新サンマ塩焼きで一献 … 味処「寿里庵(じゅりあん)」(呉)
「四ツ道路(よつどうろ)の『寿里庵(じゅりあん)』も、ひとりで飲んでる人が多いらしいから行ってみたら」
そう教えてくれたのは、「あわもり」のおかみさん。呉の街なかで働いている娘さんから、『ひとりで飲める店』情報を収集してくれたのです。
そういえば、呉の飲食文化に詳しい遊星ギアのカズさんも、以前のコメントで「寿里庵」を紹介してくださってました。
「来夢来人」「珈穂音」「寿提夢」「茶恋路」といった、外来語を当て字にした名前の店は、なんだかあまりパッとしない場末のスナックのように思えてしまう(失礼!)のですが、この「寿里庵」は、戦後すぐに開店した老舗酒場。お客に愛され続ける誠実さがなければ、老舗として、長い年月を生き残っていくことはできません。これはぜひ行ってみなければ。
ということで火曜日の今日、仕事を終えた帰り道に、トコトコとひとり「寿里庵」にやってきました。店は四ツ道路という、バス通り同士が交差する大きな交差点の角にあります。
店の看板には「お食事処・呑み処・めん類・定食・一品料理」と、さまざまな肩書き(?)が並んでいて、入口横には「生ビール、焼酎、酒、昼定食、丼物、刺身、一品料理、和風ラーメン、麺類、冷麺、ざるそば、冷しそうめん」というメニューも掲示されている。なるほど、ここも「森田食堂」や「くわだ食堂」と同じように、食事もできるし、飲むこともできるというお店なんですね。
のれんをくぐって店内へと入ると、その店内は外観から想像したほどの大きさはなくて、意外に狭い。右手に5人くらい掛けられるカウンター(と見えたのですが正解は後ほど)があり、その一番手前側に男性ひとり客。左手には4人がけテーブル席が2卓並び、奥側のテーブルに男女二人連れ(と見えたのですがこれも正解は後ほど)が座って飲んでいます。
「いらっしゃいませ」と迎えてくれるスリムな女性がこの店の女将さんなのかな。
「こちらへどうぞ」と、残る1テーブルを指し示してくれます。
店の奥側にテレビがあって、先客3人は、みんなテレビが見える方向に向かって座っています。私も指し示されたテーブル席のテレビが見える側に座り、まずは「瓶ビールください」と注文すると、「キリンとアサヒ、どちらにしましょう?」と女将さん。アサヒを選ぶと、中瓶のスーパードライが出されます。お通しは小鉢に盛られたポテトサラダです。
店内のほとんどのメニューには値段が書かれていなくて、店の奥にある、今日のおすすめというボードには、サヨリ刺身、新サンマ塩焼、砂ずり炒め、なす餃子などが並んでいます。今日はサンマが食べたいなぁ。
「新サンマ塩焼をお願いします」
「は~い」と返事した女将さんは、奥の厨房でサンマを焼く準備を始めます。奥の厨房といっても、カウンターキッチン風で、向こうで料理していている様子も見えるし、逆に女将さんからも客席がよく見える仕組み。
サンマが焼きあがってきたところで燗酒をお願いすると、木製のハカマのついた徳利が出されます。
腸(はらわた)の苦ぁ~いところをつついては、燗酒をチビリ。
ホクホクと湯気の立つ熱々の身をつついては、燗酒をまたチビリ。
あぁ、この魚は、どうしてこんなにお酒に合うんでしょう。
カウンターのおにいさんは、キープしているらしい焼酎を水割りにして、テレビを見ながらの~んびり。前のテーブルの年配男女ふたりは、テレビが見える側に二人で並んで座り、徳利の燗酒を差しつ差されつといったムード。お酒がなくなると、女性がおかわりの燗をつけに行きます。
自分でお酒の燗をつけるとは、ものすごい常連さんだなぁ、と思っていたら、この年配男性が「そろそろ帰ろう」と立ち上がったら、なんとこの女性がお勘定。「また来てね」と入口のところまで見送って、自分たちが使っていた食器を片付け始めます。
なんとなんと。男女ふたり連れかと思っていたら、男性常連客のとなりに大女将と思しき女性が座って一緒に飲んでたんですね!
そこへドヤドヤとやってきたのは、いかにも仕事帰りらしき男性4人連れ。「(テーブルでもカウンターでも)どっちでもいいよ」という女将さんの言葉に、「じゃ、こっちにしとく」とカウンター席のほうを選んで、奥の空いている側の内外に二人ずつ並んで座りました。ありゃりゃ。カウンター席に見えたんだけど、実は内側にも椅子が並んでいて、長テーブル風に座れる席だったんですね。
私のほうはサンマも食べ終わり、お酒もちょうどなくなったのでお勘定をお願いすると、女将さんが「1,700円です」と言いながら、席までお勘定を受け取りにきてくれます。値段は書かれていないものの、瓶ビールと燗酒に、お通しとサンマで1,700円だったら、それほど高くないですね。
食べ終えたサンマのお皿を見て、「まぁ、きれいに食べたねぇ。魚が喜ぶわ」と笑顔になって、「ありがとうございます。またいらしてください」と入口のところで見送ってくれました。どうもごちそうさま。
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