ミズ納豆に鮎子うるか … 酒亭「善知鳥(うとう)」(阿佐ヶ谷)
日本酒を美味しく飲むことをとことん追求したお店、「善知鳥」にやってきました。
土曜日、午後6時半過ぎに店に入ると、カウンター7席と、小上がりテーブル席2卓の店内には先客はなし。軽く「へ」の字に折れたカウンターの角のあたりに陣取って、まずは「和田来(わたらい)」(純米吟醸)を冷酒でいただきます。
今日のお通しはミズ納豆。ミズというのは、東北地方ではよく食べられる山菜なんだそうで、今日のミズは津軽産。初夏の頃にしか採れないという、季節限定のこの山菜を、店主自ら3ヶ月ほど漬けたものを、塩納豆と和えたのがミズ納豆です。
お店が休みの日には、数ヶ月後に出すための珍味類をコツコツと準備することが多いという店主。カウンター内の棚のところにずらりと張り出された短冊メニューにも、生カラスミ、タラバ内子、牡蠣塩辛、ホヤ塩辛、白魚塩辛、白作り、沖漬け、黒作り、莫久来(ばくらい)、クチコ、子の腸(わた)、塩ウニ、焼カゼ(青森の焼ウニ)、粒ウニ(甘塩漬け、アルコール未使用)、鮑酒盗、蛸の精(タコの卵の塩辛)などなどと、まさに呑ん兵衛好みのする珍味類がずらりと並びます。それもこれも、すべて日本酒をおいしくいただくためのもの。ここまで徹底しているのです。
ガラリと引戸が開いて入ってきた男性3人連れは、何度かこの店に来ているようで、カウンターの奥側に並んで座って、「今日は何をもらう?」と3人で楽しそうに日本酒のメニューをめくっています。
私のほうも、2本目のお酒として「喜久酔(きくよい)」を燗でもらって、肴には鮎子うるか(鮎の卵の塩辛)を注文すると、この鮎子うるかが、なんと1年間漬け込んだもの。ねっとりとしているのに、粒々感もあって、クセになる食感、クセになる味わいです。お酒も進むなぁ。
続いて入ってきた若い男性ふたり連れは、青森の出身で、「善知鳥」(←青森の県鳥)という店名に引かれて、はじめてやって来たんだそうです。
ここの店主も青森の出身で、先ほどご紹介した珍味類以外にも、お通しでも出されたミズ納豆や、南部駒の霜降桜刺、煎餅汁などの郷土料理も並んでいるのです。
「なにかおすすめを」と若いふたり連れからたのまれた店主は、
「それじゃ、クリーム帆立はいかがでしょう」と、私も大好物の一品をすすめます。
このところ、やって来るたびにクリーム帆立があったので、いつもある肴(さかな)かと思っていたのですが、本当はときどきしかないんだそうです。
このクリーム帆立は、この店のオリジナルで、甘みと旨みが強いという陸奥湾で採れた帆立を、玉子の黄身と和えて、3ヶ月ほど漬け込んだもの。青森の郷土料理である貝焼ミソと帆立玉子とじ、そして店主の好物でもある帆立グラタンをヒントに、工夫を重ねて作りあげたんだそうです。
ゆっくりと2時間ちょっと愉しんで、お勘定は3,000円でした。どうもごちそうさま。
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コメント
はじめまして。
メニューを読んだら朝から飲みたくなりました。
ところで「鳥◯」さんて移転したのでしょうか?
投稿: Fe2 | 2008.10.09 11:47
Fe2さま
「鳥◯」、残念ながら閉店したようです。
投稿: 浜田信郎 | 2008.11.02 11:47