目白最古のバーに闖入 … バー「なすび」(目白)
毎週楽しみに読んでいる、毎日新聞東京夕刊(火曜日)の「今夜も赤ちょうちん」に、「目白 超穴場、ハクサイでちびり」という記事が出たのは、今から2年ほど前、平成18(2006)年11月のこと。
『穴場のにおい。世俗とは別の時間が流れているのがわかる。』
『目白最古のバーらしい。でも、少しも気取ったところがない。居酒屋とルビをふるべきたたずまい。酒はいろいろ選べるけれど、サカナは亭主任せ。持ち込んでもいい。』
と紹介されているのが、JR山手線・目白駅から徒歩3分ほどの路地の奥にあるというバー「なすび」です。
一度行ってみなきゃなぁ、と思いながら、なかなか機会が作れず、今日になってしまいました。
このあたりかと目星をつけて、目白駅の北西側のエリアをうろうろと探してみるものの、これがなかなか見つからない。あっちへ行ったり、こっちへ行ったりと30分近く探し回って、なんと「私有地につき、関係者以外の通行及び駐輪、駐車を禁ず。 地主」と書かれた看板が立てられた路地の奥に、目指すバー「なすび」を発見したのでした。事前情報なしに、この店を見つけた鈴木琢磨(すずき・たくま)さん(毎日新聞編集委員)はすごいっ!
扉の奥からは、ざわざわとした酒場のにぎわいが響いてきます。よいしょ、っと扉を開けて「こんばんは」と店内へ。L字カウンター8席分ほどの店内は、年配の男性客でほぼ満席。みなさんの視線がいっせいに私に集まります。
「ひとりですけど…」と、にっこりと自己申告すると、
「じゃ、その入口に近い席にしますか。○○さん、ちょっと寄って場所を作ってあげて」
とカウンターの中にいる店主がニコニコと仕切ってくれます。コートを脱いで、その席に座ると、
「え~と。どちらさんでしたっけ?」と店主。
「はじめて伺ったんです。2年ほど前の毎日新聞の記事を見て…」
「あぁ、なるほど! そうでしたか。それはそれはようこそいらっしゃいました。実は今日は昔の職場の仲間たちと忘年会をしているところなんですが、よろしかったら飲んでいってください」
そう言いながら、焼酎のロックを作ってくれて、みんなが持ち寄ったと思われる料理や、おでんなどを出してくれます。まわりのお客さんたちも、急な闖入(ちんにゅう)者を笑顔で仲間に入れてくれます。
今日集まっているのは、店主の伊藤千秋(いとう・ちあき)さんも含めて、みなさん、アイワ (AIWA)の意匠部で一緒に仕事をされていた方々なんだそうで、楽しく飲みながら、当時の苦労話などを聞かせてくれます。
「天皇陛下用のマイクが大変だったねぇ。1本の普通のマイクに見えるマイクの中に、2つのマイクが、それぞれ2系統ずつのコードでつながっていて、都合4本のコードになっていたんですよ。つまづいたりしてコードが(1~2本)切れても大丈夫なようにってね」
みなさん、何年か前に会社はリタイア(定年退職)されたそうなのですが、そうやって語ってくれる様子はとても生き生きとされていて楽しそうです。大好きなお仕事だったんですねぇ。
そんな楽しい雰囲気に、すっかりくつろいで、初回なのに2時間も滞在してしまいました。
「今日は1,500円いただきましょうか。新聞を見ていらっしゃるお客さんは1回だけで、リピーターになってもらえないんですよねぇ。焼酎が1,500円でボトルキープできるので、ぜひまたいらしてください」
「はい。また寄らせてもらいます。今日はありがとうございました。みなさん、お邪魔いたしました」
と店を後にします。「あいつもやっぱり1回きりだったか」なんて言われないように、ぜひ近いうちに再訪しなきゃ、と思いながら、この記事を書いている今、まだ再訪できずにいるところです(汗)。
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