しめさんまで華鳩一献 … おでん「魚菜や(ぎょさいや)」(呉)
女将ひとりで切り盛りする「魚菜や」は、基本的におでん屋なんだけど、常連のお客さんたちに請われるままに、まさにおふくろの味というようなお惣菜もそろった小料理屋のようなお店でもあります。
金曜日の今日は先客は男性ふたり連れ。彼らがL字カウンターの横の辺に座っているので、私は縦の辺の奥あたりに陣取ります。
「瓶ビールをください」と注文すると、アサヒとキリンが選べるということで、キリンを選択すると、キリンラガービールの中瓶が出されます。
お通しは海老の塩茹で。うちの故郷(いなか)でもよく出てきたなぁ、この塩茹で海老。瀬戸内海沿岸では普通に出てくるつまみなんですね。いかにも海老という、この味の濃厚さが子供のころはあまり好きじゃなかったんだけど、お酒を飲むようになってからは大好物になりました。
ビールを飲み始めたばかりなのに、この海老の味わいで日本酒が欲しくなり、「華鳩(はなはと)」を燗で注文します。
この店においている日本酒は、呉の地酒のみ。「華鳩」は音戸(おんど)の地酒。音戸は以前は広島県安芸郡の町だったのですが、平成17(2005)年に呉市に編入されたのでした。この音戸の「華鳩」が、瀬戸内海の味の濃い魚にピシャリと合うのです。
毎日手書きされるメニュー。今日は、〆さんま、地ダコ刺、タコ天、小いわし天、ポテトサラダ、きゅうりなます、なすの田舎煮、きんぴら、万願寺の揚げびたし、煮さば、さばのはぶて焼、沖縄のもずくなど。おでんはアキレス、ロールキャベツ、しらたき、豆腐、厚あげ、玉子、じゃが芋、こんぶ、こんにゃく、大根、ごぼう天、ウインナー、きんちゃく(もち入り)といったところ。
値段は書かれていませんが、店の入口(外側)に「お刺身 時価、揚物色々 600円~、おばんざい 一品 400円~、おでん(関西風、関東風)150円~」という短冊が並んでいます。まず普通のサラリーマンがびっくりしない程度の値段と思っていいでしょう。どういう経緯か、呉の酒場には値段が書かれていないところも多いのです。
「この間、近くで飲んでたら、『魚菜や』に行ったら貝汁を食べなきゃと教えてくれた人がいたんですけど、貝汁あるんですか?」と女将にたずねてみると、
「今はめったに作らないんですよ」と女将。「ちょっと前までは貝汁がここの名物でねぇ。表のちょうちんにも貝汁と書いていたほどだったんだけど、最近はいい貝が手に入らなくてねぇ。海外から入ってきて、薬で生かされてるみたいなのもあるから、怖くて出せないのよ」と嘆きます。
なので、この近くで取れた、いい貝が入ったときしか貝汁は作らないのだそうです。そんな日にうまくめぐり合いたいものです。
それじゃ、と注文したのは〆サンマ。たっぷりと盛られた〆サンマは表面の薄皮がキラリと光り、見た目にもおいしそう。ックゥ~ッ。これまた燗酒が進むことよ。
ふたり連れの先客はこの店の常連さんで、そのうちのお一人は、このたび異動辞令が出て、あと2週間ほどで大阪に転勤になるんだそうです。もともと関西のご出身で、呉には転勤でやってきて10年近くいらっしゃったとのこと。私は逆にこの4月に呉に転勤してきたばかり。去る人もいて、来る人もいて。その両者が小さなこの酒場で一緒にお酒を飲んでいるのがおもしろいなぁ。
呉も自衛隊のほか、大きな会社がいくつかあるので、季節ごとの転勤は当たり前の出来事のようになっているのかもしれないですね。
1時間半ほどの滞在は、ちょうど2千円でした。ごちそうさま。
お通しと瓶ビール / 今日のお惣菜(大皿料理) / 〆サンマ
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