シルクの泡を持つ逸品 … ビアホール「オオムラ」(呉)
会社が休みの土曜、日曜も、必要な家具をそろえたり、部屋の中を使いやすいように調整したりと、なにかとバタバタとした日々が続いていたのですが、そろそろ呉での暮らしも落ち着いてきて、今日は久しぶりにの~んびりとした日曜日を過ごしています。
午後6時半を回ったところで、夕食の買い出しも兼ねて、日曜日にも開いている酒場の探訪に出かけます。
わが家の近くにある“れんが通り”商店街は、火曜定休の店が多いようで、日曜日は開いている店が多いのです。酒場のほうはというと、やっぱり日曜日が休みの店もあるようですが、けっこう多くの店が日曜日にも開いているようです。
お客さんも、そこそこ入っている様子。呉は自動車通勤の人も多いので、むしろ土曜、日曜の休みの日に、家族と一緒に飲みに出たりすることが多いのかもしれませんね。
おっ。ここが「オオムラ」ですか。日曜日にも開いてるんだなあ。
先日、「仕事帰りにひとりでふらりと立ち寄れるような大衆酒場が見つからない」ということを書いたところ、遊星ギアのカズさんから、おすすめの店をコメントしていただいた中の1軒が、ここ「オオムラ」です。
『サッポロビールと乾きモノだけ。普通の樽ビールをシルクの泡を持つ逸品に変る魔法の店。ある意味「あわもり」級。』
というのが、その推薦のお言葉。ちょうど今、男性客がひとり出てきたので、少なくとも1席は空いているはず。ちょっと入ってみましょうか。
店の扉は開け放たれており、外と中を仕切るのは、縦に長い暖簾(のれん)だけ。その暖簾をヒョイと掻き分けて店内へと入ります。
おぉ~っ。渋い。いかにも老舗といった古~い店内(ほめ言葉です!)に心が躍ります。
細長い店内を縦にズ~ンと貫くカウンターは、一番手前と一番奥でやわらかく内側に折れ曲がり、全体として横長いUの字カウンターになっています。手前と奥の短辺に2~3人ずつ、その中央部の長辺に7~8人で、店全体では12席ほどのキャパシティ。
日曜、午後7時前のこの時間、一番手前の短辺にカップルが一組いて、4席空いて男性ひとり客、1席空いてまた男性ひとり客、1席空いて女性の3人連れと、先客は7人。手前側に空いた4席の中ほどに座ろうとしたら、一番手前のカップルが「これから連れが3人来るので、3席分、空けておいて欲しいんですけど」とのこと。ちょうど真ん中で飲んでいた男性ひとり客のすぐ横に座ることにしました。
店を切り盛りしているのは、ちょっと小太り(失礼!)で、ソバージュ風の長い髪のおじさん一人。この人が店主なんでしょうね。
なにしろ生ビール(500円)しかないお店で、店内にはおつまみ(といっても乾き物)の品書きくらいしかないので、きっと注文しないでも生ビールが出てくるに違いない。店主がジョッキを持ってきたので、きっとあれが私のなんだろうな。
それにしても、生ビールサーバーがすごいっ! サッポロの赤星マークがついた大きな冷蔵庫は、おそらく上の段に氷を入れて、その氷の温度で冷やすタイプのもの。その大きな冷蔵庫の横に、蛇口のようなコックが付いていて、生ビールはそのコックをひねると出てくるのです。
ダァーッと注いで、泡がいっぱいになりそうなところでいったん止めて、泡をシャッ、シャッととなりの大ジョッキに移します。そしてまたコックを開けて注ぎ、最後は大ジョッキの中の泡をちょいちょいと戻したりしながら仕上げ、目の前にトンと出してくれます。
ど~れどれ。
細かい泡の中に鼻を突っ込むようにしながら、泡の下のビールをググゥ~~~ッと喉の奥に送り込みます。
冷た過ぎもせず、ぬるくもない、ちょうどいい温度感がスゥ~ッと喉を通り、やわらかなビールの甘みが喉の奥ではじけます。なあるほど。炭酸の具合がちょうどいいんだ。これは飲みやすいビールですねえ!
そこへ入口カップルの連れの3人組も到着。なんと3人とも女性です。現在の店内は女性客が7人に対して、男性客は3人。しかも、このカップルと連れの3人は、どうやら広島からここまでやって来たようです。生ビールしかない店なのに、すごい人気だなあ。
つまみは駄菓子屋さんにあるような、大きなプラスチック容器に入った、のし天、するめ、かわはぎなどが並んでいて、冷蔵庫の中に、チーズ、ソーセージなどもあるようです。となりのおじさんの話では、1品が200円とのこと。わたしもさっそくイカゲソ(200円)をもらって、ビールもおかわりです。
ビールは、中ジョッキと言うにはちょっと小ぶりの、小ジョッキくらいのサイズで出されます。
生ビールサーバーのコックは、完全に閉めても締りが悪く、受け皿代わりに蛇口の下に置いた大ジョッキの中にポタリポタリとビールのしずくがこぼれています。この古いサーバーで作る生ビールがおいしいのかなあ。新橋の「ビアライゼ98」もそうですよねえ。
2杯の生ビールを飲み干したところでお勘定をお願いすると、1,200円。となりのおじさんが言ってたとおりの金額ですね。
「ごちそうさま」と店を出ようとすると、
「おにいさん、ちょっと待って!」と呼び止める店主。
あらら。何か悪いことしましたかしら。。。 ちょっと不安になりながら振り向くと、
「おにいさん、この店、はじめてみたいやから、これを持って行って」
と手渡してくれたのは、昔懐かしい、ちょっと直径の大きい50円玉。
「ラッキーコインやからね!」
そう言いながら、にっこりと微笑む店主。
「ありがとうございます。また来ますね」
ちょうどいいホロ酔い加減で、ラッキーコインを握り締めながら、単身赴任社宅へと戻ったのでした。
・店情報
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コメント
私の言を取上げていただき、恐縮です。
そして、呉のとり屋は「酒場文化」。その見識の高さ、畏れ入ります。
TV「秘密のケンミンSHOW」で、鮮魚水槽がある焼鳥屋と、紹介されたのですが、外見だけじゃない。ナカミなんだ!(味噌煮、スープ豆腐、ささ身天の鳥料理。家族経営や店の造りなど)そこらに気づく浜田さんに脱帽です。
呉のとり屋、堺川沿い図書館対岸「本家・鳥好」。
串に刺した味噌煮、一本釣りのアジなどの看板料理。
横須賀「鳥好」のルーツでもあります(横須賀「鳥好」は、この「居酒屋礼賛」で知りました)。
更に言えば、呉におられる間に本家帰りの島巡りをオススメ。その典型な店があるのは、呉駅からバスで南下1時間以上、倉橋島「室尾」で下車。
鮮魚店の勝手口が、夕方4時前から居酒屋入口になります。「刺身屋・北吉」、定番料理は、刺身・荒炊き・湯ぶき。
酒は、同じ小集落の路地奥にある、江戸時代創業、林酒造「三谷春」。路地で迷うのも楽しい。島時間に浸る小旅行(島は、酒肴の宝庫だ!)、是非お越しください。
投稿: 遊星ギアのカズ | 2010.06.01 22:20