
貴重な夏休み中の1日をさいて、「宇ち中」の宇ち中(うちちゅう)さんと、「酔わせて下町」のFさんのお二人が呉に遊びに来てくれています。
3軒目は、“とり屋”と並び立つ呉の特徴的な酒場文化、“スタンド”を味わいに「シロクマ」です。
“スタンド”は正式にはスタンド・バー。スタンドという名前が付いているものの、決して立ち飲みではなくて、スタンド(=カウンター)の向こう側で女の子数人がサービスしてくれるバーのこと。女性の多いスナックのような感じでしょうか。
ただし、女の子たちは基本的にカウンターの外側に出てきてはいけないことになっていて、せいぜいお酒を作ってくれたり、お酌をしてくれたりする程度なのですが、こちらの話に上手にのってくれる女の子たちが多くて、話が弾み、飲みも弾むという仕組み。カラオケがある店も多く、中にはお客さんたちがみんなで歌ってばかりのようなスタンドもあります。
そんなこともあって大きくぼられるような店はなくて、ひとり3~5千円ほど。キープボトルを入れるとプラス8千円ほどといった値段で楽しめる店が多いようです。(ぼられないけど、けっして安くはありません。)
経営する側から見ると、小さな店でも開業できる手軽さがいいのか、呉の街なかでも、中通(なかどおり)というエリアには昔からスタンドが密集。大きなビル全体に、何十軒ものスタンドがひしめいているというところもあり、タクシーで移動する場合のランドマーク的な場所にもなっています。VSビルやダイヤモンドビル、黄ビル(ビル全体が黄色いからそう呼ばれる)などがその一例です。
ここ「シロクマ」は、“呉で2番目に古いスタンド”というお店(昭和32年創業)。1番目はおそらく「どん底」(昭和28年創業)だろうと思います。
入口左側に、店の奥までを貫く直線カウンター十数席、右側は奥のほう半分だけが数席分の直線カウンターになっていて、左側のメインカウンターがあふれたときに使われます。これだけでみると比較的小さい規模の店ながら、実は2階に宴会場もあるそうで、大人数で訪れた場合も大丈夫。個人利用にも、会社利用にも耐えられる懐(ふところ)の深さをもっているのです。
日曜日の午後7時半過ぎという時刻は、スタンドにとってはまだまだかなり早い時間帯。店内には先客はふたりくらいしかおらず、我われもどこにでも座れる状態。先客がそれぞれ左側のメインカウンターの奥のほうに座っているので、我われは手前のほうに座ります。
この時間帯に入ったのは、実は絶妙のタイミングだったようで、これから30分くらいの間に店内は満席状態になってしまいました。日曜日でもみなさん飲みに来るんですねえ!
飲み物は焼酎(麦焼酎「二階堂」)のボトルを入れて、水割りで飲み始めると、二つの平皿に乾きもののセットが盛りあわされて、3人の間に置かれます。つまりFさんのグラス、つまみの皿、私のグラス、つまみの皿、宇ち中さんのグラスという5つの食器が並んでいる形ですね。
焼酎を作ってくれたおねえさんが、そのままカウンターの向こう側で我われの話し相手になってくれます。満席になっても20席くらいの店なのに、対応してくれるおねえさんの数は6~7人ほど。クルクルと上手に入れ替わりながら、気がつくと誰かが目の前にいて話し相手になってくれているという状況を作り出します。
首都圏でおねえさんのいる店に行くと、お客の側が一生懸命おねえさんのご機嫌を伺っているような、どちらが客かわからないようなお店が多いように思うのですが、呉のスタンドではまったく違います。まるで新婚当時のお嫁さんのように、こちらの話を文句も言わずに一生懸命聞いてくれたり、励ましてくれたりするのです。どの店でも、聞き上手で、話も上手なおねえさんが人気者のようです。
呉のスタンドは、昔から続いている酒場の形態なので、新入社員時代にもよく通っていました。ここ「シロクマ」(旧店舗時代)と、当時はその2階にあった「白婉(びゃくえん)」、向かいのビルにあった「エスカルゴ」(現在は閉店)の3軒によく行ってたなぁ。その当時は、おねえさんたちがほとんど年上の女(ひと)だったのに、今はほとんどが年下。まさに隔世の感があります。かわいい人やきれいな人が多いように感じるのも年齢(とし)のせいだろうか……(爆)。
東京で飲むときには居酒屋→居酒屋→居酒屋→……と流れて、最後に1軒、バーにも、といったハシゴ酒が多いように思いますが、こちら呉では、居酒屋(多くの場合は“とり屋”)→スタンドとなることが多く、ハシゴをする場合はスタンド→スタンドと、スタンドのハシゴとなることが多いのです。
その流れを見越してか、とり屋などの居酒屋は午後10時くらいに閉店してしまう店も多い。それより遅くまで開けていても、二次会の客は流れて来にくいのです。
スタンドをハシゴすることはそれほど多くはないのですが、会社関係の飲み会の場合にたまに発生します。スタンドは、「だれそれさんの行きつけのお店」というのが決まっていることが多いのです。Aさんの行きつけのスタンドは「ラ・ブランシェ」で、Bさんの行きつけのスタンドは「バンカー」といったような場合、同じ飲み会にAさんもBさんもいると、どちらにもちょっとずつ顔を出そうかということになったりするのでした。
2時間ほど楽しんで、お勘定は3人で16,800円(ひとりあたり5,600円)。店主夫妻が扉の外まで出てくれて、ていねいに見送ってくれました。どうもごちそうさま。
(つづく)
・店情報
《平成22(2010)年8月8日(日)の記録》
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