笑顔があふれる店の中 … 屋台「一二三(ひふみ)」(呉)
豚足がおいしいという噂の屋台「一二三」で、鉄板で蒸し焼きにした豚足(600円)をいただいています。
博多で豚足を注文すると、焼き鳥を焼く焼き台で、丸ごと1個の豚足を炙ってから、できあがりをひと口大に割いて出してくれ、それを焼き鳥を食べるときと同じく、柑橘系のタレをつけながらいただきます。首都圏では茹で冷ました豚足を切り分けて、冷たいまま酢味噌などで食べることが多いのです。
それに対して、ゆで冷ました豚足をひと口大に切り分けて、鉄板でじっくりと蒸し焼きにしたここの豚足は、ねっとりとした軟らかさと、しっかりとした弾力感がちょうどいい感じでバランスしています。温められることで豚足自体の味わいも増し、いくらでも食べられそう。この味わいと食感はクセになるかもなあ。
最初に取り出した足首1個分は、コロリと小さなかたまりなので、見た目には少量に感じてたのですが、できあがって食べはじめてみると、これがけっこうボリュームフル。食べても食べても減りません。(そもそも食べるのに時間がかかる!)
ビールもすっかり飲み終えて、続いては焼酎(400円)をもらうことにします。焼酎は麦焼酎「いいちこ」で、メニューには湯割りか水割りと書かれています。
「ロックもできるんですか?」
と確認してみると、「できるよ」とおとうさん。豚足のクーラーボックスの横にあるクーラーボックスが氷用のクーラーボックスで、その中から水割り用のグラスにたっぷりと氷を入れて、焼酎もたっぷりと入れてくれます。
元気いっぱいで「よっしゃ!」と注文を受けてくれるおかあさんに対して、横にいてクーラーボックスから豚足を出したり、グラスに氷を入れてくれたりするおとうさんは、ちょっとはにかみがちな表情で物静か。ちびりちびりと焼酎の水割りを飲みながら、おかあさんが働く様子を見守っています。
焼酎ロックを作ってくれているおかあさんは、すでにグラスの8分め以上焼酎が入っているグラスを持ち上げて、おとうさんのほうに「こんなもんかな?」と確認。おとうさんはニコニコとした表情を保ったまま「もう少し入れてあげたら」と返事。それを聞いたおかあさんは、本当にすりきり近い状態まで焼酎を入れてくれて、「はいよっ」と手渡してくれます。
いやぁ、これは呑ん兵衛にはうれしいなぁ。てっきり水割りの、水の部分を抜いた分、つまり水割りグラスに半分くらいの焼酎を出してくれるんだろうと思っていたのですが、こんなにもたっぷりと入れてくれるなんて!
最初は常連さんのおじさんと私の二人だけだった客も、途中で若い3人連れが入ってきて、今は5人ほど。若い人たちもみなさん常連さんの様子で、入ってくるなり豚足を焼いてもらっています。
「昨日は、久しぶりに呉に出てきたという人が来てくれてね。ここの豚足が食べたかったんじゃいうて、食べていってくれたわ」
豚足を焼きながら、おかあさんがお客たちに話しかけます。
こうやって、屋台の中心に話し好きな肝っ玉かあさんがいるのはいいですね。おかあさんが提供してくれる話題で、屋台の中に一体感が出てくる。
呉の屋台、特に若い店主が経営している屋台では、店主はほとんどムダ口たたかず、黙々と仕事をしているところが多いので、一人で行くとテレビくらいしか楽しみがないのです。
ここでは、おかあさんの話に相槌をうったりしているうちに、いつの間にやらとなりのお客さんとも話をするようになり、話がどんどんふくらんでいくのです。
そんな話を聞きながら、2杯めの焼酎ロック(400円)をもらいます。
ボリュームたっぷりの豚足はまだまだ残っていて、これだけでもう満腹になってしまいそうです。
「13年くらい前じゃったかな。この辺の海でサバがよ~け釣れたことがあってねぇ」と話し始めるおかあさん。
「あぁ。あったあった。真サバじゃったよのう」と応える常連さん。
そのときおかあさんは足を痛めていて、屋台での立ち仕事は大変なので、屋台はおとうさんにまかせておいて、常連さんに釣りに連れて行ってもらったんだそうです。
「いったん沈んだウキが水面に上がってきてから、そのウキがグッと下がったら釣れとるから、言われて投げたら、ウキが浮いてきやせん。入れたとたんに全部の針にサバがかかっとんじゃけぇ。足が痛うて釣りに行ったのに、座る間なんかありゃせん。忙しゅうてしょうがなかったわ。」
屋台の中には笑いがたえません。
メニューは豚足600円、豚耳600円、ホルモン750円、おでん各種100円、キンチャク150円、ビール550円、焼酎(いいちこ)400円、酒一級400円、中華そば500円など。この近くにある数件の屋台は、ほぼ同じような値段で、同じような品ぞろえです。
2杯めの焼酎を飲み干すとともに、豚足も食べ終わります。すっかり満腹でお勘定をお願いすると1,950円。ものすごくいい気分で過ごせたので「おつりはいいです!」とカッコいいところを見せたものの、考えてみるとおつりは50円。ほんの少しのカッコつけなのに、おとうさんからも、おかあさんからも「ありがとうございます」とお礼を言われて、ちょっと恥ずかしい。
「ごちそうさま。またきます」と店を後にしたのでした。
| 固定リンク | 0
コメント