新幹線待ちのサク飲み … 大衆食堂「源蔵本店(げんぞうほんてん)」(広島)
呉駅で帰りの新幹線の座席指定。「N700系の窓際(100Vの電源がある席)がいい」と窓口で申し出ると、広島駅で1時間弱の待ち時間があってもいいのであれば取れるという。その瞬間、ピン! と頭をよぎったのが「1時間あれば源蔵で飲める」ということ。すぐに「その席でお願いします」と返事をして、心はもう小イワシの刺身に飛んでいる。
今も単線の呉線で広島へ。駅に着くなり小走りで「源蔵本店」である。なにしろ時間がないので急がなきゃ。
午後2時半の「源蔵本店」は、4組ほどの客が10個くらいあるテーブルのうち4つを使っている状態。そのうち2組はひとり客なので、本当にゆったりとした平日(木曜日)の昼下がりである。
私も開いているテーブル(6人がけ)のひとつに一人で座り、まずは上酒(350円)を燗で注文すると、「お猪口で飲む?」とおねえさん。うんとうなずいてから、まわりを見てみると、コップで飲むか、徳利とお猪口で飲むかが選べるようである。
「一級酒、1本!」
と注文が通される。昔、一級酒、二級酒と呼んでた名残が、今も注文に残っているんだろうな。今はメニュー上は上酒(350円)、並酒(320円)という表記である。
となりの空いている席にカバンを置き、コートを脱いでその上に置いたら、立ち上がり、店の一番奥の刺身用冷蔵庫へと向かう。ここに今日の刺身がずらりと並んでいるのである。おぉ、小イワシの刺身(530円)もあるある。他にはシャコやサヨリ、ツブ貝などなど。小イワシの入った盛り合わせもあるが、小イワシ以外がマグロやサーモンなどと、あまり瀬戸内らしくない組み合わせなので、当初の予定どおり、ストレートに小イワシの刺身をもらうことにする。そうやって見ているところへ、ちょうど奥の厨房から燗酒が出てきたので、その場で小イワシの刺身を注文すると、徳利とお猪口が載ったお盆に、小イワシの刺身も一緒にのせて席まで運んでくれた。
この店には、特にお通しはない。ほとんどの客は、まず奥の冷蔵庫に並んだ刺身を注文するので、お通しがなくても、すぐにつまみにありつけるのである。
お猪口に最初の1杯を注いでおいて、まずはたっぷりと盛られた小イワシを3切れ(1切れが半身分)ほど取って生姜醤油につけて口中へ。うーむ。うまいっ。小さいのにしっかりとした濃厚な味わいなのが小イワシである。そこへお猪口の燗酒をツッと流し込む。
「このお酒、おいしいねえ!」
テーブルのすぐ横にいた店のおねえさんに、思わず声をかける。
「一級酒は『雨後の月』なんよ。二級酒は西条の『福美人』。こっちもおいしいんよ」
と教えてくれる。『雨後の月』は呉・仁方の名酒である。これが普通のお酒として飲めるのがすばらしい。すぐに1本目の『雨後の月』は飲み干して、2本目を注文。合わせてつまにには鳥の皮(370円)をもらう。燗酒と一緒に出された鳥の皮は、ゆでて細切りした鶏皮の酢の物である。ゆで加減が絶妙で、皮のコラーゲン感、プリッとした弾力感がたまらない。
そうこうしているうちに、もうタイムアップ。飲んでるときの1時間はあっという間である。お勘定は1,600円。ちょうどいいホロ酔い加減で、心も軽く広島駅へと向かったのである。
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