二十三区内南端の名店(3/4) … もつやき「三平(さんぺい)」(雑色)
最初にたのんだ品物が全部出たところで、「親父さん、レバちょい焼き2本、タレで」と、iiさんが予定どおりの品を追加注文してくれます。
iiさんが「親父さん」と呼ぶ、焼き台担当の初老の男性が、この店の二代目店主・戸嶋福三郎さん。
親父さんの父親である創業者(初代)がこの店を始めたのは、昭和27(1952)年のこと。当時、初代は60歳、親父さん(現店主)は小学校5年生だったそうです。その初代が15年間やったあと、親父さんがバトンを受け、これまでの43年間、店を守ってきました。あと数年で、創業60年を迎えます。
親父さんは、ひたすらもつを焼きながら、焼きあがったもつは、自分で注文者のところまで運んできてくれます。店の中(+外のテーブル)だけの移動とはいえ、毎日、そうとうな運動量になるんじゃないでしょうか。
親父さん以外に、奥様をはじめとする3名が、それぞれ厨房やホールを担当していて、全体としては4人での切り盛りです。
「親父さんは、いっけん怖そうに見えるんですが、実はすごくやさしいんですよ。他のお店の人たちも、みんなやさしい。それがこの店の居心地の良さを生んでるんですね」
iiさんが、この店の魅力をそう語ってくれます。人気もつ焼き店というと、がんがん忙しい雰囲気の中で、怒号のように注文が飛び交う、という姿を思い浮かべてしまいますが、ここ「三平」はそんなことは一切なく、大勢のお客さんで忙しそうではあるものの、ゆるやかにくつろげる雰囲気がかもし出されています。
「どうもありがとう。また来てねー」
という親父さんの声が、焼き台から聞こえてきます。
「はーい。また来ます。どうもごちそうさま」
と、開店と同時この店に入ったらしい家族連れのお母さんが、ニコニコ笑顔で返事しながら席を立ちます。
「どうもありがとうございました」
と他の店員さんたちもニコニコと家族連れを見送ります。
みんながニコニコとしているこの空気が、もつやき「三平」の真骨頂なんですね。
「私は土曜日の午後3時か4時ごろ。ゆっくりとした時間帯に来ることが多いんですよ。もつ焼きのメニューは3分の1くらいになってしまってるんですが、何かしら食べるものはあります。その時間になると、こんなに満席状態ではなくなるので、今よりもっとくつろげるんです」とiiさん。
そこへ親父さんが、焼きあがったレバちょい焼きタレを持ってきてくれます。おぉーっ。これはまたツヤツヤと美しくて、見るからにおいしそう。
「これは、ぜひ練りガラシを付けて食べてみてください」とiiさん。
この店の練りガラシは、金属製のプリン型のような容器にたっぷり入れられた和ガラシで、木ベラが添えられています。これがピリッとよく効いて、レバはもちろん、他のいろんな料理の味も引き立てる、人気の調味料なのです。
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コメント
こんにちは、大変良いお店ですね!近所に住んでる人が羨ましいです、レバちょい焼きタレの画像を見ただけで生唾出てビール飲みたくなりました。
投稿: ひろゆき | 2009.12.10 16:25