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おかあちゃんまで独占 … おでん「米久(よねきゅう)」(阿佐ヶ谷)

おでんとビール


 荻窪の「繁寿司」をあとに、阿佐ヶ谷駅北口で古くから続く、おでんの「米久」にやってきました。

 入口の引き戸を開けて店内に入ると、いつものように「おかえりなさーい!」という、おかあちゃん(=女将)の声。いつもは近所の常連さんたちも一緒に「おかえりなさーい」と迎えてくれるのですが、今日は残念ながら先客なしで、おかあちゃんだけが迎えてくれました。金曜日ながら、すでに午後11時なので、もうみなさん帰っちゃったのかな。

「ここへどうぞ」

 と、おかあちゃんが指し示してくれたのは、おでん鍋のまん前。すべての具材が見える特等席です。

 うなぎの寝床のように、奥に向かって細長い店内には、その店を入口から奥まで貫くようにカウンターが伸びていて、入口側から見て三分の一くらいの場所に、おでん鍋が据え付けられています。私が座ったのは、その鍋の前。この場所より入口側が、カウンターの幅が広くなっていて、常連さんたちがカウンターの内側まで回り込んで、まるで長テーブルのように使っている、いわゆる常連席。そしてこの鍋よりも奥側が、純粋に直線カウンター席のようになっているのです。

「瓶ビールください」

「キリン? アサヒ? サッポロ?」

 そうだ。この店も全銘柄がそろってるんでしたねぇ。

「サッポロをお願いします」

 出されるのは通称「赤星(あかぼし)」、サッポロラガービールです。

 1杯目のビールをトクトクとグラスにつぎ、一気に飲み干します。アァーッ、染みわたる!

「何を取りましょうか」

 右手に菜箸、左手におでんの取り皿を持ったおかあちゃんがそうたずねてくれます。他の多くのおでん屋さんがそうであるように、この店も1品目は必ずおでんをもらうというのがルールなのです。

「ガンモドキと…、竹の子と…、あと玉子をお願いします」

 おかあちゃんが一つずつお皿に取ってくれるのとタイミングを合わせながら注文します。

 年中食べることができる、この店のおでんは1個が100円から350円という価格帯。年中ある具材のほかに、季節ごとの具材も加わります。今の時期だと、トウモロコシとか、サザエ串、ホタテ串、つぶ貝などの貝類(250~350円)や、青物巻(200~350円)などなどがメニューに入っています。

 ここのおでんは、具が大きいのが特徴。ガンモドキなんて、丸いお皿のほとんどの場所を占めるほどの大きさ。一緒に取ってもらった竹の子や玉子が、窮屈そうにお皿の隅っこにのっています。

 おでん以外のつまみは、ボードに手書きされています。たとえば今日のメニューは、塩辛、塩らっきょう、サラダ、シャケ頭焼きなどがそれぞれ400円。まぐろ赤身刺、つぶ貝刺、カツオたたき、ままかり、〆さば、さんま刺身・塩焼、アジ・イワシなめろう、などの魚類がそれぞれ600~700円。馬刺が900円で、最高値(さいたかね)の鯨ベーコンが1,100円と続きます。

 常連さんたちは、最初に軽くおでんをつまんで、これら手書きメニューへと移っていくのです。

 おでんに続く2品めは何にしようかなぁ、とメニューを眺めていたら、

「これも食べてみて。美味しいわよ」

 と出してくれたのは、ダシをとったカツオ節で作った、自家製おつまみなんだそうです。カツオ節に軽く醤油で味をつけて、松の実なんかも混ざっているので、なんだか錦松梅(きんしょうばい)のような感じです。

「やぁ、本当に美味しかったです。ごちそうさま」

 お勘定をお願いすると、今日は1,250円。

「おでんのダシを取るのに、カツオ節を大量に使うからねぇ。よかったら持って帰って」

 と、さっきのカツオ節のつまみを、お持ち帰り用のお土産として持たせてくれました。これを翌朝、ご飯にのせて食べたら、これまた美味しかったこと。これだけでご飯がいくらでもいけました。

店情報前回

《平成20(2008)年7月11日(金)の記録》

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