モツだけのスペシャル … 中華料理「楽園(らくえん)」(横浜市・石川町)
「モツの美味しい店となると、この店をはずすわけにはいかんでしょう」
そう言って、濱の酒場通・iiさんが連れてきてくれたのは、横浜中華街にある広東料理の店、「楽園」です。
「いつもは、モツ系は1~2品もらって、あとは中華風の刺身(要予約)や、名物の巻揚(まきあげ)、ウナギ、青物の炒めなどを注文することが多いんだけど、今日はモツだけのスペシャルで行きましょう。4人だから、4品前後なら食べられるでしょう」とiiさん。
この店は、1品1,500円前後という値段ながら、だいたいひとりあたり1品見当で注文すれば、ちょうどいい量になるので、結果的にはとても安くつくのです。中華のお店はどこもそうですが、なるべく大勢でやってきて、あれやこれやとたくさん注文するのが楽しいですよねぇ。
「それじゃセンマイとねぇ、あとハチノスと…」
と、いつものようにメニューも見ないで、するすると注文してくれるiiさん。
「この店のいいところは、こうやって食べたいものをあれこれと注文しておいても、出す順番や、調理法(味付け)などに、うまく変化をつけてくれるところ。あまり似たようなものが続いた感じにならず、どれも美味しく食べられるんですよ」
ビール(520円)と一緒に、お通し代わりに出してくれた、自家製のザーサイをつまみながら待つことしばし。
まず出てきたのはセンマイとネギ・生姜の和え物(1,500円)。真っ白いセンマイが、ここ「楽園」のトレードマーク的な存在でもあります。
「漂白してるわけじゃないんですよ。新鮮なセンマイ(牛の第四胃袋)を、タワシでごしごし洗うと、表面の黒い皮が剥けて、こうやって白くなるんです。とにかく鮮度が良くないと、こうはならないんですよ。鮮度が悪いと、どう磨いても灰色にしかならないんです」
そう教えてくれるのは、この店の女将・曽賜珍(そう・しちん)さん。店は先代が昭和23(1948)年に創業し、今年で創業61年になったのだそうです。
「iiさんには、昔からずっといらしていただいてるので、私がご説明するよりも、むしろiiさんのほうがよくご存知だと思いますよ」と微笑んでくれます。
センマイとネギ・生姜の和え物は、白いセンマイと、白髪ネギ、その白髪ネギと同じくらい細く切った生姜、そして香菜(パクチー)をさっと和えたもので、ほんわりと温かい状態のものに、別皿で出してくれる唐辛子味噌をつけて食べるのがおすすめです。この唐辛子味噌の辛さで、味わいがビシッと締まるのです。
「はいっ。牛モツでございます」と牛モツ煮込みの登場。内臓のいろんな部分を、醤油味で煮込んでいる。八角(ハッカク)の風味がよく効いていて、もつ焼き屋の煮込みとは、これまたまるで違う感じ。「みんなは“イカ”って言うけど、ほんとはイカじゃないのよ」と女将さんが言う、白くて弾力の強いモツは、ハツモト(大動脈)なのかな。
この煮込み、牛モツ以外の具はレタスのみなのですが、思いっきり煮込まれた牛モツに対して、このレタスがシャッキリ感を残した絶妙な火のとおり加減で、さすが中華です。
東京のモツ煮込みは、腸が主役になることが多いのですが、ここの煮込みには腸は使われていないようです。メニューを見ても、腸を使った料理は見あたりません。う~む。これも不思議ですねぇ。
(後編に続く)
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