厳選された日本酒と肴 … 居酒屋「浅七(あさしち)」(門前仲町)
『「鬼平犯科帳」の長谷川平蔵が「ゆるせ」と入ってきそうな男っぽい店だ』
太田和彦さんが、近著・「居酒屋味酒覧 第2版」の中で、そう紹介する、門前仲町の居酒屋「浅七」にやってきました。店は「魚三酒場」の横の路地を入ったところにあります。
ガラリと引き戸を開けて店内に入ると、おっと、目の前のカウンターに着流しで盃(さかずき)を傾けるおにいさん。カウンターの中にいる店主も着物姿なので、なんだかこの目の前だけが現代ではないような……。いやぁ、本当に長谷川平蔵が来てるんじゃないかと、一瞬驚いてしまいました。
店内は左手に直線カウンター7席ほど。右手は座敷で、4人掛けが5卓並んでいますが、各卓には向かい合わせに2人分しか座布団は置かれていません。2人を基本として、それ以上(3~4人)のグループ客に対して、座布団を足してくれるんでしょうね。この座布団の置き方を見ただけでも、「ゆったりと楽しんでください」という、お店のメッセージが伝わってきます。
私はカウンター席の、着流しのおにいさんの奥側に座り、まずはお酒の選択です。
飲み物のメニューは日本酒だけで、新潟 〆張鶴 純米吟醸、富山 銀嶺 立山、宮城 浦霞 からくち、奈良 梅の宿 青垣 特別純米、岐阜 三千盛 からくち純米、群馬 群馬泉 山廃純米、福島 大七 純米生もと、の7種類。これらがすべて800円です。
どの銘柄がどんな味、ということもあまり知らないので、短冊メニューがもっとも変色して古びている「三千盛(みちさかり)からくち純米」を、燗でいただくことにします。飲み方は燗の他に、つめたいの(冷蔵)、ひや(常温)を選ぶことができます。
肴(さかな)は、ぬか漬、梅わさび、焼きみそ、冷奴、湯豆腐、ほたて釜揚げ、いりだし蒟蒻、まぐろづけ、うざく、穴子にこごり、穴子空揚げ、茶そば、の12種類がメニューに並び、それぞれ400~950円。品数は少ないものの、実に呑ん兵衛好みのする品々です。
そんな中から、湯豆腐(450円)を注文すると、店主とともに店を切り盛りするおねえさん(店主の娘さん?)が、固形燃料式のコンロに一人用の鍋をのせ、カウンターの一番厨房よりのところで湯豆腐を作り、食べごろになったら出してくれます。昆布を敷いた上に、豆腐がのっているというシンプルな湯豆腐。一緒に出される長方形の薬味皿も、左に醤油、右に刻みネギという、これまたシンプルなもの。このシンプルさが燗酒に合うんですよねぇ。
カウンターは男性ひとり客が、私も含めて4人ほど。座敷は男女カップルが2組ほど入っています。着流しのおにいさんは、背筋をピシッと伸ばして、今や4本目のお酒に入ろうかとしています。奥でチビチビとやっているおじさんは、常連さんのようで、店主やおねえさんとも親しげに話しながら飲んでいます。我われのような、常連でないひとり客にとっては、そういう常連さんたちの会話がまた、いい酒の肴になります。
「三千盛」の燗酒(800円)をおかわりし、肴は焼きみそ(400円)をもらいます。
焼きみそは、小さく刻んだ野菜などを練りこんだ味噌を、盃(さかずき)程度の小さな小鉢に平らに盛りつけ、それを裏返して味噌の表面に焦げ目が付く程度まで焼いたもので、そのまま竹のザルにのせて出してくれます。
これを箸でチマチマとつまみ、口の中に味噌の風味が広がったところへ、日本酒をグビリとやるわけです。っくぅ~っ。これまた美味いもんじゃのぉ。味噌と日本酒は、古来よりベストな組み合わせですもんねぇ。
土曜日午後6時から7時まで、1時間の滞在は2品と2本で2,450円でした。
他のお客さんたちの様子を眺めていても、だいたい2品と2本くらいで1時間ほど過ごし、2,500円前後の支払いをして帰っていく人が多いようです。目の前に4~5本の徳利を並べて、「よく飲んでるなぁ」と思う人でも5千円ほどと、思ったほどは高くありませんでした。
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コメント
こんにちは。
ご無沙汰しております。
前々から憧れていた門前仲町の浅七さん、
ついに訪問してきました!
かなり緊張していたのですが、事前にこの記事を拝見していたので思い切って扉を開けられました。
やはりいい居酒屋さんでした!
#私の訪問記事中にこの記事へのリンクを張らせていただきましたが、なにかあればおっしゃってください。
投稿: M | 2008.08.28 12:53
Mさん
ごぶさたしております。
ブログ「東京グルメ 居酒屋訪問記 ~銀座 六本木 赤坂 恵比寿などのレストランめぐり~」も、ますます充実されてますねぇ! 行ったことがないお店がたくさん掲載されているので、ぜひまた出かけてみたいと思います。
投稿: 浜田信郎 | 2008.08.31 11:48