〔コラム〕チャップ・豚・チュウ … 田舎洋食「いせ屋(いせや)」(呉)
呉(くれ、広島県)の中通りにある田舎洋食「いせ屋」にやってきました。
創業者の故・加納勇太郎さんは、日本海軍の装甲巡洋艦「浅間」のコック長を務めた後、大正10(1921)年に、ここで洋食屋をはじめたのだそうです。
広島方面の食情報に詳しい“快食.com”にある「いせ屋」の記事によると、『店内に飾られた額によると、明治45年(1912年!)にビアホールとして開業したのが最初とのことなので、広島県内に現存する洋食店の中では最古、飲食店としても有数の歴史を持つ店だ。』とのこと。
もともとの名物は“わらじカツ”の愛称を持つビーフカツレツ(1,100円)。直径30センチの皿が隠れるほど大きくて、客が「まるで、わらじのような…」と驚いたことから“わらじカツ”と呼ばれるようになったのだそうです。(昭和49(1974)年4月に毎日新聞呉支局から出版された「呉うまいもん」より。)
私が、この店に足しげく通っていたころ(今から20~25年前。昭和58~63年ごろ)の名物はカツ丼(1,100円)でした。これは平皿に盛ったご飯の上に、ひと口大にカットしたビーフカツレツをのせ、たっぷりのドミグラスソースがかけられます。最後にグリーンピースが何粒かトッピングされて、見た目はハヤシライスのよう。これがこの店のカツ丼なのです。
店のメニューにはハヤシライス(700円)もあって、これは食べたことも見たこともありませんが、おそらくカツ丼のビーフカツレツを抜いたものなんだろうと思います。
そして最近は、“肉じゃがの元祖は呉!?”ということで、海軍さんの肉じゃが(400円)や、店の表にも“海軍カレー有ります”と張り出されている海軍さんのカレー(700円)なども名物になっているようです。
がしかし! 私がこの店で注文するのは、以前通っていたときの大好物であるポークチャップ(800円)です。これに豚汁(300円)と中ご飯(180円)をもらって定食にするのです。
この注文をすると、店の奥の厨房に向かって「チャップ・豚・チュウ(中ご飯のこと)です~」と注文が通されます。この符丁も久しぶりに聞きましたねぇ。ちっとも変わってないのが嬉しいです。
なにしろドミグラスソースがおいしいので、それをたっぷりとまぶしたポークチャップもまたおいしいんですよねぇ。豚汁もコクのある濃厚な味わいで、注文する人が多い一品です。メニューには書かれていませんが、普通のみそ汁椀で出される豚汁(小)という、小サイズもあるようです。
田舎洋食という看板ながら、この店のメニューには、おひたし、大根おろし、冷やっこ、湯豆腐、きゅうりもみ、味付け海苔といった和風のサイドメニュー(各200円)もあり、酒類も日本酒とビールのみ。
夜やってくると、これらの肴をつまみながら、菊正宗(600円)の燗酒をチビチビやっているお客さんも多いのです。ただし、この店の営業時間は夜8時半までなので、早い時間に行かないとダメですけどね。
| 固定リンク | 0
コメント