酒場通とめぐる呉酒場(1) … 「鳥八茶屋(とりはちちゃや)」(呉)
「宇ち中」の宇ち中(うちちゅう)さんと、「酔わせて下町」のFさんのお二人が夏休みで呉に遊びに来てくれています。
3人で出かける1軒目は「鳥八茶屋」。呉特有の酒場文化である“とり屋”の1軒です。
“とり屋”というのは以前も書いたとおり、基本的には焼き鳥屋。ただし、ほとんどの店に生簀(いけす)が設置してあって、新鮮な瀬戸内海の海の幸も食べることができるのです。ここ「鳥八茶屋」の看板にも『活魚と焼き鳥』と書かれています。
“とり屋”を始めたのは、呉市の瀬戸内海側にある倉橋島出身の上瀬稔さん。上瀬さんは終戦後、呉、大阪で四年間修業し、昭和27(1952)年に、呉市中通で活魚も食べられ、焼き鳥もあるという「鳥好」を創業しました。この「鳥好」が当たったことで、市内には同様な形式の店が増えていき、のちに“とり屋”と総称されるほどになったのでした。(その後の取材で得られた「鳥好」創業に関する新しい情報は→〈こちら〉 2012.02.19追記)
ここ「鳥八茶屋」は、平日は午後4時開店ですが、週末の土日は、なんと正午開店。昼間っからグイグイと飲むことができるのもうれしいところ。
奥の座敷の1卓を3人で囲み、まずは生ビール大ジョッキ(740円)で乾杯し、「“とり屋”ならではのおすすめ料理をひと通り注文するから、足りなかったら追加注文してね」と断って、一連の料理を注文します。
みそ煮(160円)は、鶏の皮とコンニャクを、少し甘めのみそ味で煮込んだもの。小鉢で出されます。東京のもつ煮込みの、もつが鶏皮に代わり、砂糖が加わってやや甘めに仕上がった料理、と考えれば近いでしょうか。
どこの“とり屋”にもたいていあるメニューですが、「鳥好」などでは、串に刺したみそ煮が出されます。これも東京のもつ煮込みに、串刺しのものと、鍋で煮込んで小鉢に盛られるものがあるのと同じですね。
ここ「鳥八茶屋」をはじめ、最近はどこの“とり屋”でもお通しが出されるので、“まずは取り急ぎ”という一品は特に必要ないのですが、昔は“とり屋”に入ると、まずは生ビールとみそ煮をたのんでサッと飲み始めるということが多かったのです。
活アジの造り(1,050円)は、生簀(いけす)で泳いでいるアジを網ですくって、その場でお造り(刺身)にしたもの。夏が旬のアジ。特に瀬戸内海でとれるアジは、この時期、弾力感もあって、身の味も濃く、最高の味わいとなります。食べ終わると、中骨の部分はカラリと揚げて持ってきてくれます。
こうなると日本酒ですね。ここ「鳥八茶屋」には「美和桜」辛口(三和)、「誠鏡」純米(竹原)、「華鳩」辛口(音戸)、「久保田」(新潟)、「千福」吟松(呉)といった日本酒が、それぞれ一合半の徳利(各630円)で出されます。冷やでも燗でも出してくれるのですが、私のおすすめは音戸の「華鳩(はなはと)」の燗。アジや小イワシなど、瀬戸内海の味の濃い魚によく合います。
今は夏なのでアジにしましたが、冬場には活ハゲの造り(時価で2,000円前後)がおすすめです。ハゲというのはカワハギのこと。一緒に出してくれるハゲの肝を醤油に溶かして、肝醤油にして、それに薄く造った身をからめるようにしていただくのがいいんですねぇ。
天ぷらは、これまた夏においしい小イワシ天婦羅(530円)と地物タコ天婦羅(630円)をもらいます。タコは絶対に天ぷらで食べるのがうまいと思うのですが、東京あたりではタコ天を出してくれるお店があまりないんですよねぇ。
小イワシ(カタクチイワシ)は刺身や天ぷら、煮物など、いろんな料理にして楽しみます。こんな小さいのに、味わいが深いんですよねぇ。あれば必ず食べたい一品です。
そして忘れてはならないのが焼き鳥です。メニューには“串物”という表記になっていて、串(鶏肉とネギを交互にさしたもの)、カツ(鶏肉とネギの串に衣をつけて揚げたもの)、キモ(鶏肝)、ズリ(砂肝)、モツ(玉ひも)、つくね、ボンボチがそれぞれ2本1人前で320円。皮(鶏皮)のみ1本210円です。今日は盛り串(5本790円)を注文すると、カツ、つくね、モツ、串、ズリの5本が出されます。
“とり屋”のおすすめ品は、他にもササミ天(320円)やスープ豆腐(420円)など、いくつかあるのですが、今日は盛り串まででもう満腹。
2時間ほどゆっくりと楽しんで、お勘定は3人で8,970円(ひとりあたり2,990円)でした。どうもごちそうさま。
(つづく)
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