか」

 と、地元在住のやなちゃんが引き戸を開けて店内をのぞき込みます。

「詰めれば壁際のカウンターに入れそうですけど、どうしますか?」

 なんと! 入れますか! せっかくの機会なのでぜひ入りましょう。ひとり、ふたりで来ても、なかなか入れないのに、5人で入れるとは本当に珍しい。

 「大坂屋」の店内は、正面から右にかけて、6~7人ほど座れるメインカウンターがあり、ゆるやかに弧を描いたカウンターの中央内側に、大きな煮込み鍋が据えられているのです。そして左手の壁に、壁に作りつける形で3~4人座れるサブカウンターがあって、店全体では10人入れるかどうかといった大きさ。これをカウンターの中に座る女将さんひとりで切り盛りします。

 今日、メインカウンターにずらりと陣取っているのは、外人さん数人を含む男女のグループ客。どうやら来日している人たちに、下町情緒を楽しんでもらおうと、みんなでこの店にやってきたもののようです。

 我われ5人は、左手のサブカウンターと、その奥の上り框(あがりがまち)のところにギュッと詰めて座り、ビール(サッポロラガー大瓶、630円)や焼酎(390円)をもらって乾杯です。お通しには、小皿に盛られた大根の漬物が出され、これを小さなフォークでつついていただきます。

「煮込みを、適当に盛り合せてください」と女将さんにお願いすると、

「じゃ、15本(ひとり3本ずつ)ほど取りましょうね」と、大皿に煮込みを取り分けてくれます。

 この店の食べ物メニューは、串に刺したまま煮込まれている牛煮込み(1本120円)のほかは、玉子入りスープ(300円)と、オニオンスライス(300円)という全3種類しかありません。

 牛煮込みもシロ(腸)、フワ(肺)、ナンコツ(食道)の3種類があって、1本の串には同じ種類のものが3切れ程度ずつ刺されています。メインカウンターの鍋近くに座れた場合には、鍋の上に置かれている大きな箸で、自分の好きな煮込みを取ることもできるのです。

 よく煮込まれているのが好きな人もいれば、あっさりと浅めに仕上がったものが好きな人もいるようで、わからないときには女将さんに「硬めのところをお願いします」などと頼むと、鍋の中から探し出してくれるのでした。

 焼酎はコップにトクトクと注いだあと、梅シロップをちょいと垂らしてくれます。飲物もビール、焼酎のほか、日本酒(430円)、ウイスキー(430円)の全4種類しかありません。

 食べ物、飲み物の両方を合わせても7種類のみ、営業時間も午後4時から9時までの5時間という空間を目指して、大勢のお客さんが出かけてくるのでした。

 目の前の壁には、森下賢一(もりした・けんいち)さんの句が飾られています。

『春近し 玉子スープの 黄金(きん)の色』(H9.2.26)

 ここの女将さんも、森下さんの句会のメンバーなのです。

玉子スープ 最後に、みんなでその玉子スープ(300円)をいただきます。玉子スープは、煮込み鍋の中で半熟状態まで仕上げたゆで玉子に、煮込みの汁をかけたシンプルなもの。これを添えられたスプーンでつつき壊すと、煮込み汁の中に、とろりと玉子の黄身が広がって、まさに黄金の色に変わるのです。

 45分ほどの滞在は、5人で8,310円(ひとりあたり1,662円)でした。どうもごちそうさま。

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《平成20(2008)年3月15日(土)の記録》

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店情報: 牛にこみ「大坂屋(おおさかや)」(門前仲町)

    080315z1
  • 店名: 仲町名物「大坂屋」
  • 電話: 03-3641-4997
  • 住所: 135-0048 東京都江東区門前仲町2-9-12
  • 営業: 16:00-21:00、日祝休
  • 場所: 地下鉄門前仲町駅5番出口から徒歩2分。門前仲町交差点から、森下方面に向かって清澄通りを北上し、すぐ先右手のガソリンスタンドの手前を右折した左側。ガソリンスタンドの2軒ぐらい先。
  • メモ: 大正13(1924)年創業。煮込み前カウンターに6~7席、壁のカウンターに3~4席程度。御酒430、冷酒950、ビール大650、小550、焼酎400、ワイン(ハーフボトル)1,050、牛にこみ(シロ(腸)、フワ(肺)、ナンコツ(食道))1串130、玉子入りスープ330、オニオンスライス300。(2008年7月調べ)
  • HTML版(2003年以前): (01.05.22)(99.12.14)

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今が旬、三つ葉お浸し … 大衆割烹「ほ里乃家(ほりのや)」(鷺ノ宮)

三ツ葉おひたし


 金曜日。地元・鷺ノ宮(さぎのみや)に帰ってきたのは、日付けの変わる午前0時。駅南口にある「ほ里乃家」でちょっと飲んでから帰りましょうか。

 「こんばんは」と入った店内には、先客は5人ほど。J字カウンター(Jの右上が入口)の一番奥(Jの下側)が空いているので、そこに座り、今日は抹茶割り(340円)でスタートです。

 お通し(200円)のポテトサラダをつまみながら、壁の短冊メニューを確認。おっ。カキフライ(400円)がある。しかし、この夜中に揚げ物をたのむというのもなぁ。ひとりのために油の準備をしてもらうのも心苦しいので、カキ串焼き(500円)にするかなぁ。このカキ串焼きもうまいんですよねぇ。

 と、そこへ、入口近くに座っている男性客から「アジフライ(400円)ください」と注文が入ります。やった。揚げ物だ。じゃ、私も遠慮なく。

「すみません。こちらはカキフライをお願いします」

カキフライ カキフライは5個。横にキャベツの千切りと、櫛(くし)切りのレモンが添えられます。最初の1個は、軽くレモンだけ搾ってシャクッといただくと、中から熱々のカキエキス。ハフハフ。なんとうまいことよ。2個目はウスターソースをちょっとかけて。もうすぐカキの季節も終わっちゃいますねぇ。

 居酒屋でうれしいのは、こうやって季節の食べ物がいただけること。和食の店などでは、ちょっとだけ季節を先取りした、いわゆる「走り」の食材が出されることが多いらしいのですが、居酒屋の場合はほとんどの場合、旬まっさかりで、比較的安価に仕入れられる時期に出されることが多いので、値段も安いのがいいところ。

 抹茶割りをおかわりし、そんな旬の食材のひとつ、三ツ葉おひたし(350円)をいただきます。今が旬という三ツ葉は香り、こく、春らしい苦みと三拍子揃っていて、茎も太くて食べごたえがあります。

「これは美味しいですねぇ!」

 と店主に感想を述べると、

「ほうれん草のおひたしに、カツオ節をかけて、生卵(黄身のみ)を混ぜたのも、いいつまみになるんですよ。ほうれん草の仕入れのあるときならできるんですが、簡単にできるのでご自宅でもやってみたらどうですか」と店主。

 へぇー。玉子の黄身入りのおひたしか。黄身の濃厚な味わいがからんで、おいしいかもなぁ。

 午前1時まで、ちょうど1時間の滞在は1,630円でした。ごちそうさま。おやすみなさーい。

店情報前回

《平成20(2008)年3月14日(金)の記録》

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開店第1号のお客さま … 魚料理「竹よし(たけよし)」(都立家政)

鯛かぶと酒蒸し


 日曜日、夕食前のちょい飲み散歩は「竹よし」です。午後5時をちょっと回ったところで店に到着すると、右手カウンター席(6~7名分)の一番奥で、すでに大常連のTさんが飲み始めています。私もそのすぐ手前の席に腰をおろし、いつものように瓶ビール(アサヒスーパードライ中瓶、500円)からスタートすると、お通し(200円)には数の子(カツオ節と和えて、三つ葉をのせたもの)が出されます。

 「竹よし」は、昨日、3月8日(第2土曜日)が、通算74回目となる夕食会の日。開店15周年に当たる今回は、豪勢に「鯛づくし」がテーマだったのだそうです。

 用意されたのは3種の鯛。キンメダイ(金目鯛)はシャブシャブと、あら煮で。マダイ(本鯛)は刺身と塩焼きで。そして、アマダイ(甘鯛)は鯛めしと酒蒸しで楽しんだということを、まだ残っている大きなマダイの頭(かぶと)や、半身だけ残ったキンメダイを見せてくれながら聞かせてくれます。

 こうやって見せてもらうと、ますます食べたくなりますよね。まずはそのキンメダイの刺身(800円)を注文します。

 夕食会の食材は、会費制で歩留まりよく仕入れることができるので、グッといいネタが入ることが多いのです。もちろん夕食会で完食になってしまうと翌日には残らないので、確実に食べるには、やはり夕食会に参加するのが一番です。

 脂がたっぷりとのったキンメダイ刺身が出されたところで、飲み物も燗酒(菊正宗、350円)に切り換えます。

 今日は帆立貝や平貝などの貝類も多くそろっています。キンメダイ刺身を食べ終えた大常連のTさんが、「この帆立を焼いて出してよ」と注文すると、身(貝柱)の部分は貝殻の上で焼かれ、肝(実は卵?)の部分は蒸し器で蒸して出されます。いやぁ、これは美味しそうだ。「ちょっと食べてみる?」というTさんの言葉に、遠慮なく箸を伸ばしてしまいます。(いつもすみません。>Tさん)

 私自身の2品目は、鯛カブトの酒蒸し(600円)を選択。カブトと言っても、カマのあたりの身もたっぷりと付いてますからねぇ。ボリューム感たっぷりです。

「蒸しあがるまでに、これを食べてみますか?」

 と店主が出してくれたのは、山菜の煮びたし。昨日の食事会のときにサイドメニューとして出したものなんだそうです。入っているのはフキノトウ、コゴミに、タラの芽。天ぷらでいただくことは多いのですが、こうやって煮びたしとしていただくのは、きっと初めてです。ほろ苦さが、いかにも春っぽくていいですねぇ。燗酒にもよく合って、2本目をもらいます。

 さぁ、鯛カブト酒蒸しの登場です。大きなタイもさることながら、まわりに添えられたアスパラやカボチャ、シメジなどの野菜類がまた美味しそうだこと。タイと一緒に蒸したんですね。蒸した野菜は美味しいですからねぇ。「魚だけじゃなくて、野菜にも少し力を入れてみようと思いましてね」と店主。タイのほうも、桜鯛の季節を迎えるだけあって、なにもつけなくてもいいくらい、いい味が出ています。

 私のあとに入ってきた男性ひとり客は、まずキンメダイ刺身を食べ終えた後、店主に「カマ焼きは何がある?」と質問。

「今日はブリ(600円)や、サワラ(500円)、キングサーモン(500円)などがありますが、鯛のカブト焼きはいかがでしょう? さきほどこちらにお出しした酒蒸しの半身なので、カマの部分の身もたっぷりと付いてますよ」

 なるほどなぁ。このタイの半身なら、焼いても絶対に美味しいに違いない。そのお客さんも「じゃそれ」と鯛カブト焼きを注文します。

「こちらのお客さんはMさんとおっしゃいましてね」と、そのお客さんを店主が紹介してくれます。「15年前のちょうど今日、3月9日にふらりと入ってこられたんですよ。そのときは女房と二人で、店で出す料理の確認などの開店準備をしてましてね。でも、Mさんがいかにも自然に店に入ってこられて、そのままいかにも自然に料理を注文されたので、こちらも普通に営業させていただいたんですよ。だから、こちらのMさんが「竹よし」の第1号のお客さんなんです」

「そうだったの。私はこの店ができる前に、ここでやってた店に通っててね。しばらく休みが続いているなぁ、と思ってたら、その日は開いてたから、再開したのかと思って入ったんだよ」

 とMさん。そんな偶然から、この店の第1号のお客さんになっちゃんたんですね。それ以来、店も15年。お客のMさんも通い続けて15年ですか。開店のときから来てくれてるお客さんが、ずっと通ってきてくれるというのは素晴らしいことですよねぇ。

 その後、jirochoさんもいらっしゃって、夕食前に軽く飲むつもりが、今日もまた気がつけば午後9時。ついつい長居してしまうお店なんですよねぇ。今日のお勘定は2,800円でした。

 なお、次回夕食会は4月12日(土)、午後5時から。食材として、日本海の高級魚・ノドクロ(赤ムツ)が候補にあがっているそうです。

金目鯛刺身 帆立貝焼 山菜煮びたし
金目鯛刺身 / 帆立貝焼 / 山菜煮びたし

店情報前回

《平成20(2008)年3月9日(日)の記録》

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本場・明石の玉子焼き … おでん「多幸兵衛(たこべえ)」(落合)

蛸信田焼


 この店の明石玉子焼きは、明石焼(あかしやき、550円)、たこネギ焼(600円)、蛸信田焼(たこしのだやき、650円)という3種類があります。そのうち、Eさんが注文したのは明石焼と、たこネギ焼の2種類。蛸信田焼だけは、最後のシメにいただくと決めているんだそうです。

 明石焼は、大阪エリアでよく食べられている普通のタコ焼き(ソース味のもの)の元になったものだそうで、明石以外の土地では明石焼と呼ばれますが、地元・明石では単に玉子焼と呼ばれているのだそうです。このあたり、薩摩揚げが、地元・鹿児島では、つけ揚げと呼ばれているのと同じような状況なのかもしれませんね。

 その明石焼の、タコ焼きとの最大の違いは、別に用意された出汁(だし)をつけていただくこと。おでんも自慢のこの店だけに、明石焼の出汁もまた美味いのです。このあたりも大人気の理由のひとつに違いありません。

 一方、たこネギ焼は、明石焼の白っぽい色合いとは打って変わって、焼き目のついた濃い色合いで、これに添えられたレモンを搾って、さっぱりといただきます。やぁ、これもいいですねぇ。

 ひとしきり明石玉子焼を食べた後は、飲み物もおかわりしつつ、さらに何品かのおでんをいただきます。

 珍しいのは春菊(250円)。注文を受けてから、一束分の春菊をおでん鍋に投入し、火が通ったところで皿盛りにして出してくれます。刻み紅生姜の赤色がトッピングされた春菊は、葉の緑色がすごく鮮やかで、これに一味唐辛子をふりかけていただくと、「春菊って、おでんにしても美味しいんだ」ということが発見できます。

 えのき(200円)や春雨(200円)も同様に、注文を受けてからおでん鍋の中で絶妙な状態に仕上げられて、皿盛りで出されます。春雨もまた、白が美しいなぁ。

 おでんと言えば、煮込みなどと同様に、おでん鍋の中でじっくりと煮込まれている食材を、お皿に取り分けてもらって食べるというイメージの強い料理なんですが、ここ「多幸兵衛」のおでんは違いますねぇ。注文を受けて生の食材を投入し、絶妙の火の通り加減、出汁のしみ込み加減のものを出してくれる。もつ焼きを、ビシッといい具合に焼きあげてくれるのと似ているように思います。こんな風に、おでん鍋と対峙しながら、その場で作り上げていくおでんもあるんですねぇ。

 さぁ、そしていよいよシメに向かってのEさん定番のコースへと入っていきます。

 まずはシメの前に必ず注文するという蛸納豆(たこなっとう、450円)です。小さなすり鉢に納豆が入り、その上に刻んだタコがたっぷりと。さらに刻みネギ、刻み海苔、そして生卵がトッピングされて、練り辛子が添えられています。この状態の蛸納豆を、Eさんが「これでもか」というほど混ぜる、混ぜる、混ぜる。

 「これくらい混ぜないと、おいしくないんですよ」とEさん。全体が完全に一体化するほどよく混ざった蛸納豆を、ズズズッとすすり込むようにしていただくと、これがまたバカみたいに美味いのです。シンプルなイカ納豆もおいしいものですが、このタコ納豆も負けてないというか、イカ納豆とはまた別のタイプの、いい肴(さかな)に仕上がってますねぇ。

 そして最後は、1種類だけ注文しないで残しておいた蛸信田焼(650円)です。フワフワを出汁でいただいた明石焼や、コンガリをレモン汁でいただいた、たこネギ焼。蛸信田焼は、いったいどんな味なんでしょう。

 楽しみに待っていると、出されたのはなんと丼に入った料理です。たっぷりと張られた汁(つゆ)には、スライスした鳴門や、刻んだおあげ、とろろ昆布に刻みネギまで浮かんでいて、まるでうどんか何かのよう。ところが、この汁の中に入っているのが、明石焼なんですねぇ。うどんの麺の代わりに、明石焼がコロコロと入っているという状態を想像していただけると近いと思います。

 これを、汁ごとレンゲですくって、チュルリといただくと、出汁につけた明石焼よりも、もっともっと汁(つゆ)っぽくて、チュルリの中から出てくるタコの食感もいいですねぇ。これはもう麺類好きにはたまりません。Eさんのおすすめのとおり、まさにシメにぴったりの料理です。

 午後9時前まで3時間近く楽しんで、お勘定は5人で18,500円(ひとりあたり3,700円)でした。今度は夏のおでんも食べたいですね。

店情報 (この記事は前編からの続きです。)

《平成20(2008)年3月8日(土)の記録》

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ぷっくりとカキおでん … おでん「多幸兵衛(たこべえ)」(落合)

カキのおでん


 都内に、本場の明石の玉子焼きを食べることのできるお店があるということで、その店の常連・Eさんにお願いして、連れて行ってもらいました。

 店の名は「多幸兵衛(たこべえ)」。店主夫妻は、もともと神戸(三宮)で同名のお店をやっていたそうなのですが、平成7(1995)年の震災で店が壊れてしまい、常連だった有田芳生(ありた・よしふ)さんに誘われる形で、東京(落合)へと出てきたのだそうです。

 それから14年。今や予約しなければ入れないほどの人気店になっているのでした。

 今日、集まったのは5人。店は入ってすぐの8人ほど座れるカウンター席のほかに、奥に小上がりの座敷席(1卓5席分)があり、我われ5人は、Eさんが予約してくれていた座敷席へと通されます。これでもう店内は満席です。現在の時刻は午後6時。この店の開店時刻が午後6時なので、開店と同時に満席になっちゃった、ってことですね。

 まずは瓶ビール(アサヒスーパードライ中瓶、500円)をもらって乾杯し、常連のEさんが、おすすめの品々を注文してくれます。

 この店は「京風おでん」と「明石玉子焼」が売りのお店。飲み物と明石玉子焼は、その場で口頭で注文し、おでんは欲しいものを紙に書いて渡します。

 まず出てきたのは、おでんの「おだい盛」(650円)と、しらたき(250円)、つみれ(200円)。

 「おだい盛」というのは、おだい(大根、250円)を中心に何品かを盛り合わせたおでん盛り合せのことで、おだいの他に、鳴門(150円)、あげ(150円)、野菜天(200円)と、都合750円分が盛り合されていて、お得感があります。

 ほぼ透明の薄い出汁(だし)で煮込まれたおでんには、甘く味付けされた味噌がちょっと塗られていて、それとは別に、お皿の縁に練り辛子が添えられます。出汁の色が薄いので、しらたきはあくまでも白く、大根も透明感をもった白さに仕上がっています。

 そしてメニューを見たときから、これは絶対に食べたいと思っていた、カキ(600円)も出てきました。注文を受けてから、おでん汁の中で調理されるカキは、ちょうどよく火が通って、ぷくんと膨らんだカキが6個ほど。付け合せのネギ、ピーマン(赤、緑)と一緒に出されます。このカキには、味噌ダレがよく合いますねぇ。カキは冬場だけの限定メニューだそうです。

 このカキには、絶対お酒ですね。燗酒を注文すると、「菊正宗」の一合瓶(400円)が出されます。他のメンバーも、それぞれ自分の好きな飲み物に移行します。

 つまみも蛸キムチ(250円)やハンペン(200円)を追加。ハンペンも白さが際立ちますねぇ。関西方面では、ハンペンはあまり食べないと思いますので、これは東京に来てから使うようになった食材なのでしょうか。薄い色の出汁で煮ると、ハンペンもまた白さが輝きますねぇ。おでんの上に甘い味噌ダレをちょっとかけて、その上に刻みネギと、刻み紅生姜をのせるというのが、この店のスタイルのようです。

 さぁ、いよいよもうひとつの名物・明石玉子焼が出てきました。現在の時刻は午後7時過ぎ。お客さんのほぼ全員が明石玉子焼を注文するので、カウンターの中の焼き台で、店主が一所懸命焼き続けても、みんなの分が焼きあがるのには、ずいぶん時間がかかってしまうんでしょうね。

店情報 (この記事は後編に続きます。)

《平成20(2008)年3月8日(土)の記録》

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店情報: おでん「多幸兵衛(たこべえ)」(落合)

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  • 店名: 京風おでん・明石たこ焼「多幸兵衛」
  • 電話: 03-5386-0950
  • 住所: 161-0034 東京都新宿区上落合1-30-17
  • 営業: 18:00-01:30、日と第1・3木休
  • 場所: 地下鉄東西線・落合駅3番出口を出て右へ。早稲田通りに沿って、小滝橋・高田馬場方面に徒歩約7分(400m弱)、右手。
  • メモ: カウンター8席ほどに、奥の小上がりに4~5席ほど。〔おでん〕玉子100、角天100、あげ150、白滝(2つ)250、つくね150、鳴門150、上・宇和島200、つみれ200、もち150、蒟蒻(2串)200、竹の子200、えのき200、筏200、里いも250、占地200、とうふ200、春雨200、野菜てん200、はんぺん200、シューマイ(2串)250、おだい250、飛龍頭(ひりゅうず)250、春菊250、ロールキャベツ250、とうもろこし(夏)250、牛すじ300、そーせーじ(3本)400、ミノ600、かき(冬)600、多幸600、おでん桂盛550、おでん蒟蒻盛550、おでんおだい盛650、おでん大皿盛1,050。〔明石玉子焼〕明石焼(だし)550、たこネギ焼(レモン)600、蛸信田焼(だし)650。〔お口なおし〕蛸キムチ250、赤なす300、蛸納豆450、冷奴300、温奴200、たこぶつ600。〔お飲みもの〕お酒400、麦酒500、黒麦酒400、明石地酒450、神戸地酒500、冷酒600、和風ワイン550、ウーロンハイ400、ソフトドリンク(ジュース、サイダー、コーラ、ウーロン)200、鰹出汁50。(2008年3月調べ)

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