なるほど旨い中華そば … 「森田食堂(もりたしょくどう)」(呉)
どうですか、この淡く黄金に透き通るスープ!
これが「酔わせて下町」のFさん絶賛の「森田食堂」の中華そば(400円)です。
「出汁に瀬戸内の小魚を使っているのと、塩がいいのでしょう。超美味です。都内の塩ラ-メンの名店も敵わないかも。最後に半ライスを入れると最強です。是非というか絶対に食べてみて下さい。」
というのがFさんからいただいたメール。(詳細はこちらの記事の後半をご覧ください。)
これはぜひ行ってみなければと、水曜日の今日、仕事が終わったあとにJR呉駅前にある「森田食堂」へとやってきたのでした。
午後6時半の「森田食堂」は、奥のテーブルに中年の男女4人組(男2人、女2人の公務員か学校の先生といった風情)、手前のテーブルには仕事帰りらしい男性ひとり客がテレビの見える側にいて、ポテトサラダ(250円)と茹でエビ(500円)をつまみに、大瓶ビール(キリン510円)のあと、千福の冷酒(600円)を飲んでいます。
「森田食堂」の店内のテーブル席は、この2卓のみ。それぞれ8人くらい掛けられる長テーブルで、それ以外にカウンター席があります。ただしカウンター席はテレビに背を向けるポジションとなるため、ひとり客にはあまり人気がないようです。
私も、男性ひとり客の通路側にテレビが見える向きに座り、「何にしましょう?」と聞いてくれる女将にビールを注文します。
「生?」「いや、大瓶で」「キリンとアサヒがありますが」「キリンでお願いします」というやり取りがあって、女将が冷蔵庫からキリンラガー(一番搾りも選べます)を出して、ポンッと景気のいい音を立てて抜いてくれます。この景気のいい栓の抜き方は、女将の得意技のようです。
一緒に出してくれるグラスに最初の1杯を注いで、まずはググゥ~ッと飲み干します。ん~~~っ。この1杯がたまらん!
仕事終わりのビールを飲んで、すっきりと生き返ったところで、入口側の冷蔵ガラスケースにおかずを選びに行きます。ずらりと並んでいるのは、さばの煮つけ(200円)、だし巻たまご焼(150円)、ひじき(200円)、煮しめ(250円)、ポテトサラダ(250円)、小いわいの煮つけ(300円)、湯豆腐(300円)、奴豆腐(200円)などなど。
ここは大衆食堂なので、これらのおかずで食事をするもよし、これらを肴(さかな)に酒を飲むもよし。店のファサードテントにも「めし、丼物、酒肴」と書かれています。
小イワシの刺身があれば、それが食べたかったのですが、今日の刺身はタコと鯛(各500円)。しかも鯛は最後の1皿です。前回も鯛刺身を食べたので、今回は違うものを食べようと思っていたのですが、最後の1皿とあってはしかたがない。やっぱり鯛刺身にしましょう。だって見た目がいかにもおいしそうなんだもの。
冷蔵ケースから鯛刺身を取り出して、席まで持ってくると、女将が醤油皿に刺身醤油を入れてくれます。このあたり(呉地方)の酒場では、ほとんどの店で刺身は普通の醤油ではなくて、ちょっと濃厚で甘みのある刺身醤油でいただくのです。
前回もそうでしたが、今回も鯛刺身のつまはキャベツの千切り。これが「森田食堂」のスタイルなのかな。
ビールが終わったら、音戸の地酒「華鳩(はなはと)」の冷酒(たぶん600円)と湯豆腐(スープ豆腐っぽい料理で、ここの名物。300円)にしようかと思っていたのですが、私が入ったあとから続々とお客さんが入ってきて、テーブルはもちろん、カウンターもいっぱいになってしまいました。
カウンター席に座っている男性二人組みは、和歌山から旅行でやってきたと女将に話しています。最初の生ビールを飲み終えた二人は、
「ベッピィ~ン! 生ビールもう1杯ちょうだい」と女将に声をかけます。
「聞いたことないような言葉が聞こえてきたけど、もしかして私のこと? でもうれしいわ」と笑いながら生ビールを注ぐ女将。「別嬪」という声のかけ方がおもしろいですねぇ。和歌山あたりでは普通の呼び方なんでしょうか。
ほぼ満席の店内の客数は15人ほど。切り盛りしているのは女将ひとりだけなんだけど、女将の動きはあまり忙しそうではありません。ほとんどのおかずは冷蔵ケースに並んでいる大衆食堂だからかもしれませんね。
とはいうものの、この満席状態で長居するのもヤボなので、予定を変更して締めの中華そば(400円)を注文します。
あまり待つこともなく、すぐに出てきた中華そばは、淡く黄金に透き通るスープに、ごく普通の中華麺。具は豚肉2切れとモヤシ、メンマ、刻みネギとシンプル。まずは熱々のスープをひと口。おぉ~っ。たしかにこのスープはすばらしい。薄めの塩味で、魚のダシの味を強く感じます。これはうまいなぁ。
あっという間にスープまで完飲。Fさんのおすすめは、これにごはん(小170円)を入れることだったんだけど、ラーメンだけでもお腹いっぱいで、そこまでは食べられませんでした。
40分ほどのちょい飲みタイム。お勘定は1,410円でした。どうもごちそうさま。
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コメント
「森田食堂」の中華そば,しかと拝見。もしかしたら,それは「黄いそば(きいそば)」「和風中華」「天ぷら中華」などと呼ばれるものではないか,と。
うどん出汁に中華麺,姫路の駅ソバが有名だけど,個人的には,高校(広島市)の学食の懐かしき味。
地元民としては,エアポケットでした。今度食べます。
森田食堂の名物は「湯豆腐」。うどん出汁に豆腐がつかり,トロロ昆布にゆず片。〆の汁まで用意された,酒飲みにはありがたい酒肴。
年中ある「おり酒(華鳩)」コップ1杯300円とともにどうぞ。
しかし,駅前のあの並びには,渋い店が揃っています。
「鉄板焼 藤」。呉で一番旨いコップ酒が出る,と勝手に認定。「清盛」は音戸の華鳩の別ブランド,無造作なコップ酒に豊かなコク。
おかみさんの玉子焼きは旨い。冷蔵ケースの小鉢や焼き物(がんす焼きなど)とおでん。何気ない一品で至福の時。常連占有率が高い店。
「松屋食堂」。おばちゃんが一人で切り盛り(時々助っ人孫娘)。食堂とはいえ,夕刻の短い時間しか開けない。
黒じょか型の容器で出る日本酒。瓶ビールはセルフで。肴も適当なものを選んで…至って開放的なシステム。
でも,帰る時少しびっくりします。安いのです。
呉細うどん「りゅう」は,地元の山乃家製麺が始めた,比較的新しい店。
ちくわ天,かき揚げなど,うどんのトッピングで麦焼酎のロックを。かけうどんで〆,細うどんにからむ『命の出汁』。
夏の具だくさん冷やしうどんもいいし,うどん出汁に中華麺の和風中華(胡椒かけ)もいいな。
うどんに対しすごく真面目な店主との語らいながら,うどん酒を呉で流行らせたいと思う気にさせる店です。
ここ一年ほど行けてないけど,皆盛況でやっておられるでしょうか。
投稿: 遊星ギアのカズ | 2010.09.07 23:21
再度登場失礼します。
森田食堂の中華そば、食しました。そして、私の前言撤回。それは、黄いそばではなく、まごうことなき真っ当な、専用スープの中華そばでした。
『塩ラーメン』ですか、確かにそういう視点でとらえると、いつもの料理が、新鮮なものに変身しますね。
チヤシューでなく、茹でた豚バラ肉が入るのも、呉の古い食堂らしい(二河の「宮川食堂」の中華そばがそうです)。呉市民に親しまれている、中通「モリス」の中華そばと、味の傾向がものすごく近いです。
美味しい一品を紹介していただき、ありがとうございました。
投稿: 遊星ギアのカズ | 2010.09.18 15:00