横浜ならではの1軒め … 居酒屋「武蔵屋(むさしや)」(横浜市・桜木町)
都内に住んでいる友人が横浜にやってきました。平日のひと晩で、横浜らしい酒場を紹介しようということで、1軒目に向かったのは「武蔵屋」です。
「武蔵屋」は、横浜のみならず、東京にもちょっとないタイプの居酒屋。横浜方面にやって来る機会があったら、ぜひ訪問してもらいたい1軒です。
看板もなく、知っている人じゃないと、ここが酒場であることも気づかないような「武蔵屋」は、今日もまた大勢のお客さんでにぎわっています。
店内は入口を入って右手に6人分のカウンター席、左手に4人がけのテーブル席が2卓。そして奥の小上がりに座卓が4卓あって、ぎゅっと詰めれば20人ほどが座れます。
ちょうど入口すぐ左のテーブル席が空いていたので、我われ二人はそのテーブルに座り、まずは瓶ビール(キリン一番搾り大瓶)をもらって乾杯します。
この店は、別名「三杯屋」とも呼ばれていて、昔から日本酒(桜正宗・上撰)を3杯きりしか飲めないことで有名です。
「それくらいの量がちょうどいい。それだけ飲んだら、あとは真っすぐに家に帰りなさい」
というのが、昭和21(1946)年にこの店を開いた先代の頃からの、この店のルールなのです。中には「もう1杯だけ」とか、「今日だけ特別に!」なんてねだるお客さんも見かけますが、
「そんなことをしたら、他のお客さんたちに叱られてしまいます」
と、今の店主であるおばちゃんにピシャリと断られます。
女性の年齢を語るのも失礼な話ではありますが、おばちゃんは、たしか今年で86歳。カウンター内の厨房で料理を担当する、小さいおばちゃん(おばちゃんの妹さん)も84歳と、お互いに大正生まれの店主姉妹を、若いアルバイトの男女数名がサポートします。
そんな「三杯屋」ながら、瓶ビールは3杯のカウント外。お酒を3杯飲み終わるまでの間であれば、ビールをいただくことができるのでした。
「武蔵屋」は、年中いつ来ても変わらぬ料理が出されることでも有名で、座るとまず、おからと、玉ねぎの酢漬けが出され、しばらくするとタラ豆腐が出されます。タラ豆腐は、お客さんの顔を見てから作り始めるので、他の2品よりもちょっと遅れて出されるようなのです。そして2杯目のお酒をもらうと納豆が出され、3杯目のお酒でお新香が出されます。
こうやって、お客さんのところにどの料理が出ているかで、そのお客さんが今、何杯飲んでいるのかということが分かるようになっているんですね。
ビールをもらったときだけ、これら5品とは別に、塩豆や落花生などのビール用のつまみの小皿がひとつ出されます。これをポリポリとやりながらビールをいただくのです。
これらで足りない場合に注文することができるつまみとして、コハダの酢の物や、きぬかつぎ、煮貝などが用意されています。
天気が悪かったり、寒い日だったりした場合、ときどき「わざわざ来てくれてありがとうございます」と、サービスできぬかつぎを出してくれることもあるのですが、今日も、お客さんたちみんなに、きぬかつぎが振る舞われました。
今日のように、都内などから友人が来た場合に、この店に招待して喜ばれなかったことはありません。酒場好きを趣味とする人じゃない場合でも、「へぇ。こんな酒場があるんだねぇ」と、ほとんどの人が興味を示してくれるのです。
友人の飲む速度にペースを合わせながら、一緒に3杯ずつの桜正宗をいただいて、今日のお勘定はふたりで5,100円(大瓶ビール1本+3杯セット2人前)でした。
| 固定リンク | 0
« 行列必至の人気餃子店 … 中国家庭料理「山東餃子本舗(さんとうぎょうざほんぽ)」(江古田) | トップページ | 横浜ならではの2軒め … バー「クライスラー(CHRYSLER)」(横浜市・日ノ出町) »
コメント