
「元気玉(げんきだま)は、残モツをミンチにして、細かく切ったタケノコ、玉ネギ、シイタケを混ぜて、でっかいシュウマイみたいにして蒸したものなんですよ。焼いたり、煮たりする以外のモツ料理を作ってみたくて」
そう話してくれるのは、やきとん「元気」の若き店主・渡辺常男(わたなべ・つねお)さん(36歳)。浅草橋の人気店、「西口やきとん」の店主・渡辺久剛(わたなべ・ひさよし)さんの息子さんです。
熱々で出された元気玉(200円)は、ポンズ醤油でさっぱりといただきます。大きなシュウマイの中身は、小さなモツがたっぷり。う~ん。たしかに、これは他では食べたことがない味、食べたことがない食感ですねえ。
1軒目の「西口やきとん」に続いて、ここ、やきとん「元気」も、常連のそばさんに案内してもらっています。
「モツへのこだわりをより強くして、野菜系などは減らしました。鹿児島産の黒豚のモツを手に入れたくて、鹿児島のいろんな養豚場を回りましたが、肉は分けてもらえるけど、モツはもらえないんですよ。40軒くらい回って、やっと少しだけ分けてくれるところが見つかりました」
と店主。そんな少量仕入れだから、鹿児島産黒豚は、定番のメニューリストには載らず、手書きの黒板に書かれていて、売り切れると消されるのだそうです。
黒豚の肉はグラム(100g)800円ほどもするんだそうで、それを1串に45グラムくらい使って200円で出してるから、バラやロースはとってもお得な品なんだそうです。
そうやって少量ずつ仕入れられる黒豚串は、仕入れによって黒板に並ぶ品も変わります。今日はレバー、ハツ、バラの3種類(各1本200円)で、黒胡椒たっぷりに、ワサビも添えて出されます。
今日の黒板にはテール(200円)も書き出されています。
「これも黒豚の尻尾なんですよ。こっち(東京)では、豚の尻尾は切り落としてしまうので、めったに食べることはできません」
と店主。さっそくいただいてみると、スープたっぷりの尻尾の煮込み。一口大に切った、コラーゲンたっぷりの尻尾もさることながら、スープの味がいいですねぇ。尻尾そのものは、小皿で出される酢味噌をつけていただきます。
さっきの元気玉の200円にもびっくりしましたが、このテールも、これで200円は価格破壊ですねえ!
「西口やきとん」では、夏場には出ないレバ刺し(1本100円)も、こちら「元気」では黒板メニューにラインナップ。なぜ? と聞いてみると、
「氷感庫(ひょうかんこ)という、氷点下でも凍らずに保存できる冷蔵庫を使ってるから、夏でもレバ刺しが出せるんですよ」
とのこと。保存庫内に高電圧を加えて、微量の電流を流すことで分子を微振動させることによって、氷点下なのに凍らない状態を作り上げてるんだそうです。まさに文明の利器です。
続いていただいたナンナン(150円)は、上ナンコツ。靴べらのような形になっている部位で、豚2頭分から、やっと1串のナンナンが取れるんだそうです。
テーブル上には、練りからしや、生ニンニク、生ショウガ、生ワサビなどのチューブが置かれ、好きに味付けすることができるようになっているのも最近の店ならでは。
「カウンターに行くと、もっといろんな調味料が並んでますよ」
と、そばさん。常連さんたちは、いろんな工夫をされますもんねえ。
定番のメニュー(印刷されて各テーブルに置かれているもの)からは、スジ、コリコリ、シロコロ(各1本100円)をいただきます。
スジはタン(舌)の筋の部分だそうですが、あまり筋すじした感じはありません。コリコリは、カシラとタンの間のところにある弁のようなものなんだそうで、これも2頭から1串ほどしか取れないそうです。シロコロは、くるりと筒切りのシロ(腸)。ここの定番メニューには普通のシロはなくて、シロと言えばシロコロのことを指します。
「今年の4月にオープンしたばかりで、店内も明るくて活気がある。もつ焼き屋で、こんなに明るい店は珍しいんですよ」
と、話してくれるそばさんに、
「うちに来たら、もつの鮮度と、黒豚。もつ焼き屋ならではの風情を楽しんでください」
と店主。もつに力を入れている様子が、すごく伝わってきます。
「西口やきとん」も、ここ「元気」も、美味くて安いは当たり前なところがすばらしいですねえ。
飲み物もたっぷりといただいて、お勘定は4人で7,400円(ひとりあたり1,850円)でした。どうもごちそうさま。

やきとん「元気」 / テール / レバ刺し

黒豚のバラ、ハツ、レバ / 緑茶ハイ、ホイス、ボール / テーブル上の薬味チューブ

ナンナン / スジ、コリコリ、シロコロ / 漬けきゅうり
・店情報 (前回)
《平成21(2009)年7月11日(土)の記録》
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