今より一歩高いところ … 焼き鳥「川名(かわな)」(阿佐ヶ谷)
「大勢のお客さんに来ていただけるようになったので、今後は値段を少し上げてでも、しっかりとした料理を出すようにしたいと考えてるんですよ」
そう言いながら、店主が真鯛のカブト煮を持ってきてくれます。
「この真鯛も、4尾で1箱の品でしてね。今後はこういうのを増やしていきたいと思ってるんです」
日曜日の夕方、いつものように「よじかわ」(=開店時刻の午後4時から「川名」で飲むこと)でやって来て、ちょうど居合わせたクマさんや、「1000円台で楽しむ 大人の居酒屋」(ダイヤモンド・オンライン)の連載でお世話になっているTさんとともに、奥の座敷に移動して飲んでいるところへ、「席を移ってもらってすみませんでしたね」と、店主が真鯛カブト煮を持ってきてくれたのです。
「川名」の店主・川名茂(かわな・しげる)さんの性格を一言で言い表すと、とにかく「一所懸命」。料理にも、アルバイトにも、お客さんにも、さらに店のことだけに限らず、町内会にも、ホノルルマラソンやボランティアにも、何をやるにも一所懸命で、の~んびりしている様子なんて見たことがありません。
自分でも居酒屋をやろうと計画中のクマさんも、そんな一所懸命な店主が切り盛りする「川名」に毎週のように(視察に?)やって来るのです。そんなクマさんが注文していた肴(さかな)は、その立派な真鯛の刺身(420円)です。さすがに見る目がありますねぇ。
「今日の真鯛は、塩だけで食べても十分美味しいんですよ。よかったらどうぞ」
と言ってくれて、先ほど、そのすごい真鯛をひと切れいただいたばかりだったのです。
ここ「川名」は、店の表にお持ち帰り用の焼き鳥コーナーもある、典型的な「商店街の焼き鳥屋さん」という外観なのですが、一歩店内に入ると、そこは凛とした空気が漂う名酒場。カウンター上にはガラスの冷蔵ケースもどんと置かれていて、焼き鳥のみならず、魚介類もずらりと並んでいるのでした。
今日も真鯛のほかにも、Tさんが注文した飛び魚刺身や、私が注文したタコブツのほか、シメサバ、サーモン、タコ刺しなどがあって、すべて1人前が420円。
私がこの店に初めてやってきた、平成13(2001)年当時は、マグロブツなどの刺身類は、ほぼ全品294円(当時は税抜き表記だったので、表記上は280円)という驚くべき価格設定だったのです。
それが平成17(2005)年に336円になり、平成18(2006)年に399円になり、平成19(2007)年に420円になりといったように、じわりじわりと値上がりしながら、仕入れるネタもじわりじわりと良くなってきたように思います。
これまでは少しでも安いものを仕入れて、安い値段で店に出して、お客さんに喜んでもらおうとしていた店主が、今度は「値上げしても、しっかりとした料理を」と言い始めたということは、これまた相当な意気込みなのに違いありません。日々、「今よりも一歩高いところを目指す」という姿勢の店主の下、これからの「川名」がどう変わっていくか、ますます楽しみです。でも、びっくりするほどの値上げはしないでくださいね。
ゆっくりと午後6時半まで楽しんで、ひとりずつ別々のお会計。私の分は1,428円でした。どうもごちそうさま。
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