趣味が高じて本業に!? … もつ煮込み「藤や(ふじや)」(北千住)
「酔わせて下町」のFさんとまわる3軒目は、北千住に移動して牛もつ煮込みの「藤や」です。
ここは串に刺した煮込みが食べられるお店。もともとは煮込みもこうやって串に刺したスタイルからはじまったらしいのですが、今や串に刺していない煮込みのほうが主流ですよね。
串に刺した煮込みが残っているのは、私が知っている範囲では、ここ「藤や」のほかに、門前仲町の「大坂屋」、町屋の「小林」、勝どきの「千福」、三ノ輪の「弁慶」に、銀座の「ささもと」、北千住の「ささや」くらいでしょうか。
「さっきお客さんがドーンと来たから、今日はもうほとんど残ってないわよぉ」とママさん(店主の奥さん)。たしかに。カウンターの中に据えられた煮込み鍋には、もうほとんど煮込みは残っていません。
この店の煮込みは1本100円で、スジ、フワ、ハチノス、ハツモトに、コンニャクと玉子。隠し味的に入れられているニンニクも人気があるのだそうです。
「この鍋は、見たら分かるでしょう。天ぷら鍋なのよ」
な~るほど。言われてよく見てみれば、厚みのある銅製の天ぷら鍋です。このひと鍋に250本ほど入るんだとか。
「鉄の鍋だと、玉子が真っ黒になっちゃうからね。胴じゃないとだめなのよ。味付けは八丁味噌だけ。2種類(味を出す八丁味噌と香りを出す八丁味噌)ブレンドして、他に入れてるのはニンニクとショウガくらいかな。一番たくさん食べたの人は、100本食べたわよ。次点は78本かな。101本以上食べたら新記録よ。どう?」
さすがに100本は食べられないよなぁ。飲み物は、この店の名物という焼酎(キンミヤ)のほうじ茶割りをいただきます。
店内は手前のL字カウンター8席分程度と、奥の茶の間のような座敷にも8人ほど座れます。今も座敷席まで大勢のお客さんでにぎわっていますが、我われはそのちょっと前に店に入ることができたために、カウンターの鍋前に座ることができました。
「奥の座敷で、たとえば3~4人で食べるときには、別のお鍋に煮込みを入れて、お豆腐やお野菜なんかと一緒に入れて出すのよ。一番最後はおうどんも入れて美味しいわよ」
そうかぁ。そう聞くと、奥の座敷もまたいいですねぇ。
この店の創業は昭和51(1976)年。創業来33年を過ぎ、34年目の営業に入っているそうですが、きっかけは実はおじいちゃん(店主のお父さん)の趣味なんだそうです。飾り職人だったおじいちゃんは、煮込みを作るのが趣味で、ご近所にも配ったりしていたんだそうです。
その頃、この家は、今の屋号と同じ「藤や」という名前の自転車屋さんだったんだそうですが、おばあちゃん(おじいちゃんの奥さん)が、これまた道楽で自転車屋さんの一角で、おじいちゃんの煮込みを売ったところ、これがもう行列ができるほどの大人気。1日に400本から500本くらい出るようになった。そこで自転車屋さんもやめて、家族みんなで煮込み屋をやるようになったんだそうです。
その当時は煮込みのほかは、自家製のお新香と、トマトくらいしかなかったんだそうですが、お客さんたちの意見を聞いたりするうちに、黒板メニューも登場してきたんだそうです。
たとえば今日の黒板メニューには、自家製塩辛(350円)、山うど(400円)、にこごり(400円)、自家製あんきも(500円)、正才ふぐ一夜干(450円)、カキ酢(500円)、岩のり(300円)、湯豆腐(450円)、キャベ玉(400円)など、25品ほどが並びます。そんな中から、若い人たちにも大人気という厚揚げステーキ(450円)をいただくと、ニンニク風味の焼きダレがうまいこと! 人気があるのがわかります。
店が忙しくなってきて、店主も顔を出してくれますが、この65歳だという店主がまた、絶対にそのお年には見えないスリム&ダンディーで、ジーンズ姿も若々しくてびっくりです。
ゆっくりと2時間ほど過ごして、お勘定は4人で8,000円(ひとりあたり2,000円)でした。どうもごちそうさま。
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