〔コラム〕 やみつきの天玉そば、その理由(わけ)は!?
以前、「天玉そばの食べ方は?」という記事で、「生卵に絡めるようにしながら食べる」という方法をG.Aさんから教えてもらったことをご紹介しましたが、それ以来、すっかりこの食べ方にはまってしまい、平日はほぼ毎朝、生卵に絡めて食べる天玉そばを食べているような状態になってしまっています。
「なんでこんなにもはまってしまったのかなぁ」
と思っていたところ、その答えは図書館で偶然借りた「コクと旨味の秘密」(伏木亨)の中にありました。
コクというのは、簡単に言うと、栄養素そのものの味わいのことで、豊富な栄養素を含むものにはコクがある。全体としては非常に複雑な構成となるコクですが、そのコアになるのは糖と脂肪とダシのうま味の三要素なんだそうです。
これらは生命維持のための血糖維持、カロリー補給、タンパク質合成に直接つながる重要な栄養素なので、それらが最も美味しいと思うのは動物の本能です。それらを食べると、「いいものを食べたぞ」ということで、脳からドーパミンやβエンドルフィンなどのご褒美(ほうび)物質が出されるんだそうです。つまり、麻薬を摂取したときと同じような陶酔感や快感が生み出されるわけですね。
塩や水も、生命維持のために必須のものですが、取れば取るほどいいというものではなくて、ちょうどいい量というのがあって、それ以上は欲しいとは思わないようになっているんだそうです。だから脳からのご褒美物質も出されません。
一方でコクのほうは、十分に満ち足りた状態であっても、脳からご褒美物質が出され続けますから、いくらでも食べたくなってしまう。つまり「やみつき」状態になるんですね。これが満腹でも食べられる「別腹(べつばら)」という言葉にもつながっているんだそうです。
振り返って天玉そばを見てみると、まずしっかりとしたダシに、関東風に醤油と砂糖(=糖分)で甘辛く味つけた汁(つゆ)。かき揚げ天ぷらの油分。まさにコアのコクの三要素の揃い踏みです。
そして極めつきは生卵。卵はそれだけで雛(ひな)が育ったり、稚魚が育ったりすることのできる、濃縮された完全栄養食品。まさにコクのある食材の代表格なんだそうです。
さらにその生卵を、そのままツルリと食べるでもなく、すっかり汁に溶かして食べるでもなく、黄身をつぶして絡めながら食べるという、なんだか中途半端なこの食べ方。
この「不均一」というのもまた、コクの要素のひとつなんだそうで、成分をわざと均一にしないことで、口の中で、さまざまな味のバリエーションが楽しめることが、コクに拡がりを持たせてくれるんだそうです。
しかも、混ぜてしまわないことで、最初のうちは黄身そのものをたっぷりとまぶして食べることになるので、濃厚なコクがそのまま入ってきますもんね!
なるほどこれが毎朝、天玉そばを食べ続けてしまうことの科学的理由だったのか。本能に導かれるままに天玉そばに向かっていたというわけですね。
答えが分かって少しは安心したものの、この毎朝の天玉そばによって、確実に体重が増加傾向なのが困りもの。しかも生卵が混ざった汁(つゆ)をすするので、塩分も取り過ぎだ。どこかでこの「やみつき」状態を断ち切らなければ!
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コメント
> ・・非常に複雑な構成となるコクですが、そのコアになるのは糖と脂肪とダシのうま味の三要素・・
そうなんです。
だから、テレビのリポートやブログなどで「あっさりしているのにコクがある」というコメントを見聞きしますが、これは間違いですよね。
「コクがあるのにあっさりした口当たり」とか「コクがあるのにあっさり食べられる」が正しいんじゃないかと。
投稿: G.A | 2008.07.06 13:45
コクにも、ちゃんとした理由があるんですね。
これからは、ちょっと気にして、食べてみようと思います。
ちなみに、玉子は初めに、麺の下にもぐらしてから
食べはじめます。麺を1/3ほど食べたところで、玉子が
半熟状になるので、それをからめながら食べます。
投稿: KEI | 2008.07.06 23:12