奥様公認店で大吟醸燗 … 七福神「岩手屋(いわてや)」(湯島)
湯島の「岩手屋」にやってきました。すぐ近くに「酔仙」を掲げる「岩手屋」と、「七福神」を掲げる「岩手屋」の2軒があり、今日はなんとなく名前がおめでたい「七福神」のほうに入ってみます。
どちらの「岩手屋」の看板にも『奥様公認酒蔵』と書かれているところがおもしろいですねぇ。本当に奥様が公認しているわけではないんでしょうが、こうやって看板に書かれると、なんだか安心したりして。少なくとも、きれいなおねえさんなんかが居て、たっぷりとお金がかかる店ではなさそうなことが分かります。
暖簾(のれん)をくぐって入った店内は、正面から左手にかけてL字型、8席程度の白木のカウンターがあり、右手には6人掛けが2卓、3人掛け(←6人掛けを縦に半分に切ったような造り)が1卓のテーブル席。奥には座敷席もある様子です。しめ縄を巻いた杉玉がずらりとぶら下がっている天井もすごいなぁ。
木曜日、午後8時半の店内は、L字カウンターに2組・5人ほどの先客が居るのみ。テーブル席や座敷席は空いています。
私もそのカウンター席の一角に座り、まずは燗酒をお願いします。
表の看板にあるとおり、この店で扱っている日本酒は、盛岡(岩手県)は菊の司酒造の「七福神」。本醸造(640円)から始まって、特別純米酒(730円)、大吟醸酒(820円)、生酒(1,030円)、純米吟醸酒(1,200円)と各種がそろっています。
特に銘柄を指定せずに「燗酒を」とお願いしたところ、出されたのは大吟醸酒(てづくり七福神、820円)でした。
「以前からずっと、この大吟醸酒を燗でお出ししてるんですよ。温めて飲んでも美味しいお酒なんです」
カウンターの中の店主が、そう教えてくれます。たしかにこの酒はうまい。なんの引っかかりもなく、すいすいと喉を通ります。
その燗酒と一緒に出されたお通し(サービス)は、大豆の煮豆。「鍵屋」のお通しを彷彿させますねぇ。
壁に張り出された短冊メニューは、その数およそ30品。ムカゴや煮こごり、丸干しなど480円の品が多くて、一番高いのがムロアジくさやの740円。「岩手屋」という店名から、みちのく料理っぽいメニューがずらりと並んでいるのかと思っていたのですが、意外とそうでもないようです。
そんな中から、すぐに出てきそうな煮込み(680円)と、ちょっと時間がかかりそうな北寄貝(550円)を注文すると、予想に反して両者がほぼ同時に出されます。料理はカウンター奥の厨房で作られて、それが店主経由で出される仕組み。ここからは見えませんが、厨房に居るのは店主の奥様なんでしょうか。
「ところで、近くにある「岩手屋」とは、どういう関係なんですか?」と店主に聞いてみると、
「向こうが本店なんですよ」と店主が話してくれたところによると、岩手出身の、店主のお父さんが「岩手屋」を開いたのが昭和24(1949)年のこと。店主のお兄さんがその店を継いで、ご自身は昭和47(1972)年に、ここに支店を開いたのだそうです。本店は今年で創業60年、こちらの支店も創業37年になるんですね。
「カウンターに使っている檜(ひのき)の一枚板を仕入れるのに苦労しました」と店主。
「本店と支店で、扱ってるお酒も違うんですね」
「そうなんですよ。店が近過ぎるので、同じお酒を扱わせてくれないんですよ。どちらも岩手の地酒なんですけどね」
なるほど。そういう理由で本店は「酔仙」、支店は「七福神」なんですね。
3本目となる大吟醸酒の燗酒(820円)をお願いし、つまみには赤ホヤ塩辛(680円)をもらいます。
店は午後9時半にはラストオーダーとなって、午後10時閉店。土曜日は午後9時閉店なんだそうです。この閉店時刻の早さも「奥様公認酒蔵」たる所以(ゆえん)でしょうか。
その閉店時刻まで、1時間半ほど楽しんで、お勘定は4,370円でした。どうもごちそうさま。
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