〔くれ便り〕 ほいじゃがのぅ
全国各地にその地方ならではのお国言葉あり。
「ほいじゃがのぅ」
というのは、呉の言葉で「そうだけれどもね」という意味。
「ほいじゃがのぅ、浜田よい。そらぁ、ちょっと違う(ちごう)とらんか」
という感じで使われます。「浜田」のあとの「よい」は呼びかけです。「浜田よ」と言ってるのと同じなのです。
この「そうだけれどもね」という言い回しは、方言が出やすいフレーズのようです。
東京なら「だけどさぁ」。私のいたころ(30年ほど前)の福岡だと「そいばってんくさ」という、一瞬「えっ!?」と耳を疑うような言葉遣い。でもなんとなく反論したがっているんだなぁ、ということは雰囲気で伝わってきます。
そういえば福岡で「しぇしぇくる」という言葉があるんですが、博多出身の友人に「しぇしぇくるって何?」と聞いたら、「しぇしぇくるは……」としばらく考えていた友人。「しぇしぇくるは、しぇしぇくるたい!」と返事されて、ふたりで大笑いしたことがありました。
「しぇしぇくる」は「せせくる」というのが本当のようです。昔の博多の人たちは「せ」のことを「しぇ」と発音する(そうしかできない?)人も多いので、先生のことも「しぇんしぇい」なんて呼んだりするんです。で、「せせくる」も「しぇしぇくる」になったんですね。
その「せせくる」というのは、くすぐるみたいに微妙に触ったり、いじったりすることらしいのですが、「くすぐる」とも「触る」とも「いじる」とも微妙にニュアンスが違っていて、どうしても「せせくる」としかいいようがないそうなのです。
呉の言葉で「みてる」というのがあります。これは「無くなる」ことなんです。
我われが会社に入ったとき(入社して最初の配属先が呉でした)に、文房具セット一式を配布されたのですが、数日後に、同期のひとりがその中の消しゴムをなくしてしまいました。そこで新しい消しゴムをもらうべく、担当者(呉の人)のところに交渉にいったのです。
「すみません。消しゴムをなくしちゃったんですけど」
「あら。もうみてたん?」
「いや、見てないときに無くなったんです」
まったく話がかみ合っていません。
ちなみに「みてる」というのは、彼のように過失で無くす(紛失する)のではなくて、きっちりと使い切って無くなっちゃうことを指す言葉です。
もうひとりの友人は、新入社員実習のさなかに、その職場の先輩社員から、
「映画に行っとるかいの?」(彼にはそう聞こえた。)
と聞かれ、『えっ? なんでそんなこと聞かれるんだろう?』と悩みながらも、
「いえ。入社してからは行ってません」
と真剣に、そして正直に答えたそうです。
実はこのとき先輩が聞いたのは、
「ええがぃにいっとるかいの?」
標準語に直すと「いい具合にいってますか?」、つまり「うまいこと進んでいますか?」と、彼の仕事の進捗状況を確認してくれたのです。それなのに彼は、入社してからずっとうまくいっていないと……(爆)
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コメント
写真は音戸の瀬戸ですね。
その昔、この景色を見て、華鳩さんのあの味はこの自然だから出来るんだなぁ。と納得した記憶がよみがえってきました。そして「貴醸酒」が飲みたくなりました。
投稿: 自宅警備隊隊長 | 2010.07.25 10:48
はじめまして。
呉に転勤される前からこちらのブログを拝見させて頂いてたものです。
実は、実家が呉でして・・・なので「音戸大橋」と「ほいじゃがのぅ」は、
スゴく懐かしくてツボに入ってしまいました!!
親戚のおじさんとかよく言ってたな~って。
「みてる」は初めて聞きました。
これからも「くれ呉便り」楽しみにしてまーす!
横浜在住なので、近くの野毛情報も参考にさせて頂いてます♪
投稿: でかバンビ | 2010.07.27 14:33