玉子スープの黄金の色 … 牛にこみ「大坂屋(おおさかや)」(門前仲町)
「TOKIO古典酒場」第4弾『沿線酒場<京成&世田谷>編』(4月10日(木)発売予定)の座談会のあと、出席者のFさん、橋本さん、Y-TABEさん、やなちゃんと5人で門前仲町にやってきました。
この人数でも入れそうな「だるま」を目指していると、その途中にあるのが牛にこみで有名な「大坂屋」です。
「小さな店なので入れないと思いますが、のぞいてみましょうか」
と、地元在住のやなちゃんが引き戸を開けて店内をのぞき込みます。
「詰めれば壁際のカウンターに入れそうですけど、どうしますか?」
なんと! 入れますか! せっかくの機会なのでぜひ入りましょう。ひとり、ふたりで来ても、なかなか入れないのに、5人で入れるとは本当に珍しい。
「大坂屋」の店内は、正面から右にかけて、6~7人ほど座れるメインカウンターがあり、ゆるやかに弧を描いたカウンターの中央内側に、大きな煮込み鍋が据えられているのです。そして左手の壁に、壁に作りつける形で3~4人座れるサブカウンターがあって、店全体では10人入れるかどうかといった大きさ。これをカウンターの中に座る女将さんひとりで切り盛りします。
今日、メインカウンターにずらりと陣取っているのは、外人さん数人を含む男女のグループ客。どうやら来日している人たちに、下町情緒を楽しんでもらおうと、みんなでこの店にやってきたもののようです。
我われ5人は、左手のサブカウンターと、その奥の上り框(あがりがまち)のところにギュッと詰めて座り、ビール(サッポロラガー大瓶、630円)や焼酎(390円)をもらって乾杯です。お通しには、小皿に盛られた大根の漬物が出され、これを小さなフォークでつついていただきます。
「煮込みを、適当に盛り合せてください」と女将さんにお願いすると、
「じゃ、15本(ひとり3本ずつ)ほど取りましょうね」と、大皿に煮込みを取り分けてくれます。
この店の食べ物メニューは、串に刺したまま煮込まれている牛煮込み(1本120円)のほかは、玉子入りスープ(300円)と、オニオンスライス(300円)という全3種類しかありません。
牛煮込みもシロ(腸)、フワ(肺)、ナンコツ(食道)の3種類があって、1本の串には同じ種類のものが3切れ程度ずつ刺されています。メインカウンターの鍋近くに座れた場合には、鍋の上に置かれている大きな箸で、自分の好きな煮込みを取ることもできるのです。
よく煮込まれているのが好きな人もいれば、あっさりと浅めに仕上がったものが好きな人もいるようで、わからないときには女将さんに「硬めのところをお願いします」などと頼むと、鍋の中から探し出してくれるのでした。
焼酎はコップにトクトクと注いだあと、梅シロップをちょいと垂らしてくれます。飲物もビール、焼酎のほか、日本酒(430円)、ウイスキー(430円)の全4種類しかありません。
食べ物、飲み物の両方を合わせても7種類のみ、営業時間も午後4時から9時までの5時間という空間を目指して、大勢のお客さんが出かけてくるのでした。
目の前の壁には、森下賢一(もりした・けんいち)さんの句が飾られています。
『春近し 玉子スープの 黄金(きん)の色』(H9.2.26)
ここの女将さんも、森下さんの句会のメンバーなのです。
最後に、みんなでその玉子スープ(300円)をいただきます。玉子スープは、煮込み鍋の中で半熟状態まで仕上げたゆで玉子に、煮込みの汁をかけたシンプルなもの。これを添えられたスプーンでつつき壊すと、煮込み汁の中に、とろりと玉子の黄身が広がって、まさに黄金の色に変わるのです。
45分ほどの滞在は、5人で8,310円(ひとりあたり1,662円)でした。どうもごちそうさま。
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