新連載・呉酒場さんぽ … おでん「あわもり」(呉・新広)
1週間の夏休みを都内の自宅で過ごし、週明けの月曜日から仕事再開。夏休み中に飲みすぎたので、いつもよりお酒を抜き気味に1週間を過ごします。金曜日になると、そろそろ呑ん兵衛ごころがうずいてきて、会社前のバス停発17:32の、広(ひろ)方面直行便で広交差点へ。目指すはおでんの「あわもり」です。
このバスに乗ると「あわもり」に着くのは午後6時過ぎ。こんな猛暑でも関係なく、店内にはいつもの常連さんたちが座っていて、熱々のおでんをつまみに、泡盛や日本酒を傾けています。
「いやぁ~暑い暑い。ビールください」
空いていた鍋横の席につくまでの間にビール(各種大瓶が500円)を注文します。座るとすぐに出される熱々のおしぼり。暑い日に熱いおしぼりでグイッと顔をぬぐうのが気持ちいいんですよねぇ。そして手酌でコップに注ぐのももどかしく、ググゥ~~ッと1杯目のビールを飲み干します。
「プハァ~ッ! 生き返った。あつあげください!」
大きくあけた喉をドドォ~ッと通過していくビールの感覚がいい。最初のビールはちまちま味わうんじゃなくて、ドッと喉の奥に流し込まないとダメですね。そうじゃないと生き返れない。
すぐに出してくれるあつあげ(90円)は、豆腐半丁分ほどもあろうかという大きなもの。熱々のところを箸で割り崩しながらハフハフといただきます。「今日はお腹がすいてるなぁ」と思うときは、このあつあげからスタートすると、これ1個で空腹感が吹っ飛ぶんですね。
ゆっくりとあつあげを食べ終えたところで、いつものカワとキモをもらいます。カワは豚の皮を、そしてキモは牛の肺を煮込んだもので、それぞれ1本が90円。この店のおでんは15種類ほどがすべて1本90円で、おでん以外の料理はありません。この潔さがまたいいではありませんか。おでんしかないのに猛暑の夏でも満席ですもんねぇ。
今日、この店にやってきたのには、もうひとつの目的があります。8月30日発売の「古典酒場 Vol.9」(三栄書房、933円+税)から、「呉酒場さんぽ」という連載を書かせていただくことになり、その第1回目として、ここ「あわもり」を取り上げさせていただいたのです。つい先日、そのゲラが送られてきたので、今日はそのゲラも確認してもらおうと思っていたのでした。
「前に『本に載せてもいい?』ってお願いしていた件。こんな内容になりそうなんですけどどうでしょう?」
店主とおかみさんの手があいたところで、ゲラを見てもらいます。
「あら! これは○○さんじゃ。△△さんも写っちょるよ。ほら見て見て」
と常連さんたちに回覧されるゲラ。
「ほんまじゃぁ。あんたら(店主夫妻のこと)もええがいに写っちょるじゃなぁか」
「わしゃ毎日来ちょんのに、なんで写ってなぁんじゃろうか? 残念じゃのう」
そう嘆くのは、ここに来るといつも一緒になる常連さん。
「いやぁ、この写真を撮ったのが、閉店間際ぐらいの時間だったんですよ。ごめんなさい」
いつもは早い時間に来るのですが、店内の写真を撮影したときは、たまたま遅い時間帯にやってきたのです。いつも会う常連さんたちは早い時間帯にやってくることが多いので、写真の中には写っていなかったんですね。
首都圏の酒場で取材をさせていただくと「料理や店員はいいけれど、お客さんは絶対に写真に撮らないでください!」なんて店もあるほど、個人の情報には気を使う店が多いのです。ところが呉の場合は前に〔くれ便り〕でも書いたとおり、街の規模が大きくもなく小さくもなくて(人口約25万人)、ゆるい隣りづきあいができるちょうどいいコミュニティ。むしろ写ってるほうが喜んでもらえたりするんですね。とてもありがたいことです。
そんなわけで、ゲラのチェックも無事に終わり、スジ(牛筋)をもらったところでビールもなくなり、泡盛(160円)の梅割りにチェンジ。ぼうてん、ロールキャベツ、いわしだんごといただいて、1時間ちょっとの滞在は、おでん7本と大瓶ビール、泡盛1杯で1,290円でした。どうもごちそうさま。
「古典酒場 Vol.9」の「呉酒場さんぽ」も合わせてご覧いただけると、とてもありがたいです。よろしくお願いします。
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コメント
呉の良いところを発見して発信していただいて、ありがとうございます。まだまだ呉にはいいところがあるんじゃないか、って昨日NYから帰国した友人と話したばかりなので、元気がでます。
投稿: yasuko | 2010.09.01 11:11