〔くれ便り〕 大衆酒場に近い大衆食堂
呉駅の近くに「森田食堂」(08:00-21:00、日休)や「くわだ食堂」(06:30-20:00、日祝休)、さらには「バス食堂」(11:00-24:00、木休)といった大衆食堂があって、それぞれ午前中から夜まで、中休みなしに営業しているので、休みの日などは昼間っから地元の呑ん兵衛たちがお酒を飲んでいる姿もしばしば見かけます。
池袋の「ふくろ」や蒲田の「鳥万本店」、そこまで大きくなくても十条の「斎藤酒場」や王子の「山田屋」、四ツ木の「ゑびす」といった大衆酒場は、こちら呉にはありません。
活魚料理と焼き鳥でお酒が飲める『とり屋』という、呉発祥の酒場の形態が、東京の大衆酒場にかなり近いと思うのですが、大衆酒場がどちらかというとひとり客中心なのに対して、とり屋はグループ客中心。メニュー構成も、大衆酒場がひとり分の小皿中心なのに対して、とり屋はひとりには多すぎる料理が多いように思います。
その代わりに、ひとり客がふらふらと向かうのが大衆食堂のようなのです。つまり呉の大衆食堂は、東京の大衆酒場も兼ねた存在になってるんですね。立石の「ゑびすや食堂」や町屋の「ときわ食堂」なんかと近い感じかな。
そんな大衆食堂は、通勤の乗降客が多い呉駅前だけにあるのかと思っていたら、呉れんが通り商店街を北に抜けたあたり(呉市中通4丁目8-9 )にも1軒あるのを発見。店の上部に、手書きで「酒類、めし、うどん、中華そば、丼物」と大書された看板があるのも渋いではありませんか。
店の名は「寿食堂(ことぶきしょくどう)」(10:00-20:00、火と第1月休)。
さっそく店内に入ってみると、ずらりと並ぶ4人がけのテーブル席のそれぞれに男性ひとり客。みなさん料理1~2品を前において、ビールや焼酎、お酒を飲んでいるようです。みなさん入口近くにあるテレビのほうに向かって座っているのですが、お客同士はそれぞれ常連客らしく、ときどき向こうのテーブルとこっちのテーブルとで会話を交わしたりしています。
私も空いてるテーブルのひとつに腰を下ろすと、「いらっしゃい。おかずはガラスケースの中に並んでますからね」と店のおばちゃんが声をかけてくれます。
立ち上がって、小イワシの刺身でもないかと探しに行きますが、冷蔵ガラスケースの中に並んでいる料理のなかで、刺身っぽい器は1種類のみ。ラップがかかってて、中がよく見えないなあ。近くに来てくれたおばちゃんに「刺身はこれだけ?」と確認してみると、「そう。人気あるよ」とのこと。内容はわからないままにその器を取り出すと、おばちゃんがその器からラップをはすして、醤油皿と一緒にテーブルまで持ってきてくれます。
「あったかいお酒。1級のほうをお願いします。」
と燗酒を注文。メニューには「お酒 1級450円、2級400円」とあったので、50円の差なら1級のほうが外れがないかな、と思ったような次第。たいていの店では、1級は本醸造酒が、2級は普通酒が出されるようですからね。本醸造酒と普通酒は、その値段の差以上に味わいの差があると、私は思います。
刺身はイカとタイ、サーモン、それともうひとつはハマチかな。それぞれ2~3切れずつが盛り合わされています。
お酒はチロリ(金属製の燗づけ器)のまま出され、それとは別にコップが1個。このコップに自分で注いでいただきます。銘柄は広島・西条の「白牡丹」とのこと。このあたりの酒場では比較的よく目にするお酒のひとつです。
焼酎を飲んでいる人には、冷蔵ガラスケースの中で一緒に冷されている500mlのペットボトルが出されるのですが、あれはどうやら冷水(水道水を冷したもの)のようです。ポットを出してもらっている人もいるので、みなさん焼酎を水割りか湯割りで飲んでいるようです。飲み物メニューにもお酒とビール(大600円、中500円、小400円)のほかは、焼酎(二階堂、400円)としかありませんもんね。チューハイだとかサワーだとかはないようです。
呉にももちろん、大手居酒屋チェーン店や、昭和レトロをねらったような酒場は何軒かあるので、チューハイやサワー(もしかしたらホッピーも?)あるのはあるのですが、昔ながらの歴史ある酒場では、それらはほとんど見かけません。
最後はごはんで締めて帰るのかと思いきや、ほとんどのお客さんはちょっとしたつまみでひとしきり飲んだら席を立ちます。大衆食堂という看板ながら、その実態はほとんど大衆酒場なんですね。
お酒を飲み終わってお勘定をお願いすると1,050円。刺身は600円だったんですね。どうもごちそうさま。
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