〔コラム〕 目からうろこの生ビールセミナー
前にサントリー白州蒸溜所に行ったことを書きましたが、そのときのサントリーのM(エム)さんから「生ビールのセミナーもやってまして、そこで飲む生ビールが、目からうろこが落ちるほど美味しいんですよ」というお話をうかがって、今日はその「サントリー樽生セミナー」にやってきました。
教えてくれるのはサントリーの樽生の達人・池辺(いけべ)さん。
基本はまず「きれい」ということ。生ビールサーバーは毎日きれいに洗浄することが必須ですし、グラスも汚れが残らないよう、またグラス自体に傷をつけないように、やわらかいスポンジで中性洗剤で洗って、できれば冷やしておくのがいいんだそうです。
この基本が守れたら、次はいよいよ注ぎ方です。
グラスを45度に傾けて、サーバーの注ぎ口に、グラスの内側をぴたりとくっつけ、そのくっついた状態のまま、斜め45度を保ちながら、サーバーのレバーを手前に倒します。このままできるだけ泡を立てないように、グラスの縁までビールを注ぎます。
しかるのちに、まっすぐにグラスを立てて、今度はレバーを奥に押して、ビールの上にクリーミーな泡をのせたら、美味しい生ビールのできあがりです。
………。
「今ごろ、なにをそんな当たり前なことを!」
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、要点は「まず泡を立てずにグラスの7分目までビールを注ぐ」ということと、「残り3分目には、生ビールサーバーの泡立て機能で作った泡をのせる」ということです。
私自身、注いでいるうちに自然にできた泡のほうがいいのかと思っていたので、この注ぎ方は、とても新鮮に感じました。
ビールは、その中に封じ込めた炭酸が味わいの決め手。自然に泡が出るようにドドドォーッと注ぐと、その時点でビールの中の炭酸が抜けてしまって、パンチがなくなってしまいます。炭酸が少ないので、量はたくさん飲めるビールになりますが、コクやキレはなくなってしまうんですね。
そして生ビールサーバーで作る泡。注ぐときに自然にできる泡は、ビールと空気が混ざりあった泡で、置いておくと消えやすいのですが、生ビールサーバーで作る泡は、ビールそのものをホィップしてできた泡。つまり、その泡の成分はビール100%なのです。(セミナーの中では、「サントリーの生ビールサーバー独自の、きめ細かい泡が出る工夫がされている」という話もありましたので、泡を立てる部分は会社によって多少違うのかもしれません。)
泡もビール100%なので、飲むときも、グラスに大きく口をあてて、泡ごとグィ~ッと飲むのがうまいっ。泡もまたビールそのものですもんね。大きくひと口飲んで、トンとグラスを置くと、ビールの中に閉じ込めてあった炭酸がフワァーッと盛り上がってきて、また泡の蓋(ふた)を作ります。この泡の蓋ができることで、ビールの中からこれ以上炭酸が抜けることを防いでくれるのです。
なんでもないことのようなのに、こうやって注ぐと確かに美味しい。まさに目からうろこの生ビールのうまさです。
ビールの中の炭酸をできるだけ中に封じ込めて、最後までその味わいを絶やさない。そのための大きな役割が泡の蓋なんだそうです。
したがって缶ビールを飲むときにも、最初にドドッとグラスの底に打ち付けるようにビールを注いで泡を立て、その状態でグラスの7分目くらいまで立ち上がった泡が3分目くらいまでに落ちついてくるのを待ちます。泡が落ちついてきたら、グラスを傾け、泡の下にビールを流し込むように、静かについでいくのがいいんだそうです。
他社のサイト(「「うまい!樽生」の5原則」(アサヒ)、「樽生ビール講座」(サッポロ))を見てみても、ほぼ同じようなことが書かれていますが、キリンのサイトには「生ビールのおいしさの3つのヒミツ」というページはあるものの、ここでは生ビールの注ぎ方には言及していなくて、「ビールはもっともっとおいしくなる」というページで「3度つぎ」(ビデオによる説明)という方法が紹介されています。「3度つぎ」したビールは、ゆっくりと注ぐ過程でビールの中の苦味成分が、泡の中のタンパク質と結びつくため、泡は苦くなるけれど、ビール自体はまろやかな口当たりになるんだそうです。
セミナーの後は、本日の会場となった赤坂の「旬菜工房 一福」で、達人・池辺さんや参加されたみなさんと懇親会。自分達でも生ビール注ぎを体験しながらの盛り上がった会となりました。サントリーのみなさん、参加されたみなさん、そしておいしいお料理を出していただいた「一福」さん。楽しい時間をありがとうございました。
これからいよいよ夏本番。梅雨が明けたらビアガーデンの季節ですね!
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コメント
セミナーでご一緒させていただいたchunです。席が離れていたため余りお話できませんでしたが面白いセミナーでしたね。(TBさせていただきました)
こちらのブログの情報量の多さにびっくりしました。地元民にしか知られていないと思っていた三軒茶屋の立呑「凸(でこ)」までカバーされていてびっくりでした。
私のブログは発展途上もいいところなのですが、こちらを見習って少しずつ充実させていきたいと思っています。今後ともよろしくお願いします。
投稿: chun | 2008.06.28 20:43
セミナーで最初のみお席ご一緒させていただきましたワシ・ブロでございます。
おそらく、あのまま席にいたらみなさんの写真にデカデカで写ってしまいそうでしたので移動してしまい、ごゆっくりご挨拶できずに失礼いたしました。
セミナーで達人からお聞きしたことを、さらにわかりやすく解説されたコラムで、会に参加したはずなのに、こちらで「なるほどぉ!」とさらに理解を深めさせていただきました(笑
自分も40代になって、ようやくひとり居酒屋さんで飲む酒の美味さもわかりつつある、この頃。
「ひとり呑み」を読んで、さらに楽しみを深めたいと思っております。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。
投稿: ワシ・ブロ | 2008.07.02 17:14